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【それは偽りではなく、ノリです。】その12
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「生命力・魔力と同じぐらい、血液を循環させる肉体の筋肉も造らねば・・・体内にエネルギーを保つことも難しくなってしまいます」
「はい・・・でも、身体が怠くって・・・」
苦しい、苦しい・・・それが心の負担となり、生きているそのものが苦しくて仕方がないんだよ。
「うんうん、そうですよね。でも、大丈夫ですよ、ちゃんと身体が“今は動きたい”という信号を出しますから、焦らず身体の声を聞いてあげて下さい」
「そうなんですか?」
「何事も体力が要ります。呼吸するのも、立ち上がるのも、本を読むのも意外と消耗するのです・・・ですが・・・身体と思考が一緒だとは思わないで下さい」
「へ?」
身体と思考が一緒じゃない?
「不安と恐れで布団をかぶり続ける…じっと暗闇に閉じこもる…。怒りもしない、外に出たら自分が倒れてしまうのではないかと言う妄想に囚われないで下さい。もしくは・・・倒れたっていいじゃない? ぐらいな感じでお散歩して下さい。用意周到に頭巾かぶって散歩する人なんていないでしょう?」
「え・・・そうかも・・・外で自分が倒れるんじゃないかと思って安全な場所にとどまっちゃうクセが・・・」
「でも実際、倒れるんですが?」
クレーから容赦ないツッコミが入った。
おいおい、そこは健常者は突っ込んじゃいけない領域だよ?
「それは、健康体にも関わらず魔力駄々洩れのせいですね・・・じゃあ、血液検査しましょう! ちゃんと研究結果出しますよ!」
「アーチュウ殿、今・・・“研究”とか言ったか?」
前方にいるアーチュウ先生の顔が血の気を無くし、一瞬で白くなった。
一体どんな顔して、ソラルさまはアーチュウ先生を睨んでいるのだろう?
怖すぎて後ろを向けない。
「だって・・・ヒロコ様は特殊個体ですよ~? 前例もないんですよ~? 色々調べないと分からないじゃないですかぁ?」
と・・・‟特殊個体”って・・・結局、‟珍獣”扱いなのでは?
「では・・・ヒロコの身体を調べたいのであれば、先ほどの話しを報告書にまとめて頂きたい」
ナトンが驚いたように口を開けてソラルさまの方を見た。
「ソラル様! 何を勝手な事を言って・・・」
「その報告書を宰相マテオ様に提出して頂きたい・・・ヒロコの体調が今後、きちんと改善に向かう方法が見つかるならば、検査なり診断なり必要な事だろう?」
「そう・・・だけど・・・」
「ヒロコは高価な置物ではない、ひとりの人間の女性だ。何も分からぬまま・・・先代の様になっては・・・ならない・・・」
ちょーーーーっと待ったあああああ!! ナニソレ! なにそれぇ! えええ?
先代の聖女ってどうなったの? ねえ、どうなったのぉおぉおぉおっ!!!
と、叫びたい・・・この衝動はどうすればいいのですか・・・?
“先代の聖女”の話はマテオGが箝口令を敷いていると先ほど聞いた。
私が召喚された時の情報についても、マテオGは私を守るために黙秘した事が多いと聞いていた。
詰まり・・・諸事情を知っているマテオGからであれば・・・国王も知らない真実が聴けると言う事だ。
そして、ソラルさまは私の今後の為に、目上の方に明確な報告を上げなければならないと判断した。
私は喉まで出かかった疑問の言葉を飲み込み、クシャリと服の胸元を握った。
「はい・・・でも、身体が怠くって・・・」
苦しい、苦しい・・・それが心の負担となり、生きているそのものが苦しくて仕方がないんだよ。
「うんうん、そうですよね。でも、大丈夫ですよ、ちゃんと身体が“今は動きたい”という信号を出しますから、焦らず身体の声を聞いてあげて下さい」
「そうなんですか?」
「何事も体力が要ります。呼吸するのも、立ち上がるのも、本を読むのも意外と消耗するのです・・・ですが・・・身体と思考が一緒だとは思わないで下さい」
「へ?」
身体と思考が一緒じゃない?
「不安と恐れで布団をかぶり続ける…じっと暗闇に閉じこもる…。怒りもしない、外に出たら自分が倒れてしまうのではないかと言う妄想に囚われないで下さい。もしくは・・・倒れたっていいじゃない? ぐらいな感じでお散歩して下さい。用意周到に頭巾かぶって散歩する人なんていないでしょう?」
「え・・・そうかも・・・外で自分が倒れるんじゃないかと思って安全な場所にとどまっちゃうクセが・・・」
「でも実際、倒れるんですが?」
クレーから容赦ないツッコミが入った。
おいおい、そこは健常者は突っ込んじゃいけない領域だよ?
「それは、健康体にも関わらず魔力駄々洩れのせいですね・・・じゃあ、血液検査しましょう! ちゃんと研究結果出しますよ!」
「アーチュウ殿、今・・・“研究”とか言ったか?」
前方にいるアーチュウ先生の顔が血の気を無くし、一瞬で白くなった。
一体どんな顔して、ソラルさまはアーチュウ先生を睨んでいるのだろう?
怖すぎて後ろを向けない。
「だって・・・ヒロコ様は特殊個体ですよ~? 前例もないんですよ~? 色々調べないと分からないじゃないですかぁ?」
と・・・‟特殊個体”って・・・結局、‟珍獣”扱いなのでは?
「では・・・ヒロコの身体を調べたいのであれば、先ほどの話しを報告書にまとめて頂きたい」
ナトンが驚いたように口を開けてソラルさまの方を見た。
「ソラル様! 何を勝手な事を言って・・・」
「その報告書を宰相マテオ様に提出して頂きたい・・・ヒロコの体調が今後、きちんと改善に向かう方法が見つかるならば、検査なり診断なり必要な事だろう?」
「そう・・・だけど・・・」
「ヒロコは高価な置物ではない、ひとりの人間の女性だ。何も分からぬまま・・・先代の様になっては・・・ならない・・・」
ちょーーーーっと待ったあああああ!! ナニソレ! なにそれぇ! えええ?
先代の聖女ってどうなったの? ねえ、どうなったのぉおぉおぉおっ!!!
と、叫びたい・・・この衝動はどうすればいいのですか・・・?
“先代の聖女”の話はマテオGが箝口令を敷いていると先ほど聞いた。
私が召喚された時の情報についても、マテオGは私を守るために黙秘した事が多いと聞いていた。
詰まり・・・諸事情を知っているマテオGからであれば・・・国王も知らない真実が聴けると言う事だ。
そして、ソラルさまは私の今後の為に、目上の方に明確な報告を上げなければならないと判断した。
私は喉まで出かかった疑問の言葉を飲み込み、クシャリと服の胸元を握った。
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