50 / 71
【それは偽りではなく、ノリです。】その13
しおりを挟む
当日の夕食は、またもやスーパー料理人のギヨムが目の前で懇切丁寧に配膳から何もかも世話をしてくれた。
過剰な待遇に私は少し腰が引けたと言っても過言ではない。
何せ元々貧乏派遣社員の最底辺な・・・私である(涙)
月末は冷蔵庫に干からびた人参か、腐りかけた玉ねぎぐらいしか入っていなった。
無論、米の在庫は死守していた。
ジュウジュウと美味しそうな音を立てて鮮やかな熱々の脂がはじけ、見るからに高そうなお肉が料理人の彼によって焼かれている。
ちょっとそのお肉になりたいかも! という、変態チックな妄想は置いといて。
ギヨムの調理をする澄ました顔と、時々、ムキッと筋肉が浮かぶ腕を至福の笑みで見詰めていた。
(あ、食欲とは違うようなヨダレが・・・)
うん、イケおじ! こんな美味しい人・・・日本社会ではまずそう簡単には見られない。
食卓には私とマクシムが向かい合わせに座り、作法とスケジュール確認をしながら食事をしている。
内容の半分は右から左に受け流して、私はモリモリと美味しい食事を堪能していた。
しかし、今日のマクシムは憔悴しきっている。
「なんか・・・疲れてる?」
「まあ・・・ちょっと、ナトンに投げ飛ばされるとは思ってなくて・・・少し反省してる」
彼はしょんぼりと両肩を落としていた。
投げ飛ばされた後、城内のかなり背の高い針葉樹林の枝にしばらく引っかかっていたそうだ。
マクシムの身軽さと魔力を使えば高い所から降りるのは容易いが、プライドがある意味ポッキリ折られたらしい。
こないだのやらかした結果の土下座の反省から復活したばかりなのに、少し気の毒に思った。
「ごめんね・・・元々は私が倒れたせいだね」
「え! いや・・・そうじゃないよ、だってしょうがないじゃないか! ヒロコは体質なんだし」
(体質・・・魔力駄々洩れが体質・・・)
「うん・・・でも、体調に波があるみたいだから気を付けるね」
お互いに少々顔が暗くなったが、ギヨムの出した焼き立ての肉を前にした瞬間、何とも言えない恍惚の表情へと変化した。
“美味しいは正義!”という、言葉が頭の中に浮かんだ。
私は高級品のお肉を目の前にニヤニヤが止まらない。
「あと、ヒロコの護衛兵士を増やすからね」
「・・・・・・・・・・・へ?」
会話が始まったので、すぐに肉を口に入れる訳には行かない。
「騎士階級候補の人間だから、大丈夫だよ」
「騎士階級候補?」
ナイフとフォークを握った状態で、ちょっとお預け気分だ。
私は焼き立てのステーキとマクシムの顔を交互に見た。
「平民から騎士職を目指しているから実力は保証するよ。本物の護衛騎士を雇うより人件費節約にもなるからね」
人件費節約って・・・ファンタジーな世界なのに世知辛いよ。
「あ、私が作ったチョコレート食べてみる?」
ふと、食後のデザート代わりに丁度いいのではないかと思ったので、私はマクシムに提案してみた。
「え? ヒロコが作ったの?」
ピクリと肩を反応させたギヨムと、愛想笑いを浮かべている私は視線を合わせた。
わずかにギヨムが口角を上げた。
マクシムの身体で、さっそく“当社比”を実証してみる事にしたのだ。
過剰な待遇に私は少し腰が引けたと言っても過言ではない。
何せ元々貧乏派遣社員の最底辺な・・・私である(涙)
月末は冷蔵庫に干からびた人参か、腐りかけた玉ねぎぐらいしか入っていなった。
無論、米の在庫は死守していた。
ジュウジュウと美味しそうな音を立てて鮮やかな熱々の脂がはじけ、見るからに高そうなお肉が料理人の彼によって焼かれている。
ちょっとそのお肉になりたいかも! という、変態チックな妄想は置いといて。
ギヨムの調理をする澄ました顔と、時々、ムキッと筋肉が浮かぶ腕を至福の笑みで見詰めていた。
(あ、食欲とは違うようなヨダレが・・・)
うん、イケおじ! こんな美味しい人・・・日本社会ではまずそう簡単には見られない。
食卓には私とマクシムが向かい合わせに座り、作法とスケジュール確認をしながら食事をしている。
内容の半分は右から左に受け流して、私はモリモリと美味しい食事を堪能していた。
しかし、今日のマクシムは憔悴しきっている。
「なんか・・・疲れてる?」
「まあ・・・ちょっと、ナトンに投げ飛ばされるとは思ってなくて・・・少し反省してる」
彼はしょんぼりと両肩を落としていた。
投げ飛ばされた後、城内のかなり背の高い針葉樹林の枝にしばらく引っかかっていたそうだ。
マクシムの身軽さと魔力を使えば高い所から降りるのは容易いが、プライドがある意味ポッキリ折られたらしい。
こないだのやらかした結果の土下座の反省から復活したばかりなのに、少し気の毒に思った。
「ごめんね・・・元々は私が倒れたせいだね」
「え! いや・・・そうじゃないよ、だってしょうがないじゃないか! ヒロコは体質なんだし」
(体質・・・魔力駄々洩れが体質・・・)
「うん・・・でも、体調に波があるみたいだから気を付けるね」
お互いに少々顔が暗くなったが、ギヨムの出した焼き立ての肉を前にした瞬間、何とも言えない恍惚の表情へと変化した。
“美味しいは正義!”という、言葉が頭の中に浮かんだ。
私は高級品のお肉を目の前にニヤニヤが止まらない。
「あと、ヒロコの護衛兵士を増やすからね」
「・・・・・・・・・・・へ?」
会話が始まったので、すぐに肉を口に入れる訳には行かない。
「騎士階級候補の人間だから、大丈夫だよ」
「騎士階級候補?」
ナイフとフォークを握った状態で、ちょっとお預け気分だ。
私は焼き立てのステーキとマクシムの顔を交互に見た。
「平民から騎士職を目指しているから実力は保証するよ。本物の護衛騎士を雇うより人件費節約にもなるからね」
人件費節約って・・・ファンタジーな世界なのに世知辛いよ。
「あ、私が作ったチョコレート食べてみる?」
ふと、食後のデザート代わりに丁度いいのではないかと思ったので、私はマクシムに提案してみた。
「え? ヒロコが作ったの?」
ピクリと肩を反応させたギヨムと、愛想笑いを浮かべている私は視線を合わせた。
わずかにギヨムが口角を上げた。
マクシムの身体で、さっそく“当社比”を実証してみる事にしたのだ。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。

【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください
今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。
しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。
ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。
しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。
最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。
一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。


【完結】あなただけがスペアではなくなったから~ある王太子の婚約破棄騒動の顛末~
春風由実
恋愛
「兄上がやらかした──」
その第二王子殿下のお言葉を聞いて、私はもう彼とは過ごせないことを悟りました。
これまで私たちは共にスペアとして学び、そして共にあり続ける未来を描いてきましたけれど。
それは今日で終わり。
彼だけがスペアではなくなってしまったから。
※短編です。完結まで作成済み。
※実験的に一話を短くまとめサクサクと気楽に読めるようにしてみました。逆に読みにくかったら申し訳ない。
※おまけの別視点話は普通の長さです。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる