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六話
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「許せ、息子よ。何もお前を責めているわけではない、これには何者かの悪意を感じる。天啓の儀だって、お前が言うように公正公平に執り行われたかも怪しい」
「父上、取り敢えず大聖堂に戻ろうと思います。そこで司教様が殺害されたのであれば、犯人関する何らかの手掛かりが掴めるやもしれません」
「何を言っておる。今、大聖堂は憲兵たちによって封鎖されている。何人も立ち入る事はできないぞ!」
「父上こそ、お忘れですか? 僕には、パラディンになる為につちかった戦術があります。それに天啓も授かったんです。今なら、その職業の固有スキルだって使えるはずです!!」
父の自分に向ける信頼は変わっていない。
そのこと確信した彼は、再起するべく迅速に立ち上がった。
書斎を去る、息子の背を呆然と見つめながらアラドは口を開いた。
「どうして、司教が大聖堂で殺された事を知っているんだ」と
「ギデオン待って! 大聖堂に行くんでしょ、ボクも同行するよ」
身支度を整え、屋敷を出ようとするとシルクエッタに呼び止められた。
隣には、カーラもいる。
「父の事、頼みます」それだけを告げるギデオン。
給仕長は深々と頭を下げ「お任せ下さい」と即答した。
「行こうか、シルクエッタ!」
「にしても、一年経っただけで随分と変わったよね~、ギデオン」
大聖堂に移動する最中、シルクエッタがしきりに話しかけてくる。
久々の再会なのだから当然といえばそうなのだが、妙に距離が近いとギデオンは一貫して落ち着かない様子だった。
「異性として意識しているのか? いや……まさかな」
「ん? どうしたの?」
「い、いや! なんでも……ところで僕のどこが変わったというんだ?」
「えー、だってぇ。以前はボクの事、避けていたでしょ? 近づいて話かけると時々、凄く嫌そうな顔していたし」
「そ、そうなのか? きっと……照れ臭かったんだよ」
「むぅ~、何それ。妙に言い訳、臭いんですけど。けど…赦しましょう! 今のギデオンには、ボクを避けている感じはないようだから」
「当たり前だろ! 幼馴染なんだから。シルクエッタこそ、僕と一緒にいるのは嫌じゃないのか? パラディンになれなかった僕は皆を騙してしまった。一緒にいたら、君まで批判を浴びるかもしれない」
「ん、もう! そんな事、気にしていたの? パラディンじゃくてもギデオンはギデオンでしょ? 月並みな言い方しかできないけど、ボクの幼馴染は他の何者でもないギデオンだけだよ! だから、一緒にいても良いんだよ」
ギデオンの頬に一筋の涙が光る。
思いもよらない事に慌てて頬を拭う。
シルクエッタは、幼馴染の初々しい仕草を楽しみながら穏やかに微笑んでいた。
やがて、二人は大聖堂に到着した。
事前に聞いていた通り、正面口の方には憲兵が集まり信者たちと何やら揉めている。
おそらく、強制的に彼らを大聖堂から追い出したのだろう。
「戻せ、返せ」とヤジが飛び交っている。
「どうしよう……これじゃ、聖堂の中に入れない」
「裏道ならまだ行けると思う。シルクエッタも覚えているだろ? 昔、司教様に教えてもらった道だよ」
「ああ! あの、かくれんぼによく使っていた」両手を合わせ、シルクエッタは頷く。
教会関係者以外が、その道を知る事は原則として禁止事項に該当する。
司教がどうして彼らに、秘密の通路の存在を打ち明かしたのか? その真意は定かではない。
案の定、そこは子供たちの遊び場と化していた。
それでも、ギデオンもシルクエッタも司教との約束は違えなかった。
秘密の通路の存在は、決して大人たちには教えてはいけない。
彼らの中で、その決まりは絶対だった。
「人の気配はなさそうだ。これなら、問題なく通れるぞ」
教会に裏手にある共同墓地。
そこから地下通路を渡り、聖堂裏手に入る。
こういったモノは、街が戦火にさらされるといった非常時に、貴重な祭具や神具を持ち出し、人目につかず避難させる為に設けられている。
ゆえに、人が通るには難なく進める。
数分後、彼らは見事、聖堂内部に侵入成功。
すぐさま憲兵たちと遭遇しないようにシルクエッタが祈るも、効果てきめんだったようだ。
誰にも遭遇せず司教殺害現場に辿りついた。
教会の最奥、礼拝堂が事件の現場になっていた。
「待ってくれ!」
礼拝堂に進もうとするシルクエッタを腕で制する。
どうやら、彼は場の異常を察知しているようだ。
シルクエッタもまた彼の言葉で気づいた。
「結界……侵入者対策の為の結界が床一面に張られているわ。多分、触れたら捕縛するタイプの奴」
「ああ、にしても妙だな。これでは、誰も事件現場を調査できないんじゃないか? まるで調べられると不味い事でもあるようだ」
「教会内部の警備の雑さも気になるね。あからさまに人目を避けたい、そんな目論見が透けて見えるわ」
「なら、当人に訊いてみようぜ。出てこいよ、クロイツ!」
柱の陰からパチパチと適当な拍手が鳴った。
上背ある、その身を揺さぶりながら黒衣コートの男が彼らの前に姿を見せた。
男は天啓の儀でギデオンを圧倒した中年の軍事監査官、クロイツ・ハウゼンその人だった。
「父上、取り敢えず大聖堂に戻ろうと思います。そこで司教様が殺害されたのであれば、犯人関する何らかの手掛かりが掴めるやもしれません」
「何を言っておる。今、大聖堂は憲兵たちによって封鎖されている。何人も立ち入る事はできないぞ!」
「父上こそ、お忘れですか? 僕には、パラディンになる為につちかった戦術があります。それに天啓も授かったんです。今なら、その職業の固有スキルだって使えるはずです!!」
父の自分に向ける信頼は変わっていない。
そのこと確信した彼は、再起するべく迅速に立ち上がった。
書斎を去る、息子の背を呆然と見つめながらアラドは口を開いた。
「どうして、司教が大聖堂で殺された事を知っているんだ」と
「ギデオン待って! 大聖堂に行くんでしょ、ボクも同行するよ」
身支度を整え、屋敷を出ようとするとシルクエッタに呼び止められた。
隣には、カーラもいる。
「父の事、頼みます」それだけを告げるギデオン。
給仕長は深々と頭を下げ「お任せ下さい」と即答した。
「行こうか、シルクエッタ!」
「にしても、一年経っただけで随分と変わったよね~、ギデオン」
大聖堂に移動する最中、シルクエッタがしきりに話しかけてくる。
久々の再会なのだから当然といえばそうなのだが、妙に距離が近いとギデオンは一貫して落ち着かない様子だった。
「異性として意識しているのか? いや……まさかな」
「ん? どうしたの?」
「い、いや! なんでも……ところで僕のどこが変わったというんだ?」
「えー、だってぇ。以前はボクの事、避けていたでしょ? 近づいて話かけると時々、凄く嫌そうな顔していたし」
「そ、そうなのか? きっと……照れ臭かったんだよ」
「むぅ~、何それ。妙に言い訳、臭いんですけど。けど…赦しましょう! 今のギデオンには、ボクを避けている感じはないようだから」
「当たり前だろ! 幼馴染なんだから。シルクエッタこそ、僕と一緒にいるのは嫌じゃないのか? パラディンになれなかった僕は皆を騙してしまった。一緒にいたら、君まで批判を浴びるかもしれない」
「ん、もう! そんな事、気にしていたの? パラディンじゃくてもギデオンはギデオンでしょ? 月並みな言い方しかできないけど、ボクの幼馴染は他の何者でもないギデオンだけだよ! だから、一緒にいても良いんだよ」
ギデオンの頬に一筋の涙が光る。
思いもよらない事に慌てて頬を拭う。
シルクエッタは、幼馴染の初々しい仕草を楽しみながら穏やかに微笑んでいた。
やがて、二人は大聖堂に到着した。
事前に聞いていた通り、正面口の方には憲兵が集まり信者たちと何やら揉めている。
おそらく、強制的に彼らを大聖堂から追い出したのだろう。
「戻せ、返せ」とヤジが飛び交っている。
「どうしよう……これじゃ、聖堂の中に入れない」
「裏道ならまだ行けると思う。シルクエッタも覚えているだろ? 昔、司教様に教えてもらった道だよ」
「ああ! あの、かくれんぼによく使っていた」両手を合わせ、シルクエッタは頷く。
教会関係者以外が、その道を知る事は原則として禁止事項に該当する。
司教がどうして彼らに、秘密の通路の存在を打ち明かしたのか? その真意は定かではない。
案の定、そこは子供たちの遊び場と化していた。
それでも、ギデオンもシルクエッタも司教との約束は違えなかった。
秘密の通路の存在は、決して大人たちには教えてはいけない。
彼らの中で、その決まりは絶対だった。
「人の気配はなさそうだ。これなら、問題なく通れるぞ」
教会に裏手にある共同墓地。
そこから地下通路を渡り、聖堂裏手に入る。
こういったモノは、街が戦火にさらされるといった非常時に、貴重な祭具や神具を持ち出し、人目につかず避難させる為に設けられている。
ゆえに、人が通るには難なく進める。
数分後、彼らは見事、聖堂内部に侵入成功。
すぐさま憲兵たちと遭遇しないようにシルクエッタが祈るも、効果てきめんだったようだ。
誰にも遭遇せず司教殺害現場に辿りついた。
教会の最奥、礼拝堂が事件の現場になっていた。
「待ってくれ!」
礼拝堂に進もうとするシルクエッタを腕で制する。
どうやら、彼は場の異常を察知しているようだ。
シルクエッタもまた彼の言葉で気づいた。
「結界……侵入者対策の為の結界が床一面に張られているわ。多分、触れたら捕縛するタイプの奴」
「ああ、にしても妙だな。これでは、誰も事件現場を調査できないんじゃないか? まるで調べられると不味い事でもあるようだ」
「教会内部の警備の雑さも気になるね。あからさまに人目を避けたい、そんな目論見が透けて見えるわ」
「なら、当人に訊いてみようぜ。出てこいよ、クロイツ!」
柱の陰からパチパチと適当な拍手が鳴った。
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