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二人の関係 4
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「大丈夫か、リアン」
「大丈夫だけど……なんでここにいるの?」
「巡回中にリアンが変態に襲われてるって聞いて、全速力で駆けつけたのさ」
息を切らして追いかけてきたブライアン卿が教えてくれた。
「そうだったんだ。すみません、ブライアン卿まで」
「おい、リアン。肩から血が滲んでるぞ」
「あー、さっき思いっ切り掴まれたから……」
「なんだと!?」
アイザックが、男の腕をギリギリと締め上げた。
「いててて! やめてくれ! 骨が折れる」
「おい、面倒だから折るなよ。とりあえず、後は俺にまかせてリアンを病院に連れてってやれ」
「はい!」
アイザックは勢いよく返事をすると、男の耳元に囁いた。
「真っ二つにされたくなければ、リアンに二度と近づくな。俺の剣はよく切れるからな」
見せつけるように、鞘に手をかける。
「わかったか?」
「は、はひ……」
男はブルブルと震えながらうなずいた。
***
病院で処置を受けてから、アイザックはリアンを家に連れて帰った。
「横になるか?」
「ううん」
「じゃあ、気分が落ち着くようにカモミールティーでも淹れるよ」
ソファに座って待っていると、カモミールの甘い香りが漂ってきた。
アイザックの淹れた紅茶を飲みながら、リアンはため息をついた。
「はあ、やっと落ち着いた。ありがとな。やっぱり俺も一発殴っときゃ良かった」
「駄目だよ。あんなやつに触ったらばっちいだろ」
「あはは。そういえば、誰がおまえを呼んできてくれたんだ?」
「通りの真ん中で騒いでたから、何人も心配して知らせにきたぞ。もう少し遅かったら誰かが止めてたはずだ」
「そっか、今度みんなにお礼言わなくちゃな。そういえばさあ、なんか誤解されてるみたいなんだ」
「ん?」
「俺とおまえが夫婦だって」
「ブハッ」
アイザックが口に含んだ紅茶を吐き出した。
「あーあ、何やってんだ」
リアンが笑いながら顔を拭いてやる。
「ゴホッ、ご、ごめん」
「心配しなくても今度訂正しておくから」
「……いや、訂正しなくていいんじゃないか。俺たちが夫婦だってことにしておけば、さっきみたいに変態に襲われることもないだろうし」
「それは、そうかもしれないけど……おまえはそれでいいの? その、誤解されたくない相手とかいないのか?」
「いないよ、そんなの! まさか、リアンはいるの!?」
アイザックが目の色を変えた。
「いや、俺もいないけど……」
「だったらいいよね?」
リアンは降参と言わんばかりに両手を上げた。
「わかった! じゃあ、そういうことにしよう」
「大丈夫だけど……なんでここにいるの?」
「巡回中にリアンが変態に襲われてるって聞いて、全速力で駆けつけたのさ」
息を切らして追いかけてきたブライアン卿が教えてくれた。
「そうだったんだ。すみません、ブライアン卿まで」
「おい、リアン。肩から血が滲んでるぞ」
「あー、さっき思いっ切り掴まれたから……」
「なんだと!?」
アイザックが、男の腕をギリギリと締め上げた。
「いててて! やめてくれ! 骨が折れる」
「おい、面倒だから折るなよ。とりあえず、後は俺にまかせてリアンを病院に連れてってやれ」
「はい!」
アイザックは勢いよく返事をすると、男の耳元に囁いた。
「真っ二つにされたくなければ、リアンに二度と近づくな。俺の剣はよく切れるからな」
見せつけるように、鞘に手をかける。
「わかったか?」
「は、はひ……」
男はブルブルと震えながらうなずいた。
***
病院で処置を受けてから、アイザックはリアンを家に連れて帰った。
「横になるか?」
「ううん」
「じゃあ、気分が落ち着くようにカモミールティーでも淹れるよ」
ソファに座って待っていると、カモミールの甘い香りが漂ってきた。
アイザックの淹れた紅茶を飲みながら、リアンはため息をついた。
「はあ、やっと落ち着いた。ありがとな。やっぱり俺も一発殴っときゃ良かった」
「駄目だよ。あんなやつに触ったらばっちいだろ」
「あはは。そういえば、誰がおまえを呼んできてくれたんだ?」
「通りの真ん中で騒いでたから、何人も心配して知らせにきたぞ。もう少し遅かったら誰かが止めてたはずだ」
「そっか、今度みんなにお礼言わなくちゃな。そういえばさあ、なんか誤解されてるみたいなんだ」
「ん?」
「俺とおまえが夫婦だって」
「ブハッ」
アイザックが口に含んだ紅茶を吐き出した。
「あーあ、何やってんだ」
リアンが笑いながら顔を拭いてやる。
「ゴホッ、ご、ごめん」
「心配しなくても今度訂正しておくから」
「……いや、訂正しなくていいんじゃないか。俺たちが夫婦だってことにしておけば、さっきみたいに変態に襲われることもないだろうし」
「それは、そうかもしれないけど……おまえはそれでいいの? その、誤解されたくない相手とかいないのか?」
「いないよ、そんなの! まさか、リアンはいるの!?」
アイザックが目の色を変えた。
「いや、俺もいないけど……」
「だったらいいよね?」
リアンは降参と言わんばかりに両手を上げた。
「わかった! じゃあ、そういうことにしよう」
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