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第10話 エミリオの隠された秘密
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ティアナの話を聞いて、俺は当初の予定通りエミリオを最初のターゲットにした。
あいつだけ、ティアナの傍に居る理由が違うのが妙に気になった。
残りの三人は、少なからずティアナに好意を持っているのが分かった。
互いに牽制させておけば、滅多な真似はしなさそうだが、エミリオだけは何をしでかすか分からない危険さがあった。
そしてティアナが気に病むサンドリア様の事もある。彼女と拗れた関係を修復するには、何らかの形でエミリオから働きかけてもらわねばどうしようもないのが現状だった。
翌日の放課後、俺はティアナに中庭に居るようお願いして、あの四人をその場所に誘導してもらった。
どこにいるのか探す所から始めるから見つからない。それならば最初に呼び寄せて、その時点でマークして尾行するのが何倍も効率的だ。
俺はピースケにエミリオを覚えさせ、見失わないように彼の後をつけさせた。
エミリオは園芸部に所属しているようで、そこに顔を出した後、温室のハーブの様子を観察していた。
その時、鋭い眼光でエミリオがコチラを見た。正確に言うと、ピースケを見たのだ。
「こんな所に迷い込んでくるなんて珍しいね。出口まで案内してあげるよ。おいで」
エミリオはピースケに向かって声をかけた。
ピースケはフルフルと首を左右に振って拒絶を示す。
「困ったな。ここの植物を荒らされると困るんだ……」
俺はピースケに指示を出す。エミリオに懐いているフリをしてくれと。
すると賢いピースケはエミリオの肩にとまり、スリスリと頬に頭を寄せて構ってくれとアピールをし始めた。
「あはは、くすぐったいよ。君、可愛いね」
これは好感触。いいぞ、ピースケもっとやれ。
ピースケの頑張りの結果、見事にエミリオを陥落させたピースケはその場にいる事を許された。
一通り水やりを終えたエミリオは、何種類かハーブを採取して研究室へ移動した。
ピースケもすかさずエミリオの肩に乗ってもぐりこむ。
「君も興味があるの? 仕方ないな、特別だよ?」
何の疑いを持つことなく、エミリオはピースケの入室を許可した。恐るべし、ピースケの愛らしさパワー。
上から白衣を羽織ったエミリオは、フラスコに何かの液体を注ぎ、先ほど採取した数種類のハーブを入れて軽く振ってる。
何を作っているのか探りたくて、ピースケにフラスコをのぞき込むよう指示を出す。
「あっ、だめだよ……」
エミリオの腕を軽快なステップでピョンピョンと飛ぶピースケの動きがくすぐったかったようで、エミリオは持っていたフラスコを傾けてしまった。そのせいで、エミリオのシャツとズボンが濡れてしまった。
ピースケ、反省だ。反省!
「ピー、ピー」
ごめんなさいと、ピースケに悲しそうな声を出させる。
「大丈夫、怒ってないよ。でもくすぐったいから何か持ってる時はやめてね」
エミリオ……以外にも動物には優しい奴だったようだ。
着ていた白衣を椅子の背にかけると、ロッカーから着替えを取り出したエミリオは、その場で来ていたシャツとズボンを脱いだ。
その光景を見た瞬間、俺は絶句した。
なぜかと言えば、男として見てはいけないものをみてしまったからだ。
女顔でそこまで身長は高くないし、華奢な体系をしていると思っていた。
白い布がぐるぐると巻かれて押し潰されている胸元には、隠しきれない膨らみがあった。そこから下に伸びる引き締まったくびれのあるウエスト。露わになった体系は、明らかに男のものではなかった。
エミリオが着替え終わるまで、慌てて俺は視界の共有を遮断した。
あいつ、女だったのか?!
いや、双子の妹が居るとゲルマンもティアナも言っていた。
つまりあいつは、そもそもエミリオじゃなくて、病に伏せているという双子の妹エレインじゃないのか?!
思わぬ所でエミリオの秘密を掴んだ俺は、ピースケに撤退命令を出した。
その日の夜、俺は悩んでいた。
やっと掴んだ秘密だが、それがあまりにも予想外すぎて扱いに困っていたのだ。
そもそも女のアイツに何のメリットがあってティアナに付きまとっていたのか。
そっち系の趣味なのかとも思ったが、普段見かけるエミリオはどう見ても男そのものだった。
ティアナには付きまとう癖に、婚約者のサンドリアとは距離を置く。
その理由は……自分の正体が女(エレイン)だとバレないための措置なんじゃないだろうか。
サンドリアと親しくしていたのなら、近くで接すれば正体がバレる確率が高い。
女だと悟られないようするのに一番の誤魔化しは、女を追いかけまわす事。
そうすれば、誰もアイツが双子の妹エレインだと思わないだろう。
そうして追い掛け回すには、余計な揉め事を避けるために、自分に興味を持たない相手が好ましい。
ハイネルとシリウスに追い掛け回され、かつサンドリアと親しくしていたティアナが、最適だったのだろう。
自分より身分の高い者が執拗に追い掛け回している故、好意を持たれにくい。
その上、懇意にしている友人の婚約者という立場がある。
絶対にティアナが自分に好意を抱く事はない。そう計算の上での行動だったのだと言えば説明がつく。
何らかの理由で、エミリオとエレインが入れ替わらければならない理由があったんだろう。
異なる姓で生活せざるを得ない大変さは、正直同情する。
しかしだからといって、ティアナを巻き込むのは許せない。
お貴族様の身勝手な事情に、俺の大切な幼馴染を巻き込むな!
あいつだけ、ティアナの傍に居る理由が違うのが妙に気になった。
残りの三人は、少なからずティアナに好意を持っているのが分かった。
互いに牽制させておけば、滅多な真似はしなさそうだが、エミリオだけは何をしでかすか分からない危険さがあった。
そしてティアナが気に病むサンドリア様の事もある。彼女と拗れた関係を修復するには、何らかの形でエミリオから働きかけてもらわねばどうしようもないのが現状だった。
翌日の放課後、俺はティアナに中庭に居るようお願いして、あの四人をその場所に誘導してもらった。
どこにいるのか探す所から始めるから見つからない。それならば最初に呼び寄せて、その時点でマークして尾行するのが何倍も効率的だ。
俺はピースケにエミリオを覚えさせ、見失わないように彼の後をつけさせた。
エミリオは園芸部に所属しているようで、そこに顔を出した後、温室のハーブの様子を観察していた。
その時、鋭い眼光でエミリオがコチラを見た。正確に言うと、ピースケを見たのだ。
「こんな所に迷い込んでくるなんて珍しいね。出口まで案内してあげるよ。おいで」
エミリオはピースケに向かって声をかけた。
ピースケはフルフルと首を左右に振って拒絶を示す。
「困ったな。ここの植物を荒らされると困るんだ……」
俺はピースケに指示を出す。エミリオに懐いているフリをしてくれと。
すると賢いピースケはエミリオの肩にとまり、スリスリと頬に頭を寄せて構ってくれとアピールをし始めた。
「あはは、くすぐったいよ。君、可愛いね」
これは好感触。いいぞ、ピースケもっとやれ。
ピースケの頑張りの結果、見事にエミリオを陥落させたピースケはその場にいる事を許された。
一通り水やりを終えたエミリオは、何種類かハーブを採取して研究室へ移動した。
ピースケもすかさずエミリオの肩に乗ってもぐりこむ。
「君も興味があるの? 仕方ないな、特別だよ?」
何の疑いを持つことなく、エミリオはピースケの入室を許可した。恐るべし、ピースケの愛らしさパワー。
上から白衣を羽織ったエミリオは、フラスコに何かの液体を注ぎ、先ほど採取した数種類のハーブを入れて軽く振ってる。
何を作っているのか探りたくて、ピースケにフラスコをのぞき込むよう指示を出す。
「あっ、だめだよ……」
エミリオの腕を軽快なステップでピョンピョンと飛ぶピースケの動きがくすぐったかったようで、エミリオは持っていたフラスコを傾けてしまった。そのせいで、エミリオのシャツとズボンが濡れてしまった。
ピースケ、反省だ。反省!
「ピー、ピー」
ごめんなさいと、ピースケに悲しそうな声を出させる。
「大丈夫、怒ってないよ。でもくすぐったいから何か持ってる時はやめてね」
エミリオ……以外にも動物には優しい奴だったようだ。
着ていた白衣を椅子の背にかけると、ロッカーから着替えを取り出したエミリオは、その場で来ていたシャツとズボンを脱いだ。
その光景を見た瞬間、俺は絶句した。
なぜかと言えば、男として見てはいけないものをみてしまったからだ。
女顔でそこまで身長は高くないし、華奢な体系をしていると思っていた。
白い布がぐるぐると巻かれて押し潰されている胸元には、隠しきれない膨らみがあった。そこから下に伸びる引き締まったくびれのあるウエスト。露わになった体系は、明らかに男のものではなかった。
エミリオが着替え終わるまで、慌てて俺は視界の共有を遮断した。
あいつ、女だったのか?!
いや、双子の妹が居るとゲルマンもティアナも言っていた。
つまりあいつは、そもそもエミリオじゃなくて、病に伏せているという双子の妹エレインじゃないのか?!
思わぬ所でエミリオの秘密を掴んだ俺は、ピースケに撤退命令を出した。
その日の夜、俺は悩んでいた。
やっと掴んだ秘密だが、それがあまりにも予想外すぎて扱いに困っていたのだ。
そもそも女のアイツに何のメリットがあってティアナに付きまとっていたのか。
そっち系の趣味なのかとも思ったが、普段見かけるエミリオはどう見ても男そのものだった。
ティアナには付きまとう癖に、婚約者のサンドリアとは距離を置く。
その理由は……自分の正体が女(エレイン)だとバレないための措置なんじゃないだろうか。
サンドリアと親しくしていたのなら、近くで接すれば正体がバレる確率が高い。
女だと悟られないようするのに一番の誤魔化しは、女を追いかけまわす事。
そうすれば、誰もアイツが双子の妹エレインだと思わないだろう。
そうして追い掛け回すには、余計な揉め事を避けるために、自分に興味を持たない相手が好ましい。
ハイネルとシリウスに追い掛け回され、かつサンドリアと親しくしていたティアナが、最適だったのだろう。
自分より身分の高い者が執拗に追い掛け回している故、好意を持たれにくい。
その上、懇意にしている友人の婚約者という立場がある。
絶対にティアナが自分に好意を抱く事はない。そう計算の上での行動だったのだと言えば説明がつく。
何らかの理由で、エミリオとエレインが入れ替わらければならない理由があったんだろう。
異なる姓で生活せざるを得ない大変さは、正直同情する。
しかしだからといって、ティアナを巻き込むのは許せない。
お貴族様の身勝手な事情に、俺の大切な幼馴染を巻き込むな!
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