生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
269 / 378

第268話 提案

しおりを挟む


 *

「んー、満腹、ご馳走さまでした」
「はい、お粗末さまでした」

 宣言通り、フォルタニアに飯を奢って貰い、俺は大満足の食事を終える。
 つーか、こういう感じで良いんだよ。エルフの国! 大樹たいじゅで作られた店に、優雅な緑色の木々の風景、そして〝世界樹〟! ……だったんだが、さっき〝世界樹〟は穴開けてきちゃったからな。これは自業自得か。

 いや、でも、正確には〝世界樹〟に大穴開けたのウルスラだぞ? 突き刺さってたし。
 俺は吹っ飛ばしただけだ。うん。ダメかな?

 クソ、正直〝世界樹〟観光めっちゃしたかったな。高さ500m級の超巨大樹なんて今後拝めるわけがない。

「ユキマサ様?」

「ああ悪い、飯ご馳走さま、本当に美味かった」
「喜んでいただけたようで、私も本当に嬉しいです」

 また来ましょうね。と、微笑むフォルタニアは本当に美人だ──エルフ美人。そんな言葉がよく似合う。

「さて、帰るか──〝エルクステン〟に?」
「はい!」

 元気な声が返ってくる。

「あ、でも、乗り合いの竜車が出てるでしょうか?」
「あー、すまん、そこら辺はマジでよく分からん」

 頭を掻きながら困る俺をフォルタニアが、くすくすと笑いながら返事をして来る。

「ユキマサ様でも困る時があるのですね。何だか新鮮です」
「そりゃあるだろ? 俺だって人類だぜ? それと〝エルクステン〟までの移動手段は何があるんだ?」

「基本的には地竜車ですね。近くの街や村を回ってく物と直通があります。最速手段だと空竜もありますが、少数や夜は使われませんね」

 気づくと日が傾いてきている。
 あと数時間もすれば立派な夜だろう。

「ユキマサ様、提案ですが、こちらで一泊して明日の早朝に出ると言うのはどうでしょう? まあ、この状況ですから、明日も地竜車が出てるとは限りませんが……」
「明日も竜車が無かったら、そしたら俺がフォルタニアを担いで走ってってやるよ? 行きは少し迷ったから時間がかかっちまったが、帰りは覚えてるから大丈夫だ。数時間で着く」

「走ってきたのですか!?」
「その方が早かったからな」

「……ユキマサ様は足の速さもエルルカ様並みですか?」
「いや、エルルカのが速いんじゃないか? 魔法も合わせていいならどうなるか分からないけど。まあ、じゃあ、取り敢えずは宿探しだな。空いてるかな?」

 店を出て、それなりに広い集落の中を歩き、宿屋を探すと、あったよ宿屋。さっきの店のよりも大分大きい大木を使った宿屋だ。

「あそこでいいか?」
「はい、私はどこでも大丈夫です」

 店はガラガラだった。貸しきりと言っても良い。

「すまない。一泊で2部屋用意できるか?」
「あ、ユキマサ様、迷惑じゃなければ、部屋は1つでお願いしたいです」

「? 一緒ってことか?」

 違います。ユキマサ様は床です。とかは言わない奴だということぐらいには、俺は信用してる。

「はい。迷惑でしょうか?」
「俺は別に構わないぞ──度々、すまないな。部屋は一つで一泊、二人で頼む」

「かしこまりました。前払いになります。小金貨1枚になります」
「悪いな、助かる。小金貨1枚だ」

 店員に小金貨を渡すと、部屋の鍵を渡される。

「よし、行くぞ? フォルタニア?」
「はい!」

 何故だかフォルタニアはすこぶるご機嫌だ。
 そんなに一部屋がよかったのか──? あー、昨日の件もあるしな? 一人じゃ怖かったんだろうな。

 でも、いくらあの豚エルフのボルスの野郎でも、流石にここまでは追って来ないと思うが。それでも怖いものは怖いよな。こればっかは理屈じゃない。

 まあ、ボディーガードぐらいはやってやるさ。
 美味い食事も奢って貰ったし、お安いご用だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

処刑された令嬢、今世は聖女として幸せを掴みます!

ミズメ
恋愛
かつて侯爵令嬢マリエッタは、聖女を害したとして冤罪で処刑された。 その記憶を持ったまま、マリエッタは伯爵令嬢マリーとして生を受ける。 「このまま穏やかに暮らしたい」田舎の伯爵領で家族に囲まれのびのびと暮らしていたマリーだったが、ある日聖なる力が発現し、聖女として王の所に連れて行かれることに。玉座にいた冷徹な王は、かつてマリエッタを姉のように慕ってくれていた第二王子ヴィンセントだった。 「聖女として認めるが、必要以上の待遇はしない」 ヴィンセントと城の人々は、なぜか聖女を嫌っていて……? ●他サイトにも掲載しています。 ●誤字脱字本当にすいません…!

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

高見 梁川
エッセイ・ノンフィクション
管理人自身の恐怖体験や、ネット上や読書で知った大量殺人犯、謎の未解決事件や歴史ミステリーなどをまとめた忘備録。 個人的な記録用のブログが削除されてしまったので、データを転載します。

裏切られた私はあなたを捨てます。

たろ
恋愛
家族が亡くなり引き取られた家には優しい年上の兄様が二人いました。 いつもそばにいてくれた優しい兄様達。 わたしは上の兄様、アレックス兄様に恋をしました。 誰にも言わず心の中だけで想っていた恋心。 13歳の時に兄様は嬉しそうに言いました。 「レイン、俺、結婚が決まったよ」 「おめでとう」 わたしの恋心は簡単に砕けて失くなった。 幼い頃、助け出されて記憶をなくして迎えられた新しい家族との日々。 ずっとこの幸せが続くと思っていたのに。 でもそれは全て嘘で塗り固められたものだった。

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~4巻が発売中!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  第8巻は12月16日に発売予定です! 今回は天狼祭編です!  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

21時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

【完結】妊娠した愛妾の暗殺を疑われたのは、心優しき正妃様でした。〜さよなら陛下。貴方の事を愛していた私はもういないの〜

五月ふう
恋愛
「アリス……!!君がロゼッタの食事に毒を入れたんだろ……?自分の『正妃』としての地位がそんなに大切なのか?!」  今日は正妃アリスの誕生日を祝うパーティ。園庭には正妃の誕生日を祝うため、大勢の貴族たちが集まっている。主役である正妃アリスは自ら料理を作り、皆にふるまっていた。 「私は……ロゼッタの食事に毒を入れていないわ。」  アリスは毅然とした表情を浮かべて、はっきりとした口調で答えた。  銀色の髪に、透き通った緑の瞳を持つアリス。22歳を迎えたアリスは、多くの国民に慕われている。 「でもロゼッタが倒れたのは……君が作った料理を食べた直後だ!アリス……君は嫉妬に狂って、ロゼッタを傷つけたんだ‼僕の最愛の人を‼」 「まだ……毒を盛られたと決まったわけじゃないでしょう?ロゼッタが単に貧血で倒れた可能性もあるし……。」  突如倒れたロゼッタは医務室に運ばれ、現在看護を受けている。 「いや違う!それまで愛らしく微笑んでいたロゼッタが、突然血を吐いて倒れたんだぞ‼君が食事に何かを仕込んだんだ‼」 「落ち着いて……レオ……。」 「ロゼッタだけでなく、僕たちの子供まで亡き者にするつもりだったのだな‼」  愛人ロゼッタがレオナルドの子供を妊娠したとわかったのは、つい一週間前のことだ。ロゼッタは下級貴族の娘であり、本来ならばレオナルドと結ばれる身分ではなかった。  だが、正妃アリスには子供がいない。ロゼッタの存在はスウェルド王家にとって、重要なものとなっていた。国王レオナルドは、アリスのことを信じようとしない。  正妃の地位を剥奪され、牢屋に入れられることを予期したアリスはーーーー。

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...