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9話 デート×ギャル
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初デート当日。
賢人は待ち合わせの場所である渋谷駅のハチ公前で、時間潰しに携帯をイジっていた。
勢いのあまり予定時間より早く来てしまったからだ。
賢人はこの日の為にと事前に選んでいた服装でファッションを決め込んで来た。
服装は青の半袖シャツの上に灰色を基調としたパーカーと茶色だが、どちらかというと黒に近い半ズボンといった今時の好青年が着るシンプルな物だった。
「ハァ・・・ハァー・・・・・・」
今の賢人は落ち着いているようで良く見てみると、額から少しだけ汗が流れている。
まさしく緊張している証拠だ。
更に緊張をほぐしたいつもりで溜め息を2回ついた。
「ハァ、ホントにドキドキしてきた・・・
それにしても、相変わらず人多いなぁ。渋谷」
小学校の時から東京には馴れているとはいえ、毎日のように変わることの無い光景に改めて感心していると・・・
「賢人くーん!」
「あっ里奈先p・・・!?」
聞き慣れる声だと思えば、里奈の声だった。
長い時間待ってようやく合流できた(ただ賢人が早過ぎただけ)と思い振り返ってみたが、賢人は最後の言葉を上手く言葉に出来なかった。
「約束の時間ぴったりだね!合流できて良かった!」
一目見ただけでは里奈とはとても思えない程の金髪が特徴的なギャルがそこにいた。
本人にとってはこれが普通だと言っているような振る舞いで全く気にしていない様子だったが、賢人からすれば頭をフル回転させても考えられなければ、たどり着くことも不可能な出来事を目の当たりにしている状態だ。
ついこの間まではあんなに綺麗だったロングヘアーが今では右側に纏められ、髪の色は紫から黄金色にまで染め上がり、上が黒の薄めのワンピースで下の部分を蝶々結びにして色白めいた肌とへそを見せつけるようで、下は赤を基調とした色気を感じさせるミニスカートを履いており、掛けていた眼鏡も無いその姿はまさしく『ギャル』そのもので、里奈のグラマラスな身体を本格的に発揮させるような印象が伝わってくる。
里奈もまた初デートだけあって彼女なりに相当の気合いを入れてきたのだろうと賢人はすぐに悟った。
先日に見たギャルのしゃべり方の件もあったことから賢人はまだ戸惑いながらも信じがたいこの現状を納得いく上で受け入れることができた。
「もしかして、思ってより来るのが遅かった?」
「そんなこと無いですよ、僕が早過ぎただけなんで・・・それより先輩、その格好・・・・・・」
「・・・これ?友達と遊びに行く時は大体こういうの着ているよ。どうかな?もしかして気に入らなかった?」
その外見とは裏腹に中身は普段から学校で見るいつもの里奈で、口調もまたいつも通りそのままな彼女はもじもじと喋った。
「えっと・・・その・・・一瞬誰だか分からなかったけど・・・里奈先輩はスタイルも良いし綺麗だから、そういう格好も似合っているし、可愛いと思いますよ・・・?」
「ありがとう。賢人くんにそう言われると嬉しいわ」
(え!?マジでマジで!?
賢人くんが可愛いって言ってくれたー!!)
賢人から見ると里奈の表情は顔を赤く染めながら照れているだけの状態だが、里奈の心の中では大はしゃぎだった。
「じ、じゃあ行きましょうか。・・・デートに」
「・・・うん!」
賢人が言い終わると積極的とばかりに里奈の手を繋ぎ、里奈も応えるべくに笑顔で返事して自身の手を握ってくる賢人の手をそっと握り返した。
賢人は握っている里奈の手の握力が少しだけ強くなったのを感じて里奈も自身と同じ気持ちになっているのだと思い嬉しくなった。
そして互いに相手に恥ずかしさを紛らわす為に歩き出した。
しかし二人は自分達のことをどこにでもいるごく普通のカップルだと思っているらしいが周りからすると、『金髪のイケイケギャルと無理矢理連れてこられた可愛い弟』しか見えないことを二人は気づいていない。
◇◇◇◇
「ここのスイーツ、すごい美味しいよねー?」
「そうですね、こういうお店とか良く来るんですか?」
「うーん、前は良く来てたけど最近は学校が忙しいこともあるから、たまに来るぐらいかな?」
「へぇー・・・」
賢人と里奈は駅から歩いて数分後、この辺りで一番人気の大型ショッピングモールで、まず入り口から入ってすぐに分かるカフェで里奈は苺とラズベリーが乗ったチーズケーキを、賢人はLサイズのティラミスとミルクココアで軽食を取ることにした。意外と甘党な二人にとって、これ程までに幸せな気持ちになったのはどのくらい前だろう。
「賢人くんが食べてるティラミス、すごい大きさだねぇ・・・?」
「ホント僕もそう思いました・・・。だけど、これぐらいの大きさなら食べられますけどね」
驚きながらも自慢気に語っている賢人だがら店一番の大きさであるLサイズといってもその大きさは計り知れず、注文した者の想像を絶する。
その異常な大きさを誇るティラミスを小柄な賢人が食べていると思うと里奈はおろか他のお客さんも驚くどころか絶句した。
賢人はこう見えてもバラエティ番組で数々のチャレンジグルメを制したタレント並みの大食漢なのだ。
「プゥ、美味かった・・・」
「ほ、本当に食べ切った・・・・・・」
賢人は食べ終わった後、クリームとチョコで汚れた口の周りをおしぼりで綺麗に拭き取ると、小さなゲップを出した。
「ねぇ、この中で私が良く行っている店があるんだけど・・・良いかな?」
「あぁ良いですよ、せっかくのデートですし・・・」
「ありがとう!」
賢人がOKしてくれた事に里奈は笑顔で返した。
その笑顔は学校で告白された時にも見たものと同じで、本性がこんなギャルでもやっぱり里奈は里奈だなと微笑ましくなった。
◇◇◇◇
「ほら!こういうの可愛くない?」
「そ、それって?」
里奈が行きつけだという店に行ってみると、そこはまるで洋館のような大人びた雰囲気でありながらブレスレットやネックレス、指輪といった、カップルにもってこいの品が売られている店だった。
賢人と里奈の他にも中学生や大学生だけでなく、50から60代までのカップルまでもが広い店内の見て回っていた。
その中で賢人と里奈は一緒に店の中に入ってすぐ目に入った赤と青の二色をそれぞれ基調とした二つの猫ストラップを見ていた。
「うん、カップル用のストラップで、このお店一番の限定商品なんだって」
「へぇ、可愛いし面白いですねー」
「それでさら私たち付き合ってまだ間もないけどさ、つ、付き合い始めた記念にどうかなと・・・」
「はい!とても嬉しいです!」
「本当?私も嬉しいわ!」
「あ、あの~突然なんですが、すみません・・・」
「「?」」
二人だけの空気をぶち壊しにするかのように一人の女性店員が残念そうにしながら話し掛けてきた。
「どうかしましたか?」
何だろう?と思いながら、里奈は女性店員に質問した。すると女性店員は恐る恐るにして、口を開いた。
「申し訳ありませんが、当店はご姉弟での入店は禁じられているんですけれども・・・」
「「え・・・?」」
女性店員の思いもよらない一言に、賢人も里奈もポカンとした。
確かに見た目からしてカップルとはあまり思えなくもなかった。言われてみれば表にあった看板の下に小さな文字で「カップル以外の入店はお断り」と書いてあった。
「あの、すいません?
私たち同じ高校で、付き合っているんですけど?」
シラケてしまった(?)この状況を打破するかのように里奈が女性店員に対して、正論を釘つけた。
「・・・!も、申し訳ございません!!
わ、私としたことが、つい・・・」
気づけば周りにいた人達がクスクスと三人を笑って見ていた。ハッとした女性店員は自身が勘違いしていたことに気づき思わず慌てて謝罪した。
「お詫びとしてはなんですど・・・お買い上げになった商品の値段を割引させてもらいます!」
「「え!?良いんですか!?」」
◇◇◇◇
「随分割引してもらったね、私たち・・・」
「そ、そうですね・・・」
賢人と里奈はショッピングモールの1階の中心にある休憩スペースで一休みしていた。
いざこざがありながらも、二人は無事に色違いでお揃いの猫ストラップを買うことができた。
「あっそうだ!私トイレ行ってくるから、ちょっと待っててくれない?」
「あぁ、良いですよ!確か向こうのお土産物が売っている店の近くにあったような・・・」
「すぐに戻ってくるからね」
里奈はそう言って、自身のバッグを持ってトイレに向かって走っていった。
ポツンと一人でその場に残ることになった賢人が、ショルダーから携帯を取り出そうとしたその時・・・
プルル~プルル~プルル~!
(・・・?誰からだろう?)
携帯から聞き覚えのある着信音が鳴り出したので賢人は不思議に思いつつ、画面に表示されている呼び出し人の名前を見てみるとそこには・・・
「え!?母さん!?」
こんな時にも関わらず思いもよらない人物からの着信に賢人は驚いたものの、すかさず応答を選択し携帯を右耳に近づけてすぐに大きな声で喋った。
「もしもし母さん?どうしたの、急に電話なんか掛けてきて・・・」
『何よ賢人ー、久しぶりに話したいと思って電話したのに冷たいわねー・・・』
賢人、そして結衣と碧の母親の山本愛美は電話越しで、まるで子供みたいな能天気そうな相変わらずの口調で喋った。
「あ、そうなんだ・・・って、仕事の方は大丈夫なの?」
『ついさっき仕事の打ち合わせが終わった後で、父さんと一緒にお茶してるの』
「父さんも一緒なの!?
『えぇそうよ。束の間の大人のデートって奴よ♪』
「で、デートって・・・
まぁ、こっちも同じだけどさ・・・」
「ん?なんか言った?」
「ううん、なんでもない!!
小声で喋ったつもりが、言ってる内容までは聞こえなかったものの独り言を言ってることには気づいた愛美は疑問に思って質問したが、賢人は聞かれたかと思って慌てて誤魔化した。
『新しい高校はどう?友達とは上手くやってる?』
「あぁ、仲良く出来てるよ」
『好きな人とか、彼女とか出来た?』
「い、いないよ!何言ってんの、母さん!?」
『あらあら、照れちゃってー♥』
「そんなんじゃないって!」
愛美が聞いていることはある意味間違ってはいないが、まるで図星を突かれたのようで賢人は思わず慌てながら誤魔化して答えた。
それに対して愛美は照れている賢人を茶化すかのように意地悪な心で笑った。
『じゃあ久しぶりに可愛い息子の元気な声も聞けたことだし、そろそろ切るわ』
「うん、じゃあね母さん。父さんにもよろしく言っといて!あと、たまには家に帰ってきてね?」
『はいはい、じゃあまたねー!』
最後まで子供のような無邪気な態度で接した挙げ句、電話を切った母親に賢人は呆れたもののいつかまた二人が帰ってくるようにと、心の中で願いながらそっと携帯の電源を切った。
(里奈先輩、遅いなぁ・・・大丈夫かなぁ?)
賢人は一人椅子に座りながら里奈の帰りを待っているが、あまりにも遅い為段々心配と不安になってきた。
ーーーバッ!!
賢人がひと息ついて椅子に再びもたれようとした次の瞬間、後ろから両手で誰かに目隠しされた。
(うわ!?何だ!?)
賢人は突然の出来事に驚いたがすぐに落ち着きを取り戻して里奈が仕掛けてきた悪戯だと思って冷静に笑った。
(ったく、里奈先輩までこんな・・・)
ところがその目隠しに賢人は少しばかり違和感があった。賢人の両目を覆っている手は里奈の手より一回り大きく、人差し指に指輪をはめているのかその指輪がおでこに当たって少し痛かった。
思い返してみると里奈は指輪は付けていなかった。
じゃあ今自身に目隠しをしているのは里奈ではなく、一体誰なのだろうか?
そう思って目隠ししている手を無理矢理振りほどいて後ろを振り返った。
「いや~ん、ちょっとからかおうと思っただけなのに~」
「見た目とは違って、乱暴な所もあるみた~い♡」
「大胆な所もあるものですわね」
そこにはさっき自身に目隠ししてきた白に近い金髪かつ短髪に褐色の肌を持った里奈よりも露出の高い服装をした女性いわゆる『黒ギャル』。
その後ろに赤茶色の髪をツインテールに纏めて制服に近いアイドル衣装を着た女性。
そして他の二人とは対称的に服装は二人は一際落ち着いている代わりにまるでお嬢様のような物腰と印象を釘付ける女性といった印象がそれぞれ異なる三人の女性がいた。
「・・・え?・・・え!?」
今の賢人には戸惑いと驚きのあまり何も言い出すことが出来なかった。
「キャハ♡やっぱり実物で見た方がもっと可愛いかも♡」
賢人は待ち合わせの場所である渋谷駅のハチ公前で、時間潰しに携帯をイジっていた。
勢いのあまり予定時間より早く来てしまったからだ。
賢人はこの日の為にと事前に選んでいた服装でファッションを決め込んで来た。
服装は青の半袖シャツの上に灰色を基調としたパーカーと茶色だが、どちらかというと黒に近い半ズボンといった今時の好青年が着るシンプルな物だった。
「ハァ・・・ハァー・・・・・・」
今の賢人は落ち着いているようで良く見てみると、額から少しだけ汗が流れている。
まさしく緊張している証拠だ。
更に緊張をほぐしたいつもりで溜め息を2回ついた。
「ハァ、ホントにドキドキしてきた・・・
それにしても、相変わらず人多いなぁ。渋谷」
小学校の時から東京には馴れているとはいえ、毎日のように変わることの無い光景に改めて感心していると・・・
「賢人くーん!」
「あっ里奈先p・・・!?」
聞き慣れる声だと思えば、里奈の声だった。
長い時間待ってようやく合流できた(ただ賢人が早過ぎただけ)と思い振り返ってみたが、賢人は最後の言葉を上手く言葉に出来なかった。
「約束の時間ぴったりだね!合流できて良かった!」
一目見ただけでは里奈とはとても思えない程の金髪が特徴的なギャルがそこにいた。
本人にとってはこれが普通だと言っているような振る舞いで全く気にしていない様子だったが、賢人からすれば頭をフル回転させても考えられなければ、たどり着くことも不可能な出来事を目の当たりにしている状態だ。
ついこの間まではあんなに綺麗だったロングヘアーが今では右側に纏められ、髪の色は紫から黄金色にまで染め上がり、上が黒の薄めのワンピースで下の部分を蝶々結びにして色白めいた肌とへそを見せつけるようで、下は赤を基調とした色気を感じさせるミニスカートを履いており、掛けていた眼鏡も無いその姿はまさしく『ギャル』そのもので、里奈のグラマラスな身体を本格的に発揮させるような印象が伝わってくる。
里奈もまた初デートだけあって彼女なりに相当の気合いを入れてきたのだろうと賢人はすぐに悟った。
先日に見たギャルのしゃべり方の件もあったことから賢人はまだ戸惑いながらも信じがたいこの現状を納得いく上で受け入れることができた。
「もしかして、思ってより来るのが遅かった?」
「そんなこと無いですよ、僕が早過ぎただけなんで・・・それより先輩、その格好・・・・・・」
「・・・これ?友達と遊びに行く時は大体こういうの着ているよ。どうかな?もしかして気に入らなかった?」
その外見とは裏腹に中身は普段から学校で見るいつもの里奈で、口調もまたいつも通りそのままな彼女はもじもじと喋った。
「えっと・・・その・・・一瞬誰だか分からなかったけど・・・里奈先輩はスタイルも良いし綺麗だから、そういう格好も似合っているし、可愛いと思いますよ・・・?」
「ありがとう。賢人くんにそう言われると嬉しいわ」
(え!?マジでマジで!?
賢人くんが可愛いって言ってくれたー!!)
賢人から見ると里奈の表情は顔を赤く染めながら照れているだけの状態だが、里奈の心の中では大はしゃぎだった。
「じ、じゃあ行きましょうか。・・・デートに」
「・・・うん!」
賢人が言い終わると積極的とばかりに里奈の手を繋ぎ、里奈も応えるべくに笑顔で返事して自身の手を握ってくる賢人の手をそっと握り返した。
賢人は握っている里奈の手の握力が少しだけ強くなったのを感じて里奈も自身と同じ気持ちになっているのだと思い嬉しくなった。
そして互いに相手に恥ずかしさを紛らわす為に歩き出した。
しかし二人は自分達のことをどこにでもいるごく普通のカップルだと思っているらしいが周りからすると、『金髪のイケイケギャルと無理矢理連れてこられた可愛い弟』しか見えないことを二人は気づいていない。
◇◇◇◇
「ここのスイーツ、すごい美味しいよねー?」
「そうですね、こういうお店とか良く来るんですか?」
「うーん、前は良く来てたけど最近は学校が忙しいこともあるから、たまに来るぐらいかな?」
「へぇー・・・」
賢人と里奈は駅から歩いて数分後、この辺りで一番人気の大型ショッピングモールで、まず入り口から入ってすぐに分かるカフェで里奈は苺とラズベリーが乗ったチーズケーキを、賢人はLサイズのティラミスとミルクココアで軽食を取ることにした。意外と甘党な二人にとって、これ程までに幸せな気持ちになったのはどのくらい前だろう。
「賢人くんが食べてるティラミス、すごい大きさだねぇ・・・?」
「ホント僕もそう思いました・・・。だけど、これぐらいの大きさなら食べられますけどね」
驚きながらも自慢気に語っている賢人だがら店一番の大きさであるLサイズといってもその大きさは計り知れず、注文した者の想像を絶する。
その異常な大きさを誇るティラミスを小柄な賢人が食べていると思うと里奈はおろか他のお客さんも驚くどころか絶句した。
賢人はこう見えてもバラエティ番組で数々のチャレンジグルメを制したタレント並みの大食漢なのだ。
「プゥ、美味かった・・・」
「ほ、本当に食べ切った・・・・・・」
賢人は食べ終わった後、クリームとチョコで汚れた口の周りをおしぼりで綺麗に拭き取ると、小さなゲップを出した。
「ねぇ、この中で私が良く行っている店があるんだけど・・・良いかな?」
「あぁ良いですよ、せっかくのデートですし・・・」
「ありがとう!」
賢人がOKしてくれた事に里奈は笑顔で返した。
その笑顔は学校で告白された時にも見たものと同じで、本性がこんなギャルでもやっぱり里奈は里奈だなと微笑ましくなった。
◇◇◇◇
「ほら!こういうの可愛くない?」
「そ、それって?」
里奈が行きつけだという店に行ってみると、そこはまるで洋館のような大人びた雰囲気でありながらブレスレットやネックレス、指輪といった、カップルにもってこいの品が売られている店だった。
賢人と里奈の他にも中学生や大学生だけでなく、50から60代までのカップルまでもが広い店内の見て回っていた。
その中で賢人と里奈は一緒に店の中に入ってすぐ目に入った赤と青の二色をそれぞれ基調とした二つの猫ストラップを見ていた。
「うん、カップル用のストラップで、このお店一番の限定商品なんだって」
「へぇ、可愛いし面白いですねー」
「それでさら私たち付き合ってまだ間もないけどさ、つ、付き合い始めた記念にどうかなと・・・」
「はい!とても嬉しいです!」
「本当?私も嬉しいわ!」
「あ、あの~突然なんですが、すみません・・・」
「「?」」
二人だけの空気をぶち壊しにするかのように一人の女性店員が残念そうにしながら話し掛けてきた。
「どうかしましたか?」
何だろう?と思いながら、里奈は女性店員に質問した。すると女性店員は恐る恐るにして、口を開いた。
「申し訳ありませんが、当店はご姉弟での入店は禁じられているんですけれども・・・」
「「え・・・?」」
女性店員の思いもよらない一言に、賢人も里奈もポカンとした。
確かに見た目からしてカップルとはあまり思えなくもなかった。言われてみれば表にあった看板の下に小さな文字で「カップル以外の入店はお断り」と書いてあった。
「あの、すいません?
私たち同じ高校で、付き合っているんですけど?」
シラケてしまった(?)この状況を打破するかのように里奈が女性店員に対して、正論を釘つけた。
「・・・!も、申し訳ございません!!
わ、私としたことが、つい・・・」
気づけば周りにいた人達がクスクスと三人を笑って見ていた。ハッとした女性店員は自身が勘違いしていたことに気づき思わず慌てて謝罪した。
「お詫びとしてはなんですど・・・お買い上げになった商品の値段を割引させてもらいます!」
「「え!?良いんですか!?」」
◇◇◇◇
「随分割引してもらったね、私たち・・・」
「そ、そうですね・・・」
賢人と里奈はショッピングモールの1階の中心にある休憩スペースで一休みしていた。
いざこざがありながらも、二人は無事に色違いでお揃いの猫ストラップを買うことができた。
「あっそうだ!私トイレ行ってくるから、ちょっと待っててくれない?」
「あぁ、良いですよ!確か向こうのお土産物が売っている店の近くにあったような・・・」
「すぐに戻ってくるからね」
里奈はそう言って、自身のバッグを持ってトイレに向かって走っていった。
ポツンと一人でその場に残ることになった賢人が、ショルダーから携帯を取り出そうとしたその時・・・
プルル~プルル~プルル~!
(・・・?誰からだろう?)
携帯から聞き覚えのある着信音が鳴り出したので賢人は不思議に思いつつ、画面に表示されている呼び出し人の名前を見てみるとそこには・・・
「え!?母さん!?」
こんな時にも関わらず思いもよらない人物からの着信に賢人は驚いたものの、すかさず応答を選択し携帯を右耳に近づけてすぐに大きな声で喋った。
「もしもし母さん?どうしたの、急に電話なんか掛けてきて・・・」
『何よ賢人ー、久しぶりに話したいと思って電話したのに冷たいわねー・・・』
賢人、そして結衣と碧の母親の山本愛美は電話越しで、まるで子供みたいな能天気そうな相変わらずの口調で喋った。
「あ、そうなんだ・・・って、仕事の方は大丈夫なの?」
『ついさっき仕事の打ち合わせが終わった後で、父さんと一緒にお茶してるの』
「父さんも一緒なの!?
『えぇそうよ。束の間の大人のデートって奴よ♪』
「で、デートって・・・
まぁ、こっちも同じだけどさ・・・」
「ん?なんか言った?」
「ううん、なんでもない!!
小声で喋ったつもりが、言ってる内容までは聞こえなかったものの独り言を言ってることには気づいた愛美は疑問に思って質問したが、賢人は聞かれたかと思って慌てて誤魔化した。
『新しい高校はどう?友達とは上手くやってる?』
「あぁ、仲良く出来てるよ」
『好きな人とか、彼女とか出来た?』
「い、いないよ!何言ってんの、母さん!?」
『あらあら、照れちゃってー♥』
「そんなんじゃないって!」
愛美が聞いていることはある意味間違ってはいないが、まるで図星を突かれたのようで賢人は思わず慌てながら誤魔化して答えた。
それに対して愛美は照れている賢人を茶化すかのように意地悪な心で笑った。
『じゃあ久しぶりに可愛い息子の元気な声も聞けたことだし、そろそろ切るわ』
「うん、じゃあね母さん。父さんにもよろしく言っといて!あと、たまには家に帰ってきてね?」
『はいはい、じゃあまたねー!』
最後まで子供のような無邪気な態度で接した挙げ句、電話を切った母親に賢人は呆れたもののいつかまた二人が帰ってくるようにと、心の中で願いながらそっと携帯の電源を切った。
(里奈先輩、遅いなぁ・・・大丈夫かなぁ?)
賢人は一人椅子に座りながら里奈の帰りを待っているが、あまりにも遅い為段々心配と不安になってきた。
ーーーバッ!!
賢人がひと息ついて椅子に再びもたれようとした次の瞬間、後ろから両手で誰かに目隠しされた。
(うわ!?何だ!?)
賢人は突然の出来事に驚いたがすぐに落ち着きを取り戻して里奈が仕掛けてきた悪戯だと思って冷静に笑った。
(ったく、里奈先輩までこんな・・・)
ところがその目隠しに賢人は少しばかり違和感があった。賢人の両目を覆っている手は里奈の手より一回り大きく、人差し指に指輪をはめているのかその指輪がおでこに当たって少し痛かった。
思い返してみると里奈は指輪は付けていなかった。
じゃあ今自身に目隠しをしているのは里奈ではなく、一体誰なのだろうか?
そう思って目隠ししている手を無理矢理振りほどいて後ろを振り返った。
「いや~ん、ちょっとからかおうと思っただけなのに~」
「見た目とは違って、乱暴な所もあるみた~い♡」
「大胆な所もあるものですわね」
そこにはさっき自身に目隠ししてきた白に近い金髪かつ短髪に褐色の肌を持った里奈よりも露出の高い服装をした女性いわゆる『黒ギャル』。
その後ろに赤茶色の髪をツインテールに纏めて制服に近いアイドル衣装を着た女性。
そして他の二人とは対称的に服装は二人は一際落ち着いている代わりにまるでお嬢様のような物腰と印象を釘付ける女性といった印象がそれぞれ異なる三人の女性がいた。
「・・・え?・・・え!?」
今の賢人には戸惑いと驚きのあまり何も言い出すことが出来なかった。
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