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【それは偽りではなく、ノリです。】その9
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「・・・話を整理しますと、ヒロコ様は異世界で思考ばかりが先走りしたり、思考停止が起こったり、上手く身体が動かないご病気であり、こちら側に来て段々とご体調が良くなっていたはずが、本日その病状が看護病棟の近くで強く出てしまい気を失ったと?」
アーチュウは座りながら腕を組み、眼を瞑りじっくりと私の病状を整理している。
「はい、段々と寝込む時間も少なくなってきたはずなのですが」
「回復してきたはずなのに感情が高ぶり、“金の波紋”を出してしまったと・・・」
「そんな感じです」
アーチュウは組んだ腕をするりと緩め、まぶたをパッチリと開いた。
「・・・ああ、それ、魔力の駄々洩れってヤツですね」
「魔力の駄々洩れ?」
よくわからず、首を傾げた。
「無意識のうちに際限なく周囲に分け与えてしまうんですよ」
「なんですかそれ?」
「ん~・・・例えばその人の近くに行くと元気を分け与えて貰えるような人がいますよね? 実際はただの愛想の良い人が多いですが、百人に一人ぐらいね、本当に自分の生命力を魔力に変換して分け与えている人がいるんですよ」
「・・・へ? 実際に分けちゃってるんですか?」
詰まる所、無意識に周りに生命力を分けてたと・・・。
「ああ、別にその人だけが原因じゃない事もあるんですよ、近くに魔力を吸い上げちゃうタイプの人間がいると、起こりうる現象です。どちらかと言うとそっちの人は二十人に一人ぐらいの確率で存在しますから、普通の人間でも近くにいるとかなり消耗したりするんです。これがまた厄介でねえ・・・いつも元気で明るく魔力を分け与えちゃう人と、いつも騒がしくて人から魔力を吸い上げちゃう人って、中々見分けがつかなくって、やっぱり生命力が弱い方が根負けしちゃうんですよ」
「二十人に一人いる吸い上げ人間に対して、百人に一人の与える人間・・・って、確実に後者が立場弱いですよね!?」
「はい、そうなんです。ワタクシ、そっちの症例研究してますから」
と、あっさりアーチュウは答えた。
「つまり・・・ヒロコは周りに魔力を与え続けているから、良く倒れると?」
マクシムはアーチュウに疑問を投げかける。
「えええ! 待って下さい、じゃあ私がまさか吸い上げタイプですか!?」
クレーが悲し気に悲鳴をあげるように言ったが、アーチュウは平和そうな笑顔で首を左右に振った。
「う~んと、ヒロコ様の場合は数千人に一人の駄々洩れタイプですね。だって召喚対象レベルですから、とてつもない魔力の保有量があるんですよ。すぐに倒れてしまう事が多いのは、魔力調整がまったくできてないって事ですね・・・直ぐに魔力が枯渇して、次に体力が温存できなくなり、脳が生命力の維持だけに働き始める・・・常に身体が怠くなったり眠くなるのは、脳が細胞に血液を届ける為の生命維持に集中しちゃっているだけなんです。・・・ですが、ヒロコ様は回復も素晴らしく早い!」
「え? じゃあヒロコはどうすれば?」
「魔力の流出を止めて、感情のコントロールを出来るようになれば大丈夫ですよ。長い時間をかけて心と身体と会話することが肝心ですね。ここまではいい、これ以上はシャットアウトって感じを掴めれば大丈夫です・・・要するに他人との同調率を下げるんです」
「なんですかそれ?」
「相手の心に触れないようにするんです、自分の心の壁を守るんです。ヒロコ様は・・・心の周波数が自由自在みたいなので、負の感情に引っ張られて生命力を無意識に分け与えちゃうんでしょうね」
「じゃあ、看護塔の近くにいたからヒロコは・・・」
「思いっきり“治癒を求める心”に引っ張られたとしか言いようがないですね」
“治癒を求める心”に引っ張られる・・・。
もちろん、助けられる命が目の前にあれば、怪我している人や弱っている人が居れば、私は後先考えず行動してしまう性格だ。
召喚されたてホヤホヤでも、数秒後には召喚士のおじい様達を介抱しようと咄嗟に身体が動いた。
異世界召喚のテンプレで魔力チートが現れたのは良しとしよう。
だがしかし・・・魔力の駄々洩れにより、いきなり倒れるというのは、この世界では私の身がかなり危険に晒らされるという事だ。
まさか、その為の“聖女の世話係”が三人必要ってことかな?
ずっと、私はイスマエル達に護られて、甘え続けなきゃ生きていけないってこと?
伝説の剣とか振りかざして「俺様最高! 超強ぇえっ!」とか、できない。
それよりも、やばい、まずい、このままだと私は自由に動けない。
そんなの・・・嫌だ!
アーチュウは座りながら腕を組み、眼を瞑りじっくりと私の病状を整理している。
「はい、段々と寝込む時間も少なくなってきたはずなのですが」
「回復してきたはずなのに感情が高ぶり、“金の波紋”を出してしまったと・・・」
「そんな感じです」
アーチュウは組んだ腕をするりと緩め、まぶたをパッチリと開いた。
「・・・ああ、それ、魔力の駄々洩れってヤツですね」
「魔力の駄々洩れ?」
よくわからず、首を傾げた。
「無意識のうちに際限なく周囲に分け与えてしまうんですよ」
「なんですかそれ?」
「ん~・・・例えばその人の近くに行くと元気を分け与えて貰えるような人がいますよね? 実際はただの愛想の良い人が多いですが、百人に一人ぐらいね、本当に自分の生命力を魔力に変換して分け与えている人がいるんですよ」
「・・・へ? 実際に分けちゃってるんですか?」
詰まる所、無意識に周りに生命力を分けてたと・・・。
「ああ、別にその人だけが原因じゃない事もあるんですよ、近くに魔力を吸い上げちゃうタイプの人間がいると、起こりうる現象です。どちらかと言うとそっちの人は二十人に一人ぐらいの確率で存在しますから、普通の人間でも近くにいるとかなり消耗したりするんです。これがまた厄介でねえ・・・いつも元気で明るく魔力を分け与えちゃう人と、いつも騒がしくて人から魔力を吸い上げちゃう人って、中々見分けがつかなくって、やっぱり生命力が弱い方が根負けしちゃうんですよ」
「二十人に一人いる吸い上げ人間に対して、百人に一人の与える人間・・・って、確実に後者が立場弱いですよね!?」
「はい、そうなんです。ワタクシ、そっちの症例研究してますから」
と、あっさりアーチュウは答えた。
「つまり・・・ヒロコは周りに魔力を与え続けているから、良く倒れると?」
マクシムはアーチュウに疑問を投げかける。
「えええ! 待って下さい、じゃあ私がまさか吸い上げタイプですか!?」
クレーが悲し気に悲鳴をあげるように言ったが、アーチュウは平和そうな笑顔で首を左右に振った。
「う~んと、ヒロコ様の場合は数千人に一人の駄々洩れタイプですね。だって召喚対象レベルですから、とてつもない魔力の保有量があるんですよ。すぐに倒れてしまう事が多いのは、魔力調整がまったくできてないって事ですね・・・直ぐに魔力が枯渇して、次に体力が温存できなくなり、脳が生命力の維持だけに働き始める・・・常に身体が怠くなったり眠くなるのは、脳が細胞に血液を届ける為の生命維持に集中しちゃっているだけなんです。・・・ですが、ヒロコ様は回復も素晴らしく早い!」
「え? じゃあヒロコはどうすれば?」
「魔力の流出を止めて、感情のコントロールを出来るようになれば大丈夫ですよ。長い時間をかけて心と身体と会話することが肝心ですね。ここまではいい、これ以上はシャットアウトって感じを掴めれば大丈夫です・・・要するに他人との同調率を下げるんです」
「なんですかそれ?」
「相手の心に触れないようにするんです、自分の心の壁を守るんです。ヒロコ様は・・・心の周波数が自由自在みたいなので、負の感情に引っ張られて生命力を無意識に分け与えちゃうんでしょうね」
「じゃあ、看護塔の近くにいたからヒロコは・・・」
「思いっきり“治癒を求める心”に引っ張られたとしか言いようがないですね」
“治癒を求める心”に引っ張られる・・・。
もちろん、助けられる命が目の前にあれば、怪我している人や弱っている人が居れば、私は後先考えず行動してしまう性格だ。
召喚されたてホヤホヤでも、数秒後には召喚士のおじい様達を介抱しようと咄嗟に身体が動いた。
異世界召喚のテンプレで魔力チートが現れたのは良しとしよう。
だがしかし・・・魔力の駄々洩れにより、いきなり倒れるというのは、この世界では私の身がかなり危険に晒らされるという事だ。
まさか、その為の“聖女の世話係”が三人必要ってことかな?
ずっと、私はイスマエル達に護られて、甘え続けなきゃ生きていけないってこと?
伝説の剣とか振りかざして「俺様最高! 超強ぇえっ!」とか、できない。
それよりも、やばい、まずい、このままだと私は自由に動けない。
そんなの・・・嫌だ!
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