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かき氷
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楢村くんが「かき氷食いに行こう」というから何かなと思っていたら、京都に連れてこられた。
「……なんで京都?」
いやまぁ、好きだけど。
駐車場で車を降りる。楢村くんは、相変わらず鹿爪らしい顔をしていた。降りた瞬間から、ぎゅうっと手を握られて。
「……」
頬が熱くなる。
なんでだろ。
色々してるのに、今月末には籍だっていれるのに、手を握られただけでドキドキしちゃうんだから──
足元の影は、まだまだ濃い。
ツクツクホーシが、鳴いていた。
楢村くんが連れてきてくれたお店は、京都市内にある、京町家を改装した小さなカフェ。
木製の格子窓にはまだ風鈴が揺れている。ちりん、と可愛らしい音が鳴って、でもその風はもう真夏のものではなかった。
「かき氷、食べ納めかなあ~」
「……せやな」
フルーツがたっぷり載った、フルーツのほかは糖蜜だけの雪みたいなかき氷をしゃくしゃく食べる。
向かいの席では、楢村くんがここの人気No. 1だという白玉付きマンゴーかき氷を食べては頭を押さえ、食べては頭を抑えていた。
「……キーンとしてるの?」
「あかん。まさかこんなになるとは思わんかった」
こっそり笑う。可愛いと思ってしまう私は重症だ……
「瀬奈、白玉食う?」
「いいの?」
ん、と楢村くんはスプーンですくって、それを私の口元に持ってくる。
「あの」
「あーん」
無表情であーんって言われた!
思わずあんぐり口を開けた私の下の上に、甘酸っぱいマンゴーともちもちの白玉がのっかる。
「うまい?」
「あ、……うん、おいしい……です」
ほけーっと返事をする。楢村くんはうん、と頷いてまたかき氷を食べ出した。しゃくしゃく。
私は慌てて自分の糖蜜かき氷をかきこんで──頭をキーンと、させてしまう。
「うぅ……」
楢村くんの手が、私の前髪を撫でる。ほんの少しくしゃっとして、すぐに引っ込んだ。
「……?」
「このあと、ちょっと歩くけどいける?」
「あ、うん。どこいくの?」
「……ネコカフェ」
「ネコカフェ?」
楢村くんの感情は、相変わらずその表情からは読み取れない。
けど、ネコ。
ネコだぁあ!
(うわ、久しぶりかも!)
テンションが上がっているのは──顔に出ていた、のかもしれない。楢村くんはしばらく、私の顔をじっと見つめていた。
ネコカフェは保護ネコちゃん中心の、のんびりした雰囲気のカフェで──なぜだか正座をして固まっている楢村くんに、ネコが次々とよじ登った。
「……ずるい」
「昔からなぜかネコには好かれるんや……」
遠い目をしている楢村くんは、モテるわりにネコちゃんが苦手みたいだった。
(……?)
じゃあなんでネコカフェに?
不思議には思ったけれど、楢村くんの考えはいつも分からないから──とりあえずそれは横に置いておいて、私は必死でおもちゃを駆使する。
けれどネコちゃんはあんまり興味を示してくれなくて──いや、そこがいい! そこがいいんだけれど!
ちらり、とネコ山になっている楢村くんを横目で見る。
「くっ……」
悔しくて唇を噛む。子猫……子猫まで……!
スタッフさんに「写真撮っていいですか?」とまで言われている楢村くんの頭の上には、まだ小さな子猫。慣らしでほんの短時間だけカフェに「出勤」する子猫たちまでが、楢村くんにすっかり懐いていた。
「……」
写真を撮られている楢村くんをこっそり見つめる。完全なる無表情だったけれど。というか、いつにも増して無表情だったけれど……
(……写真)
いまなら、楢村くんの写真、撮れるかも……。
そうっとスマホの画面をスライドさせて、カメラを起動した。
急に楢村くんがこっちを向いて、ばちりと目線が合う。
「……っ、ネコだから! ネコちゃんの写真撮りたいだけだから!」
私は早口でそう言って、もうヤケクソで楢村くん(ネコ塗れ)を連写で撮る。
楢村くんは相変わらずの無表情で、猫に埋もれたまま、「楽しんでくれて良かった」と呟いたのだった。
「……なんで京都?」
いやまぁ、好きだけど。
駐車場で車を降りる。楢村くんは、相変わらず鹿爪らしい顔をしていた。降りた瞬間から、ぎゅうっと手を握られて。
「……」
頬が熱くなる。
なんでだろ。
色々してるのに、今月末には籍だっていれるのに、手を握られただけでドキドキしちゃうんだから──
足元の影は、まだまだ濃い。
ツクツクホーシが、鳴いていた。
楢村くんが連れてきてくれたお店は、京都市内にある、京町家を改装した小さなカフェ。
木製の格子窓にはまだ風鈴が揺れている。ちりん、と可愛らしい音が鳴って、でもその風はもう真夏のものではなかった。
「かき氷、食べ納めかなあ~」
「……せやな」
フルーツがたっぷり載った、フルーツのほかは糖蜜だけの雪みたいなかき氷をしゃくしゃく食べる。
向かいの席では、楢村くんがここの人気No. 1だという白玉付きマンゴーかき氷を食べては頭を押さえ、食べては頭を抑えていた。
「……キーンとしてるの?」
「あかん。まさかこんなになるとは思わんかった」
こっそり笑う。可愛いと思ってしまう私は重症だ……
「瀬奈、白玉食う?」
「いいの?」
ん、と楢村くんはスプーンですくって、それを私の口元に持ってくる。
「あの」
「あーん」
無表情であーんって言われた!
思わずあんぐり口を開けた私の下の上に、甘酸っぱいマンゴーともちもちの白玉がのっかる。
「うまい?」
「あ、……うん、おいしい……です」
ほけーっと返事をする。楢村くんはうん、と頷いてまたかき氷を食べ出した。しゃくしゃく。
私は慌てて自分の糖蜜かき氷をかきこんで──頭をキーンと、させてしまう。
「うぅ……」
楢村くんの手が、私の前髪を撫でる。ほんの少しくしゃっとして、すぐに引っ込んだ。
「……?」
「このあと、ちょっと歩くけどいける?」
「あ、うん。どこいくの?」
「……ネコカフェ」
「ネコカフェ?」
楢村くんの感情は、相変わらずその表情からは読み取れない。
けど、ネコ。
ネコだぁあ!
(うわ、久しぶりかも!)
テンションが上がっているのは──顔に出ていた、のかもしれない。楢村くんはしばらく、私の顔をじっと見つめていた。
ネコカフェは保護ネコちゃん中心の、のんびりした雰囲気のカフェで──なぜだか正座をして固まっている楢村くんに、ネコが次々とよじ登った。
「……ずるい」
「昔からなぜかネコには好かれるんや……」
遠い目をしている楢村くんは、モテるわりにネコちゃんが苦手みたいだった。
(……?)
じゃあなんでネコカフェに?
不思議には思ったけれど、楢村くんの考えはいつも分からないから──とりあえずそれは横に置いておいて、私は必死でおもちゃを駆使する。
けれどネコちゃんはあんまり興味を示してくれなくて──いや、そこがいい! そこがいいんだけれど!
ちらり、とネコ山になっている楢村くんを横目で見る。
「くっ……」
悔しくて唇を噛む。子猫……子猫まで……!
スタッフさんに「写真撮っていいですか?」とまで言われている楢村くんの頭の上には、まだ小さな子猫。慣らしでほんの短時間だけカフェに「出勤」する子猫たちまでが、楢村くんにすっかり懐いていた。
「……」
写真を撮られている楢村くんをこっそり見つめる。完全なる無表情だったけれど。というか、いつにも増して無表情だったけれど……
(……写真)
いまなら、楢村くんの写真、撮れるかも……。
そうっとスマホの画面をスライドさせて、カメラを起動した。
急に楢村くんがこっちを向いて、ばちりと目線が合う。
「……っ、ネコだから! ネコちゃんの写真撮りたいだけだから!」
私は早口でそう言って、もうヤケクソで楢村くん(ネコ塗れ)を連写で撮る。
楢村くんは相変わらずの無表情で、猫に埋もれたまま、「楽しんでくれて良かった」と呟いたのだった。
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