アウトロー ~追憶~

白川涼

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三章 ミュラー最後の事件簿

少年兵を操る男

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 マッサージが終わると施術師は部屋から出ていった。

 入れ替わりに身なりが小奇麗な礼服を着た男が現れる。
 印象としては疲れて眠たげな顔をしている。
 暗そうな性格が顔から滲みでている。
 黒の髪を後ろに整え、体型も痩せている。
 恰好だけは清潔そうにしているが、俺から見れば、仕事で疲れ果てた中年の男性だ。
 その男を守るように少年兵たちがいた。
 と言っても少女もいるし、なんなら種族もバラバラだ。
 それが統率されて動きで男をガードし、俺やジラール、オルマの三人を囲む。

 男は作った笑顔で話しかける。
「はじめましてリューです。今後あなた方と行動を共にすることになります」
「どうやらお前らは人質を取ることを行動を共にするというらしいな」
 俺が嫌味たっぷり切り返すと少年兵の一人が俺を強く睨みつけ、構えるような仕草を始めた。 
 それを男が腕で制する。
「ずいぶんホルンさんに言われたようですね。お察しします。しかし私達が味方なのは理解してもらいたいです。実際すでに護衛行動は開始しています。あなたの身内や恋人は安全です。もし異常があればすぐに伝えます。依頼人からの仕事なのであなた方には全力でサポートしますよ」
 俺が少年兵たちをじろりと見て、
「こんな子供をつかうのか?」
「不安ですか? これでも訓練された戦力です」
 男の背筋が伸びた姿勢を見て、疑問を口にする。
「お前も軍人だろ? 大人のボディガードもいるんだろう?」
 男は寂しく首を横に振り、残念そうに溜息をついた。
「いえ、確かに訓練指揮官に大人の退役軍人がもう一人いますが、我々の戦力の大半は子供たちです。ご指摘通り、確かに私も元軍人ですが、戦闘は期待できませんよ。私は指揮官のような立場の存在です」
「何故子供を使う?」
「少年兵を使う私を非道に思いますか?」
「いや、俺の戦場の初陣もここにいる連中よりも幼い時だった。ただ使いものになるのか?」
「一応あなた方の救助で戦果は上げたと思ってるのですが」
 確かにあの銀髪のエルフに不意打ちは効果的だった。
 確かにあの時の魔法は威力は充分あったし、何より正確に狙い撃てた。
 かなりの手練れなのがわかる。
 納得した俺は話題を変える。
「お前らの依頼人はさっきの金髪の女か?」
「言えません」
「少年兵は何人いる? そちらの戦力を知りたい」
「それも言えません。手の内を曝け出すのは危険ですから。ただ今回は護衛だけでなく。捜索になります。そうなりますと実は人手不足でして、ある組織に協力してもらおうと思います」
 俺は舌打ちしながら、疑問を口にする。
「組織?」
 男は頭をぼさぼさと掻きながら、呟く。
「……東湘会、マフィアに協力してもらいます。本当は関わりたくないんですが、仕方ありませんね。ドラゴという方は確かご存じですよね?」
「マフィアなんかに知り合いはいないぞ」
「おかしいな、数年前にあなた方が大変迷惑かけたと聞きましたが」

 あの時のマフィアの男か!? またあの野郎に会うのか?!

 俺は思わず頭を抱える。
 すると硝子の水晶のようなものから人の声が響く。
『リュー! 問題発生だ! ベガスのカジノ街で無差別に火が出ている。おそらく放火だ。黒い装束を着た男たちが暴れているとの報告もある』
 男はそれを聞いて、面倒そうに頭をかき、静かな声で水晶に話しかける。
「それは罠だ。このタイミング、我々をあぶりだそうとしているのは明らかだ。無視しろ。今は動かず、相手の出方をうかがう。火事の消化や暴徒の鎮圧は衛兵の仕事だ」

 恐ろしく冷静な判断だと、ミュラーは関心する。
 男は二コリと笑い、握手をしようと手を差し伸べる。
 ミュラーは思わずその手を握る。
「よろしくお願いしますミュラーさん。私のことはリューとお呼び下さい。とはいえ先ほどの報告といい、ここも安全とは言えなくなりました。場所を変えましょう」

 
 リューたちに連れられ、俺たちはこの建物から出る。
 外に出て振り返るとこの街有数の高級ホテルだ。
 リューに尋ねる。
「どこへ向かうつもりだ?」
「孤児院です。ドラゴはそこにいるはずです。ここからは遠いので馬車で移動します」
 言われた通り、ホテルの前で馬車を待つ。
 すると大きなニワトリが籠を連れてやってくる。

 ずいぶん手配がいいな。

 ミュラーはその手際の良さに関心していたが、リューは顔をしかめていた。
「遅かったか……。ミュラーさん、防御結界って張れますか? 各隊、防御結界発動! 臨戦態勢を取れ!」

 その号令が出ると、少年兵たちは手に持つ水晶をかざした。

 防御結界が形成されると同時に、馬車が突如、爆破し、その爆炎がミュラーたちを包む。

 炎の中で黒装束の集団が姿を現わす。
 そしてその中には見覚えのある長躯の青年が歪んだ笑みを浮かべていた。

 あの夜の時の野郎か!?

「探したぜ……」
「放て!」
 青年の言葉を遮るように、リューが号令の合図を出すと、少年兵たちが再び水晶をかざし、無数の光の矢が放たれる。

 しかし青年が少年たちの持っているのと同じような水晶をかざすと、光の矢は霧散してしまう。

「魔法対策はしてあんだよ!」
 そう吐き捨てると同時に青年と黒装束たちが襲い掛かる。
 黒装束の凶刃が一人の少年兵を斬りつけようとした時、かばうようにミュラーはそれを剣で防ぐ。
 しかし、その隙に青年の放った蹴りがミュラーの脇腹に入ってしまった。
 衝撃のあまり、ミュラーの身体は吹き飛ばされてしまう。

 身を起こそうとするミュラーを見て、青年は肉食動物が笑うような顔をした。
「おい、青髪。俺の名前は覚えてるよな?」
 ミュラーは忌々しそうな目をして答える。
「……忘れたな。男の名は覚える気にならん」

 青年は激高して再びミュラーに襲い掛かる。

「リヴァだ! ブチ殺してやる!!」
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