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七十四話
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二階のカフェに上がると、何やら人だかりがしていた。
脇に設置されたショーステージ。
そこでは男女とわず生徒たちが歓声を上げていた。
野次馬根性というわけではない。
やはり、気になるのはバードウォッチングというワード。
生徒の真後ろに立ち並び、覘いてみる。
自作したであろう。
手作り感漂う、舞台ステージ。
小さなステップの上では、一人の女子生徒がマイク片手に元気よく飛び跳ねていた。
「皆さん、おまたせぇ! これより、幸運の使い魔ことキュピちゃんによる幸福診断はじまるよ~! 今回のバードウォッチングでラッキースターに選ばれるのは、だれか!? 皆も気になるぅ? 気になっちゃうよねぇー。それでは、キュピちゃん! 今回もヨロシクピーン!」
進行役を務める女子生徒の合図で、ステージ端に置かれていたスタンドが中央に運ばれてきた。
どうやら、鳥カゴを吊るしているみたいだ。
表面に覆いかぶさる布の合間から、羽音が聞こえる。
バッ!
かけられていた布が取り払われ、カゴが開かれる。
大きく翼を伸ばす、その姿に「おおっ――――」と生徒たちが沸き立つ。
金色の羽毛に覆われた冠羽を持つオウム。
この鳥がショーの主役だ。
幸運の使い魔と呼称されるだけあって艶やか金色が神々しく、いかにもご利益がありそうだ。
今から、この鳥を使って何を始めるのか?
ギデオンの興味はその一点に注がれていた。
「ねぇ、キュピちゃん? 今週は、どんな人が一番、キラキラしているかなぁ~!?」
「キュピちゃん、キュピちゃん。ねぇ~知っている? お父さん?」
「いやいや、お父さんは此処に居ないからね。あと、私の真似はいいから」
「笑……お~い!!」
「待てよ、そこでツッコミ受けるの!? それも違うからぁ~」
「チガウと言われば、ソンナ時期もありましたな~、プルン」
「うん! 何時の話は知らないけど、キュピちゃんには、もう誰か分かったみたいだね!!」
「マジ、感謝。我、勘弁!!」
場を盛り上げるパフォーマンスの一貫なのだろう。
女子生徒とオウムで会話の応酬が始まる。
多分、このショー目的で見に来ている生徒もいるはずだ。
こなれた感じで、場を面白おかしくする彼らの会話や身振り手振りは、それだけで見ごたえがある。
辺りからドッと押し寄せてくる笑いが絶えることはない。
「ん、もう! そろそろ真面目にやる。いい?」
「はい!」
「い、っくよ――――!! 運命よ、飛び立て! 幸運が舞い降りたアナタには、素敵な一週間が訪れるでしょう」
相方の手元から飛び立つ金色のオウム、キュピちゃん。
両翼を広げ集まった生徒たちの頭上を旋回する。
「なるほど、そういう事か」
天上を見上げながら、ギデオンは確信に至った。
これは、生徒たちの間で流行っている占いの類だと。
実際のご利益はどれほどの物かは知らない。
恐らく、選ばれた者は一定の期間、幸運が享受されるといったものだと推察される。
キュピちゃんが近づいてくる度に、ワッと興奮する生徒たち。
その熱気にあてられた彼は、軽く眩暈を覚えた。
バサッ、バサッ! と羽ばたきが耳をかすめる。
見ると、幸運の鳥はギデオンの頭上で止まろうとしている。
「僕……なのか? そんなの都合が良過ぎないか……」
固唾を飲む彼をスルーして、キュピちゃんは隣にいた女子生徒の肩にピタリと、とまった。
そりゃ、そうだと頭を低くし、こみ上げてくる笑いをこらえる。
都合良く事が運ぶことなど滅多にあるモノじゃない。
誰だってそうだ、幸運が間近に迫っていると知れば淡くも期待はしてしまう。
自身にも、そんな欲が残されていた事にギデオンは失笑する。
人間臭さがあるという事に、少し喜びを感じていた。
「あわわああ! ワタクシですか!?」
隣にいた女子が目を丸くしていた。
まさか、自分が選ばれることなど考えてもみなかったのだろう。
周囲の生徒たちが拍手喝采する中で一人、顔を真っ赤にし俯く。
「決定! 決定! オメデトー、アリガト―」
女子生徒は気持ちの切り替えが早かった。
キュピちゃんに耳元で囁かれると呼吸を整え、彼女は声高らかに宣言した。
「オホホ、当然の結果ですわね! ワタクシのような美徳が高い人間には、自然と幸運の方からやって来るもの。天上の神々に愛されるワタクシですから、このように圧倒的、超絶的、非の打ち所がないほどに自身の有能さを証明してしまうのは致し方ありませんわ」
「という事で、今回のラッキースターは一年のバージェニル・ミリムスさんです!! おめでとぉう――!」
「それでは皆様、ワタクシはこれで。次回は、皆様方にも幸運が舞い降りるよう祈って差し上げますわ」
貴族のような立ち振る舞い。
ラッキースターに選ばれた彼女は、同じく一年だそうだ。
颯爽と階段を下りてゆく背を見詰め、ギデオンは思い浮かべていた。
鳥には注意しろという警告を。
ミチルシィ教諭がどうしてそう告げたのかは、未だ判明には至らない。
鳥の謎を知りたければ、バージェニルよりもキュピちゃんの飼い主に直に訊けば済む事なのだが……
「そう、簡単には尻尾を掴ませてくれないよな? それに無理に関わる必要性は今のところはない……か」
取り敢えず、現状は保留という形で彼もまた図書室を出た。
脇に設置されたショーステージ。
そこでは男女とわず生徒たちが歓声を上げていた。
野次馬根性というわけではない。
やはり、気になるのはバードウォッチングというワード。
生徒の真後ろに立ち並び、覘いてみる。
自作したであろう。
手作り感漂う、舞台ステージ。
小さなステップの上では、一人の女子生徒がマイク片手に元気よく飛び跳ねていた。
「皆さん、おまたせぇ! これより、幸運の使い魔ことキュピちゃんによる幸福診断はじまるよ~! 今回のバードウォッチングでラッキースターに選ばれるのは、だれか!? 皆も気になるぅ? 気になっちゃうよねぇー。それでは、キュピちゃん! 今回もヨロシクピーン!」
進行役を務める女子生徒の合図で、ステージ端に置かれていたスタンドが中央に運ばれてきた。
どうやら、鳥カゴを吊るしているみたいだ。
表面に覆いかぶさる布の合間から、羽音が聞こえる。
バッ!
かけられていた布が取り払われ、カゴが開かれる。
大きく翼を伸ばす、その姿に「おおっ――――」と生徒たちが沸き立つ。
金色の羽毛に覆われた冠羽を持つオウム。
この鳥がショーの主役だ。
幸運の使い魔と呼称されるだけあって艶やか金色が神々しく、いかにもご利益がありそうだ。
今から、この鳥を使って何を始めるのか?
ギデオンの興味はその一点に注がれていた。
「ねぇ、キュピちゃん? 今週は、どんな人が一番、キラキラしているかなぁ~!?」
「キュピちゃん、キュピちゃん。ねぇ~知っている? お父さん?」
「いやいや、お父さんは此処に居ないからね。あと、私の真似はいいから」
「笑……お~い!!」
「待てよ、そこでツッコミ受けるの!? それも違うからぁ~」
「チガウと言われば、ソンナ時期もありましたな~、プルン」
「うん! 何時の話は知らないけど、キュピちゃんには、もう誰か分かったみたいだね!!」
「マジ、感謝。我、勘弁!!」
場を盛り上げるパフォーマンスの一貫なのだろう。
女子生徒とオウムで会話の応酬が始まる。
多分、このショー目的で見に来ている生徒もいるはずだ。
こなれた感じで、場を面白おかしくする彼らの会話や身振り手振りは、それだけで見ごたえがある。
辺りからドッと押し寄せてくる笑いが絶えることはない。
「ん、もう! そろそろ真面目にやる。いい?」
「はい!」
「い、っくよ――――!! 運命よ、飛び立て! 幸運が舞い降りたアナタには、素敵な一週間が訪れるでしょう」
相方の手元から飛び立つ金色のオウム、キュピちゃん。
両翼を広げ集まった生徒たちの頭上を旋回する。
「なるほど、そういう事か」
天上を見上げながら、ギデオンは確信に至った。
これは、生徒たちの間で流行っている占いの類だと。
実際のご利益はどれほどの物かは知らない。
恐らく、選ばれた者は一定の期間、幸運が享受されるといったものだと推察される。
キュピちゃんが近づいてくる度に、ワッと興奮する生徒たち。
その熱気にあてられた彼は、軽く眩暈を覚えた。
バサッ、バサッ! と羽ばたきが耳をかすめる。
見ると、幸運の鳥はギデオンの頭上で止まろうとしている。
「僕……なのか? そんなの都合が良過ぎないか……」
固唾を飲む彼をスルーして、キュピちゃんは隣にいた女子生徒の肩にピタリと、とまった。
そりゃ、そうだと頭を低くし、こみ上げてくる笑いをこらえる。
都合良く事が運ぶことなど滅多にあるモノじゃない。
誰だってそうだ、幸運が間近に迫っていると知れば淡くも期待はしてしまう。
自身にも、そんな欲が残されていた事にギデオンは失笑する。
人間臭さがあるという事に、少し喜びを感じていた。
「あわわああ! ワタクシですか!?」
隣にいた女子が目を丸くしていた。
まさか、自分が選ばれることなど考えてもみなかったのだろう。
周囲の生徒たちが拍手喝采する中で一人、顔を真っ赤にし俯く。
「決定! 決定! オメデトー、アリガト―」
女子生徒は気持ちの切り替えが早かった。
キュピちゃんに耳元で囁かれると呼吸を整え、彼女は声高らかに宣言した。
「オホホ、当然の結果ですわね! ワタクシのような美徳が高い人間には、自然と幸運の方からやって来るもの。天上の神々に愛されるワタクシですから、このように圧倒的、超絶的、非の打ち所がないほどに自身の有能さを証明してしまうのは致し方ありませんわ」
「という事で、今回のラッキースターは一年のバージェニル・ミリムスさんです!! おめでとぉう――!」
「それでは皆様、ワタクシはこれで。次回は、皆様方にも幸運が舞い降りるよう祈って差し上げますわ」
貴族のような立ち振る舞い。
ラッキースターに選ばれた彼女は、同じく一年だそうだ。
颯爽と階段を下りてゆく背を見詰め、ギデオンは思い浮かべていた。
鳥には注意しろという警告を。
ミチルシィ教諭がどうしてそう告げたのかは、未だ判明には至らない。
鳥の謎を知りたければ、バージェニルよりもキュピちゃんの飼い主に直に訊けば済む事なのだが……
「そう、簡単には尻尾を掴ませてくれないよな? それに無理に関わる必要性は今のところはない……か」
取り敢えず、現状は保留という形で彼もまた図書室を出た。
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