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ロマンチック(昴成視点)
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「と、とにかく……その薔薇作戦はやめとき、昴成」
「せやでコーセー。それやって許されるんはオレくらいなもんや」
「なんでや」
「オレがスパダリやからや」
エリが自信満々に言い放つ。
……なんやそれ。新手のパスタか?
「スパダリって何、エリ」
オカンの質問に、エリが超笑顔で答える。
「スーパーダーリンの略。オレみたいな」
「ああ」
「なんで納得しとんのやオカン! こいつのどこがスーパーダーリンなんや」
「顔身長学歴収入」
「チッ!」
ウチの給料がコイツにとって良いんか悪いんかはわからんけど、エリは母国に父方の祖父母から受け継いだ土地を持ってて……チッ、ブルジョワめ。
「いやコーセーも顔ええで? けどお前はイケメンやなくて男前なんや顔つきが。残念やったな」
「褒めとんのか貶しとんのか分からんわ……」
俺は頭を抱えたくなる。
バラと指輪以外に、ロマンチックなんか思いつかん!
「ほんなら何かくれや。ロマンチックで瀬奈がハートマークふわっふわさせそうなやつを」
「ハートふわっふわなぁ……瀬奈さん、何が好きなん?」
「かき氷」
「馬鹿の一つ覚えやんけコーセー……あ、セナちゃん、ネコ好きやなかった?」
エリの言葉に顔をあげる。
……なんやって?
「せやせや、ネコ言うてたな」
オカンまで話に乗ってきた。
「ご実家で昔、飼ってたんやってな」
「……ちょっと待て」
俺は二人を制する。
「なんでエリとおかんが俺の知らん瀬奈情報を知ってるんや」
「は? なんか話の流れで……」
俺はなんだか複雑な気分になりつつ、きちんとインプットする。瀬奈はネコが好き。
「……どうやって好きなモン聞きだすんや」
「んなもん話の流れや。コーセーお前、普段セナちゃんとどんな話しとるんや」
「……や、ふつうに」
「普通にってなんやねん。つうか、話しとったら分かるやろ何かしら」
「……ほんっま、そういうとこお父さんそっくりや」
おかんが呆れたように言って──その目つきが、少しだけ懐かしいものを話す視線やったから、俺は少しだけ、居心地が悪くなる。
「せやけど、かき氷もネコもプロポーズには使えんなあ」
「……かき氷、全部食べたら出てくるやつとか」
「誤食するわバカタレ」
「む」
そう言われるとやなあ……
「あ、せや。船でプロポーズとか?」
オカンの言葉に、エリが首を振る。
「あかん。コーセーはディナークルーズよりマグロ漁船が似合う」
「せやな……遠洋漁業顔やもんな……」
「なんでやねん」
お前らは俺をなんやと思うとんのや。
「そもそもやな」
エリが思いついたように言う。
「コーセーが指輪用意してプロポーズすんのは反対や」
「なんでや」
「お前、セナさんのアクセサリーの趣味わかんの?」
「……」
アクセサリーの、趣味……?
「……指輪なんかどれも似たようなもんやないんか」
「あかーん」
おかんが呆れたように俺を見る。
「な? 伯母さん、あかんやろコーセーにサプライズプロポーズは無理や。警察猫くらいダメや。捜査途中でお魚咥えてマタタビでニャーンや」
「なんなんやその例えは……」
「昴生、悪いこと言わんから指輪は一緒に買いに行き。プロポーズはしゃあないから誠心誠意言葉尽くして土下座し」
「……言葉尽しても瀬奈に通じひんから相談しとるんやないか」
「なんで通じんの」
「……信用されとらん」
「そらそうや」
「そらそうやわ」
二人にユニゾンされて、ぐっと言葉に詰まった。
そら、そうなるわ……
「それから子作りも少し先にした方がええで、セナさんドレス選びたいんやないか?」
「ドレス……」
結婚式のドレス。
瀬奈は式せんでいいとまで言ってるけど、……着たいよな。多分。
「……せやな」
「お前はほんっま考えなしや」
おかんが眉間を揉みながら言う。
「もっと責任感というものをやな」
「……田中さんと同じこと言うよな、オカン」
「……っ」
また真っ赤になったオカンとニヤニヤしてるエリを置いて、リビングを出た。リビングというか、家を出る。飯を食いにいかなあかん。
庭に出て、ぼうっと考える。天中には煌々と満月。
「瀬奈、何しとるかなー……」
月を見てたりせんかな。同じ月。
『信用されとらん』
自分で言った言葉をリフレインして、自分で傷つく。
「されとらんよなー……」
はあ、と鯉が泳ぐ池の横に座り込んで、ため息をついた。
プロポーズ、プロポーズなあ。土下座してプロポーズなんかしたら、瀬奈も引くやろうしなあ、さすがに。
「……土下座なあ」
思い出す、『瀬奈とヨリ戻したいなら瀬奈に相応しい男になって迎え行って土下座でもなんでもしたらええやん』って言葉──
「そもそも相応しい男になっとるんかな、俺は……」
なっとらん気がする。まだまだ未熟で、考えなしで──
(……けど)
すうっと息を吸って、立ち上がる。
瀬奈を好きな気持ちだけは、誰にも負けへんから。
それからまた、頭を抱えた。
「ロマンチックって、なんやねん!」
「せやでコーセー。それやって許されるんはオレくらいなもんや」
「なんでや」
「オレがスパダリやからや」
エリが自信満々に言い放つ。
……なんやそれ。新手のパスタか?
「スパダリって何、エリ」
オカンの質問に、エリが超笑顔で答える。
「スーパーダーリンの略。オレみたいな」
「ああ」
「なんで納得しとんのやオカン! こいつのどこがスーパーダーリンなんや」
「顔身長学歴収入」
「チッ!」
ウチの給料がコイツにとって良いんか悪いんかはわからんけど、エリは母国に父方の祖父母から受け継いだ土地を持ってて……チッ、ブルジョワめ。
「いやコーセーも顔ええで? けどお前はイケメンやなくて男前なんや顔つきが。残念やったな」
「褒めとんのか貶しとんのか分からんわ……」
俺は頭を抱えたくなる。
バラと指輪以外に、ロマンチックなんか思いつかん!
「ほんなら何かくれや。ロマンチックで瀬奈がハートマークふわっふわさせそうなやつを」
「ハートふわっふわなぁ……瀬奈さん、何が好きなん?」
「かき氷」
「馬鹿の一つ覚えやんけコーセー……あ、セナちゃん、ネコ好きやなかった?」
エリの言葉に顔をあげる。
……なんやって?
「せやせや、ネコ言うてたな」
オカンまで話に乗ってきた。
「ご実家で昔、飼ってたんやってな」
「……ちょっと待て」
俺は二人を制する。
「なんでエリとおかんが俺の知らん瀬奈情報を知ってるんや」
「は? なんか話の流れで……」
俺はなんだか複雑な気分になりつつ、きちんとインプットする。瀬奈はネコが好き。
「……どうやって好きなモン聞きだすんや」
「んなもん話の流れや。コーセーお前、普段セナちゃんとどんな話しとるんや」
「……や、ふつうに」
「普通にってなんやねん。つうか、話しとったら分かるやろ何かしら」
「……ほんっま、そういうとこお父さんそっくりや」
おかんが呆れたように言って──その目つきが、少しだけ懐かしいものを話す視線やったから、俺は少しだけ、居心地が悪くなる。
「せやけど、かき氷もネコもプロポーズには使えんなあ」
「……かき氷、全部食べたら出てくるやつとか」
「誤食するわバカタレ」
「む」
そう言われるとやなあ……
「あ、せや。船でプロポーズとか?」
オカンの言葉に、エリが首を振る。
「あかん。コーセーはディナークルーズよりマグロ漁船が似合う」
「せやな……遠洋漁業顔やもんな……」
「なんでやねん」
お前らは俺をなんやと思うとんのや。
「そもそもやな」
エリが思いついたように言う。
「コーセーが指輪用意してプロポーズすんのは反対や」
「なんでや」
「お前、セナさんのアクセサリーの趣味わかんの?」
「……」
アクセサリーの、趣味……?
「……指輪なんかどれも似たようなもんやないんか」
「あかーん」
おかんが呆れたように俺を見る。
「な? 伯母さん、あかんやろコーセーにサプライズプロポーズは無理や。警察猫くらいダメや。捜査途中でお魚咥えてマタタビでニャーンや」
「なんなんやその例えは……」
「昴生、悪いこと言わんから指輪は一緒に買いに行き。プロポーズはしゃあないから誠心誠意言葉尽くして土下座し」
「……言葉尽しても瀬奈に通じひんから相談しとるんやないか」
「なんで通じんの」
「……信用されとらん」
「そらそうや」
「そらそうやわ」
二人にユニゾンされて、ぐっと言葉に詰まった。
そら、そうなるわ……
「それから子作りも少し先にした方がええで、セナさんドレス選びたいんやないか?」
「ドレス……」
結婚式のドレス。
瀬奈は式せんでいいとまで言ってるけど、……着たいよな。多分。
「……せやな」
「お前はほんっま考えなしや」
おかんが眉間を揉みながら言う。
「もっと責任感というものをやな」
「……田中さんと同じこと言うよな、オカン」
「……っ」
また真っ赤になったオカンとニヤニヤしてるエリを置いて、リビングを出た。リビングというか、家を出る。飯を食いにいかなあかん。
庭に出て、ぼうっと考える。天中には煌々と満月。
「瀬奈、何しとるかなー……」
月を見てたりせんかな。同じ月。
『信用されとらん』
自分で言った言葉をリフレインして、自分で傷つく。
「されとらんよなー……」
はあ、と鯉が泳ぐ池の横に座り込んで、ため息をついた。
プロポーズ、プロポーズなあ。土下座してプロポーズなんかしたら、瀬奈も引くやろうしなあ、さすがに。
「……土下座なあ」
思い出す、『瀬奈とヨリ戻したいなら瀬奈に相応しい男になって迎え行って土下座でもなんでもしたらええやん』って言葉──
「そもそも相応しい男になっとるんかな、俺は……」
なっとらん気がする。まだまだ未熟で、考えなしで──
(……けど)
すうっと息を吸って、立ち上がる。
瀬奈を好きな気持ちだけは、誰にも負けへんから。
それからまた、頭を抱えた。
「ロマンチックって、なんやねん!」
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