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第269話 エルフの宿屋の一夜
しおりを挟む部屋にはいると──うお!
超木の中って感じ、エルフの国感半端ないな!
部屋もベッドも綺麗だ。
キチンと清掃が行き届いている。
…………って、あれ? ベッド一つしかない。
つーか、ダブルベッドじゃん!
「おい、フォルタニア、ベッドがダブルだ。部屋変えて貰おうぜ?」
がし。
「私はユキマサ様なら一緒でいいです。それともユキマサ様はお嫌ですか?」
「嫌じゃないけど、お前はいいのか?」
「はい、それぐらいには信頼してますよ。ちゃんとユキマサ様もベッドで寝てくださいね♪」
ふふと笑うフォルタニア。
何だか随分と楽しそうな様子だ。
その後、フォルタニアはシャワーを浴びに行った。取り残された俺は今日のシリュウを逃した件について考える。
恐らく向こうには、クレハの〝空間移動〟と似た類いの魔法かスキルを持った奴がいる。
これが厄介だ。恐らく、もう今から探しても十中八九シリュウは見つからないだろう。
あの野郎、絶対ぶっ倒すリストに登録だ。
……聞きそびれたが、エルルカは無事だろうか? シリュウが逃げ出したって事は、エルルカが何らかの致命傷を与えたって考えて良さそうだが。
そんなことを考えてること、10分程度──
「──ユキマサ様、お先失礼しました」
フォルタニアがシャワーから出てくる。
──ぶっ!
フォルタニアがシャワーから出てきたのはいいのだが、フォルタニアはバスタオル一枚姿であった。
「ユキマサ様もシャワー浴びられますか?」
「うん? あ、ああ、浴びようかな」
そう言い残し、俺もシャワーを浴びる。
そーいや、フォルタニアのパジャマ買ってなかったな。部屋着と外着はキッチリ分けるタイプか?
だとしても、バスタオル一枚ってのは、流石に警戒心も無さすぎる気がするぞ?
その後さっさかシャワーを浴びて部屋に戻ると──
相変わらずバスタオル一枚の姿のベッドに座るフォルタニアが居た。
「えーと、フォルタニア? その、服──」
「ユキマサ様、抱いてください」
なっ。
俺はフォルタニアに抱きつかれる。
「私にはこれぐらいしかユキマサ様に返せるものがありません、元よりユキマサ様が居なければ、昨日無理矢理にでも奪われていた貞操です」
その声は震えている。
てか、そういうことかよ?
「あのな……別に何かを借したつもりもないから何も返さなくていい。つーか、自分を安売りしすぎだ……」
「私の身体では、ユキマサ様のお相手はできませんか?」
「いや、そういうことじゃねぇよ。控えめに言って魅力的過ぎだ。俺の理性が持つ内に服を着な? てか、着てくれ。着てください。マジでヤバい!」
「ユキマサ様、女性に恥をかかせましたね。減点ですよ」
「減点でもいいが、だから自分を安売りするな? つーか、そんな震えた身体して何言ってやがる?」
フォルタニアはブルブルと震えていた。
恐らくは怖かったのだ。この数日の全てが。
それが今、少しだけ落ち着いたことで、どっと疲れが出るように、恐怖が溢れてきたのだろう。
ぺし。
俺はフォルタニアの額を指で軽く弾いた。
「うっ」
「最低でもいつも通りに冷静に落ち着いて、諸々の気持ちがハッキリしてきてからに出直しな? じゃないと、必ず後悔する。これぐらいは俺でも分かる」
「……今日は私の敗けです。冷静さを欠いていたのも認めます。分かりました、出直します。でも、相手がユキマサ様で本当によかった──」
そういい、フォルタニアは俺から身体を離し「着替えます」と呟くと、外着で着ていた緑のワンピースに着替えるのだった。
ちなみに勿論その間、俺は後ろを向く。
いや、そりゃ俺だって、人並みには男だ。
本心を言うと見たい、見たいよ?
でも、今それを見てしまったら、何か大切な物を失うのではなく、今後何かとても大事で大切な物を手にできなくなってしまうような、そんな気がした──。
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