【R18】100日お試し婚〜堅物常務はバツイチアラサーを溺愛したい〜

にしのムラサキ

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プレゼント

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 あのあと、もう何回イかされたか分かんないけれど、とにかく眠ってしまっていたらしい。

「麻衣、俺は気にしないが、夕食前に風呂に入るならそろそろ起きたほうがいい」

 キスの嵐のなか、そう告げられる。

「んー……?」

 告げられるのはいいんだけれど、意識がまだぽやぽやと眠っていて。

(……ここ、どこだっけ)

 寝心地の良いベッド。たたん、ととん、と眠くなるリズム。謙一さんの腕の中──彼の、におい。

「麻衣」

 優しく呼ばれて、つう、と背中を撫でられた。

「起きないなら──起こしてやろうか?」

 その言葉に、ばっと覚醒する。

(なんか嫌な予感がする──じゃ、なくて!)

 ばちり、と目が合った。優しく微笑んで私を見つめる謙一さん。ぱちぱちと瞬きをした。……そうだ、ここ、電車! あ、じゃなくて列車だ。

「おはよう、麻衣」

 私はぽけーっと、謙一さんを見つめた。なんだかとっても幸せそうだったから。

「お、おはようございます……?」

 朝の挨拶をするけれど、時刻は多分、夕方だ。窓の外はすっかりと冬の夕空に包まれている。つまり、真っ暗。

「どうする?」

 ゆったり、と身体を起こしながら謙一さんは言った。

「シャワーを浴びて、用意をするならそろそろ起きたほうがいいと思ったんだが」
「はい」

 時計を見る。うん、もうそんな時間だ。
 結構寝ていたのか、な? もうなんか謙一さんが色々と色々で色々だったから、時間感覚が……。
 ふ、と目線を上げる。いつの間にやら謙一さんが私の上にのしかかっていた。

「謙一さん?」
「……いや、もう一回くらいはできるかなと」
「で」

 私は慌てて身体を起こして、ベッドから降りようともがく。

「できませんできませんっ、死んじゃう、……じゃない、ディナー間に合わないですっ」

 女性の準備には時間がかかるのです!
 めっ! と軽く睨むと、すごく残念そうに身体をどかしてくれた。

「そうか」
「はい」
「じゃあまた夕食後に」
「無理!」

 私の言い方が面白かったのかなんなのか、謙一さんは吹き出して「冗談だ」と目を細めた。

「夕食後は観光があるらしい」
「……観光?」
「観光列車だと言っただろう?」

 楽しげに謙一さんは私の頭を撫でた。

(観光……観光、かぁ)

 夜に?
 なにを見るのかなぁ。真っ暗なのじゃないかな?
 首を捻りながらシャワーを浴びて、ちらりと檜風呂を見る。入ってみたいけれど、これはまたあとで、だ!
 バタバタとメイクと髪を整えて、ドレスを着た。まぁ、見れないこともない……ような気がしないでもない。
 ヒールを履いて、洋室に向かう。

「……わぁ」

 思わず感嘆の声が出た。
 ……イケメンはなんでも似合う。きっちりとした三揃いのスーツ。いつもより派手なネクタイ。なのに華美になりすぎず着こなしているのは、なんだか「さすが」としか言いようがない。
 ぽかんと見つめる。なぜか謙一さんも立ち上がって、ぽかん、としていた。
 そのとき、わずかに──列車が変な揺れ方をした。がたん、って。

「あ」

 少しぐらついて、ソファ(もちろん固定されてる)に掴まろうとした私を、謙一さんが支える。

「──大丈夫か?」
「は、はい」

 謙一さんにがっつり支えられながら、彼の顔を見上げる。至近距離にある瞳。じっと私を見つめていて……やっぱり混乱する。
 ふわふわして、まるで夢の中にいるみたいだ。
 ちゅ、とこめかみにキスをされて後ろ向きに抱きしめられる。

「? 謙一さ……」

 身体を離されて、ふと首元に違和感。
 指で触れると、冷たい感覚がして──視線を下ろす。きらり、と光る……ペンダント?

「気に入ってくれるといいのだけれど」

 謙一さんを見上げた。
 部屋の隅にある姿見で、まじまじとそれを見つめた。シンプルな銀の細い鎖と、小さな青い宝石。

「君に、似合うと思って」
「あ、……」

 そっと、それに触れる。
 薄い青色の宝石は、なんとなく……サムシングブルーを想像させた。サムシングフォー、花嫁がつける四つの「なにか」。

(たまたま、と思うけれど……)

 鏡の中で、目が合う。
 謙一さんが目を細める。……きっと、遠慮したりするのは彼の本意じゃないんだろう。
 ……どうやってお返ししたらいいか分からないのだけれど。
 とにかく振り向いて、直接に目を合わせる。

「あの、ありがとう……ございます。嬉しい、です」

 謙一さんはすっ、と私の髪を耳にかける。

「似合ってる。良かった」

 微笑むその瞳は大人の余裕を浮かべているけれど、──少しだけ、頬が赤い。

「謙一さん?」
「なんだ?」
「ほっぺ、赤いですよ」
「……!」

 謙一さんは絶句した。そうしてそのまま、私から離れてよろよろとソファに座り込んで、手で顔を覆った。

「……緊張していたんだ」
「緊張?」

 びっくりしつつ、謙一さんの横にすわる。謙一さんは手の隙間からちらりと私を見て、なんだか弱々しく言う。

「当たり前だろう? 好きな女性に装飾品を贈るなんて、緊張しないわけがない。そもそも女性にプレゼントするなんて、いつぶりか分からない」
「……え、っと。そう、なんですか?」

 私は首を傾げた。
 薔薇の花束は──もらった、けれど。「死ぬほどあなたに焦がれてる」……紅の、薔薇。

「あの、……失礼ですけれど、謙一さん、慣れてらっしゃるのかと」

 だって、謙一さんですよ。薔薇と帰ってきたんですよ。
 モテてるんだろうな~とか思ってたんですよ。社内では「遊んでる」なんて噂があるくらいなんですよ。

「君は」

 非難するような口調で、謙一さんは言った。

「40近い鉄道オタクが、女性にモテるとでも思っているのか?」
「……いえ、そう言われればそうなんですけど」

 モテてる人も、いると思うけれど。
 さすがに顔から手を離した謙一さんの頬はやっぱり赤くて、なんだか可愛くて──私はそっと、その頬を突いてみたりしたのでした。
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