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第2幕
第16話 第十王子シン・フェイの視点2
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ソフィーリアが歌う声はバルコニーまで聞こえて、泣きそうなほど胸がいっぱいになった。
彼女ともう一度、会って話がしたい──。
『貴方が誰かはわからないけれど、誰かが誰かの代わりなんて出来ないの』
そう彼女が言ってくれた言葉が、私の心に響いた。
母が言っていた言葉を思い出す。優しくて明るい世界に私を引き戻してくれた。
『もし生きる理由がないのなら、私を助けてくれると嬉しいわ。それじゃあ、ちゃんと生きてね』
目的をくれた。
生きる意味を彼女が与えてくれた。
(もう一度、ソフィーリアに会うためにはどうすればいい?)
城内の書庫でひたすら書物を読み漁り、後ろ盾として楊明を頼った。彼は四大名家の一角を担う出自だったので声をかけた。しかし私の予想とは裏腹に、彼は私の血縁者だと明かす。年齢も本当は十も違うのだと明かした。
「貴方様が望むのなら我が家が後ろ盾となりましょう」
伯家の後ろ盾を得た私は王位継承権を放棄し、代わりに官吏登用の学科試験を受け合格。
スペード夜王国は三省六部によって成り立っており、吏部(官僚の人事)、戸部(財政、地方行政)、礼部(教育、外交)、兵部(軍事)、刑部(司法と警察)、工部(公共工事)の六つに分かれており、その中で私の立ち位置は三省六部の礼部に就任した。
目的は外交――ダイヤ王国との関係を深める為だ。
(順調だ。あとは実績を積んで――)
***
その頃だろうか、奇妙な夢を見ることが増えた。
白亜を基調とした部屋。何故か私はソフィーリアの隣では無く、対峙している。見知らぬ少女が腕に引っ付いて離れない。
なんだ、この女?
ソフィーリアは美しく成長して胸が躍った。妖精女王と彷彿とさせるほど気高く、見惚れる。 太陽のような金色の柔らかな髪はとても綺麗で、私を見る瞳は琥珀色で愛らしい。
彼女に手を伸ばそうとするが、体が動かない。
声も出ない。
「ダイヤ王国女王ソフィーリア・ラウンドルフ・フランシス。貴女との婚約およびダイヤ国とスペード夜王国との同盟を白紙に戻させてもらう」
は?
私がソフィーリアと婚約していた? それを破棄?
意味が分からなかった。なぜ愛しい人に、思い人にそんな酷いことを言わなければならないのか。
まるで操り人形のように何もできず、私はソフィーリアと婚約解消。彼女に触れることも声をかけることもできない。
悪夢だった。
いや本当の悪夢はここからだった。
ダイヤ王国が滅んだ。そして――ソフィーリアが殺された。
毎夜見る悪夢は途中まで内容は同じだったが、死に方が少しだけ違う。
けれどどう足掻いても彼女の死を回避することはできず、死に際にすら間に合わなかった。
(どうして……私がソフィーリアを思うことすら許されないから?)
夢に魘されつつも、ソフィーリアへの思いを断ち切ることなど私にはできなかった。
私が十六歳になった頃、ダイヤ王国の次期女王との政略結婚話が浮上した。父が厄介払いのつもりで追い出したのか、人質として私を送り出したのかはわからない。ただ婚約ができなければ、私に戻る場所がないという分かりやすい現実だけがあった。
(もう一度、彼女に会える。……悪夢と同じ道筋を辿ろうとしても、それを彼女の死を回避すればいいだけのこと……)
悪夢によるお告げが何を意味していたのか。
ソフィーリアに近づくなと警告していたのかもしれないが、もう襲い。これが妖精やなんらかの力によって私に見せているのなら今さらだ。
手を打つのなら私がソフィーリアと出会わないようにすべきだったのだ。すでに出会って、ずっと想い続けてきた気持ちを今さら捨て去ることなどできはしないのだから。
彼女ともう一度、会って話がしたい──。
『貴方が誰かはわからないけれど、誰かが誰かの代わりなんて出来ないの』
そう彼女が言ってくれた言葉が、私の心に響いた。
母が言っていた言葉を思い出す。優しくて明るい世界に私を引き戻してくれた。
『もし生きる理由がないのなら、私を助けてくれると嬉しいわ。それじゃあ、ちゃんと生きてね』
目的をくれた。
生きる意味を彼女が与えてくれた。
(もう一度、ソフィーリアに会うためにはどうすればいい?)
城内の書庫でひたすら書物を読み漁り、後ろ盾として楊明を頼った。彼は四大名家の一角を担う出自だったので声をかけた。しかし私の予想とは裏腹に、彼は私の血縁者だと明かす。年齢も本当は十も違うのだと明かした。
「貴方様が望むのなら我が家が後ろ盾となりましょう」
伯家の後ろ盾を得た私は王位継承権を放棄し、代わりに官吏登用の学科試験を受け合格。
スペード夜王国は三省六部によって成り立っており、吏部(官僚の人事)、戸部(財政、地方行政)、礼部(教育、外交)、兵部(軍事)、刑部(司法と警察)、工部(公共工事)の六つに分かれており、その中で私の立ち位置は三省六部の礼部に就任した。
目的は外交――ダイヤ王国との関係を深める為だ。
(順調だ。あとは実績を積んで――)
***
その頃だろうか、奇妙な夢を見ることが増えた。
白亜を基調とした部屋。何故か私はソフィーリアの隣では無く、対峙している。見知らぬ少女が腕に引っ付いて離れない。
なんだ、この女?
ソフィーリアは美しく成長して胸が躍った。妖精女王と彷彿とさせるほど気高く、見惚れる。 太陽のような金色の柔らかな髪はとても綺麗で、私を見る瞳は琥珀色で愛らしい。
彼女に手を伸ばそうとするが、体が動かない。
声も出ない。
「ダイヤ王国女王ソフィーリア・ラウンドルフ・フランシス。貴女との婚約およびダイヤ国とスペード夜王国との同盟を白紙に戻させてもらう」
は?
私がソフィーリアと婚約していた? それを破棄?
意味が分からなかった。なぜ愛しい人に、思い人にそんな酷いことを言わなければならないのか。
まるで操り人形のように何もできず、私はソフィーリアと婚約解消。彼女に触れることも声をかけることもできない。
悪夢だった。
いや本当の悪夢はここからだった。
ダイヤ王国が滅んだ。そして――ソフィーリアが殺された。
毎夜見る悪夢は途中まで内容は同じだったが、死に方が少しだけ違う。
けれどどう足掻いても彼女の死を回避することはできず、死に際にすら間に合わなかった。
(どうして……私がソフィーリアを思うことすら許されないから?)
夢に魘されつつも、ソフィーリアへの思いを断ち切ることなど私にはできなかった。
私が十六歳になった頃、ダイヤ王国の次期女王との政略結婚話が浮上した。父が厄介払いのつもりで追い出したのか、人質として私を送り出したのかはわからない。ただ婚約ができなければ、私に戻る場所がないという分かりやすい現実だけがあった。
(もう一度、彼女に会える。……悪夢と同じ道筋を辿ろうとしても、それを彼女の死を回避すればいいだけのこと……)
悪夢によるお告げが何を意味していたのか。
ソフィーリアに近づくなと警告していたのかもしれないが、もう襲い。これが妖精やなんらかの力によって私に見せているのなら今さらだ。
手を打つのなら私がソフィーリアと出会わないようにすべきだったのだ。すでに出会って、ずっと想い続けてきた気持ちを今さら捨て去ることなどできはしないのだから。
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