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第45話 Side. サラ(5)
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「どぉしたんですかぁ?」
「も、もし……もし、ホルストを、聖女様にご無礼を働いた神官を追放すれば、我らが町の聖女様になっていただけますでしょうか?」
「えっ? えっとぉ……」
これって、この町に残ってほしいってことよね。
うーん。どうしよう? あたしもそのうちどこかで町を守る聖女様になろうと思ってたけど……なんかこの町、パッとしないのよねぇ。
「聖女様! クラインボフトはご覧のとおり、海辺の町でございます。今はまだ人口千人ほどの小さな町ではありますが、レグニツィア地方でも屈指の聖都ザンクト・ロザリンディアへと向かう貿易船も沖合を通航しています。もし聖女様さえいてくだされば、この町は今の何十倍にも大きくなることでしょう」
あー、そういうのもありよねぇ。現代知識チートで町を発展させるのも定番だし。
うーん、でもなぁ。
「そ、それに! 実は東の森で魔窟が発見されたのです! 聖女様が加護を授けてくださった冒険者たちがあの場にいたのも、魔窟への道を切り開くために魔物の駆除をしていたのです」
「えっとぉ、魔窟? って、なんですかぁ?」
「えっ!?」
な、何よ? しょうがないじゃない。いきなりこの世界に来たんだから、知ってるわけないでしょ?
「あのぉ、サラはぁ、神様がぁ、聖女にぃ、してくれてぇ、この世界にぃ、送ってくれたんですぅ」
「っ!? もしや聖女様は迷い人でいらっしゃるのですか?」
「迷い人?」
あ! いけない! つい素が出ちゃった!
あたしはこてんと首を傾げ、不思議そうな表情をしてみたわ。
「迷い人というのは、異世界からこちらの世界に迷い込んだ人々のことです」
あ、良かった。バレてなさそう。
「えっとぉ、サラはぁ、迷ってぇ、ないですよぉ? ちゃんとぉ、神様がぁ、聖女にぃ、なりなさいってぇ、送ってぇ、くれたんですよぉ?」
「……失礼ですが、聖女様は神のお言葉をお聞きになられたのですか?」
「聞いたっていうかぁ、お話しましたぁ」
「そのようなことが……」
何かしら? ダニエラさん、困ってそうね。あのイケメンさんも困ってるみたいだし……。
「えっとぉ、どぉしたんですかぁ?」
「いえ。神殿ではたとえ聖女様であっても神の声を聞くことはできないと教わりましたので、困惑していました」
「えー? そんなのぉ、嘘ですよぉ。あの神官さんですかぁ?」
「は、はい」
「サラもぉ、今はぁ、無理ですよぉ。でもぉ、神様とお話してぇ、お願いしたからぁ、サラはぁ、ここにぃ、いるんですよぉ」
「そうなのですね」
「えー、疑うんですかぁ? 悲しいですぅ」
「そ! そのようなことは! きっとホルストのやつが嘘を言っていたのでしょう」
「えへへ。分かってくれてぇ、うれしいでぇす」
あ、ホッとしたような顔してる。
あれ? それでなんの話だっけ?
「では、魔窟についてご説明しますね。魔窟とは――」
へぇ、そんな風になってるんだ。
「そぉなんですねぇ。魔窟のコア? の浄化はぁ、できますよぉ。それにぃ、聖杯があればぁ、結界もぉ、張れまぁす」
よく分かんないけど、その辺のやつは全部やり方、知ってるのよね。
これもきっと神様のおかげよね。さすが神様!
「で、でしたら! もしここが聖都になるのでしたら爆発的に発展することでしょう! どうか! どうか!」
んー、どうしようかしらねぇ? とりあえず、先送りでいっか。
「あのぉ、すぐにはぁ、決めれないからぁ、考えてみまぁす」
「ありがとうございます」
◆◇◆
一方その頃、クラインボフトの神殿とそれに隣接する町役場に面する中央広場に数百人もの男たちが集まっていた。男たちは二つの集団に分かれており、広場の中央でお互いに睨み合っている。
「神官様は無実だー!」
「ホルスト様を釈放しろー!」
「「「「「釈放しろ! 釈放しろ! 釈放しろー!」」」」」
一方の集団はそう主張し、シュプレヒコールを上げる。
「聖女様に無礼を働いたホルストを許すなー」
「ホルストを処刑しろー!」
「「「「「処刑しろ! 処刑しろ! 処刑しろー!」」」」」
もう一方はそうシュプレヒコールを上げる。
するとそれを聞いた擁護派が処刑派に突っかかる。
「何が聖女だ! 嘘をつくな! 偽物に決まってる!」
「いいや! 間違いなくあのお方は聖女様だ!」
「なんだと!? ホルスト様はこの町で誰よりも神様に詳しいお方なんだぞ! もし本当に聖女様なんだったら、ホルスト様を牢屋に入れるわけないだろうが!」
「何を言ってるんだ! ホルストのクソ野郎が聖女様に失礼なことをしたんだ!」
「そんなわけあるか!」
「いいや! そうに決まってる! 隣に住んでたユルゲンさんは末期の赤斑病だったのに、今日退院して帰ってきたんだぞ! 聖女様が救ってくれたらしいぞ!」
「なんだと!? 赤斑病のやつがなんで出歩いてんだ!」
「だから聖女様が治療してくださったんだよ!」
「嘘つくな! 末期の赤斑病が治るものか!」
「それが治ったんだよ。それこそ、聖女様がいらした動かぬ証拠ってやつだろうが!」
「うるせぇ! 嘘ついてんじゃねぇ!」
「なんだと!? やんのか!?」
「おう! やってやるよ!」
言い争いはついに殴り合いへと発展する。
こうしてサラの預かり知らぬところで、町の住人の数割を巻き込んだ大乱闘が発生したのだった。
================
次回更新は通常どおり、2024/03/20 (水) 18:00 を予定しております。
「も、もし……もし、ホルストを、聖女様にご無礼を働いた神官を追放すれば、我らが町の聖女様になっていただけますでしょうか?」
「えっ? えっとぉ……」
これって、この町に残ってほしいってことよね。
うーん。どうしよう? あたしもそのうちどこかで町を守る聖女様になろうと思ってたけど……なんかこの町、パッとしないのよねぇ。
「聖女様! クラインボフトはご覧のとおり、海辺の町でございます。今はまだ人口千人ほどの小さな町ではありますが、レグニツィア地方でも屈指の聖都ザンクト・ロザリンディアへと向かう貿易船も沖合を通航しています。もし聖女様さえいてくだされば、この町は今の何十倍にも大きくなることでしょう」
あー、そういうのもありよねぇ。現代知識チートで町を発展させるのも定番だし。
うーん、でもなぁ。
「そ、それに! 実は東の森で魔窟が発見されたのです! 聖女様が加護を授けてくださった冒険者たちがあの場にいたのも、魔窟への道を切り開くために魔物の駆除をしていたのです」
「えっとぉ、魔窟? って、なんですかぁ?」
「えっ!?」
な、何よ? しょうがないじゃない。いきなりこの世界に来たんだから、知ってるわけないでしょ?
「あのぉ、サラはぁ、神様がぁ、聖女にぃ、してくれてぇ、この世界にぃ、送ってくれたんですぅ」
「っ!? もしや聖女様は迷い人でいらっしゃるのですか?」
「迷い人?」
あ! いけない! つい素が出ちゃった!
あたしはこてんと首を傾げ、不思議そうな表情をしてみたわ。
「迷い人というのは、異世界からこちらの世界に迷い込んだ人々のことです」
あ、良かった。バレてなさそう。
「えっとぉ、サラはぁ、迷ってぇ、ないですよぉ? ちゃんとぉ、神様がぁ、聖女にぃ、なりなさいってぇ、送ってぇ、くれたんですよぉ?」
「……失礼ですが、聖女様は神のお言葉をお聞きになられたのですか?」
「聞いたっていうかぁ、お話しましたぁ」
「そのようなことが……」
何かしら? ダニエラさん、困ってそうね。あのイケメンさんも困ってるみたいだし……。
「えっとぉ、どぉしたんですかぁ?」
「いえ。神殿ではたとえ聖女様であっても神の声を聞くことはできないと教わりましたので、困惑していました」
「えー? そんなのぉ、嘘ですよぉ。あの神官さんですかぁ?」
「は、はい」
「サラもぉ、今はぁ、無理ですよぉ。でもぉ、神様とお話してぇ、お願いしたからぁ、サラはぁ、ここにぃ、いるんですよぉ」
「そうなのですね」
「えー、疑うんですかぁ? 悲しいですぅ」
「そ! そのようなことは! きっとホルストのやつが嘘を言っていたのでしょう」
「えへへ。分かってくれてぇ、うれしいでぇす」
あ、ホッとしたような顔してる。
あれ? それでなんの話だっけ?
「では、魔窟についてご説明しますね。魔窟とは――」
へぇ、そんな風になってるんだ。
「そぉなんですねぇ。魔窟のコア? の浄化はぁ、できますよぉ。それにぃ、聖杯があればぁ、結界もぉ、張れまぁす」
よく分かんないけど、その辺のやつは全部やり方、知ってるのよね。
これもきっと神様のおかげよね。さすが神様!
「で、でしたら! もしここが聖都になるのでしたら爆発的に発展することでしょう! どうか! どうか!」
んー、どうしようかしらねぇ? とりあえず、先送りでいっか。
「あのぉ、すぐにはぁ、決めれないからぁ、考えてみまぁす」
「ありがとうございます」
◆◇◆
一方その頃、クラインボフトの神殿とそれに隣接する町役場に面する中央広場に数百人もの男たちが集まっていた。男たちは二つの集団に分かれており、広場の中央でお互いに睨み合っている。
「神官様は無実だー!」
「ホルスト様を釈放しろー!」
「「「「「釈放しろ! 釈放しろ! 釈放しろー!」」」」」
一方の集団はそう主張し、シュプレヒコールを上げる。
「聖女様に無礼を働いたホルストを許すなー」
「ホルストを処刑しろー!」
「「「「「処刑しろ! 処刑しろ! 処刑しろー!」」」」」
もう一方はそうシュプレヒコールを上げる。
するとそれを聞いた擁護派が処刑派に突っかかる。
「何が聖女だ! 嘘をつくな! 偽物に決まってる!」
「いいや! 間違いなくあのお方は聖女様だ!」
「なんだと!? ホルスト様はこの町で誰よりも神様に詳しいお方なんだぞ! もし本当に聖女様なんだったら、ホルスト様を牢屋に入れるわけないだろうが!」
「何を言ってるんだ! ホルストのクソ野郎が聖女様に失礼なことをしたんだ!」
「そんなわけあるか!」
「いいや! そうに決まってる! 隣に住んでたユルゲンさんは末期の赤斑病だったのに、今日退院して帰ってきたんだぞ! 聖女様が救ってくれたらしいぞ!」
「なんだと!? 赤斑病のやつがなんで出歩いてんだ!」
「だから聖女様が治療してくださったんだよ!」
「嘘つくな! 末期の赤斑病が治るものか!」
「それが治ったんだよ。それこそ、聖女様がいらした動かぬ証拠ってやつだろうが!」
「うるせぇ! 嘘ついてんじゃねぇ!」
「なんだと!? やんのか!?」
「おう! やってやるよ!」
言い争いはついに殴り合いへと発展する。
こうしてサラの預かり知らぬところで、町の住人の数割を巻き込んだ大乱闘が発生したのだった。
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次回更新は通常どおり、2024/03/20 (水) 18:00 を予定しております。
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