継母の心得

トール

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第二部 第2章

358.子を思う 〜 マルグレーテ視点/ドニーズ視点 〜

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皇后マルグレーテ視点


窓の外は昼間だというのに暗く、土砂降りの雨と雷が気分を憂鬱にさせる。そんな中でももちろん仕事を休むわけにはいかないと手と頭を動かしていると、どこかに雷が落ちたのか、かなり大きな音がして、さすがに書類から顔を上げた。

「イーニアスは大丈夫かしら……」

今は勉強中であろう息子が、この雷を怖がっていないか心配になる。

「きゃーっ、れ、レーテ! 雷が……っ、雷がァァ!」

一番怖がっているのは、目の前にいる夫かもしれないが。

「ちょっと、雷で机の下に隠れるってどんだけよ」
「こ、怖いのだ……っ、はっ! イーニアス!! 朕のイーニアスが怖がっていないか心配なのだ」
「アンタよりは怖がっていないと思うわよ」

執務机の下でガタガタ震えている夫に溜め息を吐きながら、結構近くに落ちたわね……被害はあったのかしら、などと考える。

「ネロ、落雷で被害者がいないか心配よ」
「そ、そうだな! 誰かっ、先ほどの落雷の被害報告を……っ、それと、朕のイーニアスが怖がっていたら、ここに連れてくるのだ」

ネロったら親バカなんだから。

暫くして、イーニアスは雷に驚いてはいたが怖がってはいなかった、と侍従からの報告を聞いて、ネロは少し残念そうに「そうか……、さすがイーニアス。強い子なのだ」と頷いていた。

「イーニアス殿下は、怖がるどころか、他の者が大丈夫だったか気を配っておりました」
「なんと! 優しい子に育ったのだな」

本当に、なんて誇らしい息子なのかしら。

アタシと同じように、誇らし気に微笑むネロは、本当に嬉しそうで、愛おしいそうで、父親の顔をしていたわ。

「仕事が一段落したら、イーニアスの様子を見に行きましょう」
「うむ! きちんと仕事をせねば、イーニアスが悲しんでしまうかもしれぬからな」

息子の話を聞いてやる気が出たのか、さっきまで雷に怯えていたネロの顔つきも変わり、真剣に仕事に向き合い始めた。
父親に大きな影響を及ぼすイーニアスに、息子って偉大だわ。と頬がゆるむ。

「そうね。その調子よ」

この時すぐに、イーニアスの元へ行けば良かったのよ。
あんな大事件に息子が巻き込まれていたなんて……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ドニーズ視点


「大司教、私はここから出ます」

教皇の間に入ってからどのくらい経ったのだろうか。窓もないので外の音は聞こえず、時間の感覚もよくわからなくなってきた。今はとにかく娘が心配でたまらない。

僕は意を決し、椅子から立ち上がった。

「ふむ……、暗殺者が他にいるやもしれんしなぁ……危険ですが、少し外の様子を見てみましょうかな」

大司教は、「やれやれ」と呟きながら重い腰を上げ、扉へと歩いていく。僕ももちろん後を追った。

扉に近付き耳を済ませるが、やはり何も聞こえない。外には誰もいないのだろうか。

「開けますぞ」
「はいっ」

何があっても反撃できるよう身構えながら、扉を開いた……っ

「……誰もいませんね」
「そのようですなぁ」

ふーっと息を吐き気持ちを整え、今度は慎重に左右を見渡して、人影がない事を確認すると、長い廊下を進む。その先に階段があり、そこから地上へと上がるのだ。そう、ここは地下だった。

「大司教、私の後ろへ……。こう見えて、多少武術の心得はあります」

といっても、アカデミー時代に授業で習った程度だが。

「ホホッ、それは頼もしい。では遠慮なく」

僕の後ろへと回った大司教は、おそらく僕より強いけど、お年寄りの影に隠れて進むのはどうかと思ったので、これでいい。

「では、進みましょう」

フローレンス、どうか……、無事でいてくれ!


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