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七十三話
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「皆さん、すでに存じているとは思いますが、今日からこのクラスに新しいオトモダチが留学知れ……してきます。新しい環境に馴染めず困っているようでしたら、皆さんの方でも是非、手を貸してあげてくださいねー」
女教師の一声でどよめき立つ教室。
この学校に留学生が来たのは、創立以来初めての出来事だった。
勇士学校は、そこいらのありふれた学校とは訳がチガウ。
教師が各分野でのエキスパートで異名持ちの凄腕ばかりなら、彼らに教えを乞う生徒の方は将来を有望視されている麒麟児や神童といった百万に一握りの存在。
そんな天才の集いに途中参加できる異端児がいる事こそが、生徒たちにとってはイレギュラーな事だった。
期待半分の憤慨半分。
といった塩梅で教室に入ってきた彼に生徒たちは刮目する。
その多数の瞳は口よりも素直に訴えかけてくる。
ここにオマエの活躍する場所はないと。
憐みと嫌悪が入り混じるぐちゃぐちゃな感情がとぐろ巻いている。
つまるところ彼らは、足手まといを嫌っていた。
このクラスは、一年の中でもティアローと呼ばれる最下位クラスだった。
ティアというのがクラスを意味し、そこに上から順にハザード、マキシマム、トップ、ミドル、ローと五段階にランクづけされている。
ローである、ここにいる生徒たちは学校全体でみれば、いわゆる落ちこぼれ。
常人よりも優れているとはいっても、所詮は凡人止まり、英雄としての才覚はほぼ無きに等しいと判断されている。
彼らにとってミドルへの昇格は必須なモノだった。
最上級生の三年とは違い、一年である彼らにはまだ伸びしろが期待できた。
この勇士学校では四半期に一度、成績に応じてクラス替え試験がある。
ただし、それは個人戦とは限らない。
場合よっては、集団戦やクラス対抗戦まである。
したがって、今の地位から脱却するにはクラス全体の質が求められる。
ここで一人でもお荷物が増えれば、いい迷惑でしかなかった。
ましてや、他国の留学生……英雄を志す者ではないのは誰の目から見ても確かだ。
「それでは、自己紹介をお願いね、ギデ君」
「はい。聖王国、エンデリデ島から来ましたギデと言います。なにぶん、地元の修道会とは勝手が違う為、至らぬ点も多々あるかと思いますが、皆さん宜しくお願いします」
「ギデ君は、留学生なので短期間しか学校にいられませんが、皆さん仲良くして下さいね~。ギデ君は空いている場所に座って」
冷ややかな視線を向けられつつギデオンは席についた。
教室の席は個別ではなく、講義室にあるような複数人で座れる物となっていた。
自由に席を選べるのはギデオンにとっても好都合だった。
このクラスの生徒たちの情報を網羅しようと画策していた。
もちろん、彼らと距離を縮める為のものではない。
不要なトラブルを避ける為の物だ。
ひょっとしたら、生徒の中にもワイズメル・シオンの一員が紛れ込んでいるかもしれない。
ランドルフの調査により、ワイズメル・シオンは帝国が生みだした史上最悪の暗殺機関という事だけは判明した。
活動内容自体はすべて闇に包まれている。
聖王国の情報管理局でも一切、収集されていない状態だった。
ともあれ、しばらくは危機的状況にさらされることは無いだろう。
クラスメイトたちが、自分と一定の距離を保とうとしている間は、むしろ人目につきやすい。
「とはいえ、気はちっとも休まらないが……」
昼休みになった。
ランドルフのと共に行動するのは目立ち過ぎる為、授業時間は極力、接触を避けることとなった。
売店で購入した調理パンで適当に昼食を済ませると、ギデオンは別棟にある図書室へと足を延ばした。
学年主任のミチルシィが言っていた言葉も気になる。
が、理由はそれだけではない。
この敷地内に必ずある女神の手掛かり。
それを発見するためにも、この学校と女神の関連性を調べることにした。
図書室ならば、郷土史の書籍もいくつか見つかるだろう。
「な、何なんだ! この洒落た空間は!」
辿り着いた図書室は思っていたモノとはまったく異なっていた。
一階が図書フロアで二階はカフェとなっていた。
そのせいで図書室は生徒たちのたまり場になっている。
調べものは厳粛な場所に限るギデオンにとって、この賑わいは毒だった。
聖王国の文化が決して共和国のレベルに劣っているわけではない。
ただ、両国間で決定的に異なるのは、民衆の価値観の違いにある。
質素で清潔なもの好む聖王国民に対し、共和国民が一番重要視するところは華やかさにあった。
見た目だけではない。
雰囲気的にも華がないといけない。
だからこそ、彼らは人々が多く集まるように工夫する。
人目をひくような催しを開き注目を集めるのもその為だ。
ギデオンはさっさと目的の本を見つけ出し、もっと静かな場所で読むことにした。
「さあさあ! 今から恒例のバードウォッチングを始めるよぉ~!!」
二階から、鳥に関係する単語が響いてきた。
退出しようとしていた足を止め、ギデオンは二階の方へゆっくりと視線を向けた。
女教師の一声でどよめき立つ教室。
この学校に留学生が来たのは、創立以来初めての出来事だった。
勇士学校は、そこいらのありふれた学校とは訳がチガウ。
教師が各分野でのエキスパートで異名持ちの凄腕ばかりなら、彼らに教えを乞う生徒の方は将来を有望視されている麒麟児や神童といった百万に一握りの存在。
そんな天才の集いに途中参加できる異端児がいる事こそが、生徒たちにとってはイレギュラーな事だった。
期待半分の憤慨半分。
といった塩梅で教室に入ってきた彼に生徒たちは刮目する。
その多数の瞳は口よりも素直に訴えかけてくる。
ここにオマエの活躍する場所はないと。
憐みと嫌悪が入り混じるぐちゃぐちゃな感情がとぐろ巻いている。
つまるところ彼らは、足手まといを嫌っていた。
このクラスは、一年の中でもティアローと呼ばれる最下位クラスだった。
ティアというのがクラスを意味し、そこに上から順にハザード、マキシマム、トップ、ミドル、ローと五段階にランクづけされている。
ローである、ここにいる生徒たちは学校全体でみれば、いわゆる落ちこぼれ。
常人よりも優れているとはいっても、所詮は凡人止まり、英雄としての才覚はほぼ無きに等しいと判断されている。
彼らにとってミドルへの昇格は必須なモノだった。
最上級生の三年とは違い、一年である彼らにはまだ伸びしろが期待できた。
この勇士学校では四半期に一度、成績に応じてクラス替え試験がある。
ただし、それは個人戦とは限らない。
場合よっては、集団戦やクラス対抗戦まである。
したがって、今の地位から脱却するにはクラス全体の質が求められる。
ここで一人でもお荷物が増えれば、いい迷惑でしかなかった。
ましてや、他国の留学生……英雄を志す者ではないのは誰の目から見ても確かだ。
「それでは、自己紹介をお願いね、ギデ君」
「はい。聖王国、エンデリデ島から来ましたギデと言います。なにぶん、地元の修道会とは勝手が違う為、至らぬ点も多々あるかと思いますが、皆さん宜しくお願いします」
「ギデ君は、留学生なので短期間しか学校にいられませんが、皆さん仲良くして下さいね~。ギデ君は空いている場所に座って」
冷ややかな視線を向けられつつギデオンは席についた。
教室の席は個別ではなく、講義室にあるような複数人で座れる物となっていた。
自由に席を選べるのはギデオンにとっても好都合だった。
このクラスの生徒たちの情報を網羅しようと画策していた。
もちろん、彼らと距離を縮める為のものではない。
不要なトラブルを避ける為の物だ。
ひょっとしたら、生徒の中にもワイズメル・シオンの一員が紛れ込んでいるかもしれない。
ランドルフの調査により、ワイズメル・シオンは帝国が生みだした史上最悪の暗殺機関という事だけは判明した。
活動内容自体はすべて闇に包まれている。
聖王国の情報管理局でも一切、収集されていない状態だった。
ともあれ、しばらくは危機的状況にさらされることは無いだろう。
クラスメイトたちが、自分と一定の距離を保とうとしている間は、むしろ人目につきやすい。
「とはいえ、気はちっとも休まらないが……」
昼休みになった。
ランドルフのと共に行動するのは目立ち過ぎる為、授業時間は極力、接触を避けることとなった。
売店で購入した調理パンで適当に昼食を済ませると、ギデオンは別棟にある図書室へと足を延ばした。
学年主任のミチルシィが言っていた言葉も気になる。
が、理由はそれだけではない。
この敷地内に必ずある女神の手掛かり。
それを発見するためにも、この学校と女神の関連性を調べることにした。
図書室ならば、郷土史の書籍もいくつか見つかるだろう。
「な、何なんだ! この洒落た空間は!」
辿り着いた図書室は思っていたモノとはまったく異なっていた。
一階が図書フロアで二階はカフェとなっていた。
そのせいで図書室は生徒たちのたまり場になっている。
調べものは厳粛な場所に限るギデオンにとって、この賑わいは毒だった。
聖王国の文化が決して共和国のレベルに劣っているわけではない。
ただ、両国間で決定的に異なるのは、民衆の価値観の違いにある。
質素で清潔なもの好む聖王国民に対し、共和国民が一番重要視するところは華やかさにあった。
見た目だけではない。
雰囲気的にも華がないといけない。
だからこそ、彼らは人々が多く集まるように工夫する。
人目をひくような催しを開き注目を集めるのもその為だ。
ギデオンはさっさと目的の本を見つけ出し、もっと静かな場所で読むことにした。
「さあさあ! 今から恒例のバードウォッチングを始めるよぉ~!!」
二階から、鳥に関係する単語が響いてきた。
退出しようとしていた足を止め、ギデオンは二階の方へゆっくりと視線を向けた。
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