上 下
347 / 687
8章

459.挨拶

しおりを挟む
「そこも問題ねぇよ」

アラン隊長が自信満々に答える。

「そこまで言うなら…でもどうやって騙すの?」

「そうだなぁ…俺とお前が付き合う事にした……とかどうだ?」

アラン隊長が先程の様にディアナを抱き寄せる。

その行為にベイカーが思わずアラン隊長からディアナを離した。

「駄目だ!やっぱり国王を騙すなんてよくない!」

ベイカーはアランからディアナを守るように後ろに隠した。

「別に本気で取るわけじゃねぇぞ?」

アラン隊長がニヤニヤと笑う。

「いや!俺は忘れないね!あんたに何人彼女を取られたか!」

彼女?

ディアナがピクッと反応する。

ギャーギャーと言い争っているベイカーとアランを無視してベイカーの服をつんつんと掴むと…

「ベイカーさん、彼女いるの?」

ディアナが伺うように聞く。

「あ?いやもうずっと前の話だ」

「本当?今はいないの?」

「いるわけないだろ!ずっとお前のそばにいるのに」

「そ、そうだね…」

ディアナが顔を曇らせると

「そんな顔しなくても作る気はねぇからな、今はお前が一番大切だ」

安心させるようにディアナの頭をポンポンと撫でた。

「お前ら姿が大人だとまるで恋人だな」

アラン隊長が呆れながら二人を見ている。

「ベイカーわかってるよな?中身はミヅキだぞ」

「何言ってるんだよ…そんなのわかってるに決まってるだろ」

ベイカーが当たり前の様に答えるが…ディアナはドキドキとする胸にそっと手を当てた…


「そろそろご挨拶お願いしますよ」

タイミングよくマルコさんがディアナ達に声をかけた。

「うそ!どうしよう!アラン隊長で遊んでて挨拶何も考えて無いよ!」

ディアナがハッ!と頭を抱える!

「俺で遊んでたのか?」

「いや!今はそんな事より挨拶だよー!どうしよう何言えばいいの?」

「好きに言うんだろ?お前がなんでこの学校を作ったのか言えばいいんじゃないか?」

「そ、そうか…そうだね!うん頑張る!」

「俺達も隣にいるからな」

ベイカーとアランがディアナをしっかりと間に挟んで誘導する。

「頼りになる二人がそばに居てくれると心強いよ…」

ディアナは力を抜いてフワッと二人に笑いかけた。

「うっ…」

ベイカーはサッと顔を逸らす…

「お前が本当にその歳になったらまたそのセリフを言ってくれ」

アランは苦笑してディアナを壇上へと連れていった。


ディアナが壇上へと出てくると、生徒たち先生、みんなの意識がディアナへといく。

「ミ…ディアナ様だ」

並んでいたミト達がディアナの姿にソワソワとしだす。

「なんか輝いて見えます!」

「本当に…あそこだけ光が指しているようだ」

ライラ達がうっとりディアナを見つめている…

上から見ていたディアナはみんなの姿を確認してホッと表情を崩した。

ザワッ…

保護者、来賓席からどよめきがおきる…

「あれが噂のディアナ様か…本当に存在したんだな…」

「黒髪の少女が全て考えたと言うのはやはり噂だったのか」

「当たり前だろ、少女がこんな施設を作れるかよ!でもあの人なら納得出来るな…あんなに美しい…」

「美しいのは関係ないだろ…」

初めて見るディアナの姿に会場がざわつき出す。

ディアナは緊張でそんな様子に気づかずに声を出した…

「皆さん…こんにちは…」

シーン…

皆が静まり返る。

(あれ?聞こえなかった?)

ディアナは少し慌てて…

(どうしよ。マイクなんて無いし声を大きくする魔法なんてあるかな?)

ディアナは風魔法の原理で空気を振動させながら自分の声を飛ばしてみる…すると

「こんにちは…」

ディアナの声が会場中に響き渡った。

「な、なんだ…すぐ近くで話しているように聞こえる…」

「さっきまで全然聞こえなかった声が聞こえるよ!」

後ろの席の人達が騒ぎ出した。

「これならよく聞こえるかな?今日は皆さん学校創立の式典にようこそおいでくださいました。まずはこの学校を作って下さったギルバート国王に感謝を…そして携わってくださった全ての皆さんありがとうございました」

ディアナはギルバート王に頭を下げるとマルコさん達に頭を下げた。

「この学校は全ての学びたい子供の為に作りました…ここでは身分、種族そんなものは全て忘れて、平等に仲良く様々な事を学んで欲しいと思っています。そのために素晴らしい先生方をお招きしました」

そう言って並んでいる先生方の方をみる。

「皆さんにはこれから学んで行く中で沢山の道がでてきます。冒険者の道、料理人の道、先生の道、部隊兵の道。ここで学びながらそんな道をしっかりと見つけて言って欲しい…たまには引き返したり、道を変えたりするのもいいと思う。最後には太くしっかりとした自分の道を作って下さい…」

「僕達も…冒険者になれるの?」

一番前に並んでいた、小さい男の子が小さい声で聞いてくる。

ディアナはにっこりと笑うと

「もちろん!でも君がそれに冒険者になる為の努力をしないとなれないけどね」

「なりたい!僕冒険者になる為なら頑張る!…でもやり方がわかんない…」

男の子がしゅんとする。

「それを教えるのがこの学校でこの先生達だよ。みんなが手を伸ばしてくれたらしっかりと受け止める…でも…」

ディアナが言葉を切って前を向く。

「努力せず他人を顧みないそんな人には手を差し伸べる気は一切ありません。そこをお忘れなく…」

ニッコリと笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。