『焼飯の金将社長射殺事件の黒幕を追え!~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.4』

M‐赤井翼

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「金沢旅行」

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「金沢旅行」

 2週間後、稀世と三朗は金沢の東茶屋街を歩いていた。200年の歴史を持つ古い街並みを腕を組み、二人で一つのご当地スイーツの「金箔ソフト」を食べながらゆっくりと散策した。
 半分は外国人観光客と思われる観光ガイドで紹介されるメインのルートは凄い人混みで10メートル歩く間に必ず1人か2人は肩や腰がぶつかる状況だった。(うーん、街並みはきれいやし、情緒もあるはずなんやけど…。この「夜の道頓堀」みたいな人の多さでは「思った事・・・・」が実行できへんよな…。)と稀世は思い、人が少ないと推測される裏通りに三朗を導いた。

 メイン通りと違い、圧倒的に人影は少なくなった。最初の角を曲がり周りに人がいないことを確認すると三朗の正面に回り込み顔を少し上げ、目を閉じた。(さあ、サブちゃん、ここで「ちゅっ」ってしてほしいな…。)と積極的にキス待ち顔で三朗の反応を待ったが3秒待っても5秒待ってもキスは来なかった。
 (もう、女の子がここまでしてるんやからサブちゃんも頑張ってよ。ぷんぷん!)と少し膨れて目を開けると三朗が何もしなかった理由がすぐに分かった。5秒前は無人だった通りに2組の外人観光客が見えた。(ちっ、外人はどこでも入って来よるなぁ…。とりあえず、やり過ごすか…。)稀世は、裏通りの祠の横で外国人観光客が通り過ぎるのを待った。2組の外人が通り過ぎ再度周辺に人影がないことを確認すると再び目を閉じた。
 しかし、チャレンジすること3度…。稀世が求める「キス」のチャンスは訪れなかった。
「うーん、サブちゃん…、観光地っていうのも善し悪しやな。人が居れへんようになることあれへんねんな。」
「そうですね…。外人さんは平気でそこらじゅうでハグしたりキスして写真撮ってますけど、稀世さんは有名人ですからそういうわけにはいかないですよね…。まあ、明日いっぱいまで時間はありますから焦らずに行きましょう。」
と三朗から5本の指を絡めた「恋人繋ぎ・・・・」で手を握ってくれた。

 「ファクト・ハンター」社の仕事を受注してからの2週間は全く休みがなかった。先方の営業担当が番組ディレクターやドキュメンタリーライターを連れてきては要望を伝えてきた。
 あくまで「ファクト・ハンター」社の独自取材でつかんだスクープという建前なので稀世達が取材した者たちに事情を話し、再現フィルム的にインタビューを行うていでシナリオを作り、撮影・取材の段取りをつけるまでがメディアクリエイトの仕事だった。
 英語が分からない稀世に代わって凜が前面的にクライアントのサポートに回り、稀世はそのバックアップ的な仕事についていた。スタッフ幹部の中にWWEファンがいて、稀世が参戦していたことを知っていて夜は接待要員として向日葵寿司、お好み焼きガンちゃんで食事をとりBARまりあで日が変わるまで飲みに付き合う日が続いた。
 新たな取材は行う必要はなかったので予定は少し早く済み、余った日程で「ファクト・ハンター」メンバーを連れて太田と凜が京都、奈良の古都巡りの他、岐阜の白川郷訪問に行くことになった。
 実は太田が「ファクト・ハンター」の東京にあるアジア事務所で新入社員を募集していることを知っていたので、凛の就職最終試験的な同行になっているのだが、その旨は凛には伝えていない。結果がよければ、凛の望むジャーナリストとしての大きな一歩になるため稀世達は陰でそっと見守り、事あるごとにフォローしてきた。
 (「桜木町の母」が凜ちゃんに言った「転運・・」って言葉が思い出されるなぁ…。生き別れのお父さんと再会して、希望してた「世界的ジャーナリスト」への第1歩になってくれるといいねんけどな…。)と稀世は心の中で凜を応援した。
 
 太田と凛の接待旅行に合わせて、休みなしでフル回転の稀世に太田が気を使い、3日間の休みと臨時ボーナスの10万円をこっそりくれた。稀世は休みの初日は18時間寝続け、向日葵寿司の定休日に合わせてその後の2日間を金沢旅行にあてたのだった。
 今回は直には内緒にしているのは、言えば必ず「わしも一緒に行くで!」となることが分かっていたので「家の片づけで過ごしてあとはゆっくりと休みます。」とうそをついてきているのが少し心苦しい。
 三朗を旅行に誘ったとき、
「サブちゃん、秋の大阪の高級ホテル、クリスマスの志摩のホテルはいろいろあってあんまり・・・・イチャイチャできへんかったから、今回は思いっきり甘えさせてな。
 私、サブちゃんと「もう一段階・・・」上の付き合いが希望やからね!」
とそれとはなしに話すと三朗からも
「はい、ウエルカムです。門真にいるといつ直さんが来るかわかりませんから、旅行先は2人でゆっくりと過ごしましょうね。直さんには申し訳ないですけど「内緒」で行きましょうね。」
と前向きな言葉を得ることができた。

 三朗の車で朝早くに出発し、まずは羽咋市にある本物の宇宙船や宇宙服が展示されている「コスモアイル羽咋」を訪れた。稀世のお目当てだった、羽咋に墜落したUFOに乗っていたとされる宇宙人「サンダーくん」に会うことはできなかったが、数多くの展示物の「本物」の迫力と土産物コーナーの「宇宙食」に満足した。車で砂浜を走れる「千里浜ドライブウェイ」で潮風に吹かれデート気分を味わえた。
午後過ぎには金沢に到着し、ランチに金沢のソウルフード「ハントンライス」を味わった。「マグロのカツ」を頬張ると
「へー、マグロにはこんな食べ方もあるんやな!これはビールも進んでしまうな!」
とご機嫌で三朗にもビールを勧めた。

 その後、東茶屋街、兼六園、長町武家屋敷跡を散策し、夕方早い時間に「金沢おでん」の名店「赤玉本店」に入った。稀世が思う個室は取れなかったがカウンター席で食べる金沢おでん独特の具材で会話は大いに盛り上がった。
「この「いわしのつみれ」はサブちゃんの店で出してもええんとちゃう?全く臭みがないのは新鮮ないわしを使ってるってことなんやろな?」
「へー、「厚焼き玉子」がおでんの具になるんですね!甘くてふわふわで美味しいです。稀世さんも半分どうぞ!」
「がおっ、「加賀太きゅうり」って凄いな!きゅうりがおでんに入るなんて考えたことなかったわ!」
「金沢の「車麩」は凄いボリュームですね…。「車麩」はお土産で買って帰りましょうね。」
「きゃー、この「蟹面」っておでんにめっちゃ合う!この間、サブちゃんが作ってくれた「オス」の蟹面と違って「メス」は一段と「濃い」なぁ!」
などと盛り上がりながら、石川の地酒もどんどん進んだ。能登の復興を望みつつ、三朗が選んだ「白菊」や「奥能登」は薄味の金沢おでんにマッチしぐいぐい進んだ。

 すっかりほろ酔い状態になった稀世は三朗の耳元で囁いた。
「ホテルに帰ったら、温泉で汗流したらお部屋でイチャイチャしてね。「アレ・・」忘れんと持ってきてくれてるやんな?今晩こそ「最後まで」しよな。って、私、何言うてるんやろか。キャー恥ずかしい…。」
 照れる稀世に三朗は囁き返した。
「上手にできるかわかりませんが、頑張りますね。今日はここまでノートラブルでしたからこのまま安寧・・な夜を迎えたいですね…。」

 ホテルに戻り部屋に入ろうとすると、稀世のスマホに直から「今どこや?まりあちゃんの店で飲まへんか?」とラインが来た。三朗に見せると
「うーん、直さんやったら金沢までタクシー飛ばして来そうですから、ここはスルーしておきませんか?」
と直に反旗を翻す返事が来た。稀世はその言葉に納得し、ドアの鍵を開けた。
 洋室の真ん中にキングサイズのダブルベッドが横たわっているのを見て胸がときめいた。金沢の街で何度もチャレンジするも達成できなかった「キス」を稀世は求めた。三朗の正面で目を閉じ、顎を少し上げキスを待った。
 完全個室の空間の中、三朗の温かい唇は稀世の小さな唇に重なった。(がおっ、初めての「おしゃれキス・・・・・・」の達成やー!いきなり舌を絡めたりしたらサブちゃんびっくりしてしまうやろうから、ここは任せるか…。)うれしさと照れで早まる鼓動を感じながら、三朗の優しいキスを味わった。
 草食系の三朗にしては頑張り、稀世を抱きしめ一度、唇を離すと耳元で
「稀世さん…、大好きです。こうして稀世さんといよいよ・・・・と思うともうドキドキが止まりません。」
と甘く囁いた。

 稀世の心の中でファンファーレが鳴り(あぁ、ついに「私」を捧げる日が来たんや…。このままサブちゃんに身をゆだねるのもありかも…。)と思ったが、(あっ、今日のおトイレの時、ウォシュレットが故障してたんやった。ここはやっぱり先にお風呂できれいにしとかんとな。まがり間違って「拭き残し」や「紙」がついてたら嫌われてしまうかもしれへんもんな…)と変なところに気が回り
「優しいキスありがとう…。続きは「お風呂」の後でな…。」
 稀世は三朗の耳に唇が触れる位置で囁き返した。

 二人は旅行鞄をベッドの上で開き、互いに着替えの下着を取り出すとタオルや洗顔具が入った巾着袋にしまい、浴衣に着替えた。照れが前面に出てベッドをはさんで互いに背中を向けあっての着替えとなった。(もしかしてサブちゃんこっそり覗いてたりするかな?)と稀世は振り向いたが、三朗は振り返ることはなかった。(ごめん、サブちゃん、疑っちゃった…。)と心の中で稀世は詫びを入れた。
バクバク高鳴る心臓音に邪魔され会話無しに無言で地下にある大浴場に向かっていった。男女の大浴場の手前の貸し切りのカラオケルームと卓球場を過ぎ、男女を分けるのれんの前で声を掛け合った。
「じゃあ、サブちゃん、40分後にここで待ち合わせな。」
「ひゃ、ひゃい!ぴ、ぴよ・・さんも、ゆ、ゆっくり温泉を楽しんできてくだちゃいね…。」
 声が裏返りどもりながら噛みまくる三朗の浴衣の股間が盛り上がってるような気がしたが、笑いを堪える方に意識が向かい「エロい」ことから頭は離れた。


「おまけ」
キス待ち顔って難しい…。







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