アウトロー ~追憶~

白川涼

文字の大きさ
48 / 58
三章 ミュラー最後の事件簿

激闘

しおりを挟む
 ゆっくりと身を起こして、ミュラーは仲間に呼びかける。

「ジラール、オルマ、黒服の男達はくれてやる。どうやらコイツはオレに用があるようだ」
 ミュラーの呼びかけに答えるように二人は頷き、武器を持って構える。
「来るなら来い、大人の戦い方をそっちのガキ共に教えてやる」
 ミュラーがそう告げると、ランスを抜き、前傾姿勢になって構える。

 それを見たリヴァはニヤリと笑みを浮かべた。
 野獣が捕食するように構える。
 両者が全身に気タオをみなぎらせる。
 そしてゆっくりと間合いを詰めていく。
 先に動いたのはリヴァであった。
 あっという間にミュラーの懐に入り込み、鋭い刃物のような手刀で、その首を狙う。
 ミュラーのランスは片方の手で掴まれていた。

 しかし、その手刀は届かなかった。
 そしてリヴァの視界が揺らぐ。

 ミュラーの渾身の膝蹴りがリヴァの顎を捉えていたのだ。
 ミュラーは予めリヴァが接近するのを予測していた。
 体術の使い手なら、確実に近接に持ち込む。
 敢えて相手に間合いを与えて、獲物が罠にかかるのを待っていた。
 素早くランスを引き、倒れかけたリヴァの胴体をその柄で叩き込もうとした。
 しかし今度はミュラーの視界が変化する。
 目線の先には空があった。
 リヴァは掴んだランスを持ち上げ、振り下ろす。
 ランスを持ったミュラーは宙に浮き、地面へと叩きつけられる。
 地面に伏したミュラーに追撃するべく、リヴァは手刀を繰り出す。
 しかし身体を投げられたと理解したミュラーは既に抜刀して剣を振り抜いていた。
 リヴァの手刀とミュラーの斬撃がぶつかり合う。

 瞬間火花が散る。

 それを見て、ミュラーは実感した。

 オレの剣を素手で防ぐとは。タオを腕に集中させているな。まともに食らったら、身体が両断されるな。

 実際、ミュラーの剣ではリヴァの指先に擦り傷すら与えられなかった。

 これならどうだ。

 ミュラーは体勢を立て直し、剣の切先にタオを集中させた。
 それを見たリヴァは再びニヤリと笑う。
 そして自身の腕にタオを集中させた。
「無駄だぜ! オレは剣士と何度も殺りあってきたんだ。剣術じゃオレに勝てねぇぜ!」
 ミュラーは直感した。

 コイツの動きは直線的だ。
 なら、動きも予測しやすい。
 再びリヴァが襲い掛かる。
 その素早さはあっという間にミュラーの間合いを殺し、その眼前に肉薄しようとしていた。
 ミュラーの胴が手刀で貫かれようとしていた。
「爆ぜろ」
 刹那、地面に置かれていた、ミュラーのランスが爆炎を放ちながら爆散した。
 業火が二人を包む。
 不意に起きたことにリヴァは一瞬戸惑う。
 その隙をつかれた。

 リヴァは太ももに激痛が走っていたことを感じた。
 自身の脚はミュラーの剣が突き刺さっていたのだ。
 それを確認した瞬間、今度は右腕に激痛が襲う

 ミュラーの手刀がリヴァの右腕を斬り落としていたのだ。
「悪いが真似させてもらった。一番厄介だったその速さを封じた。その脚じゃさっきの動きはできまい」
 ミュラーは転がり落ちたリヴァの腕を拾い上げ、火魔法で焼き尽くした。
 リヴァはその様子を忌々しい目で睨む。
 ミュラーはおどけたポーズで挑発する。
「どうした? 来るなら来い。次は左腕を火葬してやる」
 猛り狂ったリヴァは左腕をかざし、気タオを集中させる。
 膨大な量のタオがうごめくように集まる。
 その異様さにミュラーは身構える。

 やはりまだ奥の手をもっていたな……。

 左手に集まったタオをリヴァが放とうとした時、突然、彼の背後から金髪の軍服を着た男が現れる。
「リヴァ、時間だ。退くぞ」
 振り返ったリヴァはその男に抗議するように叫ぶ。
「レオン! このままじゃ帰れねぇ! あの野郎、俺の右腕を!」
 レオンと呼ばれた男は静かな声で、
「腕は治せばいい。ヤツが大鷲と組んでいることがわかったことだけでも収穫だ。時期がくればまた戦わせてやる」
 ミュラーがリヴァを挑発する。
「おい、逃げるのはいいが、その脚に刺さった剣は返せ。高いんだぞ」
 その言葉に激高したリヴァをレオンという男は押さえて、剣を引き抜き、ミュラーに投げ渡す。 
 そしてまた落ち着いた声でミュラーに言い放つ。
「あまり怒らすなよ、次に会ったら殺してやる」
 ミュラーが二コリとほくそ笑む。
「次があったらな」
 すると、レオンとリヴァはオルマの糸で縛られてしまった。
 姿を隠していたオルマが現れ、宣告する。
「少しでも動いたら、コイツで輪切りにするよ」
 その言葉を聞き、レオンは静かに笑う。
「フっ、これで捕らえたつもりか? 笑わすなよ」

 そう言い放つと、レオンの身体は炎に包まれる。
 そしてオルマの糸が焼け落ちる。
 立ち込める炎の中でレオンとリヴァは姿をくらました。
 ジラールも現れ、ハーミットを放とうとしたが、リューが制止した。
「今は体勢の立て直しが最優先です。そして一刻も早く、ドラゴのところに向かわねば! 向こうも襲われているかもしれません!」

 ミュラーは炎の先を見つめ、再認識した。

 今度の獲物はこいつらだな。確実に仕留めて、盛大に血祭りにあげてやる。

 心の中で殺意の炎をたぎらせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...