『焼飯の金将社長射殺事件の黒幕を追え!~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.4』

M‐赤井翼

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「エピローグ 次のターゲット」

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「エピローグ 次のターゲット」

 このひと月ちょっと休みなく働き続けた身体に温泉の湯は染みた。
「あー、やっぱり温泉はええなぁ…。「金将事件」の取材始まってからほとんどシャワーで済ませてたから、心底ほぐれるわ…。なんちゅうてもこの後はサブちゃんと「ムフフ」やからなぁ…。てへっ。」
と独り言をつぶやきながら目を閉じ、自分の胸を揉みながらにやける稀世の前を「お母さん、あのお姉ちゃん、自分のおっぱい揉んでHな顔してる!」、「これ、指さしちゃダメでしょ。むこうに行くわよ!」と幼稚園くらいの女の子とその母親と思われる母子の声が耳に入り、(がおっ、サブちゃんにおっぱい揉まれるとこ想像してエロ顔してしもてた…。「きゃー」恥ずかし…。)と真っ赤になって、シャンプーとボディーソープが設置されたカラン席に向かった。

 浴室内の時計で25分が過ぎ、(そろそろ上がって「顔」作らなな…。サブちゃんのことやから5分前には待ってるやろうからな。)と浴場を出ると、脱衣場に戻った。
 備え付けの体重計に載り(はい、今日も「59.8キロ」。金沢おでん食べすぎたから危ないかと思ったけど、ビールを控えて日本酒にしたんがよかったんかな。この間、太田さんを殺しかけたところサブちゃんに見られたから、その手前「60キロ」のデッドラインは絶対に超えられへんからな…。)と、下着を身に着け浴衣を羽織った。
 化粧席に腰を下ろすと、ナチュラルメイクに仕上げ、最後に薄めのピンクのリップを塗った。「よし、ばっちりや!今晩こそ、サブちゃんと決めるで!」と無意識のうちに心の声が口から洩れ、土俵に上がった力士のように両掌で頬を「ぱしぱしっ!」と2回叩くと、脱衣場内の他の客の視線が集まっていることに気づき、再度、真っ赤になって慌てて脱衣場を出た。

 「あれ、稀世さん、えらい赤い顔してはりますけど「湯あたり」してしまいました?冷たいビールでも飲まはりますか?」
 「赤い顔」の理由を知らない三朗はやさしく稀世に声をかけ、湯冷まし席に連れて行くと350のビールを自販機で購入した。
「はいどうぞ。よく冷えてるので美味しいこと間違いなしですよ!」
とステイオンタブを開けると、稀世に手渡した。
 冷たいアルミ缶の感触が火照った手に心地よい。ビールを口につけ「7秒間・・・」の「のど越し」を味わった。(あっ、199cc以上飲んだらあかん!)とふと冷静さを取り戻し、三朗にビールの缶を渡した。三朗の顔が一気に火照った。
「ありがとう、美味しかったわ。サブちゃんも飲んで!さっき、部屋で「ちゅっ」ってした仲やねんから、今更「間接キス」でもないやろ?ましてやこの先は…、」
と「続き」を口にしようとした瞬間、
「きゃーっ!やめてください。「3人」なんか聞いてませんし、ましてや「本番」の契約になんかなっていませんよ!」
と若い女の声が響くと同時に、貸し切りのカラオケボックスから片袖落としてブラジャーの片胸が見える程、乱れた浴衣姿の黒髪ロングの女が転げ出てきた。

 すぐさま、酔って赤くなった2人の男が床に倒れた女の腕をつかみ
「3倍の金は払うって言ってるだろ。」、「1人とするのも3人とするのも同じだろ。」
とエロ顔満開で女をボックスに引き戻そうとする。
「いやーっ!そもそも「デート同行プラン」であって「本番あり」や「乱交プラン」じゃありませんから!変なことは止めてください!」
と女は半泣きの声で男たちに逆らうが、男2人の力にかなうはずもなく、ずるずると引きずり込まれていく。
 「ミクちゃん、「オプション代」は店を通さずあんたに直接やるから付き合ったってくれや!連れも一緒に楽しませたってぇな。」
と馴染みの関西弁の男の声がカラオケボックス内から聞こえた瞬間、稀世は事態を理解した。

 稀世はすかさず湯冷まし席からダッシュで倒れた女の元に駆け付けると、2人の男たちの肘関節を力いっぱいわしづかみにし、捻り上げた。
「痛てぇ!なんじゃ、お前は!」
一人の男が苦痛の表情を浮かべ稀世に怒鳴ると同時にもう一人の男は稀世につかみかかろうとした。
 稀世は一人の腕を解放すると、くるりと体を回しつかみかかってきた男の腕を背後でアームロックの体制に入り肘を締め上げた。
「ぎゃおっ!なにしやがる!」
と片腕を固められた状況で、苦し紛れに空いた片手で稀世の浴衣の襟首をつかみ、引き離そうと力を入れた。(あかん、このままやったら私の浴衣がはだけてしまうやん。ここは「緊急避難・・・・」やな!)とローキックに近い裾払いを男のくるぶしに入れると、固められた肘を支点に男の体は半回転し、頭から床に落ち白目を剥いた。

 「ごるぁ!仲間に何するんじゃい!」
ともう一人の男は拳を稀世に向けて突き出した。
『サブちゃん、動画撮って!』
と稀世は背後にいる三朗に声をかけた。三朗は丹前のポケットからスマホを取り出すとカメラアプリを起動しレンズをカラオケボックスの前で格闘する稀世にむけ「稀世さん、撮影開始しました!」と声をかけた。稀世は男に5発自由に殴らせた。酔った男の拳をかわすことなど稀世にとっては子供とけんかをするようなものだった。スウェアーバック、パーリングで5発のパンチを全ていなす・・・と男に向かって呟いた。
「はい5発!これで十分「正当防衛」は立証できるな!」

 右の掌底をピンポイントで男の左顎に決めると、カウンターで脳を揺らされた男は意識ははっきりとしているものの身体の自由を奪われ、ふらふらと床に崩れ落ちた。
 床に突っ伏したまま、男は稀世に「罵詈雑言」を吐きまくると、カラオケボックスの中から3人目の男が出てきた。稀世の顔を見るなり
「おっ、ニコニコプロレスの安稀世やんか。そりゃ、こいつらじゃ瞬殺されるわな。俺は、あんたと争うつもりはないからな。俺はこの子と2日間の「デート・恋人コース」してただけやねん。」
と悪びれる様子もなく説明すると財布から10万円を出して女に差し出した。
「ミクちゃん、しらけてしもたから「デート」はここまででええわ。じゃあ、先に1泊2日デートプラン、本番無しのベッド120分コースの6万円払っておくわな。まあ、俺と一緒に明日まで居るのもいややろうから、今晩の部屋代で2万、帰りの新幹線代と駅弁代で2万円つけとくわ。1日で仕事が終わって、2日分の稼ぎになったんやからこいつらの「お痛」はまけたってくれな。カラカラカラ。」

 「おい、どういう意味やねん!おまえら、酔った勢いでこのにいたずらしようとしたんとちゃうんか!」
憤慨した稀世が関西弁の男に叫ぶと
「ちゃうちゃう、この子「風俗嬢」やがな。まあ、「本番無し」やのに酔った「こいつら」がそれを求めたんはこっちの「ルール違反」やったけどな。まあ、「安さん」のおかげで「未遂」で済んだんやから感謝するわ。たがいに納得しての「遊び・・」で警察沙汰はゴメンやからな。」
と言い、白目を剥いた男の頭を蹴飛ばした。頭を蹴られた男は意識を取り戻し、隣で体の自由を奪われてうごめく仲間に肩を貸し抱え上げると、関西弁の男は2人の男を連れて、去り際に襲われていた女に言った。
「じゃあ、ミクちゃん、今まで3ケ月楽しかったで。もう、あんたので援助したることもあれへんやろうから、新しい「パパ」を見つけることやな。学校がんばりや。ばいばいきーん!」

 言葉無しに、10万円を受け取った「ミク」と呼ばれる女は男たちを見送ったので稀世はそれ以上何も言いようがなかった。
 騒ぎを聞きつけたホテルのスタッフがカラオケボックスに駆け付け事情を説明し終わると、女がスタッフに尋ねた。
「すみません、今日、シングルで空き部屋はありますか?私、泊まる部屋無くなっちゃったんで…。」
 たずねられたスタッフは携帯電話でフロントに問い合わせたが、シングルルームは満室で、素泊まりできるのは部屋代が6万円を超える高級ルームしかないと告げられた。
「明日、お店に一度は6万円入れなきゃいけないから払われへんわ…。この時間からやと夜行バスも取られへんやろうし、どうしたらええの…。くすん。」
 
 蚊の鳴くような声で呟く女に稀世は思わず声をかけた。
「えらい「訳あり・・・」みたいやけど、なんやったら、うちの部屋に来るか?」
 稀世は、瞬時に(しまった!今日はサブちゃんと一緒やったんや!)と思った。女は、一瞬戸惑った表情を浮かべたが
「本当にいいんですか?助かります。お願いします。本当にありがとうございます。」
とあまりに丁寧にお辞儀を繰り返すのと、ホテルスタッフからも「事情が事情ですから部屋代は結構ですので一晩お願いします。」と言われ引くに引けなくなった。
 稀世は半べそ顔で三朗に向かって呟いた。
「サブちゃん、ゴメン…。私、勢いで…。」
 三朗は、稀世に対して笑顔を浮かべやさしくフォローした。
「稀世さんは悪くないですよ。謝らないでください…。そんなやさしい稀世さんが好きですよ。僕はソファーで寝ますから、その女の子を泊めてあげてください。」

 女の子の名前は「鈴木玖美すずき・くみ」。京都の舞鶴出身の大学1年生で19歳。偶然にも凜と同じ東大阪産業大学に通う下宿生と言うことだった。
 ホテルのスタッフ同行で、本来泊まるはずだった部屋に荷物を引き上げに行き、稀世と三朗の部屋に入ると、改めて稀世と三朗に「ご迷惑おかけしてすみません。」と丁寧に頭を下げ、事情を話し出した。
 舞鶴から大阪に出てきて1年弱になるが、入学直後、父が倒れ実家の事業が厳しくなり十分な仕送りを求められなった玖美は学費と生活費のためにアルバイトを始めた。夏休みにフルに働いたが、物価高による生活費の高騰と下半期の学費納入と学費以外にかかる経費や実家への見舞いの交通費等でひと夏の収入は3ケ月で消えてなくなった。

 そんな中、大学内で知り合った者から紹介を受けたのが「風俗・・」の仕事だったという。最初は、「リフレ」と呼ばれる「手淫」行為だけだったのだが、その収入だけでは生活はできず、徐々に行うサービスはエスカレートし現在では「デリバリーヘルス」や「デート嬢」として「風俗営業店」のキャストとして収入を得ているという。
 玖美の話の中では、学内や仕事場で同じような境遇の地方出身者の女子学生は多いということを知った。
「ふーん、メディアクリエイトうちの給料もそんなにええわけやないけど、女の子が「身体を売って」もそんなもんなんか…。立ち入った話を聞くけど、さっきおっさんが1泊2日で「6万円」って言うてたけど、玖美ちゃんの手元にはなんぼ入んの?」
 稀世が尋ねると、デートプランでは「50%」との事だった。サービスにより、報酬料率は異なり、「指名」や「延長」、「オプション追加」などでも変わってくるらしいことが分かった。その他、玖美が知り得ることは何でも聞いた。

 「うーん、「ぎょへー」な世界やねんな。「風俗」ってもっと「プロ・・」の世界やと思ってたけど、18歳以上やったら誰でもできるんやな。それにしても業者の「ぼったくり率」が酷すぎるな。風俗事業者って儲かるわけや…。ちなみに今回のことでペナルティーはあったりするんかいな?」
 稀世が呟くと、玖美はうつむいて
「はい…、あると思います。常連さんを失ったとなると…。でも、それに対して逆らえません。報酬は「後払い」ですし、ほかで「本部に文句言うてくるわ!」って言うてた子が突然いなくなったりしたこともありましたし…。噂では、業者の「バック・・」っていうのが…、」
と力なく呟き続ける中、いくつかの「キーワード」で稀世と三朗は顔を見合わせた。

 「よっしゃ、玖美ちゃん、明日は門真まで送ったるからまた改めて話を聞かせてくれへんか?私は、メディアクリエイトの新人記者で「安稀世やす・きよ」。こっちは門真市駅東商店街「向日葵寿司」の「サブちゃん」。私の「大事な人」やからちょっかい出すのは絶対禁止やで!
 戻ったら、「貧困女子」と「闇風俗ビジネス」について調べたいんで協力してほしいねん。絶対に私たちがその「闇」を暴いたる!
女の子を「モノ」と考える奴は許せへんし、弱みに付け込んで女の子を縛る奴はもっと許せへん!ましてやそこで得た「金」でさらに悪さする奴はしばいたらんとな!
 「闇」に隠された真実を暴き、正すものは正し、悪人を白日の下にさらけ出し弱者を救うのがジャーナリストの仕事やねん。
 玖美ちゃんのように「危険な目」に遭う子はこの先出したらあかんし、「消えた子」や「ひどい目に遭わされた子」も同じや。女の子の一生に関わる「心の傷」として残る「ビデオビジネス」や「薬物」、ましてや「人身売買」なんかもっての他や!私の中の「正義の血」が放っておいたらあかんって言うてる!次の「ターゲット」は女子学生を食い物にする風俗産業や!
大したバイト料は払われへんけど、ちょっとは生活費の足しになると思うし、頼めるかな?」

 ジャーナリストの顔をした稀世に玖美は黙って頷いた。その後、ボイスレコーダーを取り出しての玖美へのヒアリングは2時間に及んだ。
 (あーぁ、やっぱりこうなっちゃいましたか…。稀世さんの「引き運体質」が発動しちゃいましたね。まあ、稀世さんらしいと言えばそれまでやけど…。
 「金将事件」が終わって少しゆっくりできるかと思ってたけど、それは無理そうやな。稀世さんとの「発展・・」はお預けってことでしたけど、これからも陰ながら支えさせてもらいますよ…。)と心の中で呟きながら、三朗はソファーで眠りに落ちていった。

「元プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.5」に続く…。


「おまけ」

RBFC男性チームに忖度して「浴衣」での「踵落とし」(笑)。






そして、出番のなかった中華風「リンコス」シーン!




「最後までお読みいただきありがとうございました!」



(。-人-。) アリガトウネー!
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