僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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8話 報告×発覚②

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「フゥ・・・」

賢人はミルクココアを飲みながら登校していたが、昨日・・のこともあった為か簡単には眠れずいつもより眠気が強く体がだるかった。

(あぁ、眠たーい・・・)

賢人は一旦ストローを口から離して大きなあくびをした。やはりいつも以上に疲れが溜まっている。

(今日はあんまり無理はしないで行動しよう・・・)

賢人が心の中で溜め息をついていると・・・

「賢人くーん!」

「あっ、里奈先輩!」

「奇遇だね!」

「そうですね」

「じゃあ一緒に行こうか・・・皆に怪しまれないように・・・」

「・・・ハイ」

彼女は石見里奈いわみりな。僕より1つ年上で学校の先輩だ。
僕たちは・・・昨日から付き合っている。


◇◇◇◇


「へぇ、賢人くんOKしてくれたんだ?」

「うん!」

校門の手前に差し掛かる際に他の生徒に怪しまれないようにと、賢人とは敢えて別行動を取ることによって怪しまれることなく下駄箱に向かって、それぞれの教室に向かった。
しかし賢人が教室に着いた直後にそれを予測していたのか、里奈からLINEで『また後でね♡』と送られてきたのは、また別の話。

そしてLINEで送ったメッセージを賢人が既読したのを確認すると、どんな反応リアクションをしたのか想像するだけで可笑おかしくなってしまっていたところを里奈のことが心配になった莉央が話しかけたことで、今に至る。

「それは良かったじゃない!」

「うん、ありがとう!」

以前里奈が取った行動・・から大丈夫だろうか?と身を案じていたが、今こうして親友の恋が成就のを聞かされて、莉央はとりあえず一安心した。

「・・・で?あんたさっきから携帯で何見てんの?」

「今朝スマホで撮ったお友達と仲良くしている時の賢人くん!」

ベシッ!

「あうっ!」

「変態かーい!?」

莉央は里奈の頭にからてチョップの如く冷静に素早くて強い突っ込みを入れた。

「前から思ってたけど、そうやって撮ったスマホ(の中にある写真)をニヤニヤしながら眺めるなんて、流石の私でも引くよ」

「な、眺めるだなんて・・・そんなの・・・ほ、本当に至近距離で眺めているみたいで出来ないよ・・・」

「・・・彼氏の写真をこっそり盗撮する上、携帯に保存することの方が、私にはよっぽど出来ないよ」

里奈は顔を赤くしてそう言ったが、対する莉央は目を細くしながら言った。
莉央の今の表情は見る限り平常心ではあるものの、雰囲気的に里奈のことを引いていた。

「あんたさ、そういうストーカーみたいな癖(?)、直しなよ。じゃないと・・・変な子だって思われるよ?」

「うん!そんなことぐらい分かってるよ!」

(本当に分かっているのやら・・・)

理解しているようで理解してなさそうな里奈に、莉央は呆れる他無かった。


◇◇◇◇


「・・・・・・」

朝の会が終わってこれから授業が始まるというのに、賢人は自身の席でぐったりしていた。
まぁそれもそのはずだった・・・

(本当に里奈先輩と付き合う事になるなんて・・・
もしも学校中の男子達にこのことが知れたら、僕は一体どうなることやら・・・)

昨日起きた出来事が頭から離れない。
緊張と胸がドキドキし過ぎたせいで頭痛と睡眠不足になる。
これからどうなるのやらと思うと胸がそわそわしてくるといった今の賢人は言わば心理学的(?)によるトライアタックを食らっている状態だ。 

「どうしたんだ賢人!朝から吊れない顔だぞー!!」

「うわー何ーーー!?」

突然背後から両肩を叩かれた挙げ句、大きな声で叫ばれた為、賢人は高い奇声(?)を上げて驚いた。

「な、なんだよ、急に大声上げて・・・」

「なにか浮かない顔をしていたから声をかけただが、少しやり過ぎだったようだな・・・」

「わ、悪かったな賢人・・・?」

「い、良いんだよ・・・」


「「?」」


流石に怒ると思われていたが賢人はさっきのリアクションと比べてみると、テンションは低めだった。

「なぁ賢人。今日は元気が無ぇけどなんかあったのか?」

「俺が見たところ、かなり疲れているなぁ?」

冷静に状況を把握した伸之に、ほぼ図星ともいえる疑問を突きつけられたが、賢人は昨日起きた出来事・・・・・・・・を話す訳にもいかず、上手く会話を誤魔化した。

「あぁ、昨日帰った後、久し振りに運動したみたんだけど、ちょっとやり過ぎちゃったみたいで・・・」

「そうなのか・・・」

「たまには体を動かすのは良いことだが、程々にしておかないと後がヒドくなるからな・・・」

「あぁ、ありがとう。
わざわざ心配かけて・・・」

「良いんだよ!俺たちは友達ダチだろ?」

「言っておくが、俺のことも忘れるなよ?」

「あぁ、二人ともありがとう!なんか元気出てきた!」

「だろだろ!?」

「フッ・・・」

意味不明な気難しくイジッてくるところはあるが、友達自分のことを心配して励ましてくれていることに賢人は嬉しくなり、教室の隅(賢人の席である為)で、3人で盛り上がっていたその時だった。

「すいませーん!このクラスに山本賢人って男子がいるのを聞いたんですがー!」

教室に入ってきた一人の女子生徒が叫ぶ勢いでそう言った。声が大きい割には、賢人よりではなくとも思ったより背が低く、黒の長い髪を一本の三つ編みに纏めた彼女は何故か賢人の名前を出した。

「なぁ、あれって2年の呉島くれしま先輩だよな?」

「そうだな、でもあの人が1年生の教室に来るなんて珍しいなぁ・・・」

「え、誰なの?」

呉島比奈くれしまひな
ほら、前に里奈先輩に告って振られた伊達先輩と付き合っていた人だよ!」

ひそひそと会話しながら様子を窺っていると、こちらの様子に気づいたのか、勢いよく賢人たちに方へ向かってきた。

「・・・君が賢人くんね?
話に聞いてた通り、やっぱり可愛いわね?」

「・・・そ、そうですけど・・・
僕に何か用ですか?」

「・・・」


「・・・!?」

「えっ?」

「なっ!」

「・・・っ!!

一瞬照れたものの、すぐに立て直して比奈に質問した瞬間、比奈は賢人と自身の胸が当たる程の距離まで近づいてきた。
その光景にその場にいた怜人や伸之だけでなく、遠くから見ていた真依も含めて教室にいたクラスメート達が唖然とするが、比奈は賢人の耳元でこう囁いてきた。

「(里奈が来てほしいって言ってたから、代わりに呼んで来てあげたの。屋上で待ってるって言ってたから、待たさないように早く行ってあげな!)」

「!」

すぐそばにいる怜人と伸之に聞こえない程度の小さく囁く比奈の言葉に賢人は驚いたが、里奈が呼んでいると知った途端、周り(怜人たち二人を含め)の視線を気にすること無く比奈に答える形で頷き、その場から立ち上がってそのまま走る勢いで教室を出ていった。


「「・・・??」」


「なぁ、比奈先輩。賢人あいつに何を話したんですか?」

「うーん・・・なんだろうねぇ?」

教室にいたいたクラスメート達は騒然としている中で怜人は比奈に質問したものの、比奈は何も無かったかのような曖昧な態度と口ぶりで答えるだけだった。


◇◇◇◇


(・・・ここか)

賢人は教室から出た後、B棟の2階から屋上への長い階段を上っていき屋上への出入り口にたどり着くと、深く深呼吸をしてドアノブを強く握ってゆっくりとドアを開けた。
そこには青くて広い空の下に広い屋上があったが、里奈の姿は無かった。
すると・・・

「あっ賢人くん!来てくれたのね!嬉しい!」

突然里奈の声がしたと思って周りをキョロキョロとしていると、屋上の更に上にある屋上(?)から里奈がしゃがみ込んでこちらを見下ろしていた。
よく見てみると、出入り口付近にはしごがあるのが分かった。

「り、里奈先輩!僕に用があるって言ってましたけど、どうしたんですか?」

「うん!その事なんだけど、今そっちに行くから、ちょっと待ってて!」

「あ、ハイ!」

里奈はそう言い終わると、立ち上がってからのその場から飛び降りる勢いで大ジャンプした。
しかし・・・・・・

「あっ・・・」

「・・・!!」

里奈がジャンプした次の瞬間、
風圧の影響で里奈のスカートが浮かび上がり、
黒色のパンツが丸見えになってしまった。

「み、見た・・・?」 」

 アクシデント・・・・・・を起こしながらも見事に着地した里奈は顔を赤くしてスカートを抑えながらもじもじとしながら賢人に質問した。
それに対して賢人は・・・

「あ、いやいや、その!
別に、見たいと思って見た訳じゃなくてですね・・・事故であって不可抗力というか・・・」

賢人は里奈同様に顔を赤くしながらあたふたと慌てながら弁解した。

(・・・!こういう賢人くんも可愛いー♡
賢人くんなら別に嫌という訳じゃないんだけど・・・)

「ま、まぁ確かにその通りよね。
特別に無かったことにしてあげるわ・・・」

事故だったとはいえ、女性レディーのパンツを見るのはなんとも破廉恥はれんちなことだが、
相手が賢人であったことから、里奈はそんなことはどうでもよく感じた。
それでも賢人であってもパンツを見られたことは流石の里奈も『女』として恥ずかしくて照れているのも本音を誤魔化す為に里奈はわざと上から目線で言った。

「で、あの・・・
用っていうのはなんですか?」

「あっ!その事なんだけど・・・
えっと、その・・・・・・」

「・・・?」


「・・・今度の土日、
一緒にどこかに行きませんか!?」

賢人はしばらく沈黙してしまったものの、ようやく里奈が自身に言っていることが何なのか理解した。


これは『デートのお誘い』というものだと・・・


「・・・良いですよ、こんな僕でよろしければ」

「・・・本当に?」

「本当です」

「・・・っ!ありがとう!賢人くん!私今、すごい嬉しい!」


プルルルルルルル!


その場の和やかな空気を一瞬にしてかき消すかのように、里奈の携帯が勢いよく鳴り出した。

「ちょっとごめんね?」

「はい、良いですよ」


 ピッ!


里奈は着信音が鳴る中でスマホの画面に映っている応答を横にスライドしてスマホを左耳に近づけて会話を始めた。

「・・・あっ、もしもしー?
急に電話してかけてきてどうしたの、花?」

(え・・・・・・!!)

里奈の突然の変貌に賢人は目を丸くした。

「今何してたかって?
今ね~彼氏をデートに誘ってるところ~♪」

はな』という電話の相手はおそらく相当の親しみがあると思われる人物だろう。
とはいえあまりの里奈の喋り方の変わりぶりに、賢人は愕然かつ唖然とするだけだった。
今彼女が使っている話し方はどこからどう聞いても『ギャル』。いや、そのものだった。

「うんうん、そうだけど?
・・・え!?急にそんなの無理だよ!
ちょっと花待ってよ!?よろしくじゃないよー!
ってあー切られた・・・・・・ハッ!」

花から突如電話を切られて深く溜め息をついた矢先、
友達からの連絡だったとはいえ、無意識に彼氏賢人の前で 一部始終・・・・を見られていたことに気づき、思わず顔を真っ赤にした。

「あ、あの今のは・・・?」

賢人はかろうじて質問した。

「あの・・・えっと・・・こ、これはですね・・・」

「?」

「み・・・み・・・見ないで~~~~~!!

「!?」

素の自身を賢人に見られたのがあまりにも恥ずかし過ぎたのか、里奈は叫びながら目にも止まらぬ速さでその場から走り去っていった。
その場に残された賢人は呆然のあまりポカンとする他無かった。
その後、LINEでのやり取りでは既に落ち着きを取り戻したのか、ようやく会話が成立して土日に二人で渋谷に行くことが正式に決まった。
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