異世界アウトレンジ ーワイルドハンター、ギデ世界を狩るー

心絵マシテ

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百二十六話

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「ひゅ~う。おっかねぇ―攻撃だな! だが、それでいい」

 焦げついた掌を振るファルゴは、歓喜の口笛を鳴らす。
 生粋のバトルジャンキ―、そうとしか言いようのない闘争心の塊に、つけ入る隙などあるのだろうか?

「ギデ君?」

 彼の変化に、カナッペが真っ先に気づいた。
 笑っていた……渾身の一撃をしのがれ、ジリ貧状態だというのにギデオン自身も、この状況を愉しんでいた。

「まったく、いつ以来だろうな……全力でやり合うのは」バハムートを解除しながら態勢をなおすハンター。

「へっ、テメェ―もイケる口か? これだ! 命を賭けて拳を振るうこの瞬間こそが、生を強く感じることができる」暴君は興奮冷めやらぬ様子で豪語する。

「そして拳をくらうことで、ソイツの生き様が伝わってくる。もっとも……そう易々、殴られるつもりもないがな」

「上々だ。弱肉強食なんて、原子的なもんじゃねぇー、闘争コイツは火花だ!! 無味乾燥なセカイから脱するための唯一無二の方法。俺達から散らばる生命の火花こそが、モノクロの景色に彩りを与える!!」

 二ッと口元を広げた、ファルゴがギデオンの視界から消えた。

「面倒な縮地法だな!」

「捉えたぜ、パルサーディノ二クス!!!」

 捕食者が生爪をたてる。
 命を刈り取ろうとする魔手から蒼白いプラズマが放出された。
 槍の穂先のように細長く鋭い一撃がギデオンの後ろ首を串刺しにしようとする。

「ハイドアンドシーク」

 敵の攻撃に合わせ、ハンターである彼は銃口を後ろに向け、即座にの左脇に差し込んだ。
 ほんの一秒、手短なアクションとともに光弾が暴発しファルゴの視界を奪った。

「くううう!! 魔力の波長を狂わせたのか!?」

 視覚情報を遮断したのにも関わらずプラズマの槍がギデオンの腕をかすめた。
 切り裂かれる痛みよりも全身を貫くしびれに意識が飛びかけた。
 それでも、力の限り両足で踏ん張り、ジャンクショットを撃ち込んだ。
 何発も何発も、持てる力のすべてを弾丸に変換し近距離から発砲し続ける。

 今しかなかった。ここでファルゴを倒せなければ、スコルの魔力が尽きてしまう。

「悪くない、悪くはないが……貧弱すぎて、眠くなるわ!!」

 ハチの巣にされた常態でありながらもダイノハンマーが発動する。
 振り落とされる拳、たった一発で形勢逆転した。

「ガハッ…………グウウウウウウゥ――――!!」苦痛にうめくギデオン。

 全身、バラバラになりそうなほどの衝撃が襲ってきた。
 膝を笑わせ、身体をふらつかせているトコロに、非情な頭突きが叩きつけられた。
 トリケラホーン――頭蓋骨が粉々になりそうなほどの破壊力のまえには、誰しも無力に等しい。
 意識混濁のまま、ギデオンは沈黙してしまった。
 額から血を垂れ流したまま、仁王立ちになっている。

「足りねぇー!! 俺と小僧、テメェ―には大きく差がある。それが何か分かるか!? すべてを破壊しようとするだ。人は無意識に制限をかける、それこそ自己保身のために! 防衛本能ではあるも、その線引きが限界突破の邪魔をしてくる……制限の中に埋もれているテメェ―も所詮は人の子だったということだ!!」

 砂地を足で蹴り、捕食者が務めを果たそうとする。
 敗北者への引導。トドメを撃ち込むべくギデオンの前まで歩いてくる。

「何のつもりだ……女?」

「これ以上、彼に手出ししないで!! もう決着はついたはずよ、乱暴は止めて」

カナッペが彼の前に立ち塞がっていた。

「勇ましさだけは、一人前だな。だが、その願いは聞けねぇ―な。コイツとは遊びでなく命のやり取りをしていたんだ! 取るべきモノはしっかり取らないとケジメがつかねぇ―んだよ。 どけ!」

「退かない! 私はアンタの暴力なんかに屈したりしない。逃げたら最後よ、ずっと怯えていなければならない……自身の弱さに」

「あん? わけの分からないことを……だったらテメェ―ごとぶっ飛ばしてやるぜ!」

 対峙するカナッペとファルゴ。
 両者は一歩も引かずに睨み合いを続けていた。
 彼女の決意が本物であると察した暴君は、ためらわず拳を構えた。
 両手を広げたまま、震える目蓋を閉じるカナッペ。
 その後ろでは、失神していたはずの彼の手が魔銃の引き金を引いた。

 ズダン! と自身の胸元に撃ち込む。
 その音に、彼女は飛び上がりファルゴは目を見開いていた。

「ギデ君!? なんてことを!! アンタ、どうかしているわ……」

「空砲だ。たいした……ことは、ない! ああっ、イテェェェェ――! けど、目は覚めた」

「そうだ……クククッ、ハハッ!! それでいい!! もっと感じさせてくれよ、オメェーの瀬戸際を!」

「死に際の間違いじゃないか? まぁ、いい。お前には、もっと素敵なモノを見せてやる」

 そう言いながらギデオンが、懐からおもむろに取り出したのは一本の万年筆だった。
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