上 下
10 / 17

便利グッズはシンパシー

しおりを挟む
 「JR名古屋タカシマヤ」と書かれた地図上の大きな空白。この空白に、商店街2つ分を優に超える品揃えを持つ巨大デパートがあるのだ。僕は、その空白の一階エレベーターホールで地図を見ていた。
「英二、便利グッズってどこにあるかわかる?」
「便利グッズ便利グッズ……と」
 僕は地図の上を目線でなぞり、すぐにいくつものフロアにそれらしい売り場を見つけた。
「どんな便利グッズがほしいの?」
「とりあえず……杉山先輩、何がほしいですか?」
「私は……そうだね、キッチン用品と手芸の素材がほしいな」
「それは私もほしいので先に回りましょう。それが終わったら英二さん、何かほしい物は……」
「僕は鉱石を見たいです。和藤さんは何かほしい物ありますか?」
「私は雨具がほしいのですが……」
「おっ、同じ10階ですね」
「そうですか、なら平行して買いましょう。それが終わったら文房具コーナーに寄りたいのですが、いいですか?」
「そうだなあ……新型の文房具をチェックするかぁ」
「じゃあコースは決まりですね。6階、7階、10階、11階の順に回りましょう」
「英二さん、地図見るの得意ですね」
「いえいえそれほどでも」
「行くよ」
 優莉姉さんがエレベーターホールでエレベーターのボタンを押すと、1分10秒ほどでエレベーターがやってきた。6階のボタンを押すと、エレベーターはすぐに6階に着く。
「さて、キッチン用品はこの先です」
 優莉姉さんはキッチン用品コーナーに入り、便利グッズコーナーに入って目を輝かせた。
「すごい……」
 優莉姉さんは「リアルタイム生姜おろし」と書かれた商品をかごに入れた。
「あとはゴマすり器も捨てがたい……」
「あ、『大根おろしを作る皿』なんてどうです?」
「良いね、良いねぇ」
 優莉姉さんはさらに中央部の盛り上がった場所に穴のないおろし金がついた「大根おろしを作る皿」をかごに入れる。結局3種類の便利グッズをかごに入れた優莉姉さんは、レジに向かった。
「次は手芸……っと」
 優莉姉さんは手芸コーナーでも便利グッズのコーナーに入ったが、すぐに出てきた。
「まあいいや、次行くよ。英二、鉱石ってどれぐらいのがいいの?まさかとは思うけど水晶だとか言わないよね?」
「天青石かな」
「てんせいせき……?」
 優莉姉さんはスマホを取り出して打ち込んで調べたが、「転生石」というパワーストーンならぬパワーワードにたどり着いたようだった。
「転がる、生きる……?転生する……?」
「天に青なのでは……?」
 和藤さんは速やかに正解にたどり着いたようだ……と思ったら和藤さんは何も見ていない。
「え?天に青……?」
「そうだよ。和藤さん正解。鉱物のことよく知ってるんですね、和藤さん」
「いや……これは私がたまたま知ってただけなんですがね」
「謙遜しないで、和藤くん。和藤くんの知識はヤバいでしょ」
 僕は和藤さんに対する同情に似た対抗心と二人と一緒にエレベーターに乗った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ひいきが勝てません!

おくむらなをし
現代文学
サトルはプロ野球好きで、とある弱小チームの大ファン。 ある日、自分の行動で、贔屓のチームの勝ち負けが変わるのでは、と思い立つ。 そこから、彼の様々な試みが始まるのであった。 ◇この小説はフィクションです。全15話、完結済み。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【R15】母と俺 介護未満

あおみなみ
現代文学
主人公の「俺」はフリーライターである。 大好きだった父親を中学生のときに失い、公務員として働き、女手一つで育ててくれた母に感謝する気持ちは、もちろんないわけではないが、良好な関係であると言い切るのは難しい、そんな間柄である。 3人兄弟の中間子。昔から母親やほかの兄弟にも軽んじられ、自己肯定感が低くなってしまった「俺」は、多少のことは右から左に受け流し、何とかやるべきことをやっていたが…。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

拝啓ピアニスト

端喰 もず
青春
ソリストのホルン奏者とピアニストの物語です。(多分) アンサンブルの作品は沢山有るのにソロコンテストの作品がないので自分で作ることにしました。 ちまちまと進んでいきます(予定)。 作者自身楽器はホルンしか経験がないので、ほかの楽器の描写がおかしくなるかもしれません。 また、実体験を元にしているネタも多少あります 申し訳ありません。ご了承ください。 地名、学校名など創造した物と、現実にある地名がごちゃ混ぜになっています。ご注意ください。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...