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アデライト 逆行復讐編
家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。完
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ホワイト国に新たな若き王が誕生したと同時に、可愛いらしい婚約者も出来きて国中は歓喜をあげていた。
「ルチータ国王!おめでとうございます!」
白い馬車には、ルチータと隣りには美しい女性となったアメリが手を振り国民達に笑顔を向けていた。二人の後ろには騎士団長として務めているアルフレッドとソフィアが馬に乗り護衛を務めていた。
「女性初の騎士団長のソフィアさま!素敵よね!」
「アルフレッド様と婚約してからますます美しくなられたわ!」
「アメリ様も可愛いらしい!剣も勉強も全て完璧だもの!素敵な王妃様になるな」
「あら、もう結婚されましたけど、マカロン家当主となったジェイコブ様も愛妻家で素敵なのよ!リリアン様が羨ましいわー」
「‥‥でも、その‥ほらマカロン家には‥」
人々は囁く、逆らったら最後。殺されると言われる。
「「怖くて醜い魔女がいる」」と。
外ではお祭り騒ぎのそんな中、城のとある部屋にて、髭を生やしていた貴族の男達がルチータ国王に謁見を求めていたがなかなか通して貰えず騒いでいた。
「私はずっと先代からこの国の為働いていたのに!なんて失礼な奴だ!」
「不正なんぞしてない!」
「早く国王陛下に会わせろ!」
「魔女め!そんな醜い顔をしていてよくもーーヒッ!!今鞭をワザとだしたな!!当たりそうだったぞ!なんて非常識な!我々に死ねと!」
銀色のショート髪で半仮面を被っている女性は、片手に鞭を持ちながら椅子に座り、騒いでいる貴族達を見下ろして笑っていた。
「あらあら。ふふ、なら死になさい」
「「「「‥‥なっ!!」」」」
そんな騒いでいる貴族達を銀髪の青年が捕える。
「マカロン家の!ジェイコブ当主か!よかった我々の話を聞いてくれ!」
オールバック髪にまとめて、少しばかり大人の顔立ちとなったジェイコブだが、やはり彼からは甘いお菓子の匂いがしていた。ジェイコブはチラッとアデライトの顔を見てため息を出して貴族達に警告した。
「貴方達の不正の証拠は揃っている。衛兵!捕まえろ!」
「クソ!!やめろっ!こんな事になったのも‥‥アデライト•マカロン!!私達を嵌めたな!この嫌われ魔女めがぁ!!」
そう男達は叫び、アデライトはクスッと馬鹿にして笑っていただけだった。
「アデライト、ルチータ国王陛下とアメリの婚約式パーティーに出席しないのか?」
「あら、私が行ったところで、美しい私が目立つだけだもの。いかないわ。というかあの腹黒国王のパーティーでお祝いをしなきゃいけないなんて嫌よ。ジェイコブお兄様は早くリリアン様を迎えに行きなさい。お腹に子供がいるのでしょう」
「‥‥わかった。とりあえず、僕が作ったお菓子をあげよう。今日はパーティーだが、みんなとまた明日ここにくるよ」
「いや、来ないでちょうだい。みんなって何かしら?五月蝿いだけだからこないでって‥‥もういないわ」
あれから12年私は大人しく(?)、真面目に(主に脅迫まがい)仕事をしていた。あの腹黒の下で働くなんて納得はできないけれど。
私は窓ガラスに写る仮面姿の自分を見つめる。少し仮面が古くなって傷だらけね。
「ルカは‥‥元気にしてるかしら」
あの時、ルカは死刑直前にすでに死刑される者と交換し、難を逃れた。なんとも浅はかで無計画だったのに、亡くなった前国王陛下達は気づかないでいた。簡単に騙されて馬鹿なのね。
ルカの居場所は、アルフレッド王子と多分あの腹黒国王陛下も知っているのでしょうね。
時々、アルフレッド王子がルカのお母様に手紙を渡してるけれど、私とルカは手紙のやり取りも何もしてない。何も聞かないようにしていた。
12年前、私の心臓は誰の物かはわからないけれど、移植され今では風邪も引かないし運動をしても特に異常はないのよね‥‥。
以前はルカの心臓で、今回は‥‥いえ、今は仕事に集中したほうが良さそうね。
チクタクと夜になり、私は栄養ドリンクを飲もうとした時だ。
「アデライトお姉様!なんでパーティーに出席しなかったの!?」
昼間から、突然窓から現れる、我が末のアメリ‥‥。この子本当にこの国の国母になれるか疑問だわ。
「ここ七階よ。アメリ」
銀色の巻き髪の彼女の姿はかつての若い頃の私によく似ていた。私の方が美しいけれどね。
「やあ、私の可愛い婚約者が姉に会うといってね」
そうまた、窓から現れるルチータ国王陛下と、それに続いてアルフレッド殿下、ソフィアも窓からついてきたようだった。
「‥‥ドアから入りなさい。何故窓から入るの。みんな頭が悪いのかしら」
「アデライト嬢、私はこの国の王だよ?少し失礼じゃないかな」
「ふふ、私に愛国心なんてありませんもの。私が1番偉いと思ってますわ」
そう私とルチータ国王陛下はお互い胡散臭い笑顔を出していた。
「ソフィア、最近寝ていなんじゃないか?」
「アル、私は騎士団長として仕事をしているだけよ。大丈夫」
「‥‥あまり無理をしないで欲しいんだけどな」
「ふふ、ありがとう。でも今本当に嬉しいのよ、自分の実力が認められて」
‥‥‥急に二人の世界にならないでくれるかしら。私の仕事場なのに、こんな騒がしいなんて最悪だわ。アメリは私の肩をポンと叩いて同情した眼差しで見つめる。
「アデライト姉様だけ、独り身だねっ!もう三十路」
「‥‥アメリ、性格がさらに悪いこになったわね」
「えー?アデライト姉様に似ちゃったからかもね!」
「私の可愛い婚約者は正直者なんだよ。許してくれアデライト嬢」
「‥‥ちっ。みんな滅びろ」
都合の良い時だけ、私に似てるなんて‥‥やっぱり子の性格は気に食わないわね。
「あ、ここにいたか!みんなお菓子を持ってきたよ!」
そう言いながら、ジェイコブお兄様と妻になったリリアン様が沢山のお菓子を持ってきて現れる。
「‥‥ここで何をするのかしら」
キョトンとした顔をする、我が兄と妹達は同じ顔をして何故かケーキを持ってきた。
「アデライト姉様の【31歳】のお誕生日だよ?忘れたの?31歳!」
「アデライト、君の31歳の誕生日じゃないか!さあ!僕達からの誕生日プレゼントだ!」
「アデライト姉様、31歳おめでとうございます!歳なんて関係ないです!日本なんて、それぐらいの女性は沢山いましたから!」
‥‥この兄妹、本当に腹が立つわね。そして、何、サラッとニホンとかわけわからないことを言っているのソフィア。隣りにいるアルフレッド殿下が首を傾げているわよ。
コンコンとまたドアが叩く音がした。また誰よ!?そう苛立つと、部屋に入ってきたのは、ルカのお母様とマックス、そして‥
「お師匠さまー!お誕生日おめでとうございます!!」
「‥あら、ふふ。ルーク、ありがとう」
茶色い髪色の小さな男の子はルカのお母様とマックスとの子供で可愛いらしい子。薬草学を教えて飲み込みが早いのよね。
「ルチータ様、アデライト姉様は実の妹の私に対しては凄くぞんざいな扱いなのに、ルカ兄に似たルークには、すごく甘いよね?」
「彼女は愛に飢えてるのさ。温かい目で見守ってやろうじゃないか」
「私達の幸せを少しだけあげようかな」
「‥‥お馬鹿な二人共、聞こえてるわよ」
この馬鹿夫婦に構うと、またろくでもない仕事をさせられる。ケーキを無理矢理食べさせられ、城に近い森の庭園へとみんなと行く事になった。
まだ何かあるのかしら?
ハアと呆れていた私の隣にルチータ国王陛下は一枚の紙を渡してきた。
「‥‥?なんでしょうかコレは」
「私からの君のプレゼントは、【解雇】だね」
「‥‥‥‥?」
「我が国にはもう魔女は必要が無くなったのさ」
「‥ふふ。私が魔女なら、ルチータ国王陛下は魔王様ですわね」
「君は相変わらず私が嫌いみたいだね。ほら、後ろを見て」
そうルチータ国王陛下が指を指す方向へと振り向くとそこには‥‥‥懐かしくて、愛しくて、会いたかった人だった。
サラサラの茶色い髪に少しくたびれたワイシャツを着ている背が高い男性が一人立っていた。
「‥‥‥‥ル‥‥カ‥‥‥‥?」
目と目が合った。ドクン!と心臓が鳴り響く‥‥。
「やあ、アディー」
久しぶりの声‥‥‥変わらない優しい表情に私は彼の元へ走った。
「‥‥ッ‥‥‥ルカ!!本当にルカなの!?」
「実は昨日、コッソリきてたんだ。ビックリした?」
私は何度も何度もルカなのか、確かめた。そんな私をルカは相変わらず笑っているだけだった。
「ねえ。アディー、僕のお嫁さんになって」
突然そんな事を言いだすルカ。もっと話す事があるのに、今まで何をしていたとか、沢山聞きたい事があるのに‥‥私はただルカの問いに答えて頷き笑った。
「勿論よ」
ー真夜中ーー
国境近くの森の場所で、ジェイコブお兄様、ソフィア、アルフレッド殿下、アメリと腹黒国王陛下や、ルカのお母様達に見送られる。
私とルカは顔がバレないようフードを被り、アメリが手配してくれた、馬車が来るのを待っていた。
「ジェイコブお兄様‥‥泣かないでくださいませ。正直見苦しいわ」
「ぐすっ‥‥きゅ、急に出ていくなんて‥‥ぼ、僕はまだ妹孝行十分していない」
「「「いえ、十分です」」」
三人の妹達に、全力で否定されジェイコブは妻のリリアンに慰められていた。彼女は、ジェイコブお兄様の扱いには慣れたようね。
「アデライト姉様、良かったね!行き遅れなくて!」
「ふふ。アメリ、一つ貴女に忠告するわ。‥‥貴女にはまだ女として魅力が欠けているから、ルチータ国王陛下から何もされないのよ?」
そう私が優しい言葉をかけると、アメリはショックな顔をしていた。ルチータ国王陛下は、あの子を大事にし過ぎて、何も手を出してないのが丸わかりなのよね。ママゴトね。
チラッと私はソフィアの方を見つめる。ポニーテール姿で騎士団長として務めている彼女‥‥。
「「‥‥‥‥あ」」
同時に声を出して、被ってしまったわ。なんだか‥‥気まずいわ。
「‥‥‥‥ソフィア」
「あ、ハイ。アデライト姉様」
「‥‥‥私もね、秘密があるのよ」
そう私はみんなに聞こえないようにソフィアの耳元で囁く。
【貴女と同じ体験の2度目の人生】のようなものだと。
ソフィアは目をぱちくりとして固まっていた。
「‥‥‥でも、そうね。2度目であろうと、私、やっぱり貴女達は嫌いだわ」
「アデライト姉様‥‥」
手配された馬車がやってきた。私は最後に貴族らしくドレスの裾を摘み、優雅に挨拶をしてルカと共に去る。
「それでは皆様ゴキゲンヨウ」
ソフィアは馬車を見つめ何故か泣いていた。そんなソフィアにアルフレッドは声をかけた。
「ソフィア?大丈夫か?」
「‥‥‥アル‥‥。いつも‥‥アデライト姉様に真顔で嫌いと言われてたけど‥‥‥笑って嫌いと言われたわ。アデライト姉様‥‥笑ってたの。それがなんだか嬉しくて」
いつか絶対全ては私の物になる野望は捨てない。誰もが私を懇願し、愛され、叫び、跪ついて‥‥欲張りで美しいと誰もがそう囁いてちょうだい。
でも、そうね。今は‥‥
「アディー」
「ルカ」
愛する貴方がそばにいるだけでいい。
遠い遠い何処かの国の、森の奥には、醜い魔女が住んでいると噂がある。その魔女は醜い姿だが、とても良く効く薬を作っていた。
近くに住む村人達は、口を揃えていう。
「あぁ、あの魔女さんは美しいよ」と。
「ルチータ国王!おめでとうございます!」
白い馬車には、ルチータと隣りには美しい女性となったアメリが手を振り国民達に笑顔を向けていた。二人の後ろには騎士団長として務めているアルフレッドとソフィアが馬に乗り護衛を務めていた。
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「アルフレッド様と婚約してからますます美しくなられたわ!」
「アメリ様も可愛いらしい!剣も勉強も全て完璧だもの!素敵な王妃様になるな」
「あら、もう結婚されましたけど、マカロン家当主となったジェイコブ様も愛妻家で素敵なのよ!リリアン様が羨ましいわー」
「‥‥でも、その‥ほらマカロン家には‥」
人々は囁く、逆らったら最後。殺されると言われる。
「「怖くて醜い魔女がいる」」と。
外ではお祭り騒ぎのそんな中、城のとある部屋にて、髭を生やしていた貴族の男達がルチータ国王に謁見を求めていたがなかなか通して貰えず騒いでいた。
「私はずっと先代からこの国の為働いていたのに!なんて失礼な奴だ!」
「不正なんぞしてない!」
「早く国王陛下に会わせろ!」
「魔女め!そんな醜い顔をしていてよくもーーヒッ!!今鞭をワザとだしたな!!当たりそうだったぞ!なんて非常識な!我々に死ねと!」
銀色のショート髪で半仮面を被っている女性は、片手に鞭を持ちながら椅子に座り、騒いでいる貴族達を見下ろして笑っていた。
「あらあら。ふふ、なら死になさい」
「「「「‥‥なっ!!」」」」
そんな騒いでいる貴族達を銀髪の青年が捕える。
「マカロン家の!ジェイコブ当主か!よかった我々の話を聞いてくれ!」
オールバック髪にまとめて、少しばかり大人の顔立ちとなったジェイコブだが、やはり彼からは甘いお菓子の匂いがしていた。ジェイコブはチラッとアデライトの顔を見てため息を出して貴族達に警告した。
「貴方達の不正の証拠は揃っている。衛兵!捕まえろ!」
「クソ!!やめろっ!こんな事になったのも‥‥アデライト•マカロン!!私達を嵌めたな!この嫌われ魔女めがぁ!!」
そう男達は叫び、アデライトはクスッと馬鹿にして笑っていただけだった。
「アデライト、ルチータ国王陛下とアメリの婚約式パーティーに出席しないのか?」
「あら、私が行ったところで、美しい私が目立つだけだもの。いかないわ。というかあの腹黒国王のパーティーでお祝いをしなきゃいけないなんて嫌よ。ジェイコブお兄様は早くリリアン様を迎えに行きなさい。お腹に子供がいるのでしょう」
「‥‥わかった。とりあえず、僕が作ったお菓子をあげよう。今日はパーティーだが、みんなとまた明日ここにくるよ」
「いや、来ないでちょうだい。みんなって何かしら?五月蝿いだけだからこないでって‥‥もういないわ」
あれから12年私は大人しく(?)、真面目に(主に脅迫まがい)仕事をしていた。あの腹黒の下で働くなんて納得はできないけれど。
私は窓ガラスに写る仮面姿の自分を見つめる。少し仮面が古くなって傷だらけね。
「ルカは‥‥元気にしてるかしら」
あの時、ルカは死刑直前にすでに死刑される者と交換し、難を逃れた。なんとも浅はかで無計画だったのに、亡くなった前国王陛下達は気づかないでいた。簡単に騙されて馬鹿なのね。
ルカの居場所は、アルフレッド王子と多分あの腹黒国王陛下も知っているのでしょうね。
時々、アルフレッド王子がルカのお母様に手紙を渡してるけれど、私とルカは手紙のやり取りも何もしてない。何も聞かないようにしていた。
12年前、私の心臓は誰の物かはわからないけれど、移植され今では風邪も引かないし運動をしても特に異常はないのよね‥‥。
以前はルカの心臓で、今回は‥‥いえ、今は仕事に集中したほうが良さそうね。
チクタクと夜になり、私は栄養ドリンクを飲もうとした時だ。
「アデライトお姉様!なんでパーティーに出席しなかったの!?」
昼間から、突然窓から現れる、我が末のアメリ‥‥。この子本当にこの国の国母になれるか疑問だわ。
「ここ七階よ。アメリ」
銀色の巻き髪の彼女の姿はかつての若い頃の私によく似ていた。私の方が美しいけれどね。
「やあ、私の可愛い婚約者が姉に会うといってね」
そうまた、窓から現れるルチータ国王陛下と、それに続いてアルフレッド殿下、ソフィアも窓からついてきたようだった。
「‥‥ドアから入りなさい。何故窓から入るの。みんな頭が悪いのかしら」
「アデライト嬢、私はこの国の王だよ?少し失礼じゃないかな」
「ふふ、私に愛国心なんてありませんもの。私が1番偉いと思ってますわ」
そう私とルチータ国王陛下はお互い胡散臭い笑顔を出していた。
「ソフィア、最近寝ていなんじゃないか?」
「アル、私は騎士団長として仕事をしているだけよ。大丈夫」
「‥‥あまり無理をしないで欲しいんだけどな」
「ふふ、ありがとう。でも今本当に嬉しいのよ、自分の実力が認められて」
‥‥‥急に二人の世界にならないでくれるかしら。私の仕事場なのに、こんな騒がしいなんて最悪だわ。アメリは私の肩をポンと叩いて同情した眼差しで見つめる。
「アデライト姉様だけ、独り身だねっ!もう三十路」
「‥‥アメリ、性格がさらに悪いこになったわね」
「えー?アデライト姉様に似ちゃったからかもね!」
「私の可愛い婚約者は正直者なんだよ。許してくれアデライト嬢」
「‥‥ちっ。みんな滅びろ」
都合の良い時だけ、私に似てるなんて‥‥やっぱり子の性格は気に食わないわね。
「あ、ここにいたか!みんなお菓子を持ってきたよ!」
そう言いながら、ジェイコブお兄様と妻になったリリアン様が沢山のお菓子を持ってきて現れる。
「‥‥ここで何をするのかしら」
キョトンとした顔をする、我が兄と妹達は同じ顔をして何故かケーキを持ってきた。
「アデライト姉様の【31歳】のお誕生日だよ?忘れたの?31歳!」
「アデライト、君の31歳の誕生日じゃないか!さあ!僕達からの誕生日プレゼントだ!」
「アデライト姉様、31歳おめでとうございます!歳なんて関係ないです!日本なんて、それぐらいの女性は沢山いましたから!」
‥‥この兄妹、本当に腹が立つわね。そして、何、サラッとニホンとかわけわからないことを言っているのソフィア。隣りにいるアルフレッド殿下が首を傾げているわよ。
コンコンとまたドアが叩く音がした。また誰よ!?そう苛立つと、部屋に入ってきたのは、ルカのお母様とマックス、そして‥
「お師匠さまー!お誕生日おめでとうございます!!」
「‥あら、ふふ。ルーク、ありがとう」
茶色い髪色の小さな男の子はルカのお母様とマックスとの子供で可愛いらしい子。薬草学を教えて飲み込みが早いのよね。
「ルチータ様、アデライト姉様は実の妹の私に対しては凄くぞんざいな扱いなのに、ルカ兄に似たルークには、すごく甘いよね?」
「彼女は愛に飢えてるのさ。温かい目で見守ってやろうじゃないか」
「私達の幸せを少しだけあげようかな」
「‥‥お馬鹿な二人共、聞こえてるわよ」
この馬鹿夫婦に構うと、またろくでもない仕事をさせられる。ケーキを無理矢理食べさせられ、城に近い森の庭園へとみんなと行く事になった。
まだ何かあるのかしら?
ハアと呆れていた私の隣にルチータ国王陛下は一枚の紙を渡してきた。
「‥‥?なんでしょうかコレは」
「私からの君のプレゼントは、【解雇】だね」
「‥‥‥‥?」
「我が国にはもう魔女は必要が無くなったのさ」
「‥ふふ。私が魔女なら、ルチータ国王陛下は魔王様ですわね」
「君は相変わらず私が嫌いみたいだね。ほら、後ろを見て」
そうルチータ国王陛下が指を指す方向へと振り向くとそこには‥‥‥懐かしくて、愛しくて、会いたかった人だった。
サラサラの茶色い髪に少しくたびれたワイシャツを着ている背が高い男性が一人立っていた。
「‥‥‥‥ル‥‥カ‥‥‥‥?」
目と目が合った。ドクン!と心臓が鳴り響く‥‥。
「やあ、アディー」
久しぶりの声‥‥‥変わらない優しい表情に私は彼の元へ走った。
「‥‥ッ‥‥‥ルカ!!本当にルカなの!?」
「実は昨日、コッソリきてたんだ。ビックリした?」
私は何度も何度もルカなのか、確かめた。そんな私をルカは相変わらず笑っているだけだった。
「ねえ。アディー、僕のお嫁さんになって」
突然そんな事を言いだすルカ。もっと話す事があるのに、今まで何をしていたとか、沢山聞きたい事があるのに‥‥私はただルカの問いに答えて頷き笑った。
「勿論よ」
ー真夜中ーー
国境近くの森の場所で、ジェイコブお兄様、ソフィア、アルフレッド殿下、アメリと腹黒国王陛下や、ルカのお母様達に見送られる。
私とルカは顔がバレないようフードを被り、アメリが手配してくれた、馬車が来るのを待っていた。
「ジェイコブお兄様‥‥泣かないでくださいませ。正直見苦しいわ」
「ぐすっ‥‥きゅ、急に出ていくなんて‥‥ぼ、僕はまだ妹孝行十分していない」
「「「いえ、十分です」」」
三人の妹達に、全力で否定されジェイコブは妻のリリアンに慰められていた。彼女は、ジェイコブお兄様の扱いには慣れたようね。
「アデライト姉様、良かったね!行き遅れなくて!」
「ふふ。アメリ、一つ貴女に忠告するわ。‥‥貴女にはまだ女として魅力が欠けているから、ルチータ国王陛下から何もされないのよ?」
そう私が優しい言葉をかけると、アメリはショックな顔をしていた。ルチータ国王陛下は、あの子を大事にし過ぎて、何も手を出してないのが丸わかりなのよね。ママゴトね。
チラッと私はソフィアの方を見つめる。ポニーテール姿で騎士団長として務めている彼女‥‥。
「「‥‥‥‥あ」」
同時に声を出して、被ってしまったわ。なんだか‥‥気まずいわ。
「‥‥‥‥ソフィア」
「あ、ハイ。アデライト姉様」
「‥‥‥私もね、秘密があるのよ」
そう私はみんなに聞こえないようにソフィアの耳元で囁く。
【貴女と同じ体験の2度目の人生】のようなものだと。
ソフィアは目をぱちくりとして固まっていた。
「‥‥‥でも、そうね。2度目であろうと、私、やっぱり貴女達は嫌いだわ」
「アデライト姉様‥‥」
手配された馬車がやってきた。私は最後に貴族らしくドレスの裾を摘み、優雅に挨拶をしてルカと共に去る。
「それでは皆様ゴキゲンヨウ」
ソフィアは馬車を見つめ何故か泣いていた。そんなソフィアにアルフレッドは声をかけた。
「ソフィア?大丈夫か?」
「‥‥‥アル‥‥。いつも‥‥アデライト姉様に真顔で嫌いと言われてたけど‥‥‥笑って嫌いと言われたわ。アデライト姉様‥‥笑ってたの。それがなんだか嬉しくて」
いつか絶対全ては私の物になる野望は捨てない。誰もが私を懇願し、愛され、叫び、跪ついて‥‥欲張りで美しいと誰もがそう囁いてちょうだい。
でも、そうね。今は‥‥
「アディー」
「ルカ」
愛する貴方がそばにいるだけでいい。
遠い遠い何処かの国の、森の奥には、醜い魔女が住んでいると噂がある。その魔女は醜い姿だが、とても良く効く薬を作っていた。
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