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二章:大学生アリスと社会人兎の擦れ違い
アリスの学生ライフ 11
しおりを挟む否定する架に意地悪く問う翔は楽しそうに笑っていた。
くそっ、と悪態を吐いた架の唇が尖っていく。
「……ぎゅう、されたい。お、お前が! 俺のこと、乱暴にするから、っ、だから、俺! ショウのせいだろ。責任取れよ、バカ」
じわり、と目尻に浮かぶ滴(しずく)は零れ落ちる前に翔の舌に舐め取られて消えた。
乱暴な行為は矢張り辛くて痛くて悲しいのだ。
翔の為に受け入れるのは堪えられるが、決して平気な訳ではない。
唇を噛み締めて嗚咽を堪えた。
「うん、ごめんね。ごめんね、カケル。僕が弱いから君を傷付けた。謝って許されることではないけど。お願い、嫌いにならないで。僕から離れて行かないで。君がいない世界なんて堪えられないんだ」
ぎしり、とベッドが軋み、翔が乗り上げたのだと認識する間もなく頭を抱き込まれる。
何度も髪を撫で梳いていくのが心地良い。
縋るみたいに震えて腕を回してくる翔を、バカな奴だ、と思った。
彼の鎖骨に額を押し当てる。
「バカだろ、お前。嫌いになれないから今こうして一緒にいるんだ。今更何をされたところで嫌いになんかならねぇよ。お前に、愛されたい、とか思ってんのに、どうして離れなきゃいけないんだよ? ショウのこと愛してるのに、手放したりしない」
離れていく翔の身体を追うように伸びた腕を取られ、手の甲に彼の額が押し当てられた。
まるで祈りを捧げるかの如く、翔は動かない。
「何があっても、僕はカケルを愛しているよ。それだけは、信じて欲しい」
真剣に告げられた台詞に頷きを返すと、手が解放された。
ふわり、と額に口付けを落とし、翔はベッドから降りていく。
「いい子で待っててね、カケル。お薬塗ったら一杯、ぎゅう、してあげる」
頬を撫でられ、憮然とした顔で頷いた。
可愛くない顔をしているのだろう、と解っていても嬉しいのを前面に押し出すのはキャラではないとブレーキが掛かってしまう。
「早くしろよ。お前が、足んないんだ」
引き寄せた枕を抱き締め顔を埋めた。
ちらり、と片目だけを覗かせ翔を窺うと、口元を押さえているところだった。
「カケルはズルい。男前の癖に可愛くて。僕、どうしたらいいんだろ?」
双眸を瞬かせ熱い息を吐き出す翔に「バーカ」と放ち、ごろん、と枕を抱いたまま俯せにと転がる。
背中を上にしていた方が身体は楽な気がした。
「さっさと薬取って来いよ」
命令口調で告げる架に「仰せのままに」と笑いを含んだ翔の返答が返ってくる。
扉が開閉する音がして彼が部屋を出て行ったことを認識した。
5分もしないで扉の開く音が耳に届く。
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