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本編

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魚屋さん後にして4人で歩き回っていると、ラインハルトの元に光る鳥が舞い降りてくる。

あれ?声の魔法かな?

ラインハルトとリオルくんがその鳥をみて眉をひそめた。

「ラインハルト様、あれってセバスさんの魔力ですよね?」
リオルくんがラインハルトに聞いた。

セバスさんって確か、ラインハルトの家の執事さんだっけ?

「あぁ、間違いない。セバスの声の魔法だ。
滅多に連絡なんて寄越さないのにどうしたんだろうな?」

ラインハルトはそう答えながら自分の周りに遮音結界を張ると鳥に触れる。

鳥から何かを聞いたラインハルトは、突然顔が真っ青になり、狼狽え始めた。

そのまま、鳥に返事を返すと結界を解く。

「ラインハルト?どうしたの?顔色が悪いよ?」

リオルくんもカイルくんもラインハルトの様子がおかしいのを心配そうに見ている。

「ア、アイリーンが…。
妹が怪我をしたらしい。」


「アイリーン様がですか!?」
青ざめた顔でリオルくんが聞き返した。


「あぁ、屋敷の庭で何者かに襲われたらしい…。意識が戻らないって……。」


屋敷の庭で!?
公爵家の屋敷に侵入して襲うなんて可能なのか?

「そ、そんな、ソランジール家にはアルバ様の結界があるはずです!
まさか……破られたんですか?」

「わからない……だが、父上の結界を破るなんて有り得ない……。
トオル、すまないが俺、今から1度屋敷に戻らないと行けなくなった…。」

ラインハルトが不安そうに言う。

「俺のことは、気にしないでいいから早く行ってあげて!」


「トオルさん、すみません、僕もラインハルト様について行ってもいいですか?」
リオルくんが聞いてくる。
リオルくんだってラインハルトの家の使用人だったんだから心配なのは当たり前だ。


「もちろん。ラインハルトがこんなに取り乱してるのなんて見たことない。
リオルくん、一緒について行ってあげて。」

リオルくんは、深々と頭を下げる。

「今、ヴェインに連絡した。
お前たちを2人で騎士団に帰らす訳には行かない…。
とにかく1度、騎士団に帰らないと…。」
ラインハルトは唇を噛み締めながら言う。

騎士団の宿舎は、ラインハルトの屋敷がある方向と真逆だ。
寄り道をしていては時間のロスが大きすぎる。

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!
俺のことはいいから早く行ってあげてよ!」

「だが……。」

2人で押し問答をしていると、カイルくんが助け舟を出してくれた。

「あ、あの、ラインハルト様、ここからなら孤児院が近いです。
あそこなら結界もありますし、あそこで騎士団からの迎えを待つのはダメですか?」

孤児院?
アレンや、ヴェインさん、リオルくんやカイルくんが育った孤児院か。
この近くだったんだ。

ラインハルトとリオルくんは、はっとした顔をする。


「カイル、いい考えだ!
孤児院までは送る。ヴェインにもそう伝えるから……。」

ラインハルトは、まだ送ると言って聞かない。
でも、騎士団の宿舎に戻るよりは遥かに早く家に戻れるはずだ。

「わかった…。とりあえず、孤児院まで急ごう…。」


急いで孤児院へ向かった。

孤児院は本当に近くて、5分もしないうちにたどり着けた。

「ラインハルト様、マーサ様には僕から事情を説明しておきます。
ラインハルト様1人の方が早く帰れる筈です。
後から追うので先に行ってください!」

リオルくんがラインハルトに言う。

「……わかった。
リオルすまない、2人を頼む。
トオルとカイルも迎えが来るまで絶対に孤児院から出るんじゃないぞ?」

ラインハルトが心配そうに俺を見てくる。
ラインハルトがこんなに過保護だとは思わなかった…。


「わかった。ラインハルトも気をつけて。
何か、俺に出来る事があるなら言ってね……。」

自分の掌を見ながら彼に言う。

きっと俺だったら妹さんの怪我を治せるはずだ……。

「………それは、最終手段だ。
絶対にそんなことにはならない…。
いや、させてたまるか…。」
ラインハルトは自分にも言い聞かせるように呟く。

それだけ言い残すとラインハルトはその場から消える。

多分固有魔法を使ったんだ。
カイルくんとリオルくんが驚いていた。

人前で固有魔法を使ったということは、それだけ追い詰められた状況ということか……。

ラインハルトの妹がどうか無事でありますように…。










ラインハルトが屋敷に戻った時を同じくして孤児院の近くに漆黒の影か降り立った。

見るからに禍々しいその影は、楽しそうに笑う。



「ふふふふっ、やっと邪魔物は居なくなった……。
この時を待っていたのよ……。」


その影が見つめる先には孤児院があった…。





♦♦♦♦♦

少し短めの為、夕方(17:00)にもう一度更新します。
今後ともよろしくお願いいたしますm(_ _)m
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