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第二章 秘められた悪意
娼婦の涙
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それから数日後――。
日の光の届かない、今にも雨が降り出しそうなどんよりとした日の午後。
ギル・ノーランド捜査官の葬儀が行われようとしていた。
ギルの死因は、生命力と精神力を極度に抜かれた事によるショック死。
鑑識によると[魔魂石]にされた可能性は高い、という事であった。
葬儀の参列者は、十数人。
その中には、エフェルローンの直属の上司であるキースリーや魔術師団の顧問を務めるレオン、そして、ギルの相棒ディーンの姿もある。
皆、黒い服に身を包み、神妙な顔をして目の前の光景をじっと見つめていた。
芝の敷き詰められた小奇麗な墓地の、深く掘られた縦長の穴の底に、ギルの眠る棺がひっそりと置かれている。
神父の祈りの言葉が終わると同時に、ディーンが赤い薔薇の花を一輪投げ入れた。
それに続いて参列者がひとり、またひとりと、一輪の花を投げ入れていく。
それでも、棺を覆うにはあまりに少な過ぎる花たちに、エフェルローンは心に痛みを覚えた。
(ギル……俺は、お前が苦しい時や辛い時、何か役に立てていただろうか)
過ぎ去った時間を思い返し、エフェルローンは唇を強く噛む。
何か出来たかもしれない、そう思うと、本当に悔やんでも悔やみきれない。
神妙な顔で下を向くエフェルローンに、ふとルイーズが小声でこう尋ねてきた。
「あの、先輩? ギルさんて、ご家族やお友達の方はいらっしゃらないんですか?」
あまりの人の少なさに、ルイーズが不思議そうにエフェルローンに尋ねる。
しかし、その質問に答えたのはエフェルローンではなく、監察所属のダニーであった。
彼もエフェルローンやディーンと同様、ギルとは大学時代からの知り合いであり、数少ない友人の一人である。
ギルの死を知って、さぞ動揺したことだろう。
現に、その顔色はいつにも増して青白い。
「家族は全員、六年前の[爆弾娘]事件の大爆発で亡くしたそうです。友人は……同僚とか仲間内とかで騒がしい付き合いは結構あったみたいですけれど、腹を割って打ち解けた話が出来る友人らしい友人は、あんまりいなかったみたいですね」
ギルは、元々面倒見の良い社交的な男である。
だが、[大爆発]事件――[爆弾娘]事件があって以来、人との間に少し距離を置くようになった気がしないでもない。
昔なじみのエフェルローンやディーン以外には。
いや、もしかしたら……エフェルローンやディーンにさえ、密かに距離を置いていたのかもしれない。
(まさか、な)
若干の不安も覚えながらそう心の中で呟くエフェルローン。
と、そのとき――。
突然、見知らぬ女がエフェルローンの隣で立ち止まった。
(誰だ?)
そう鋭い眼光を飛ばすエフェルローンを、全く意に介することなく。
栗色の波打つ長い髪をそのままに、女はじっと棺を見つめながらこう言った。
「彼、事あるごとに言っていたわ」
そう言うと、見知らぬ女はウェーブの掛かった長い髪の毛を気だるそうに掻き揚げる。
そして、花がまばらに散っている棺を悲しそうに眺めると、言葉に憤りを滲ませながらこう言った。
「[大爆発]事件の犯人――[爆弾娘]が許せない……って。それは、私も同じ」
そう言って、栗色の髪の女は涙も流すことなく棺を感情の灯らぬ瞳でじっと見つめるのであった。
日の光の届かない、今にも雨が降り出しそうなどんよりとした日の午後。
ギル・ノーランド捜査官の葬儀が行われようとしていた。
ギルの死因は、生命力と精神力を極度に抜かれた事によるショック死。
鑑識によると[魔魂石]にされた可能性は高い、という事であった。
葬儀の参列者は、十数人。
その中には、エフェルローンの直属の上司であるキースリーや魔術師団の顧問を務めるレオン、そして、ギルの相棒ディーンの姿もある。
皆、黒い服に身を包み、神妙な顔をして目の前の光景をじっと見つめていた。
芝の敷き詰められた小奇麗な墓地の、深く掘られた縦長の穴の底に、ギルの眠る棺がひっそりと置かれている。
神父の祈りの言葉が終わると同時に、ディーンが赤い薔薇の花を一輪投げ入れた。
それに続いて参列者がひとり、またひとりと、一輪の花を投げ入れていく。
それでも、棺を覆うにはあまりに少な過ぎる花たちに、エフェルローンは心に痛みを覚えた。
(ギル……俺は、お前が苦しい時や辛い時、何か役に立てていただろうか)
過ぎ去った時間を思い返し、エフェルローンは唇を強く噛む。
何か出来たかもしれない、そう思うと、本当に悔やんでも悔やみきれない。
神妙な顔で下を向くエフェルローンに、ふとルイーズが小声でこう尋ねてきた。
「あの、先輩? ギルさんて、ご家族やお友達の方はいらっしゃらないんですか?」
あまりの人の少なさに、ルイーズが不思議そうにエフェルローンに尋ねる。
しかし、その質問に答えたのはエフェルローンではなく、監察所属のダニーであった。
彼もエフェルローンやディーンと同様、ギルとは大学時代からの知り合いであり、数少ない友人の一人である。
ギルの死を知って、さぞ動揺したことだろう。
現に、その顔色はいつにも増して青白い。
「家族は全員、六年前の[爆弾娘]事件の大爆発で亡くしたそうです。友人は……同僚とか仲間内とかで騒がしい付き合いは結構あったみたいですけれど、腹を割って打ち解けた話が出来る友人らしい友人は、あんまりいなかったみたいですね」
ギルは、元々面倒見の良い社交的な男である。
だが、[大爆発]事件――[爆弾娘]事件があって以来、人との間に少し距離を置くようになった気がしないでもない。
昔なじみのエフェルローンやディーン以外には。
いや、もしかしたら……エフェルローンやディーンにさえ、密かに距離を置いていたのかもしれない。
(まさか、な)
若干の不安も覚えながらそう心の中で呟くエフェルローン。
と、そのとき――。
突然、見知らぬ女がエフェルローンの隣で立ち止まった。
(誰だ?)
そう鋭い眼光を飛ばすエフェルローンを、全く意に介することなく。
栗色の波打つ長い髪をそのままに、女はじっと棺を見つめながらこう言った。
「彼、事あるごとに言っていたわ」
そう言うと、見知らぬ女はウェーブの掛かった長い髪の毛を気だるそうに掻き揚げる。
そして、花がまばらに散っている棺を悲しそうに眺めると、言葉に憤りを滲ませながらこう言った。
「[大爆発]事件の犯人――[爆弾娘]が許せない……って。それは、私も同じ」
そう言って、栗色の髪の女は涙も流すことなく棺を感情の灯らぬ瞳でじっと見つめるのであった。
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