騎士団やめたら溺愛生活

愛生

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初めての料理

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 翌朝、なかなか家を出ようとしないアイザックにリアンはイライラしていた。

「ドアの鍵はちゃんとかけろよ。知らないやつが来ても開けちゃ駄目だぞ。いや、知ってるやつの方が危ないか。やっぱり窓も閉めた方が――」

「ああもうっ、大丈夫だから早く行けよ」

「……途中で帰ってこようかな」 
 
「バカなこと言ってないでちゃんと仕事しろ! 子どもの留守番じゃないんだから、とっとと行って稼いでこい!」

「うぅ……いってきます」

 アイザックの背中を押して無理やり追い出すと、「掃除でもするか」とリアンは部屋の中を見渡した。

「まずは、朝食の片づけだな。今朝はパンだけだったから夜はちゃんと作らなきゃ。でも、俺、料理したことないんだよなあ。寮も食事付きだったし」

 掃除は孤児院にいた頃からやっているので慣れている。
 リアンは食器を洗ってから、一階の掃除をした。憧れの一軒家だと思うと掃除をするのも楽しい。高いところは左手を使い、窓もピカピカに磨いた。

 一階の掃除を終えると二階に上がり、アイザックの部屋のドアを開ける。ベッドと机くらいしかない殺風景な部屋だ。

「掃除しやすそうだからいいけど」 

 給料をもらっても、飲みに行くわけでもなく何か買うわけでもない。いったい何に使うのかと思えば、突然、一軒家を借りたという。
 
 この街で一軒家を借りるなら、保証金の他に最低でも前家賃2ヶ月分は必要だ。決して安い金額ではない。

(あいつ、それだけのお金を貯めてたんだよなあ。俺なんか無駄遣いしてたから貯金なんか全然ないのに)

 アイザックがいなかったら、自分はどうなっていただろう。
 孤児院に戻るわけにもいかず、こんな身体じゃまともに働くこともできない。

「きっと途方に暮れてただろうな。アイザックにもっと感謝しなきゃ。よし、やるぞー!」

 窓を開け、ベッドを整えると、ほうきで床を掃いてから拭き掃除をする。
 アイザックの部屋が終わると、自分の部屋も同じように綺麗にした。

「ふう。こんなところかな。そろそろ買い物に行くか」

 アイザックから食費を預かってはいるが、できるだけ節約したい。
 そのためにはリサーチが必要だ。


 ***

 リアンは近くの店をのぞきながら、値段や品質をチェックしてまわった。

 野菜はジャックのところが一番良さそうだ。魚はジーナさん、肉はモルガンじいさん……パンはサンドラさんの店かな。俺もパンくらい焼けるようになりたいなあ。

 引っ越してきたばかりとはいえ、もともとこの辺は騎士団の巡回で知っている顔ばかり。歩いているとあちこちから声がかかる。

 きりがないので「また今度ね」とかわしながら、リアンはあたふたと家に戻った。

 

 
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