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ディナー
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ディナーは色々と想定外だった。
「……電車なのに、電車なのに、結婚式みたい」
「喜んでくれているみたいで何よりだ」
さっきまで真っ赤だったくせに、謙一さんは余裕たっぷりな顔でニコリと微笑む。手にはまたもや赤ワイン。
この列車が走る沿線で作られているワインがひと通り揃えられているらしい。山梨県や長野県産、それから東京。意外なことに、東京にもワイナリーがあるとのことでした。
「前菜も美味しかったんですけど、……美味しすぎたんですけど」
蟹と季節野菜のテリーヌや、貝類の冷製や……ほんと、ほっぺがどっか行くかと思った。
……ん、ですけど、目の前にはフォアグラ。赤ワインがとても合う。
庶民だからかもですけれども、フォアグラなんて友達の結婚式以外では食べたことない……ので、フォアグラ出たときはこっそり心の中で悲鳴を上げそうになった。
もちろんそんなことはしない。
列車の走行音と、優美なヴァイオリンの生演奏と、細やかな話し声。そのほかにはカトラリーの静かな音しかしないこの空間で、キャッキャとはしゃぐのは相当の勇気がいります。
「おいしー……」
ソースは、チョコが効いてるバルサミコ酢。説明聞いたときは「チョコ?」って思ったけれど、元々合うものなのかプロの技なのか、とても美味しい。クリスマス仕様とのこと。
マナーは気にかかりつつも、おそらくは満面の笑みで食事をしていく私を見て、謙一さんは嬉しそうだった。
そのあとも美味しいディナーが続く。牡蠣のポシェ──茹で牡蠣と言ってしまうと多分怒られる──に、蕩けるような白子のムニエル。黒毛和牛(らしい)のミニステーキ、でお腹はいっぱいになった。
「大丈夫か? まだデザートが残ってるぞ」
「……それは大丈夫です」
お腹に手を当てる。
「甘いものは別腹なのです」
「本当か? かなりキツそうだぞ」
──と、心配してくれていたけれど。
プチクリスマスケーキ、みたいに可愛くデコレーションされたミニケーキをぺろりと平らげた私を見て、謙一さんは肩を揺らす。
「……なんですか」
「いや、面白くて」
謙一さんは本当に楽しそう。
食後のコーヒーをいただきながら、柔らかく目を細めて私を見つめている。
「面白いのでしょうか」
謙一さんが楽しいなら、それでいいんですけれど……。
食後、ひんやりした廊下を歩きながら部屋へ向かう。各車両の窓側に狭い通路があって、それ以外は宿泊スペース。もちろん中は見えない、……見えない、ですけど。
「あのう、謙一さん?」
「なんだ?」
「そりゃあ車両には一組ずつしかいないかもしれませんけれど」
「うん」
「……通路は通るんですよね?」
「そうだなぁ」
謙一さんは窓の外を見ている。ひんやりしていそうな、窓ガラス。
「ていうことは、私たちの部屋の前も、人が通っていたのですよね?」
謙一さん、私を押し倒して「この車両には2人しかいないから大丈夫だ」って言った。
言い切ってたのに……!
「そういうことになるな」
うむ、と謙一さんははっきりと頷いた。
「~~~!」
「真っ赤だぞ」
「だ、だって、だって、私、私……!」
真昼間から、どれだけ喘いだ……じゃない、喘がされたか!
泣きそうになりながら謙一さんを見上げた。
「う、うそつき!」
廊下に声が漏れてたら、そんな恥ずかしいことはない。
謙一さんはにやりと笑って、私の頬を突く。
「可愛いなぁ、麻衣は」
「可愛いとかじゃありません!」
「大丈夫だ、ほんとうに」
「なにがですかぁっ」
謙一さんは私の頭を撫でる。
「寝室は防音だから。走行音はどうやったってするけれど、他の部屋に比べれば静かだっただろう?」
「……へ」
「中からの声というよりは、快適な睡眠のための設備だけれど」
その言葉に、ほうと肩から力を抜いた。
たしかに、廊下なんかは少し声を張らないといけない程度には音がしている。
「良かったぁ……」
「だから」
謙一さんは唇をすい、と上げた。
そうして、私の耳元で囁くように言う。
「夜も問題なく──乱れてもらって、大丈夫だ」
頬に熱が集まる。
言葉がでなくて、金魚みたいになってる私を見て謙一さんは余裕たっぷりに笑って……そうして手を引いて歩き出す。
「行こうか、麻衣。じきに停車するぞ」
その言葉に、はっとなる。そういえば、まだ今日は「観光」が待っているらしいのです。
「どこに行くんですか?」
謙一さんの顔を覗き見ながら聞く私に、謙一さんはやっぱり楽しげに笑って。
「行ってみての、お楽しみだ」
そう言って、窓の外をまた見つめた。
窓の外は、いつのまにか雪が降り出していた。
「……電車なのに、電車なのに、結婚式みたい」
「喜んでくれているみたいで何よりだ」
さっきまで真っ赤だったくせに、謙一さんは余裕たっぷりな顔でニコリと微笑む。手にはまたもや赤ワイン。
この列車が走る沿線で作られているワインがひと通り揃えられているらしい。山梨県や長野県産、それから東京。意外なことに、東京にもワイナリーがあるとのことでした。
「前菜も美味しかったんですけど、……美味しすぎたんですけど」
蟹と季節野菜のテリーヌや、貝類の冷製や……ほんと、ほっぺがどっか行くかと思った。
……ん、ですけど、目の前にはフォアグラ。赤ワインがとても合う。
庶民だからかもですけれども、フォアグラなんて友達の結婚式以外では食べたことない……ので、フォアグラ出たときはこっそり心の中で悲鳴を上げそうになった。
もちろんそんなことはしない。
列車の走行音と、優美なヴァイオリンの生演奏と、細やかな話し声。そのほかにはカトラリーの静かな音しかしないこの空間で、キャッキャとはしゃぐのは相当の勇気がいります。
「おいしー……」
ソースは、チョコが効いてるバルサミコ酢。説明聞いたときは「チョコ?」って思ったけれど、元々合うものなのかプロの技なのか、とても美味しい。クリスマス仕様とのこと。
マナーは気にかかりつつも、おそらくは満面の笑みで食事をしていく私を見て、謙一さんは嬉しそうだった。
そのあとも美味しいディナーが続く。牡蠣のポシェ──茹で牡蠣と言ってしまうと多分怒られる──に、蕩けるような白子のムニエル。黒毛和牛(らしい)のミニステーキ、でお腹はいっぱいになった。
「大丈夫か? まだデザートが残ってるぞ」
「……それは大丈夫です」
お腹に手を当てる。
「甘いものは別腹なのです」
「本当か? かなりキツそうだぞ」
──と、心配してくれていたけれど。
プチクリスマスケーキ、みたいに可愛くデコレーションされたミニケーキをぺろりと平らげた私を見て、謙一さんは肩を揺らす。
「……なんですか」
「いや、面白くて」
謙一さんは本当に楽しそう。
食後のコーヒーをいただきながら、柔らかく目を細めて私を見つめている。
「面白いのでしょうか」
謙一さんが楽しいなら、それでいいんですけれど……。
食後、ひんやりした廊下を歩きながら部屋へ向かう。各車両の窓側に狭い通路があって、それ以外は宿泊スペース。もちろん中は見えない、……見えない、ですけど。
「あのう、謙一さん?」
「なんだ?」
「そりゃあ車両には一組ずつしかいないかもしれませんけれど」
「うん」
「……通路は通るんですよね?」
「そうだなぁ」
謙一さんは窓の外を見ている。ひんやりしていそうな、窓ガラス。
「ていうことは、私たちの部屋の前も、人が通っていたのですよね?」
謙一さん、私を押し倒して「この車両には2人しかいないから大丈夫だ」って言った。
言い切ってたのに……!
「そういうことになるな」
うむ、と謙一さんははっきりと頷いた。
「~~~!」
「真っ赤だぞ」
「だ、だって、だって、私、私……!」
真昼間から、どれだけ喘いだ……じゃない、喘がされたか!
泣きそうになりながら謙一さんを見上げた。
「う、うそつき!」
廊下に声が漏れてたら、そんな恥ずかしいことはない。
謙一さんはにやりと笑って、私の頬を突く。
「可愛いなぁ、麻衣は」
「可愛いとかじゃありません!」
「大丈夫だ、ほんとうに」
「なにがですかぁっ」
謙一さんは私の頭を撫でる。
「寝室は防音だから。走行音はどうやったってするけれど、他の部屋に比べれば静かだっただろう?」
「……へ」
「中からの声というよりは、快適な睡眠のための設備だけれど」
その言葉に、ほうと肩から力を抜いた。
たしかに、廊下なんかは少し声を張らないといけない程度には音がしている。
「良かったぁ……」
「だから」
謙一さんは唇をすい、と上げた。
そうして、私の耳元で囁くように言う。
「夜も問題なく──乱れてもらって、大丈夫だ」
頬に熱が集まる。
言葉がでなくて、金魚みたいになってる私を見て謙一さんは余裕たっぷりに笑って……そうして手を引いて歩き出す。
「行こうか、麻衣。じきに停車するぞ」
その言葉に、はっとなる。そういえば、まだ今日は「観光」が待っているらしいのです。
「どこに行くんですか?」
謙一さんの顔を覗き見ながら聞く私に、謙一さんはやっぱり楽しげに笑って。
「行ってみての、お楽しみだ」
そう言って、窓の外をまた見つめた。
窓の外は、いつのまにか雪が降り出していた。
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