異世界アウトレンジ ーワイルドハンター、ギデ世界を狩るー

心絵マシテ

文字の大きさ
46 / 549

四十六話

しおりを挟む
未だ、乱戦が続く集落の中でひと際きわ、けたたましい剣戟の応酬おうしゅうがなされていた。
ソードマンのクラスを持つ男、ヴォールゾック。
対するは元聖騎士候補生のギデオン・グラッセ。

久方ぶりに、握る剣の感触は前より重くなっていた。
それでも一閃の刃を交える度に、記憶の中の感覚がよみがえってくる。

ギデオンは幼少の頃から剣術に秀でている。
彼の腕前はどれほどものかと人に問うと、皆が口をそろえて人並みならざらぬモノと答えてくる。
聖王国内で彼の剣士としての名声を高めたのは、やはり王国主催の御前試合だろう。
司教の推薦で選ばれた若干、十二歳の少年が王国近衛兵を三人、まとめて相手にし難なく勝利をおさめた。
瞬きする暇もなく流れるような剣さばきで相手を打ち取る姿は、聖王国民の心を一挙に鷲掴みにした。
これがパラディンにもっとも近いと称された彼の始まりだった。

今となってはとんだお笑いぐさだが、あの頃の彼は本当に自分が選ばれた人間だと信じていた。
そこが箱庭だったとは知らず、狭い世界だけで生きてきた。

それでも悪くはなかったと思えるのは、こうして強敵と相まみえることができるからだ。

ヴォールゾックはギデオンが知る中で屈指の実力者だった。
前にも感じた違和感……これだけの力を持ちながら何故、賊に身を堕としているのか納得できなかった。
彼ほどの剣士ならば王国だって放ってはおけない。
普通なら生活には困らないはずだ。

普通なら――――

彼は異常性の塊だった。
彼自身そうだが、扱う剣技と獲物はさらに異質極まりなかった。

まず、ヴォールゾックの剣技は対面タイマンには向いていない。
集団戦に特化した、どちらかといえば戦場、実践向けのスタイルだった。
常に一ヶ所にはとどまらず移動している合間も敵味方問わずに、盾として活用する。
もし、相手が武器を向けてこようならば、即座に斬捨てる。
型に納まらない自由な攻撃の数々は、ギデオンを大いに翻弄ほんろうしていた。
何より、着実に修羅場を掻い潜っている……彼の動きには、いちぶの隙もない。
非常に無駄という肉を削ぎ落した洗練されたモノだった。

「ああ――いいねぇ。その若さで、俺とやり合える奴はそうそういない。少々、鍛え足りないが良い筋肉だ。しなやかでよく伸びる強靭な質、バランスも悪くない。あと何度か、戦場を渡り歩けば完璧に仕上がるな」

「あいにくと、僕はソルジャーじゃない。本来なら、剣ではなく銃を使う狩り職だ」

「なら、さっさと銃でも何でも使えよ。ここは戦場だ、知略、戦略の多様性が求められる、やったモン勝ちの世界だ」

「笑わせるな! この村を戦場にしたのは貴様らだ!! こんな乱戦状態で銃を撃てるわけがない、一歩間違えれば味方に当たりかねない」

「まあーだ、そんな事を気にしてんのか? 兄ちゃんみたいなのを沢山みてきたけど、どいつもこいつも戦場で、野垂死にしてたなぁ――」

「戦場、戦場とやけにこだわるな? そうか……アンタは死地でしか自分を見出せない人間なんだな」

「惜しいな、チョットだけ違うぞ。俺が求めているのは戦場自体だ、自身のことなど二の次だ。戦場には俺の好きなモノばかり落ちている。焼ける肉の臭いに、乱雑に置かれた死体、興奮してしまうほどの悲鳴と好きなだけ斬れる肉。ああ、どれも素敵だー。中でも一番のお気に入りは、絶望に打ちひしがれる敗者の表情だな、うふふ」

「もういい、反吐が出る。例えそれが貴様の望みでも、一時の快楽を得る為に争いの火種を自らバラこうとする行為は、害悪そのものだ。ヴォールゾック、貴様はここで始末する」

「面白いこと言うーねぇ。腐っても正義を貫こうとするわけだ。いいだろう、お前にも絶望というモノの本質を味合わせてやろう」

もう、一つの異物。
ヴォールゾックの長剣がギデオンを狙う。
そこから発せられている禍々まがまがしい気配は魔剣特有のもの。
間違いなく、その剣は呪われてる。
それがヴォールゾックの人格を破綻させている原因かもしれない。
もし、そうなら今、ギデオンが相手にしているのは宿主の肉体を奪った魔剣の人格ということになる。

「何をボサッとしているんだ?」

突き出した刃が、ギデオン目掛けて飛び出てきた。
伸びている……こともあろうに剣の刃が大蛇のように変幻自在に曲がりくねりながら接近してきた。
剣では防ぎきれない。
そう、判断した彼は銃撃に切り替え、刃の切っ先に撃ち込んだ。
炸裂する音とともに刃が大きく向きを変えた。
次の攻撃が来る前に、こちちから先に仕掛けてやろうと試みるが、伸びた刃が瞬時に元の状態に戻っている。
これでは、軌道をそらしても意味がない。
やはり、銃撃でしかあの魔剣には対抗する術がない。

より速く、より強力な一撃を見舞わないと。

敵の絶対防御は打ち破れない。

ギデオンは聖水の瓶を開けた。
彼自身は蜜酒で強化できなくても、相棒ならその恩恵を受けることが出来る。
魔銃の撃鉄に蜜酒を流し込む。
ゴクリと喉を鳴らしたスコルが神気の力により覚醒めざめる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平
ファンタジー
 パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。  神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。  パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。  ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。    

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...