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第五章 橙
第80話 「お願い」
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地の神殿の最奥部。
真なる地の神殿は、一転してシンプルな小部屋だった。
部屋の真ん中には小さな鳥居が建てられており、その少し奥にふかふかの座布団が置かれている。
部屋の中央部以外は土がむき出しになっていて、野菜や穀物のほか、小型化された柿や琵琶、桃、栗などの木が、季節に関係なく実をつけていた。
鳥居の周りにも、盆栽や観葉植物がたくさん並べられている。
そして、鳥居の先、手触りの良さそうな座布団の上には、小さな動物の姿をした何かが、ちょこんと座っていた。
一番近い動物は、狐……だろうか。
ぴんと立った耳、鋭い輪郭と細まった目元、ふさふさした尻尾。
だが、その身体は雪よりも白く、額には大きな丸い宝石が埋まっている。
そして、本物の狐よりも小さい。雪うさぎ程度の大きさだ。
「フレッド、久しぶりなんだよ~。会わないうちに干支がひとまわりしちゃったよ~」
「ううむ、すまんのう」
「いいよいいよ~。元気そうでよかったよ~」
地の精霊は、片方の前足を顔の前でフリフリしている。
力ある偉大な精霊だし、見た目は白狐なのに、その仕草は何だか人間らしくて可愛い。
「レアも、相変わらずのようじゃな」
「ふふん、レアの所は祈りを捧げに来る人が多いんだよ~。だからいつでも元気なんだよ~。
フレッドがいない間も、お祭りの日にはちゃんと女神姿で豊穣の祭壇に出かけてたんだよ~」
「そうかそうか、偉いのう」
「レア、偉いんだよ~。もっと褒めてもいいよ~」
「よしよし」
「にしし~」
フレッドは手を伸ばして、地の精霊レアの頭をわしゃわしゃと撫でている。
フレッドも安心したように笑っているし、レアも嬉しそうにしている。
神子と精霊。
セオとラスもそうだったが、彼らは深い絆と信頼で結ばれているのだろう。
「ところでレア……」
「うん、わかってるよ~。セオ、パステル、準備出来てる~?」
「「はい」」
私とセオは、同時に頷く。
「じゃあ、二人とお話ししたいから、フレッドはちょっと外で待っててくれる~?」
「わかったわい。ならその前に聞きたいんじゃが、火の精霊のこと、何か知っとるかい?」
「あ~、うん、ちょっと大変なことになってるみたいだよ~。まだ大丈夫だけど、このまま魔物化しちゃうと色々大変だよ~。
何百年か前にレアがなっちゃった時はね、尻尾が九本に割れて、爪が鋭くなって、身体も大きくなっちゃったんだよ~。
その時は人間たちがなんとか止めてくれたんだけど、大陸の西の方を砂漠に変えちゃったんだよ~。
あの時は、人間たちも大変だったみたいだけど、レアも辛かったよ~」
「うーむ、火の精霊はなんでそんなことになったんじゃ?」
「神子から悪意とか、破壊衝動が流れてきたんじゃないかなぁ~?
レアの時は、当時の神子が戦争に駆り出されてね~。力に取り憑かれちゃった神子の破壊衝動と、悪い魔力がたくさん流れてきたんだよ~。
けど、レアと違って火の精霊には神子が二人いるから、どっちかがダメでも、一人がまともでいる限りは何とか大丈夫だと思うよ~」
「ふむ、まだ時間の猶予はあるんじゃな。レア、感謝するぞい」
「はいはい~」
「じゃあ、ワシは外で待っとるぞ」
「またね~」
フレッドは私たちに目配せすると、扉を開け、外へ出ていったのだった。
扉が閉まるのを確認すると、レアはひらひら振っていた前足を下ろして、私とセオの方を向いた。
「ふう~。セオ、パステル。実は二人には、お願いがあるんだよ~」
「お願い、ですか? 私たちに?」
「そうだよ~。フレッド、最近、無理してるよね~? 最近、すっごく、怒ってるよ~」
「え?」
私はレアの言葉に、目を丸くした。
隣を見ると、セオはあまり驚いていないようだった。眉を下げ、寂しそうな、悲しそうな表情をしている。
もしかしたら、セオは気が付いていたのかもしれない。
「精霊と神子は、常に魔力が繋がってるんだよ~。魔力には感情が乗るんだよ~。レアにはお見通しだよ~」
「フレッドさんが、怒ってる……? どうして?」
「うん、半月ぐらい前からかな~? 何があったのかわからないけど、全然冷静じゃないんだよ~」
私がぼそりと呟くと、レアはそれを耳聡く拾いあげ、答えてくれた。
半月前といったら、フレッドに手紙を渡した頃だ。
私がセオの方を向くと、セオも同じタイミングでこちらを向いた。
「……あの手紙かしら?」
「だろうね」
「一体何が書いてあったのかな?」
「うーん……」
考えても答えは出そうにないが、とにかく実娘ソフィアからの手紙が原因とみて、間違いないだろう。
「とにかく、二人にはフレッドのことを注意して見ててほしいんだよ~。
フレッドは一人で何でも出来るせいで、一人で何でも解決しようとするんだよ~。
でも、人間も精霊も、持ちつ持たれつ、支え合う相手が必要なんだよ~」
「……わかりました。お祖父様が無理をしないよう、説得してみます」
「頼んだよ~。長くなってごめんよ~。じゃあ、預かっている色を返すよ~」
レアは、後ろを向いてごそごそしていたかと思うと、レアの額に嵌っているのと同じ色の宝石を取り出し、前足で器用に差し出した。
私とセオは顔を見合わせて、頷き合う。
美しくカットされた、大きな橙色の宝石に、同時に触れる。
その瞬間、私たちは橙色に煌めく宝石の中、多面体の世界に吸い込まれていった――。
真なる地の神殿は、一転してシンプルな小部屋だった。
部屋の真ん中には小さな鳥居が建てられており、その少し奥にふかふかの座布団が置かれている。
部屋の中央部以外は土がむき出しになっていて、野菜や穀物のほか、小型化された柿や琵琶、桃、栗などの木が、季節に関係なく実をつけていた。
鳥居の周りにも、盆栽や観葉植物がたくさん並べられている。
そして、鳥居の先、手触りの良さそうな座布団の上には、小さな動物の姿をした何かが、ちょこんと座っていた。
一番近い動物は、狐……だろうか。
ぴんと立った耳、鋭い輪郭と細まった目元、ふさふさした尻尾。
だが、その身体は雪よりも白く、額には大きな丸い宝石が埋まっている。
そして、本物の狐よりも小さい。雪うさぎ程度の大きさだ。
「フレッド、久しぶりなんだよ~。会わないうちに干支がひとまわりしちゃったよ~」
「ううむ、すまんのう」
「いいよいいよ~。元気そうでよかったよ~」
地の精霊は、片方の前足を顔の前でフリフリしている。
力ある偉大な精霊だし、見た目は白狐なのに、その仕草は何だか人間らしくて可愛い。
「レアも、相変わらずのようじゃな」
「ふふん、レアの所は祈りを捧げに来る人が多いんだよ~。だからいつでも元気なんだよ~。
フレッドがいない間も、お祭りの日にはちゃんと女神姿で豊穣の祭壇に出かけてたんだよ~」
「そうかそうか、偉いのう」
「レア、偉いんだよ~。もっと褒めてもいいよ~」
「よしよし」
「にしし~」
フレッドは手を伸ばして、地の精霊レアの頭をわしゃわしゃと撫でている。
フレッドも安心したように笑っているし、レアも嬉しそうにしている。
神子と精霊。
セオとラスもそうだったが、彼らは深い絆と信頼で結ばれているのだろう。
「ところでレア……」
「うん、わかってるよ~。セオ、パステル、準備出来てる~?」
「「はい」」
私とセオは、同時に頷く。
「じゃあ、二人とお話ししたいから、フレッドはちょっと外で待っててくれる~?」
「わかったわい。ならその前に聞きたいんじゃが、火の精霊のこと、何か知っとるかい?」
「あ~、うん、ちょっと大変なことになってるみたいだよ~。まだ大丈夫だけど、このまま魔物化しちゃうと色々大変だよ~。
何百年か前にレアがなっちゃった時はね、尻尾が九本に割れて、爪が鋭くなって、身体も大きくなっちゃったんだよ~。
その時は人間たちがなんとか止めてくれたんだけど、大陸の西の方を砂漠に変えちゃったんだよ~。
あの時は、人間たちも大変だったみたいだけど、レアも辛かったよ~」
「うーむ、火の精霊はなんでそんなことになったんじゃ?」
「神子から悪意とか、破壊衝動が流れてきたんじゃないかなぁ~?
レアの時は、当時の神子が戦争に駆り出されてね~。力に取り憑かれちゃった神子の破壊衝動と、悪い魔力がたくさん流れてきたんだよ~。
けど、レアと違って火の精霊には神子が二人いるから、どっちかがダメでも、一人がまともでいる限りは何とか大丈夫だと思うよ~」
「ふむ、まだ時間の猶予はあるんじゃな。レア、感謝するぞい」
「はいはい~」
「じゃあ、ワシは外で待っとるぞ」
「またね~」
フレッドは私たちに目配せすると、扉を開け、外へ出ていったのだった。
扉が閉まるのを確認すると、レアはひらひら振っていた前足を下ろして、私とセオの方を向いた。
「ふう~。セオ、パステル。実は二人には、お願いがあるんだよ~」
「お願い、ですか? 私たちに?」
「そうだよ~。フレッド、最近、無理してるよね~? 最近、すっごく、怒ってるよ~」
「え?」
私はレアの言葉に、目を丸くした。
隣を見ると、セオはあまり驚いていないようだった。眉を下げ、寂しそうな、悲しそうな表情をしている。
もしかしたら、セオは気が付いていたのかもしれない。
「精霊と神子は、常に魔力が繋がってるんだよ~。魔力には感情が乗るんだよ~。レアにはお見通しだよ~」
「フレッドさんが、怒ってる……? どうして?」
「うん、半月ぐらい前からかな~? 何があったのかわからないけど、全然冷静じゃないんだよ~」
私がぼそりと呟くと、レアはそれを耳聡く拾いあげ、答えてくれた。
半月前といったら、フレッドに手紙を渡した頃だ。
私がセオの方を向くと、セオも同じタイミングでこちらを向いた。
「……あの手紙かしら?」
「だろうね」
「一体何が書いてあったのかな?」
「うーん……」
考えても答えは出そうにないが、とにかく実娘ソフィアからの手紙が原因とみて、間違いないだろう。
「とにかく、二人にはフレッドのことを注意して見ててほしいんだよ~。
フレッドは一人で何でも出来るせいで、一人で何でも解決しようとするんだよ~。
でも、人間も精霊も、持ちつ持たれつ、支え合う相手が必要なんだよ~」
「……わかりました。お祖父様が無理をしないよう、説得してみます」
「頼んだよ~。長くなってごめんよ~。じゃあ、預かっている色を返すよ~」
レアは、後ろを向いてごそごそしていたかと思うと、レアの額に嵌っているのと同じ色の宝石を取り出し、前足で器用に差し出した。
私とセオは顔を見合わせて、頷き合う。
美しくカットされた、大きな橙色の宝石に、同時に触れる。
その瞬間、私たちは橙色に煌めく宝石の中、多面体の世界に吸い込まれていった――。
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