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本編

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遅れましたが、お気に入り4400突破しました!
皆様ありがとうございます!


♦♦♦♦♦


スープの方は順調に進んでるみたいだ。

野菜が全て入れ終わったところでギレスくんが教えてくれた。

「じゃあ、次はお肉を戻したら、この出汁を入れて煮込むよ!。沸騰したら弱火にしてね。」
彼らにフォン・ブラン(鶏の出汁)を渡す。

「はい!ありがとうございます!」

思ったよりも量が必要だったな……。
アレンがまた鳥を捌いてくれたし、また作れるけど、毎日鳥を捌くわけにもいかない…。

ヴェインさんに聞いてみようかな。
牛みたいに骨を仕入れて貰えるかもしれない。

日本ならスーパーでコンソメのキューブやら、出汁パックやらを買えばそれで良かった。
当たり前のように過ごしてきたけど、それってすごく有難いことなんだなぁってこの世界に来て改めて実感している。

イースト菌もそうだし、調味料も材料を探すところから始めなきゃいけない。

本当に違う世界なんだなって改めて思った。

「料理人は手に入る物で如何に工夫して美味しい物を作れるかが大事だ」って師匠が言ってた。

もちろんそれは食べる人を笑顔にする為にだ。

幸い、限られた材料で工夫をして料理するのは賄い作りで師匠に鍛えて貰ったし、少しずつでもこの世界でも作れる料理を増やしていこう。

チラと隣でお肉を刻んでいるアレンを見る。

大好きな人をもっともっと笑顔にしたいから……。

「ん?トオル、どうしたんだ?」

俺の視線に気づいてアレンがこちらを見る。

「いや、なんでもないよ?
ただ、この先もアレンと一緒に居たいなぁって思っただけ。」

「トオル…。なんでそんなことを今言うんだ……。手が汚れてるから抱きしめてやれないじゃないか…!」
アレンは、少し悔しそうに笑う。

「いや、今はいいから。皆がいる前で抱きしめられるのはちょっと……。」

「そうか。つまり、2人の時なら良いって事だな?」

「まぁ、そうなるかな?
いや、いつも確認しないで抱きしめてくるじゃん?」


「当たり前だろう?恋人に触れたいと思うのは当然だ!」

まぁ、そりゃそうだよね。
俺だってアレンに抱きつきたいもん!

……あれ?
恋人になる前からずっと抱きしめられてた気が……。

まぁ、幸せだからいいか。

あ、そろそろトマトソースがいい感じに煮詰まってきた。
豚肉のソースは、トマトソースでいいかな。
ハンバーグにも、トマトソースでいいだろうか?

主食は……。
アレンがいるからニョッキにしようかな?
揚げたらお餅みたいになって美味しいし、トマトソースとも相性が良さそうだ。
一緒にフライドポテトも作ろう。

「アレン、ちょっとじゃがいも取ってくるね。」

「あぁ。」

食材庫に行ってじゃがいもを取ってくる。
食材庫自体が結構広くて見たことない食材も多い為、まだ把握出来ていない…。
働き始めたら一通り試してみないとな…。


そう言えば、この国は海に面していないらしく海産物もあまり無い。

元々、魚を食べる文化自体が浸透していないのだ。

海がある国にも行ってみたいなと思う。


戻ってじゃがいもの皮をむいて茹でていく。
フライドポテトにする方は綺麗に皮を洗って角切りにしてから硬めに茹でた。

「アレン、ニョッキ作るからお願いしていい?」

「あぁ、任せろ!トオル、肉は刻み終わったぞ?」

「おぉ、いっぱい刻んでくれたんだね!
ありがとう。じゃあ、先にハンバーグのタネを作っちゃおうかな。」

あ、その前に、そろそろスープがいい感じのようだ。
「ギレスくん、次は卵を割ってほぐしてくれるかな?」

「はい!」
スープのいい香りを嗅いでヨダレを垂らしていたギレスくんに呼びかける。

塩とライユで味を整えてから、ラインハルトが量産してくれた片栗粉を水にといてスープに加えてとろみを付けていく。

「なんですか、これ?
スープがとろとろになっていきますよ!」

卵を割りながらこちらを見ていたギレスくんが興奮気味に聞いてくる。

「これはね、片栗粉って言ってじゃがいもから俺の親友が魔法でいっぱい作ってくれたんだ!」 

「そうなんですか!
白い液体を入れたのにスープが透明でとろみがつくなんて不思議ですね?」

「あぁ、火が通ると透明ななるからね。
確かに、言われてみると不思議だ。」

ギレスくんとそんな会話をしているとアレンが聞いてきた。

「ラインハルトか?
それよりいつからラインハルトのこと親友なんて呼ぶようになったんだ?」


「え?まぁ、いろいろあって?みたいなだよ。
それに、俺、同い年の友達居なかったからなんでも話せるラインハルトは凄く大切な友達だよ?」

アレンは、それを聞いて少し安心した顔をする。
ラインハルトにも嫉妬してたのかな?

「ラインハルトも面倒見がいいとこあるからな。
それにあいつ器用になんでもこなすから一緒にいて面白いだろ?」


「うん!頼りがいがあるかな。
ヴェインと上手くいって本当に良かったって思うよ。」


あ、アレンとの話に夢中でギレスくんを忘れてた。

アレンとの話を邪魔しちゃいけないと思ったのか、溶き卵を持ったまま固まっていた。

「ギレスくん、ごめん!
じゃあ、その卵を少しづつスープに入れてくれる?」

俺はスープを混ぜながらギレスくんにお願いする。

「はい!少しづつ……。」
あぁ、アレンがこっちを見てるから緊張して固まってたのか!
憧れの英雄だもんね。

ギレスくんが卵をスープに入れていくと黄色い花が咲いたようにふわふわな卵がスープに広がっていく。

あんまり早く混ぜすぎちゃうと、スープと混ざりきって綺麗なかき玉汁にならないから慎重にゆっくりと混ぜていく。

全て入れ終わったら、火を消して蓋をして蒸らしながら卵に完全に火を入れた。

本来、かき玉汁は、鰹だしや、醤油で作るけど今回はある食材で作ってみた。
洋風かき玉汁ってとこかな?

鰹節や醤油を1から作るのはちょっと骨が折れそうだけどいつかは挑戦して俺の故郷の味をアレンに食べてもらいたいなぁと思う。


「ギレスくん、お疲れ様!
これでスープは完成だよ!セル(豚肉)には、良かったらこっちのトマトソース使ってね。」

俺の言葉にほっとしたように息をついた。

「ありがとうございます!」

「カイルくん喜んでくれるといいね?」

突然、カイルくんの名前を出したからか、顔を真っ赤にしながら頷いていた。

あれ?もしかしてギレスくんってカイルくんのこと……?

応援したい気持ちと、うちのカイルくんは渡しませんよ!って気持ちが入り混じる複雑な心境だった。


まぁ、もちろん、カイルくんの気持ち次第だけどね。

じゃあ、次は俺たちのハンバーグを作っちゃおうかな?

「トオル、じゃがいもが柔らかくなったみたいだぞ?」
アレンに言われる。

「うん!ありがとう。
じゃあ、ニョッキは任せていい?」


「あぁ、この前作ったからな。」

「じゃあ、よろしく!」
アレンに軽量しといた粉を渡してお願いした。

俺はメインのハンバーグを作り始める。
アレンが作ってくれた牛ひき肉に塩を入れて粘り気が出るまで捏ねていく。

粘り気がでたら、炒めて冷ましておいた玉ねぎと、さっきギレスくんから貰っといたパンを細かく刻んでパン粉代わりに入れる。
あとは、生乳と、卵、塩、刻んだライユを加えて更に捏ねていく。

手の体温が伝わると油が溶けだしてベタついてしまうのでこねる前に氷水で手を冷やしてから手早く混ぜる。

全体が馴染んだら3等分に分けて油を塗った両手でキャッチボールをするように空気を抜いていく。

もちろん、アレンが2枚で俺が1枚だ。

形を小判型に整えたら真ん中を凹ませて1度冷蔵室で冷やし固める。

真ん中を凹ませるのは焼いた時に真ん中が膨らんでしまうのを回避するためだ。

真ん中が膨らみすぎるとひび割れてせっかくの肉汁が溢れてしまう。

ハンバーグのタネを締めている間にアレンがねってくれたニョッキを一緒に丸めた。

熱しておいた油にニョッキを入れて揚げていく。

「これがラインハルトが言ってた揚げ物ってやつか?」
 ニョッキはポテトチップス程水分が無いからそこまで大きい音はしなくてアレンは興味津々に鍋を覗き込んでいた。

「そうだよ!
あ、アレン、あんまり近づきすぎると油がはねて危ないから離れたほうがいいよ?」

「そうなのか?
トオルは、全然平気そうじゃないか?」


「俺は慣れてるからね。
料理人なんて毎日どっかしら火傷するからいちいち気にしてられないし…。」

実際問題、営業中のピークタイムなんて本当に余裕がないのだ。

お皿は熱いし、フライパンやオーブンで火傷することもしょっちゅうだ。

仕事終わりに、あれ?こんなとこいつ火傷したんだろ?って気づくことも多い。


それに段々と慣れてくるから熱いものを持つのも平気になって来るから不思議だ。


「……あんまりそれは、嬉しくない慣れだな?」
俺の言葉にちょっとだけ苦い顔をしたアレンが印象的だった。




♦♦♦♦♦

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70話で透が言っていた片栗粉の説明ですが、
現代市販されている物はじゃがいもから作られるのが一般的ですが、本来はカタクリの花の根から作るものを片栗粉というので誤解を生む表現だとご指摘頂きました。

この場で訂正させていただきます。

ありがとうございます。
このような指摘を頂けるととても有難いです。

本文は時間がある時に訂正させていただきます。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

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