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二章:大学生アリスと社会人兎の擦れ違い
アリスの学生ライフ 12
しおりを挟む寝返りを打ち視線を向ければ、手にチューブを持った翔がドアを閉めていた。
「ただいま、カケル。この薬、カケルが用意したの? 痔用の塗り薬」
チューブの蓋を開けてベッドに近付いて来る男に顔だけを向け睨み付ける。
「っんな訳あるか。合格祝いだとか言って親父に渡されたんだよ。何かあった時に絶対に役に立つからとか何とか。取り敢えずトイレで使う物かと思って仕舞っておいたんだよ」
あまり言いたくはなくて黙っていたのに、結局は自分の口で説明する羽目になり、架は面白くなかった。
ふーん、と相槌を打ちベッドに乗り上げる翔の顔には、ほわほわ、とした笑みが浮かんでいる。
可愛らしい顔を彩る柔い笑顔だが、彼の腹の中は真っ黒だと架は知っていた。
可愛く笑っているからと言って油断は出来ないのだ。
「ねえ、カケル。服、脱いでよ」
「勝手に脱がせたら良いだろ」
指一本動かすのも怠くてぶっきらぼうに言い放つと、翔の腕が腹と胸部に潜り込む。
ごろん、と俯せから仰向けに転がされ、伸びてきた手がベルトを外していくのを枕を抱き締めて眺める。
「カケル、腰上げられる?」
ズボンの釦が外され、ジジジー、とジッパーが下ろされる。
ん、と短く返事を返し、恐る恐る足裏に力を入れていく。
ずきん、と途端に腰部に走った激痛に浮かび掛かった肉体が沈む。
「ごめんね、カケル。そのままでいいよ」
「ま、っ、待てよ。できるから」
申し訳なさそうに歪む翔の顔を見たくなかった。
なんとか自分で身体を持ち上げようともう一度足に力を入れようとして頭ごと抱き締められてしまう。
翔と架の間で枕が潰れている。
「無理しないで。僕が悪いのは事実だから。カケルが気にすることじゃないよ。寧ろ君は、もっと僕に怒るべきだ」
力を抜け、とばかりに頭を撫でられ、渋々と脱力させ翔の首元に鼻先を埋めた。
いつでも架は翔に逆らえない。
口では文句を言っても、彼を受け入れてしまうのだ。
言葉には形容しがたい愛しさは、きっと翔には理解出来ない類のものだろう。
「怒ってどうすんだよ? それに俺は。お前に支配されんの、嫌いじゃない」
翔の身体が離れていき、下穿きを下着ごと器用にずり降ろされた。
足から抜け落ちたスラックスがベッドの下に落ちていく。
「そんなこと言うと、鎖で繋いで僕しか見えなくしたくなっちゃうから。あんまり無防備に可愛いことを言ったら、駄目だよ? それともカケルは、本当は僕に身も心も束縛されたいのかな?」
スーツの上着を脱がしていく翔の口角が上向いていく。
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