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1章妖精の愛し子

8.

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家の中に入った途端、外から馬車の音が聞こえ始めた。
「やばっ! はやく部屋に戻らないと」
リリーフィアの手を引いて少し速めに飛ぶハヤテ。
だがその間にもどんどん近づいてきて、いつしか馬車の音が足音に変わった。
「リリーフィア急いで」
サクラもそう促すが、今はリリーフィアの部屋がある二階の階段をあがり始めたばかりだ。
幼女であるリリーフィアが急いであがることが出きる筈もなく、玄関の正面に階段はある。
このままだと外に出ていたのがバレてしまう…

サクラがそう思った矢先に玄関ドアは音をたてて開いた。
「ちゅかれまちたね、おかあしゃま」
「そうね、シャルロッテちゃん。 って、なんでリリーフィアが外に出てるのよ!? まさかあの娘約束を破ったのね!」
怒りでわなわなと肩が震えるティファニー。

「ぎゃ、ティファニーが帰ってきたぞ!」
「ちょっと、スカイ助けて!」
ハヤテは余計焦り、サクラは慌ててシャルロッテの側にいるスカイに助けを求めた。
「う、うん。 今行く!」
スカイは慌ててシャルロッテの肩から飛び立ち、魔法でリリーフィアのことを浮かせると部屋まで運んだ。
その前を飛ぶサクラは、リリーフィアの部屋のドアノブをなんとか動かしてドアを開ける。
最後に飛んできたアロイは、みんな入ったのを確認すると急いでドアを閉めた。

「ふぅ~、危なかったね。 なんとか助かった」
みんなで床にへたり込むと安堵の溜め息を漏らす。
すると勢い良くドアをバンバンと叩き、ガチャガチャとノブを回す音が廊下から聞こえた。
「ここを開けなさいリリーフィア!」
物凄い剣幕でそう怒鳴るのはティファニーだ。
だが、鍵が掛かっているためドアは開かない。
そして誰も開けようともしない…

暫くすると廊下からの音が止まり、今度こそ安堵の溜め息を漏らしたその時だった。
突然何者かによってドアの鍵が解錠されたのだ。
「ふふっ、鍵を掛ければ安全だとでも思った? でも残念、合鍵というものがあるのよ」
部屋の中に入って合鍵を手に不敵な笑みをたたえているのは先ほど諦めたと思ったティファニーだった。

みんなの表情から血の気が引くと共に凍りついた。
「な、なんで鍵を…ティファニーが……」
サクラは絶句してそう言うとぱたり倒れて気絶した。
「あら残念ね。 あなたのお友達、倒れちゃったみたいよ?」

ティファニーが一歩、また一歩と近づいてくる。
「だ、大丈夫だぞ? リリーフィアは俺が守るぞ」
ハヤテそう言いつつもリリーフィアの前に立ってプルプルと小刻みに震えていた。
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