継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
上 下
133 / 189
番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 ノア13歳、アカデミー編1 〜

しおりを挟む


ノア視点


帝都アカデミーにはグランニッシュ帝国のあらゆる領地、そして他国から、様々な子供たちが集まってくる。

帝都アカデミーほど教育カリキュラムが充実した学園はないと言われるほどで、世界中から集められた優秀な教師陣が教鞭をとっている。
帝都アカデミーを卒業すれば、職に困る事はない為、貴族だけでなく一般人も目指す由緒ある学園だ。

そんなアカデミーに女性が通うようになったのは、3年前からで、女性の社会進出が目覚ましいこの国では、教育にも力を入れている。

ただでさえ巨大なアカデミーは、3年前からさらに巨大化し、今では学園都市といっても良いほどで、アカデミー周辺の発展が著しい。

もちろん帝都の中心部はもっと活気に溢れているのだが、学園都市は特に若者が集まる場所として、おしゃれなカフェなど、若者受けするお店が多く集まっている。

レール馬車も帝都の中心地から学園都市を結ぶように開通し、交通の便も良くなった事もあり、庶民や、馬車を滅多なことでは使えない貴族たちも利用でき、家からも通いやすくなったらしい。
以前は常に利用者が多く空きがなかった寮も入りやすくなっているそうで、地方からの受け入れも増加傾向にあるようだ。

そして、ディバイン公爵領発のブルーの街灯や、アカデミー内外に騎士団の派出所を置くことで治安も良くなった。
もちろん学園内も、門には門番もおり、入学直前にもらう学生証を必ず提示して入らなくてはならないので、外部の者は入れない仕組みになっている。
ただ、学生証を忘れると入門はできないので、遅刻する者も何人かいるのだとか。


「───ノア様、学生証の提示をお願いいたします」

馬車でアカデミーの門を通過中、サイモンに言われ学生証を取り出すと、門番がすぐさま確認し、特に問題もなく通過できた。

「私たちの場合は、学生証の提示が今回の一度限りで良いようです」

馬車に付いている公爵家の紋章が今後は学生証の代わりになるのだと、サイモンが教えてくれた。

「そうなんだね。教えてくれてありがとう、サイモン」
「私はノア様の従者ですから」

幼い頃から兄弟のように育ってきたサイモンは、そう言って微笑むと、姿勢を正し窓の外に目を向けた。

『ノア、あっち、しょくどー!!』

お留守番するものだと思っていたアオは、ついて来てくれるみたいで、今は窓に張り付いて外を見てはしゃいでいる。

アオ曰く、事前に下見をしたらしいので案内できるそうだけど、この分じゃ、食堂ばかり連れて行かれそうだなぁ。

『アカ、アス、あのへや、いるー!!』
「え? ……サイモン、あの部屋はどんな部屋なのかな?」

アオの言葉が気になりサイモンに聞けば、「あちらは上級生の教室です。イーニアス殿下もあちらの教室にいるはずです」と言うので、やっぱりアオの言っていることは本当なのだと納得した。

「アオ、アカの所に行きたいなら、行っておいで」
『ううん。アオ、ノアといっしょ!!』
「フフッ、これから入学式だから、私の膝の上で大人しくしているんだよ」
『はーい!!』

アオが腕の中に飛び込ん出来たので、抱きしめてあげると鼻歌を歌いながら、嬉しそうに左右に揺れていた。

その歌、お母様が良く歌ってくれていた歌だよね。


入学式は生徒と教師が大講堂に集まって行う。
式の最中に在校生の挨拶と、新入生の挨拶があるのだけど、在校生代表はイーニアス殿下、新入生代表は私という事で、講堂の舞台裏へ式の途中に案内されたのだ。

「ノア! 入学おめでとう!」
「アス殿下!」

舞台裏にはアス殿下がおり、おめでとうと声をかけてくれた。昨夜妖精通信で話したばかりだというのに、アカデミーという場所でアス殿下に会うと安心してしまう。

『ノア! にゅーがく、おめでとー!』

アカが顔に抱きついてきたのでびっくりした。

「はい。二人ともありがとうございます」
「うむ。充実した学園生活を送れるよう、私も先輩としてサポートを惜しまないつもりだ」

アス殿下ほど頼もしい先輩はいないが、殿下を支えるのは私の役目だ。

『アオもー!! アオも、ノア、サポートするー!!』
「うむ。アオもノアを支えてやってほしい」
『はーい!!』

アオってば、アス殿下の前でやる気満々、と胸を張っていた。


代表挨拶は、アス殿下の人気がわかる歓声の中始まり、さすがアス殿下だと、何だか私が誇らしくなって、舞台袖で拍手をしていたのだけど、いよいよ新入生の代表挨拶をする時間がやってきた。

私は、皆に受け入れてもらえるだろうか───……

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。 だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。 全2話。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

処理中です...