継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
上 下
86 / 187
番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 狙われたイザベル11 〜 ノア4歳、イーニアス5歳

しおりを挟む


「めがみさま、あたちと、あそぼ!」

わたくしの足に捕まる、小さな女の子。

「ちがうよ! めがみさまは、ボクとあそぶの!」

その反対にはイーニアス殿下と同じくらいの男の子が。そして、

「めがみさま、テディのおしごとくれて、ありがとう、ございます」
「あのね、オーガごっこ、しよ?」

わらわらと周りに集まってくる子供たち。

ここは領都にある孤児院だ。
テオ様が帝都へと戻っていった翌日の今日、訪問したのだけど、馬車を降りた途端、可愛らしい襲撃にあったのよ!

まず、年少の子たちがわたくしにタックル(抱きついてきた)し、結構な衝撃に何事かと思ったら、あっと言う間に子供たちに囲まれたのだ。

そして現在、子供たちから「女神様」呼びをされているという不可解な状況にある。

「わたくしは女神様ではなくってよ??」
「? でもひろばに、めがみさまのぞうが、あるよ?」

やっぱり元凶はアレなのね!!

あのわたくしに激似の像を思い出して、震えていると……、

「……おかぁさま」

可愛い声が、馬車の中から聞こえてきたのだ。
孤児院の子供たちもその可愛らしい声に、馬車へ一斉に視線を送る。

「ノア、大丈夫よ。降りてらっしゃい」

馬車に向かって声をかけると、カミラと手を繋いだノアが、恐る恐る降りてきたのだ。

頬を赤く染めて、もじもじと孤児院の子供たちを見るノアは天使だった。

そう、今日は初めてノアを孤児院に連れて来たのですわ。護衛の人数と、妖精たち、そして影を付けるという条件でテオ様にも許可をいただいたのよ。

「わぁ、すっごくかわいい子が出てきた……」
「ようせいさまみたーい」
『ノア、アオといっしょ!! よーせー!!』
「かわいー!」
『そう!! ノア、いちばんかわいい!!』
『ノア、カワイーノー』

そうなのよ! ノアったら本当に可愛いの!

「さぁ、ノア、みんなにご挨拶しましょうね」
「はい……」

もじもじと、照れながら「はじめまちて……、ノア・きんばりぃ・でぃばいんでしゅ」とかみかみでご挨拶するノアに、みんなが集まってきて、「ノアちゃん、あそぼ!」と声をかけている。ノアはそれにはにかんで、子供たちに手を引かれながら孤児院の広場にかけていく。

あっという間に仲良くなって遊んでいますわ。

子供たちが鬼ごっこ……オーガごっこをしている様子を見ると、ほのぼのいたしますわね。

「あらあら、カミラはすぐ年少さんに捕まってしまいましたわ」
「……カミラは体力がありませんので」

ミランダが呆れたように呟く。

そういえば、この間体力作りに裏庭を走らせたら、スタート時から歩いているものだから注意したのだそうだ。その時、カミラが「歩いていませんっ! 本当に走っているんです」と泣きながらうったえられ、愕然としたのだとミランダがぼやいていましたわね。

というか、侍女の体力作りに裏庭を走らせるって、そんなことしていますの!? と思ったのが記憶に新しいのだけれど。

捕まったカミラがオーガ(鬼)役なるが、なかなか逃げる子供たちを捕まえられないとすぐに見抜いたのか、遊びをだるまさんが転んだに変更されているのを見た時、孤児院の子供たちの対応力の高さに感心してしまった。

「平和ですわね」
「……」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




テオバルド視点


ベルを狙っていた愚か者共は、キノコたちによって行動が筒抜けであった。

少し泳がせていれば、ベルに近付こうと行動を起こしたので、チロに奴らを脅すよう頼んでいたのだが、上手くやってくれたようだ。

今回は、キノコたちも良くやってくれた……気がしなくもない。

「何で上から物が降ってくるんだ!?」
「こんな所にロープなんて張られてなかっただろう!? これじゃあまるで、ゴーストがオレらを陥れようとしているみたいじゃないか!!」
「ヒィィィ!! も、物が消えたり現れたりしてるぞっ」
「誰か……っ、助けてくれ!!」

まぁ、こんな子供騙しで済ませる気はさらさらないがな。

覚悟しろ、愚か者共め───

しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

処理中です...