騎士団やめたら溺愛生活

初めての料理 2

　日が暮れるころ、アイザックが息を切らして帰ってきた。

「ただいま！」
「おかえり。走ってきたのか？」

　水色のエプロンを身につけたリアンが出迎えると、アイザックが目を丸くした。

「そのエプロン……」
「ああ、台所にあったから借りたぞ。駄目だったか？」
「いや、いいよ。すっごくいい！　買っておいて良かった……」
「食べる前にシャワー浴びてこいよ」
「うん！」


　シャワーを浴び、部屋着に着替えたアイザックが戻ってくると、テーブルの上に出来たての料理が並べられていた。

「すごい！　これ、全部リアンが作ったの？」

「ふふん、結構大変だったんだぞ。ニンジンのポタージュに、鳥肉の香草焼き、それに野菜サラダもあるからな」

「どれも美味しそうだ」

　スープをひと口飲んだアイザックが「美味しい」と言うと、リアンが口元をニマニマさせた。

「これも食ってみろ」
「うん」
　アイザックは大きく切った鶏肉を口に入れ、じっくりと味わった。

「皮はパリパリしてるのに、肉は柔らかくてうまい。リアンは料理の天才だな！」
「んふっ。よし、俺も食べるぞ」

　アイザックの反応に気を良くしたリアン。
　もっと色々な料理を食べさせてやろう、と料理魂に火がついた。

　＊＊＊

　食後はリビングのソファに腰掛け、ハーブティーを飲みながら、二人でのんびりと話をした。

「正直、あんまり期待してなかったんだけど、どれもすごく美味しかったよ」

「へへ。実は俺も不安だったから、ミシェルさんに教えてもらったんだ」

「……ミシェルって誰？」
　アイザックが不機嫌な声を出す。

「向かいのベルナールじいさんの奥さんだろ。近所の人の名まえぐらい、ちゃんと覚えとけよ」

「わかった。ミセスミシェルだな。ミシェル、ミシェル。うん、覚えた」

「しょうがないやつだなあ」
　とリアンは苦笑いした。