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第二部 第2章
359.謎解きゲームのようだ 〜 ドニーズ視点〜
しおりを挟むドニーズ視点
「うわっ」
階段を上がった直後、突然振り下ろされた刃に何とか回避し、拳を繰り出す。
やっぱりまだ、暗殺者が潜んでいたんだ!
しかし、ポスンッという音でも出そうなほど僕の拳は無力だった。何の手応えもなく、そのまま床に投げられたのだ。
「おやおや、これはいかん」
倒れて立ち上がれない僕に、襲ってきた相手は馬乗りされ、今にもナイフが僕の顔に刺さる……っ、という寸前で大司教の杖が暗殺者の側頭部にヒットした。
「あ、ありがとうございます……」
「ドニーズさん、武術の経験があると言ってはいませんでしたかな?」
「す、すみません」
一応アカデミー時代にかじった程度なので……と恥ずかしくなる。僕は魔法の方が得意だから……なんて、ウォルト様に聞かれたら怒られそうだ。と思いながら溜め息を吐いた。
「ドニーズさんや、右に曲がる道はどうも数人がウロウロしているようですよ」
右は礼拝堂がある方だ。という事は、出入り口を塞がれたという事……
「大司教、左に進むと何があるのでしょうか……」
「この方向だと、書庫がありますなぁ」
さすがに広い教会の中だから、大司教がいてくれると助かる。
「そこに窓はありませんかね?」
「窓か……うーむ……確か奥の方にあったような……」
「そこから外に脱出できないでしょうか」
「そうですな。ちょっと行ってみましょう」
僕らは左の、書庫に向かう事にしたんだ。
書庫にはすぐに到着し、誰も居ない事を確認して部屋に入る。そこは本だけでなく、色んなものが乱雑に置いてあって、つまずいてしまった。書庫というよりは倉庫だ。
中は思ったより広く、本棚の奥にもまだ部屋が続いていて、大司教のいう窓を探して奥へと進む。
「ドニーズさん、こっちに……ん? これは……」
大司教が何かに気づいたように、窓とは反対の本棚に足を向ける。
「大司教、どうされたのですか?」
「この本棚の床に、擦れがあるような……」
「擦れ? それは色んな物が入れられた倉庫のようですから、あってもおかしくないのではありませんか?」
真剣な顔をして何を言うかと思えば……。早くここから脱出しなければならないのに。
「いや、これはまだ新しい……」
大司教は、床から視線を本棚に向けると、並んだ本をじっと見ている。
「大司教?」
「これか」
大司教が手を伸ばしたのは、一つだけ埃を被っていない本だった。よく見ると、埃を被っていない本が、違う段にもあるようだけど。僕はそっちの本を手に取り開く……
「鍵……?」
本の中には鈍い金の鍵が入っていた。
「こちらには鍵穴がありますぞ」
「まさかこの鍵は……」
「ふむ。ドニーズさん、そちらの鍵をお借りしますぞ」
「え!?」
大司教は僕の手の中にある鍵を、その鍵穴に差し込み躊躇いもなく回したのだ。すると本棚が扉のように開いたではないか!
「ええ!?」
「……なるほど、床の擦れは、この本棚が経年劣化し、下がってきていたから、ですな」
いや、そんな事よりここ! 開きましたよ!?
「入ってみましょう」
「入るんですか!?」
大司教、好奇心旺盛すぎです!
呆然としていたら、いつの間にか大司教は本棚の向こうへ行ってしまっていた。
「ちょ、待ってください……っ」
急いでついていくと、何もない部屋がそこにはあった。
「何もありませんね……」
「なるほど、隠し部屋がありそうな匂いがしますなぁ」
「どんな匂いですか!?」
「たとえば、この燭台……ああ、この根本に鍵穴があるようですぞ」
何だか、おもちゃの宝箱のいつかのイベントであった、謎解きゲームのようだ。
フローレンスと一緒に参加したけど、あれは楽しかったなぁ。またやらないかな。
「鍵はないようですな……」
色々な所を探す大司教だったが、鍵が見つからず残念そうに俯いている。
「あの……こう言ってはなんですが、鍵が見つかって隠し部屋に行けたとして、僕らは脱出できるわけではありませんよね? 大司教は何故、そんなに必死に鍵を探しているのでしょうか……」
「それは───」
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