病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

文字の大きさ
47 / 71

【それは偽りではなく、ノリです。】その10

しおりを挟む
「あのタイミングで“金の波紋”が出たのは?」
「どのタイミングですか?」
「すみません・・・瀕死の男の子が看護塔に運ばれて・・・涙が・・・その」
「ああ・・・まさか自分の真後ろであんな爆弾投下されるとは思いませんでしたね・・・“金の波紋”は星と繋がった者でないと発動ができませんが・・・明確な記録がないので、発動条件は不明ですねぇ」
「あの・・・金の波紋を自在に操る事ができれば、死んだ人間を生き返らせる事は可能ですか?」
「理論的には、魂の入ってない死体では無理です・・・が、肉体の損傷がギリギリのラインで、魂を絶対手放さない強い意思と、術者と深いつながりを持った者ならば・・・“超回復”と言う意味では試す価値はあります」
「あのう・・・」
「はい? ヒロコ様、なんでしょう?」
「ちなみに金色じゃないんですけど、はどうなりますか・・・」
「う~ん・・・となると、理論的には・・・その者が“金の波紋”の素を体内に宿した事になりますかね?」
「「「“金の波紋”の素!?」」」
 三人の声が揃ってしまった。
「・・・・・・実験しましょうか?」
 平和そうな笑顔を浮かべていたアーチュウの瞳の奥が光った。
「は?」
「ヒロコ様の体液を下さい!」
「体液って・・・玉ねぎで泣いた場合は効果の違いとかあるんですか?」
「え! 協力してくれるのですか!?」
 承諾の意味だと捉えたアーチュウが思わず腰を浮かした。
「ちょっと! ストーップ! それダメ! ゼッタイ!」
 マクシスが両手を勢いよく上げた。
「・・・ダメなの?」
「ばかああああ! 聖女の肉体は国宝なの! 珍獣並みに希少なの!」
「・・・・・・・・・・・・・・・珍獣」
「重要性が分かってないだろう? キミの血液一滴で殺し合いが起こるんだよ!? キミの身柄一つで戦争が起こるんだよ! だいたい・・・この宮に不法に入ろうとした人間が何人死んだと思ってるんだ?」
「・・・・・・・・・・え?」
 心臓に一筋の氷の針を刺されたような感覚が襲った。
 ぐらりと、視界が・・・まるで世界が歪んだようだった。

 胸から喉へと冷たさが伝わり、私は何かを言おうとしたはずだが、その言葉は凍りついて床に落ち、誰にも届かなかった。
 同時に、指先から熱を失っていくのを感じた。
 掌から、指先から、何かが逃げていく・・・・。
 けれど、直後に地についている足元から何かが心臓に向かっていく。
小さな振動がざわざわと全身を巡っているのだ。
呼吸のように繰り返されるその感覚を、私はたった今、はじめて自覚した。

 壊れそうな私を、絶えず“何か”が支えている――――。

ふと、クレーが私の後方にあるベランダに視線を向け、足早に歩み寄った。
 全員その方向に視線を向けると、黒い詰襟を着たナトンくんと、険しい表情を浮かべたソラルさまが「開けろ」と、口パクしていた。
 クレーはすまし顔で、カラカラカラ・・・と丁寧にガラス戸を開け、その横でゆっくりと頭を垂れた。
「あ、クレー・・・その戸はそのまま開けといて」
「かしこまりました」
 クレーに向かって凛々しく声をかけるナトンくん、その後ろからソラルさまは部屋に入り、私の居る両袖机の横に静かに立った。
「体調は大丈夫か? ・・・ヒロコ」
「あ・・・はい、大丈夫です」
「そうか・・・」
 ソラルさまは私の頭をポンポンと触り、無理して笑顔を作ったようだった。
「ソラルさま?」
 対照的に怒りをあらわにした、黒い軍服を来たナトンくんが腰掛けていたマクシムの前に立ち、彼を見下ろしていた。
「え・・・? ど、どうしたナトン・・・なに怒って?」
 胸を張って大きく息を吸い、マクシムの胸倉を引いて立ち上がらせた。
「あのねえ・・・マクシム? ヒロコがこちら側に来た時、どれだけ衰弱していたか分かってる?」
「お、おい! なんでいきなり?」
「どんだけイスマエルが気を使っているか分かってないでしょ?」
「いや・・・その・・・」
「なんで看護塔までヒロコを連れて行ったんだよ!! ああいう騒ぎがある場所なのは知っていたはずだろうがぁーーー!」
 と、ナトンくんはそのまま大きく振りかぶって・・・投げたぁ!?
 その風圧で飛びそうな紙類を私は必死で机ごと押さえた。
「ええええっ!?」
 マクシスの身体はそのまま勢いよく、お庭の遠くへと・・・どっかに飛んでった。
 マクシムが飛んで行った風圧に煽られても微動だにしないクレーが、少し間をおいてからピシャリとガラス戸を閉めた。
 気が付けば、ソラルさまが机の備品に気を使いつつ私に覆いかぶさっていた。
「・・・ヒロコ、大事ないか?」
 ソラルさまの吐息が耳に掛かり、ぞくぞくした。
「は・・・はひ・・・」
 今日はどうしてこう、心臓に悪い事が多いのだろうか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...