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アルベロVSミドガルズオルム④/仲間
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巨大亀ミドガルズオルムとジャバウォック化したアルベロの戦い。
ミドガルズオルムは全長四十メートル以上。それに対してアルベロは身長約二メートルほどだ。比べるのも馬鹿馬鹿しい体格差がある。
だが、アルベロは負ける気つもりがない。
この『完全侵食』状態なら、どんな敵にだって負ける気はしない。
アルベロは、右腕を『硬化』させ、さらに巨大化させる。
「行くぞ───『召喚獣殴り』!!」
巨大化した腕が伸び、ミドガルズオルムに向かって伸びていく。
だが───やはり能力は健在だった。
ミドガルズオルムに近づいた途端、アルベロの右腕がスローモーションとなったのだ。
「っぐ───能力か」
『無駄だよ。ヒト型の時とはワケが違う!!』
ミドガルズオルムの甲羅にある突起が伸び、発射された。
今までにない攻撃方に、アルベロは驚愕。
腕がノロくなった瞬間に引き戻したが、まだ動きがノロく戻ってこない。そして、飛んできた『棘』がアルベロの身体に直撃した。
「ぐ、あがぁ!?」
完全侵食状態の身体に亀裂が入った。
常時『硬化』されているジャバウォックの外殻に亀裂。
「ぐ……やられた、全身硬化の弱点……!!」
原因は、ミドガルズオルムの『スロウ』が付与された棘だった。
アルベロの外殻は常に『硬化』されている状態だ。だが、アルベロは自身の身体に『硬化』を付与する場合に限り、硬化を自在に解除できる。全身硬化をしてしまうと、関節や内臓、血流なども止まってしまうからである。
なので、完全侵食状態の常時硬化は、身体を動かす場合だけ解除される。動きを止めた時だけ、外殻の表皮だけを硬化するのである。
今は、腕を伸ばしたまま引き戻した状態だ。だから硬化が効いていない。ダメージを受けた原因はそれだった。
『───へぇ』
ミドガルズオルムは面倒くさがり屋だ。
やる気はあまりないし、感情をあらわにすることもあまりない。それが逆に言えば冷静沈着であり、観察力が高いということでもあった。
『あははっ……なんかわかっちゃったかもね。きみの五指に触れる前に吹っ飛ばせばいいや』
「……やれるもんならやってみろ!!」
アルベロは右手の五指に力を入れる。
召喚獣の王ジャバウォックだけが使える二つ目の能力。『終焉世界』を使ってミドガルズオルムに触れれば、この『スロウ』は消える。
「お前に触れれば俺の勝ちだ。だったら……ここからは根性の見せ所だ!!」
そう叫び、アルベロは右手を巨大化させ走り出した。
◇◇◇◇◇◇
「ん、うぅ……くぁぁ───あれ?」
リデルは目を覚ました。
身体を起こし、大きく欠伸をして、頭をポリポリ掻き……ハッとする。
「あ!? ま、魔人───は倒したのか。あ、魔獣!? みんな!!」
ガバッと立ち上がり、身体を確認する。
完全侵食を習得し、バハムートを倒したのは覚えている。
その後、疲労で少しだけ目を閉じていたのだが、思った以上に時間が経過していたようだ。
「腕、脚───……うん、動く。能力……うん、大丈夫」
腕を回し、その場で跳躍。『レッドクイーン』を顕現させる。
どれも問題ない。それに、完全侵食状態から戻ったせいなのか、怪我も全て消えていた。
やや疲労はある。だが、戦闘に支障はない。
「…………そういえばアタシ、一人で魔人を倒したのよね……う、今さらだけど、けっこう無謀だったかも……頭にきてたけど、もうあんな無謀な真似やめよう」
リデルのいいところは、こういう反省ができるところだ。
首を振り、大きく頷く。
「まずは、みんなと合流しなきゃ!! ここ───……どこ?」
見覚えのないところだった。
地面に激突したせいかクレーターができている。
まずは、地形の把握が先だ。
「『噴射口』、跳躍!!」
リデルは両足に噴射口を造り、跳躍した。
一瞬で上空百メートル以上舞い上がる。飛ぶのではなく噴射なので細かい調整は難しい。だが、厳しい訓練で噴射口の制御をモノにしたリデルは、短時間の飛行が可能になっていた。
上空から周囲を見渡し───……驚愕した。
「───なにあれ」
巨大な亀と、完全侵食状態のアルベロが戦っていた。
「あんなサイズの魔獣……魔獣? そういえば、ミドガル、なんとか?……が来てるとか言ってたっけ。ああもう、考えるの後!! まずは……助けないと!!」
噴射口から火が噴き、アルベロの元へ向かって行く。
このまま勢いをつけて蹴れば、亀の甲羅を貫通できるかもしれない。
そう考え、リデルは勢いを増す。
「だぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
だがそれは、ミドガルズオルムの能力を知らないリデルにとって悪手だった。
◇◇◇◇◇◇
「だぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
「え───リデル!? やばいっ!! ちょ、待った!! ああもう!!」
リデルがいきなり現れ、ミドガルズオルムに向かって飛び蹴りを食らわせようとした。
だが、ミドガルズオルムの『スロウ』がある限り奇襲は意味をなさない。というか、あんなに大声で叫んでは奇襲もクソもない。
アルベロはミドガルズオルムに向かおうとしたが急ブレーキ。右手を巨大化させて伸ばす。
「え!? ちょ、わぶっ!?」
右手に受け止められたリデルは、そのままアルベロの元へ。
さすがに、これには怒るリデル。
「ちょ、なにすんの!? いい感じで勢い付けたのにぃ!!」
「勢い付けても無意味だ。あいつの能力、近づけばみんなノロくなるんだよ」
「え」
アルベロは石を拾い、全力で投げつける。
石は時速百キロ以上の速度で飛んだが、ミドガルズオルムに近づいた途端にノロくなった。
リデルは顔を蒼くする。
「あ、あんな能力あり?……」
「ありだな。それより、来てくれて助かった。手ぇ貸してくれ」
「もちろん。それに……アタシも役に立てると思うよ」
「え……?」
「『完全侵食』」
「え」
リデルの身体に真紅の装甲が纏われる。
完全侵食。これにはアルベロも驚いた。
「おお……すっげぇ」
「ふふ、ピンクが力をくれたの」
「これならいけるな。よーし、二人でやるぞ!!」
「うん!!」
アルベロとリデルは互いに構えを取る。
ミドガルズオルムは、納得していた。
『ああ、バハムートはきみにやられたのか。ってことは、さっきの爆発も?』
「まぁね。次はアンタの番!!」
『……怖いなぁ』
アルベロとリデル、そしてミドガルズオルム。
魔人との戦いは、終盤に向かっていた。
ミドガルズオルムは全長四十メートル以上。それに対してアルベロは身長約二メートルほどだ。比べるのも馬鹿馬鹿しい体格差がある。
だが、アルベロは負ける気つもりがない。
この『完全侵食』状態なら、どんな敵にだって負ける気はしない。
アルベロは、右腕を『硬化』させ、さらに巨大化させる。
「行くぞ───『召喚獣殴り』!!」
巨大化した腕が伸び、ミドガルズオルムに向かって伸びていく。
だが───やはり能力は健在だった。
ミドガルズオルムに近づいた途端、アルベロの右腕がスローモーションとなったのだ。
「っぐ───能力か」
『無駄だよ。ヒト型の時とはワケが違う!!』
ミドガルズオルムの甲羅にある突起が伸び、発射された。
今までにない攻撃方に、アルベロは驚愕。
腕がノロくなった瞬間に引き戻したが、まだ動きがノロく戻ってこない。そして、飛んできた『棘』がアルベロの身体に直撃した。
「ぐ、あがぁ!?」
完全侵食状態の身体に亀裂が入った。
常時『硬化』されているジャバウォックの外殻に亀裂。
「ぐ……やられた、全身硬化の弱点……!!」
原因は、ミドガルズオルムの『スロウ』が付与された棘だった。
アルベロの外殻は常に『硬化』されている状態だ。だが、アルベロは自身の身体に『硬化』を付与する場合に限り、硬化を自在に解除できる。全身硬化をしてしまうと、関節や内臓、血流なども止まってしまうからである。
なので、完全侵食状態の常時硬化は、身体を動かす場合だけ解除される。動きを止めた時だけ、外殻の表皮だけを硬化するのである。
今は、腕を伸ばしたまま引き戻した状態だ。だから硬化が効いていない。ダメージを受けた原因はそれだった。
『───へぇ』
ミドガルズオルムは面倒くさがり屋だ。
やる気はあまりないし、感情をあらわにすることもあまりない。それが逆に言えば冷静沈着であり、観察力が高いということでもあった。
『あははっ……なんかわかっちゃったかもね。きみの五指に触れる前に吹っ飛ばせばいいや』
「……やれるもんならやってみろ!!」
アルベロは右手の五指に力を入れる。
召喚獣の王ジャバウォックだけが使える二つ目の能力。『終焉世界』を使ってミドガルズオルムに触れれば、この『スロウ』は消える。
「お前に触れれば俺の勝ちだ。だったら……ここからは根性の見せ所だ!!」
そう叫び、アルベロは右手を巨大化させ走り出した。
◇◇◇◇◇◇
「ん、うぅ……くぁぁ───あれ?」
リデルは目を覚ました。
身体を起こし、大きく欠伸をして、頭をポリポリ掻き……ハッとする。
「あ!? ま、魔人───は倒したのか。あ、魔獣!? みんな!!」
ガバッと立ち上がり、身体を確認する。
完全侵食を習得し、バハムートを倒したのは覚えている。
その後、疲労で少しだけ目を閉じていたのだが、思った以上に時間が経過していたようだ。
「腕、脚───……うん、動く。能力……うん、大丈夫」
腕を回し、その場で跳躍。『レッドクイーン』を顕現させる。
どれも問題ない。それに、完全侵食状態から戻ったせいなのか、怪我も全て消えていた。
やや疲労はある。だが、戦闘に支障はない。
「…………そういえばアタシ、一人で魔人を倒したのよね……う、今さらだけど、けっこう無謀だったかも……頭にきてたけど、もうあんな無謀な真似やめよう」
リデルのいいところは、こういう反省ができるところだ。
首を振り、大きく頷く。
「まずは、みんなと合流しなきゃ!! ここ───……どこ?」
見覚えのないところだった。
地面に激突したせいかクレーターができている。
まずは、地形の把握が先だ。
「『噴射口』、跳躍!!」
リデルは両足に噴射口を造り、跳躍した。
一瞬で上空百メートル以上舞い上がる。飛ぶのではなく噴射なので細かい調整は難しい。だが、厳しい訓練で噴射口の制御をモノにしたリデルは、短時間の飛行が可能になっていた。
上空から周囲を見渡し───……驚愕した。
「───なにあれ」
巨大な亀と、完全侵食状態のアルベロが戦っていた。
「あんなサイズの魔獣……魔獣? そういえば、ミドガル、なんとか?……が来てるとか言ってたっけ。ああもう、考えるの後!! まずは……助けないと!!」
噴射口から火が噴き、アルベロの元へ向かって行く。
このまま勢いをつけて蹴れば、亀の甲羅を貫通できるかもしれない。
そう考え、リデルは勢いを増す。
「だぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
だがそれは、ミドガルズオルムの能力を知らないリデルにとって悪手だった。
◇◇◇◇◇◇
「だぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
「え───リデル!? やばいっ!! ちょ、待った!! ああもう!!」
リデルがいきなり現れ、ミドガルズオルムに向かって飛び蹴りを食らわせようとした。
だが、ミドガルズオルムの『スロウ』がある限り奇襲は意味をなさない。というか、あんなに大声で叫んでは奇襲もクソもない。
アルベロはミドガルズオルムに向かおうとしたが急ブレーキ。右手を巨大化させて伸ばす。
「え!? ちょ、わぶっ!?」
右手に受け止められたリデルは、そのままアルベロの元へ。
さすがに、これには怒るリデル。
「ちょ、なにすんの!? いい感じで勢い付けたのにぃ!!」
「勢い付けても無意味だ。あいつの能力、近づけばみんなノロくなるんだよ」
「え」
アルベロは石を拾い、全力で投げつける。
石は時速百キロ以上の速度で飛んだが、ミドガルズオルムに近づいた途端にノロくなった。
リデルは顔を蒼くする。
「あ、あんな能力あり?……」
「ありだな。それより、来てくれて助かった。手ぇ貸してくれ」
「もちろん。それに……アタシも役に立てると思うよ」
「え……?」
「『完全侵食』」
「え」
リデルの身体に真紅の装甲が纏われる。
完全侵食。これにはアルベロも驚いた。
「おお……すっげぇ」
「ふふ、ピンクが力をくれたの」
「これならいけるな。よーし、二人でやるぞ!!」
「うん!!」
アルベロとリデルは互いに構えを取る。
ミドガルズオルムは、納得していた。
『ああ、バハムートはきみにやられたのか。ってことは、さっきの爆発も?』
「まぁね。次はアンタの番!!」
『……怖いなぁ』
アルベロとリデル、そしてミドガルズオルム。
魔人との戦いは、終盤に向かっていた。
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