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砂漠の国
第七章第5話 皇女サラ
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2020/12/03 誤字を修正しました
================
「なっ!? ブラックレインボー帝国の第一皇女!?」
クリスさんが驚きの声を上げると共に目つきが険しくなり警戒をしている。
「え、ええと。それで、そのブラックレインボー帝国の第一皇女がどうしてこんなところで漂流していたでござるか? サラ殿の国はホワイトムーン王国と戦争中でござろう?」
「……はい。全ては我が愚兄アルフォンソの所業です。申し訳ございません」
サラさんは顔を伏せ、悲しそうな表情でそう私たちに謝ってきた。
「どういうことでござるか?」
サラさんは少し黙り込み、それから顔を上げると決意したかのような表情で口を開いた。
「兄は、父を殺して帝位を簒奪しました。そして魔の者と手を組み、我が国の若者たちに邪悪なる秘術をかけて人間では無いおぞましい何かに変えてしまいました。その秘術を受けた者はまるで、アンデッドのように殺されても蘇るのです」
なるほど? ということはあの兵士はブラックレインボー帝国の技術ではなくその魔の者とやらの秘術で作られたってことなのかな?
ということは、レッドスカイ帝国での死なない獣もその魔の者とやらの仕業ってことなのかな?
「それを咎めたわたしはアルフォンソに幽閉され、秘術を施されるはずだったのですが、一部の忠臣により助け出されたのです。そして船で脱出を試みたのですが……」
「つまり、逃げるのに船を使い、そこを撃沈されたということでござるな?」
「……はい」
そう言ってサラさんは少し俯いた。そして顔を上げるとまっすぐに私を見て、意志のこもった力強い視線を向けてくる。
「聖女フィーネ・アルジェンタータ様。お願いです。どうか我が故郷を、ブラックレインボー帝国を魔の手からお救いください」
うーん、なるほど。そういう事なら手を貸すべきだよね。ユーグさんが向こうに連れ去られたのならどうせ行くことにはなるんだろうし、水先案内人がいた方が良いだろう。
「わかりました。お手伝いさせてください」
「あ、ありがとうございます!」
そういってサラさんは立ち上がる。
「神よ! お導きに感謝します!」
そうして何やら女性にしてはしっかりとついているムキムキな筋肉をピクピクさせながらマッスルポーズを取っている。
ん? いや? まさか?
これが向こうの国のお祈りのポーズだったりするのか?
「え、ええと、か、かみのみこころのままに?」
すると更にサラさんがポージングを変えて筋肉を見せつけてきた。力こぶがピクピクしてる。
す、すごい、けど……どうしよう。変態にしか見えない。
「サラ皇女殿下、そのくらいにして頂けませんか。我が国とは流儀が違う故、フィーネ様が戸惑っておられる」
「あ、これは失礼いたしました。聖女様、これは我が国での祈りのやり方なのです」
「は、はぁ」
それ、絶対祈ってないよね? むしろ筋肉見せつけてるよね?
私としては何とも納得がいかないが、どうやらそういうことらしい。
こうして私たちはひょんなことから戦争相手のブラックレインボー帝国の第一皇女様を保護したのだった。
****
「それで、聖女様は敵国の第一皇女様をお助けになられたんですかい? はぁ、全く」
私たちが事の次第を船長さんに報告すると、こう言われて大げさにため息を疲れてしまった。
「余計な慈悲など起こさない様にとザッカーラ侯爵が仰っていたでしょう? 覚えてらっしゃいますか?」
船長さんは恨みがましくぶつぶつと文句を言っ来ているが、海の上では遭難者を救助するのが当たり前なんじゃないのかな?
少しイラッとしたので私は船長さんに言ってやった。
「そこまで言うなら分かりました。サラさんは私の保護した女性です。食事も私が全て用意しますし、必要なら船賃も出します」
「い、いえ。ですが……」
「私は遭難している人を見つけたら助けるのが人として当たり前の行動だと思いますけどね」
そんな偉そうなことを言っている私は吸血鬼なわけだけどね。
「船長殿、フィーネ様は聖女であらせられる。聖女とはこのように弱き者や困っている者を見捨てることなどなさらない。だからこそ聖女と呼ばれ人々から敬われ、神に、そして聖剣に選ばれるのだ」
クリスさんが船長さんを窘めるようそう言う。
「で、ですが……」
船長さんはなお不服そうだ。顔にしっかり不満と書いてあるかのような表情をしている。
そんなに敵国の皇女様を助けたのが気に入らないのかね?
普通に考えればサラさんが国を取り返す手助けをしてあげれば仲良くできそうな気がするけど、ダメなのかな?
それに食糧だって私が全部収納に入れて運んでいるんだし、今更人数が一人増えたところでどうという事はないと思うんだけどな。
するとクリスさんがいつもの要求をのませるときの口調で言った。
「船長殿、聖女であるフィーネ様がサラ皇女殿下は自らの保護下にあるとおっしゃったのだ。その意味は分かるな?」
「……はい」
すると船長さんは不服そうではありながらもあっさりと引き下がったのだった。
うーん? ここまでイヤそうな反応をされるってことはもしかして私、何かやらかした?
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「なっ!? ブラックレインボー帝国の第一皇女!?」
クリスさんが驚きの声を上げると共に目つきが険しくなり警戒をしている。
「え、ええと。それで、そのブラックレインボー帝国の第一皇女がどうしてこんなところで漂流していたでござるか? サラ殿の国はホワイトムーン王国と戦争中でござろう?」
「……はい。全ては我が愚兄アルフォンソの所業です。申し訳ございません」
サラさんは顔を伏せ、悲しそうな表情でそう私たちに謝ってきた。
「どういうことでござるか?」
サラさんは少し黙り込み、それから顔を上げると決意したかのような表情で口を開いた。
「兄は、父を殺して帝位を簒奪しました。そして魔の者と手を組み、我が国の若者たちに邪悪なる秘術をかけて人間では無いおぞましい何かに変えてしまいました。その秘術を受けた者はまるで、アンデッドのように殺されても蘇るのです」
なるほど? ということはあの兵士はブラックレインボー帝国の技術ではなくその魔の者とやらの秘術で作られたってことなのかな?
ということは、レッドスカイ帝国での死なない獣もその魔の者とやらの仕業ってことなのかな?
「それを咎めたわたしはアルフォンソに幽閉され、秘術を施されるはずだったのですが、一部の忠臣により助け出されたのです。そして船で脱出を試みたのですが……」
「つまり、逃げるのに船を使い、そこを撃沈されたということでござるな?」
「……はい」
そう言ってサラさんは少し俯いた。そして顔を上げるとまっすぐに私を見て、意志のこもった力強い視線を向けてくる。
「聖女フィーネ・アルジェンタータ様。お願いです。どうか我が故郷を、ブラックレインボー帝国を魔の手からお救いください」
うーん、なるほど。そういう事なら手を貸すべきだよね。ユーグさんが向こうに連れ去られたのならどうせ行くことにはなるんだろうし、水先案内人がいた方が良いだろう。
「わかりました。お手伝いさせてください」
「あ、ありがとうございます!」
そういってサラさんは立ち上がる。
「神よ! お導きに感謝します!」
そうして何やら女性にしてはしっかりとついているムキムキな筋肉をピクピクさせながらマッスルポーズを取っている。
ん? いや? まさか?
これが向こうの国のお祈りのポーズだったりするのか?
「え、ええと、か、かみのみこころのままに?」
すると更にサラさんがポージングを変えて筋肉を見せつけてきた。力こぶがピクピクしてる。
す、すごい、けど……どうしよう。変態にしか見えない。
「サラ皇女殿下、そのくらいにして頂けませんか。我が国とは流儀が違う故、フィーネ様が戸惑っておられる」
「あ、これは失礼いたしました。聖女様、これは我が国での祈りのやり方なのです」
「は、はぁ」
それ、絶対祈ってないよね? むしろ筋肉見せつけてるよね?
私としては何とも納得がいかないが、どうやらそういうことらしい。
こうして私たちはひょんなことから戦争相手のブラックレインボー帝国の第一皇女様を保護したのだった。
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「それで、聖女様は敵国の第一皇女様をお助けになられたんですかい? はぁ、全く」
私たちが事の次第を船長さんに報告すると、こう言われて大げさにため息を疲れてしまった。
「余計な慈悲など起こさない様にとザッカーラ侯爵が仰っていたでしょう? 覚えてらっしゃいますか?」
船長さんは恨みがましくぶつぶつと文句を言っ来ているが、海の上では遭難者を救助するのが当たり前なんじゃないのかな?
少しイラッとしたので私は船長さんに言ってやった。
「そこまで言うなら分かりました。サラさんは私の保護した女性です。食事も私が全て用意しますし、必要なら船賃も出します」
「い、いえ。ですが……」
「私は遭難している人を見つけたら助けるのが人として当たり前の行動だと思いますけどね」
そんな偉そうなことを言っている私は吸血鬼なわけだけどね。
「船長殿、フィーネ様は聖女であらせられる。聖女とはこのように弱き者や困っている者を見捨てることなどなさらない。だからこそ聖女と呼ばれ人々から敬われ、神に、そして聖剣に選ばれるのだ」
クリスさんが船長さんを窘めるようそう言う。
「で、ですが……」
船長さんはなお不服そうだ。顔にしっかり不満と書いてあるかのような表情をしている。
そんなに敵国の皇女様を助けたのが気に入らないのかね?
普通に考えればサラさんが国を取り返す手助けをしてあげれば仲良くできそうな気がするけど、ダメなのかな?
それに食糧だって私が全部収納に入れて運んでいるんだし、今更人数が一人増えたところでどうという事はないと思うんだけどな。
するとクリスさんがいつもの要求をのませるときの口調で言った。
「船長殿、聖女であるフィーネ様がサラ皇女殿下は自らの保護下にあるとおっしゃったのだ。その意味は分かるな?」
「……はい」
すると船長さんは不服そうではありながらもあっさりと引き下がったのだった。
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