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便利グッズはシンパシー

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 「JR名古屋タカシマヤ」と書かれた地図上の大きな空白。この空白に、商店街2つ分を優に超える品揃えを持つ巨大デパートがあるのだ。僕は、その空白の一階エレベーターホールで地図を見ていた。
「英二、便利グッズってどこにあるかわかる?」
「便利グッズ便利グッズ……と」
 僕は地図の上を目線でなぞり、すぐにいくつものフロアにそれらしい売り場を見つけた。
「どんな便利グッズがほしいの?」
「とりあえず……杉山先輩、何がほしいですか?」
「私は……そうだね、キッチン用品と手芸の素材がほしいな」
「それは私もほしいので先に回りましょう。それが終わったら英二さん、何かほしい物は……」
「僕は鉱石を見たいです。和藤さんは何かほしい物ありますか?」
「私は雨具がほしいのですが……」
「おっ、同じ10階ですね」
「そうですか、なら平行して買いましょう。それが終わったら文房具コーナーに寄りたいのですが、いいですか?」
「そうだなあ……新型の文房具をチェックするかぁ」
「じゃあコースは決まりですね。6階、7階、10階、11階の順に回りましょう」
「英二さん、地図見るの得意ですね」
「いえいえそれほどでも」
「行くよ」
 優莉姉さんがエレベーターホールでエレベーターのボタンを押すと、1分10秒ほどでエレベーターがやってきた。6階のボタンを押すと、エレベーターはすぐに6階に着く。
「さて、キッチン用品はこの先です」
 優莉姉さんはキッチン用品コーナーに入り、便利グッズコーナーに入って目を輝かせた。
「すごい……」
 優莉姉さんは「リアルタイム生姜おろし」と書かれた商品をかごに入れた。
「あとはゴマすり器も捨てがたい……」
「あ、『大根おろしを作る皿』なんてどうです?」
「良いね、良いねぇ」
 優莉姉さんはさらに中央部の盛り上がった場所に穴のないおろし金がついた「大根おろしを作る皿」をかごに入れる。結局3種類の便利グッズをかごに入れた優莉姉さんは、レジに向かった。
「次は手芸……っと」
 優莉姉さんは手芸コーナーでも便利グッズのコーナーに入ったが、すぐに出てきた。
「まあいいや、次行くよ。英二、鉱石ってどれぐらいのがいいの?まさかとは思うけど水晶だとか言わないよね?」
「天青石かな」
「てんせいせき……?」
 優莉姉さんはスマホを取り出して打ち込んで調べたが、「転生石」というパワーストーンならぬパワーワードにたどり着いたようだった。
「転がる、生きる……?転生する……?」
「天に青なのでは……?」
 和藤さんは速やかに正解にたどり着いたようだ……と思ったら和藤さんは何も見ていない。
「え?天に青……?」
「そうだよ。和藤さん正解。鉱物のことよく知ってるんですね、和藤さん」
「いや……これは私がたまたま知ってただけなんですがね」
「謙遜しないで、和藤くん。和藤くんの知識はヤバいでしょ」
 僕は和藤さんに対する同情に似た対抗心と二人と一緒にエレベーターに乗った。
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