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第44話 Side. サラ(4)
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「はぁい。これでもぉ、大丈夫でぇす」
聖女アイドルスマイル、決まったわ。
ふふふ。みんなあたしに跪いて崇めてくるわ。
でも、当然よね? だってあたし、病院にいた患者を全員治してやったんだから。
ほらほら、もっと感謝しなさい?
それで歴代最高の聖女サラ様の評判を伝えるのよ。
あっと、でもその前に。
「ただぁ、サラぁ、どぉしてもぉ、言いたいことがぁ、ありまぁす」
ふふ、みんなあたしの言葉を真剣に聞いてるわ。
ああ、これよ。これこれ。こういうのよ。
「あのぉ、病院はぁ、ちゃんとぉ、キレイにぃ、してくださいっ! それからぁ、おうちに帰ってもぉ、キレイにぃ、してくださぁい。そうじゃないとぉ、またぁ、病気にぃ、なっちゃいますよぉ。特にぃ、おトイレはぁ、お部屋にぃ、置いちゃぁ、ダメですよぉ」
ああ、この口調! こういうのはやりづらいわね。でももうこのキャラで始めちゃったし、今さら引くに引けないわ。
「みなさぁん、お願いしまぁす」
◆◇◆
ふう。患者さんたち、みんな帰ったわ。
大変だったけど、いい気分だわ。みんなあたしのこと、神様みたいに崇拝してくれるし。
ホンット、気持ちいいわぁ。
神様、あたしをこの世界に転生させてくれてありがとうございます。聖女にしてくれてありがとうございます。
あたし、ちゃんとこっちでしっかり聖女やって、たくさんのイケメンと素敵な恋をします!
って、あら? 誰か来たわね。
あ! 女の人だ。なんかそばかすもあって肌、汚いし、地味顔ね。ちゃんとお手入れしたほうがいいわよ?
でも、着てるドレスはちょっと可愛いかな。
っていうか、その隣のすっごいイケメンの兵士は誰?
「地上を照らす太陽、聖女サラ様にお目にかかれ光栄に存じます。わたくしはクラインボフトの町長を務めておりますダニエラと申します」
ふーん。ダニエラさんって言うんだ。町長が女の人だなんて、やっぱりこの世界は女のための世界ね。
っていうか、スカート摘まむそのキツそうな格好、何?
イケメンさんはダニエラさんの後ろで胸に手を当てて跪いているわね。
うーん。でも町長だっていうし、イケメンさんは部下なのかな? だとするとあたしがイケメンさんに話しかけるのも変よね?
それに初対面の男にあんまりガツガツ行ったら、おかしな女って思われちゃうかもしれないし……。
あ! 考えててダニエラさんのこと忘れてた。
って、すごいわね。ずっとその格好でいたんだ。キツくないのかしら?
そんなに体格いいほうじゃないのに、もしかしてダニエラさんって何かスポーツでもやってるのかな?
あっと、このまま待たせたら可哀想よね。
「はじめましてぇ。ダニエラさぁん、もっと楽にしてくださぁい」
「ありがとうございます」
あれ? ダニエラさん、もしかして緊張してる?
「それでぇ、どぉしたんですかぁ? 何かぁ、あったんですかぁ?」
「い、いえ。聖女様がクラインボフトにお越しになられたと聞き、ご挨拶に参上いたしました」
「あっ! そぉだったんですねぇ。わざわざぁ、ありがとぉございまぁす」
「いえ……」
あはは、ダニエラさん、本当に緊張してるみたい。
でもダニエラさん、まだ二十歳そこそこよね? それで町長だなんて、もしかしてすごいやり手だったりして?
そう思って聖女アイドルスマイルで見てるんだけど、そうは見えないわね。ものすごい緊張してて、ガチガチなのが丸わかり。
「ダニエラさぁん、そんなに緊張しないでくださいよぉ」
「は、はい。何分、わたくしが町長のときに聖女様にお越しいただけるとは夢にも思っておらず……」
「そぉですかぁ? でもぉ、サラはぁ、サラですからぁ、もっとぉ、気楽にぃ、お話ぃ、しましょおよぉ」
「は、はい」
「じゃあ、椅子にぃ、座ってぇ、えっとぉ……」
って、この部屋、椅子がないじゃない。さっきまで入院患者が寝てたベッド……はいくらなんでもダメよね?
「で、では、町長公邸にお越しいただけませんか? 精一杯おもてなしをさせていただきます」
「ほんとぉですかぁ? ぜひぃ」
「ありがとうございます! では、どうぞこちらへ」
◆◇◆
ふーん。ここが町長こーてーなんだ。ところでこーてーって何?
よく分かんないけど、要するにダニエラさんの家ってことよね?
それにしては、なんかショボい家ね。町長の家がこんなにショボいってことは、もしかしてここって田舎なのかしら?
それでも馬車の座席はまあ我慢できるレベルだったし、このソファーもまあまあね。ちょっとぼろっちいけど。
「聖女サラ様、病人たちをお救いくださりありがとうございました。また、神官のホルストが大変な無礼を働いたとお聞きしました。大変申し訳ございませんでした」
あらら? 座るなりいきなりそんな話?
「えっとぉ、困ってる人をぉ、助けるのはぁ、当然のぉ、ことですぅ。サラはぁ、聖女ぉ、ですからぁ」
あれ? ダニエラさん? なんで涙ぐんでるの?
あ! もしかして、治してあげた人の中に家族でもいたのかな?
ふふふ、いいのよ? このあたしにどんどん感謝しなさい?
あ、でもあのキモオヤジはムカつくわね。
「でもぉ、あの神官さんはぁ、サラぁ、嫌いですっ!」
「……」
あれ? ダニエラさん、なんでそんなに緊張してるの?
だって、病人じゃない人を治療しろとか言ってきたのよ?
それに神官のくせにデブで脂ぎってて超キモいし。
あ……もしかしてあのキモオヤジ、神官だからって権力があって、町長でも逆らえない感じなの?
うぇぇ、あんなキモオヤジがトップの町とか、絶対嫌だわ。
「せ、聖女様! 恐れながら!」
あれ? なんかダニエラさんが焦りだしたんだけど?
================
次回更新は通常どおり、2024/03/19 (火) 18:00 を予定しております。
聖女アイドルスマイル、決まったわ。
ふふふ。みんなあたしに跪いて崇めてくるわ。
でも、当然よね? だってあたし、病院にいた患者を全員治してやったんだから。
ほらほら、もっと感謝しなさい?
それで歴代最高の聖女サラ様の評判を伝えるのよ。
あっと、でもその前に。
「ただぁ、サラぁ、どぉしてもぉ、言いたいことがぁ、ありまぁす」
ふふ、みんなあたしの言葉を真剣に聞いてるわ。
ああ、これよ。これこれ。こういうのよ。
「あのぉ、病院はぁ、ちゃんとぉ、キレイにぃ、してくださいっ! それからぁ、おうちに帰ってもぉ、キレイにぃ、してくださぁい。そうじゃないとぉ、またぁ、病気にぃ、なっちゃいますよぉ。特にぃ、おトイレはぁ、お部屋にぃ、置いちゃぁ、ダメですよぉ」
ああ、この口調! こういうのはやりづらいわね。でももうこのキャラで始めちゃったし、今さら引くに引けないわ。
「みなさぁん、お願いしまぁす」
◆◇◆
ふう。患者さんたち、みんな帰ったわ。
大変だったけど、いい気分だわ。みんなあたしのこと、神様みたいに崇拝してくれるし。
ホンット、気持ちいいわぁ。
神様、あたしをこの世界に転生させてくれてありがとうございます。聖女にしてくれてありがとうございます。
あたし、ちゃんとこっちでしっかり聖女やって、たくさんのイケメンと素敵な恋をします!
って、あら? 誰か来たわね。
あ! 女の人だ。なんかそばかすもあって肌、汚いし、地味顔ね。ちゃんとお手入れしたほうがいいわよ?
でも、着てるドレスはちょっと可愛いかな。
っていうか、その隣のすっごいイケメンの兵士は誰?
「地上を照らす太陽、聖女サラ様にお目にかかれ光栄に存じます。わたくしはクラインボフトの町長を務めておりますダニエラと申します」
ふーん。ダニエラさんって言うんだ。町長が女の人だなんて、やっぱりこの世界は女のための世界ね。
っていうか、スカート摘まむそのキツそうな格好、何?
イケメンさんはダニエラさんの後ろで胸に手を当てて跪いているわね。
うーん。でも町長だっていうし、イケメンさんは部下なのかな? だとするとあたしがイケメンさんに話しかけるのも変よね?
それに初対面の男にあんまりガツガツ行ったら、おかしな女って思われちゃうかもしれないし……。
あ! 考えててダニエラさんのこと忘れてた。
って、すごいわね。ずっとその格好でいたんだ。キツくないのかしら?
そんなに体格いいほうじゃないのに、もしかしてダニエラさんって何かスポーツでもやってるのかな?
あっと、このまま待たせたら可哀想よね。
「はじめましてぇ。ダニエラさぁん、もっと楽にしてくださぁい」
「ありがとうございます」
あれ? ダニエラさん、もしかして緊張してる?
「それでぇ、どぉしたんですかぁ? 何かぁ、あったんですかぁ?」
「い、いえ。聖女様がクラインボフトにお越しになられたと聞き、ご挨拶に参上いたしました」
「あっ! そぉだったんですねぇ。わざわざぁ、ありがとぉございまぁす」
「いえ……」
あはは、ダニエラさん、本当に緊張してるみたい。
でもダニエラさん、まだ二十歳そこそこよね? それで町長だなんて、もしかしてすごいやり手だったりして?
そう思って聖女アイドルスマイルで見てるんだけど、そうは見えないわね。ものすごい緊張してて、ガチガチなのが丸わかり。
「ダニエラさぁん、そんなに緊張しないでくださいよぉ」
「は、はい。何分、わたくしが町長のときに聖女様にお越しいただけるとは夢にも思っておらず……」
「そぉですかぁ? でもぉ、サラはぁ、サラですからぁ、もっとぉ、気楽にぃ、お話ぃ、しましょおよぉ」
「は、はい」
「じゃあ、椅子にぃ、座ってぇ、えっとぉ……」
って、この部屋、椅子がないじゃない。さっきまで入院患者が寝てたベッド……はいくらなんでもダメよね?
「で、では、町長公邸にお越しいただけませんか? 精一杯おもてなしをさせていただきます」
「ほんとぉですかぁ? ぜひぃ」
「ありがとうございます! では、どうぞこちらへ」
◆◇◆
ふーん。ここが町長こーてーなんだ。ところでこーてーって何?
よく分かんないけど、要するにダニエラさんの家ってことよね?
それにしては、なんかショボい家ね。町長の家がこんなにショボいってことは、もしかしてここって田舎なのかしら?
それでも馬車の座席はまあ我慢できるレベルだったし、このソファーもまあまあね。ちょっとぼろっちいけど。
「聖女サラ様、病人たちをお救いくださりありがとうございました。また、神官のホルストが大変な無礼を働いたとお聞きしました。大変申し訳ございませんでした」
あらら? 座るなりいきなりそんな話?
「えっとぉ、困ってる人をぉ、助けるのはぁ、当然のぉ、ことですぅ。サラはぁ、聖女ぉ、ですからぁ」
あれ? ダニエラさん? なんで涙ぐんでるの?
あ! もしかして、治してあげた人の中に家族でもいたのかな?
ふふふ、いいのよ? このあたしにどんどん感謝しなさい?
あ、でもあのキモオヤジはムカつくわね。
「でもぉ、あの神官さんはぁ、サラぁ、嫌いですっ!」
「……」
あれ? ダニエラさん、なんでそんなに緊張してるの?
だって、病人じゃない人を治療しろとか言ってきたのよ?
それに神官のくせにデブで脂ぎってて超キモいし。
あ……もしかしてあのキモオヤジ、神官だからって権力があって、町長でも逆らえない感じなの?
うぇぇ、あんなキモオヤジがトップの町とか、絶対嫌だわ。
「せ、聖女様! 恐れながら!」
あれ? なんかダニエラさんが焦りだしたんだけど?
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