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7章

321.手網

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セバスは路地に入り込むと、追跡者が後を追う。

路地に入ると…人っ子一人いなかった。

「どこに…」

一歩前に足を踏み出した瞬間…

「動くな」

後ろから首筋にナイフを突き立てられる。

「マリーさん…一体どういうつもりですか?」

セバスが後を追ってきたマリーさんに問いかけた。

マリーは手を挙げ後ろを振り返ると

「ミヅキさんが連れ去られたと聞きました…私も連れて行って下さい」

「さすがマルコさんのメイドですね…耳が早いです」

セバスがナイフを下ろすと

「マリーさんを連れて行って、何か利益が?連れていくなら戦力として連れて行きますよ?」

セバスが笑うと…

「望むところです…」

マリーはメイド服をはためかせ、長い足をセバスに向けると、そのまま風を切るような回し蹴りをくらわせる。

「なっ!」

セバスが腕でガードすると、そのまま上に飛び回転しながらかかと落としを脳天目掛けて降り下ろす。

セバスが避けると

ドゴッ!

地面に穴が開いた…

「マリー…さん?」

セバスが声をかけると…

「メイドなら主人をいかなる時もお守りしなければいけません…私はまだこの程度の事しか出来ませんが…」

パタパタと服に付いたホコリを祓うと…

「マルコ様からも許可を頂いております。どうか連れて行って下さいませ…身の回りのお世話も出来ますよ」

マリーさんが微笑むと

「とんだ隠し球を…マルコさんもいいんですね?」

セバスが後ろを振り返ると

「さすがセバスさん、よく居るのがわかりましたね!」

マルコが路地に入って来た。

「マリーさんの強さを見せてしまっていいんですか?」

セバスが聞くと

「もちろんです、ミヅキさんにはその価値がありますから…ですからどうかミヅキさんを無事連れ帰って下さい」

笑っていた顔を引き締め真剣な顔を向ける。

「言われなくてもそのつもりですよ」

「その為にもどうかマリーを使って下さい」

「よろしくお願いします」

マルコとマリーが頭を下げた…

「すげぇな…ミヅキが見たら喜びそうだ」

引き返して来たベイカーが後ろから顔を出す

「ベイカーさん」

マルコが顔を上げると

「ところでマリーさん、なんで俺じゃなくてセバスさんを追ったんだ?」

ベイカーがマリーに聞くと

「それは…」

マリーが言いづらそうにすると…

「ベイカーさんより…セバスさんの方が…」

「セバスの方が?」

「すて……決定権がありそうですからね」

マリーさんはニコッと笑った。



次の日の朝早く…里に向かうと、リュカやテオ、ギース達をはじめ里のみんなが揃っていた…。

「おい…全員は無理だぞ…」

ベイカーが呆れると

「わかってますよ…気持ちは皆行きたいが…」

ギースが答えると

「行くのは俺とボブとビリー、リュカとテオ、イチカだ」

「六人ですね、動きやすい人数ですね」

セバスが頷くと

「ギース、俺たちの分も頼むぞ」

テリーがギースに声をかけると

「お前達もここを頼む、帰って来た時にちゃんとミヅキを迎えられるような」

居残り組が頷くと

「では…行きましょう」

六人は頷くとみんなに見送られセバス達の後をついて行った。

里を出ると…

「あれ?マリーさんとマルコさん」

イチカがみんなを待っていたマルコ達に気がついた。

「マルコさん達も行くんですか?」

驚いていると

「はい、商人としてついて行きたいと思います。コレでも顔が広いんですよ、役にたってみせますよ」

マリーの方を見ると

「皆さんの助けになるよう支援致しますわ」

マリーが優雅に頭を下げた。

「確かにこんな商人やら子供や柄の悪い大人がまさか戦いを挑みに行くなんて思わないよな」

リュカが笑うと

「ガラが悪いは余計だ!」

ギースがリュカの頭をはたく。

みんなでゾロゾロと王宮に向かい歩いていると

「あれ?帰ってたのかい?」

街の人達が声をかけてきた…

「ミヅキちゃんはいないの?」

「またしばらくはいるのかい?」

「おっ!リュカ、ミヅキちゃんにうちにも寄るように言っといてくれよ!」

ジフさんが声をかけてきた…リュカが返答に迷っていると

「すみません…今回は時間がなくて直ぐに王都を経たなくては行けなくて…ミヅキさんも今は疲れて休んでいますので…次に帰って来た時は必ず寄りますから」

セバスが代わりに答えると

「なに?ミヅキ疲れてるのか?」

街の人達がザワつく…

「大した事はありません…から」

セバス達はこれ以上質問される前に王宮へと向かった…。

王宮ではアラン隊長達が既に選定を終えて出発する準備を行っていた。

「それで…誰が行く事に?」

「俺達はそのまま第五部隊と第三部隊が全員行く事になった…やはり部隊で動くのがしっくりくるからな」

「わかりました、こちらも今回行く人を揃えてきました」

セバスが付いてきたギース達を示すと

「子供を連れて行くのかよ…」

アランが渋い顔をする。

「イチカ…あなたまで…」

ミシェル隊長がイチカを見ると

「ミシェルさん、いえ…ミシェル隊長、子供だからこそ出来るし動ける事があると思いますよ!」

「そうだ!俺たちなら町を歩いてても警戒もされないしな!」

「ま、まぁ…そうかもしれないけど…」

まだ心配そうなミシェル隊長に

「ミシェル隊長、教えてもらった事をやっと発揮出来ます!隊長の弟子として恥ずかしくない戦いをしますので…見てて下さい!」

「確かに、イチカ達は強くなったけど…」

「大丈夫!スラムで生き抜いてきた俺たちの図太さを見ててよ!」

リュカ達が子供らしくニカッと笑った。



「父上!」

レオンハルトがギルバートの元にノックもしないで駆け込むと

「ミヅキが誘拐されたって本当ですか!しかもサウス国に!」

ギルバートの机をドンッ!と叩く。

「お前には黙っているように言ったはずだが…」

ギロっと後ろの従者達を睨むと

「廊下で話してる方たちの話を聞いてしまいました…しかし…我々にも秘密とは…納得いきません」

ユリウスとシリウスがレオンハルトの後ろにたつと

「お前らは…国に残ってもらうつもりだからな…余計な心配はさせまいと思ってな」

「なぜです!俺も連れて行って下さい!好きな人が連れていかれたのですよ!じっとなどしていられない!」

「それはわかるが…今回は駄目だ!私とお前が行きもし何かあればウエスト国の民達が不安にかられる、王としてそれだけは出来ない」

父親ではなくこの国の王としてレオンハルトを見ると

「私にもしもの事があればこの国を継ぐのはお前だ、お前だけは連れて行けない」

「そ、それなら…父上が残れば…」

レオンハルトが足掻くが、ギルバートは決して首を縦に振らなかった。

「なら…せめてシリウスとユリウスは連れて行って下さい」

「レオンハルト様…」

ユリウスがレオンハルトを見つめる。

「俺が行っても邪魔になるだけですが…この二人なら役にたつと思います」

ギルバートは悔しそうなレオンハルトを見ると

「分かった、それは許可しよう。だからお前はこの国を守っていてくれ。好きな女が帰ってきて国が荒れていたら目も当てられないぞ」

ギルバートが優しい瞳で息子を見つめると

「はい!父上よりも凄いと思わせるように待っています」

レオンハルトが頼もしい返事を返した。


ギルバートはサウス国に海の国の事とそれ以外にも気になる事柄がある事を含めた書状を至急サウス国へと飛ばした…

ギルバートは今回サウス国に向かう兵士やベイカー達一行を集めると

「サウス国に行く旨は伝えた、これから出国する。みなも聞いてると思うがミヅキがサウス国に居るとの情報が入っているが…彼女が連れ去られたのか詳しい経緯はわかっていない、向こうの返答次第では戦う覚悟はあるがそれをしないでミヅキを連れ戻すことが一番だ…」

「何を甘い事を!あいつら一発ずつ殴らなきゃ気がすまん!」

ディムロスが不機嫌そうに睨むと

「第一、本人がそれを望まないだろう…」

ギルバートが困った様に笑う…

「自分が原因で戦争などおきたら悲しむのは本人だろう…それをよく考えて欲しい…特にそこの頭に血が昇っているお前たち!」

ギルバートがディムロス、ベイカー、アランを指さす。

「わかっとるわ!」

「……」

「チッ…」

「おい!舌打ちしてるのわかってるぞ!アラン!」

「はい…失礼致しました…しかし俺たちは抑えられても…外のあいつらはどうするんですか?」

アランがクイッと指を指すと…

ドッガーン!!!と城にまで振動が響く破壊音が聞こえる…

「これは…」

「シルバとプルシアとシンクが暴れてる…」

ベイカーが伝えると…

ヒュン……ドンッ!!!

ガタガタ…建物が揺れる。

「アイツらがいれば俺達いらないんじゃ無いか?」

アラン隊長が言うと…

「彼らがいるからこそこの人数でサウス国に乗り込めるんだ…しかし手網を握れるだろうか…」

心配そうにベイカー達を見ると

「そこら辺は考えがありますので…」

セバスが頷いた。






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