92 / 107
ネフェリア、学園編
予期
しおりを挟む
「留守の間は何も無かったか?」
ヴィヴァリアンは詰襟の王族衣装から制服に着替えながらサリファンに声を掛ける。
カウディリアンは胸元まで留め具を外し、ソファに腰掛け、ナヴィルリアンは既に半裸状態で制服のワイシャツを手に取っていた。
「はい、フィフィル・カトローザと裏で繋がっている者との連絡手段がわかりました。」
サリファンは皇子の不在中の出来事を細かく話、ドファスが現在文字のくせから、相手を探している事、女性である事を伝えた。
すると、ヴィヴァリアンは口元に手をやり、考える仕草を暫く行ってから口をゆっくり開いた。
「イザベラ・ヤードを探れ。」
「確かに1番怪しいのはイザベラではあるが、公爵令嬢がこんな事までするか?もし、やったとしたら、地位は確実に下がるぞ?」
キリウスは眉を寄せながらヴィヴァリアンを見るが、ヴィヴァリアンの視線から、イザベラだと彼は断定している事に気づく。
「アリウス。イザベラを見張れ。」
キリウスは息を吐きながら、アリウスに指示を出した。
「畏まりました。」
「…後、まだ他言無用にしてもらいたいが、シャーパと戦争になるかもしれん。」
ヴィヴァリアンの発言にサリファンとアリウスが息を飲む。
「まだ、分からないが、シャーパが武器を輸入している情報が入った。…狙うならウチだろう。」
ヴィヴァリアンに続き、カウディリアンが話し、2人は拳を握った。
「まぁ…様子を見ている状態だが、頭に入れておく様に。」
サリファンとアリウスは畏まりましたと、顔を強張らせたまま礼をとった。
何故皇子様方だけでなく、キリウス、プロント家も呼ばれたか、理解出来た。
もし、来年以降戦争が起これば、キリウスは騎士として戦争に参加するだろう、次期宰相のエスティリオも場合によっては戦力として動く事にもなる。そうなるとネフェリアは当主補佐、もしくはバロンの補佐として動く事にもなる。
サリファンはまだ自分の地位が不確かであり、年齢も相まって今回呼ばれなかった事に拳を震わせた。
それはアリウスもそうだ。
剣術ではそこらの兵士より戦力となるはずだが、18歳までまだ後3年ある。兄と共に戦場で戦えない事に悔しく歯を食いしばる。
そんな2人にナヴィルリアンはポンッと背中を叩いた。
「サリファン、アリウス。私が1番君らの気持ちが分かると思うが…今は悔やむ時じゃない。支えるべき時だよ。その時迄に力をつけよう。」
そうだ。
ナヴィルリアンはカウディリアンが王位継承権ほ放棄した為、第二の位置付けだが、年齢的に1番下であり、兄達と共に戦える術は無い。
戦争指揮は第一皇子のヴィヴァリアンになるだろう。
1番のスキルである剣術も使えず、戦争が始まれば祈るしかないのだ。
2人は深呼吸をして、口元を笑わせた。
そう、支える事を考えよう。
すると、キリウスは護衛の為の武装を解きつつ、ヴィヴァリアンに声をかけた。
「…なぁ、ヴィヴァリアン様。…もしかして、戦争が始まるかもしれない事、知っていたのか?」
キリウスの言葉に皆の視線がヴィヴァリアンに集まる。
ヴィヴァリアンはキリウスの青い瞳が鋭く光を放つのを見つめ、ゆっくりと椅子に腰掛けた。
「…何故、そう思う?」
「…この学園に入学する時、俺に言ったよな?騎士にしろ、近衛にしろ、護衛にしろ、万が一の事を考え、鎧の重さに耐えれるよう、動きにくさに耐えれるよう訓練しとけって。」
「……言ったな。」
「この国は殆どの国と和平を結び、傘下に入れている。通常であれば、卒業し、配属希望のテストを受け、配属された団の鎧で訓練を積む筈だ。確かに急な戦争になれば、慣れない鎧で戦う事になるかもしれない、万が一の為の訓練も理解できる。…だが、ヴィヴァリアン様は俺にだけ言った。カウディリアン様やアリウスに指示は出さなかった。…それは、近い内に戦争が起きるとよきしていたからでは?」
ヴィヴァリアンは表情を変えず、キリウスの話を聞いていた。
カウディリアンはキリウスとその様なやりとりを兄がしていたとは知らなかった。それはアリウスも同じだろう。
だが、確かに戦争という話にも、兄は驚きもせずに父上の話を聞いていた。
兄は元々表情があまり動かない。その為だろうと思っていたが…
「…兄上?」
カウディリアンの戸惑いの声に、仕方ないとばかりにヴィヴァリアンは口を開いた。
「…予期はしていた。…ただ、こんなに早くでは無い。」
「何故?何故お分かりになられたんですか?」
ナヴィルリアンもゴクリと唾を飲み込みつつ、質問した。
国王、宰相すら予期していない事を何故ヴィヴァリアンは分かったのか。
「…今は言えぬ。時が来れば話そう。だが、近い内、対応しなければ戦争にはなるだろう。…皆も特訓には励め。いつかなど分からないからな。」
ヴィヴァリアンはチラッとキリウスに金の瞳を向ける。
暫し、時が止まったかの様に互いに視線で会話した後、折れたのはキリウスだった。
大きなため息を吐き、頭を掻くキリウスは、小さく了解と呟いた。
これ以上は詮索しないと決めたのだろう。
キリウスの言葉に周りも口を閉じる事とした。
どちらにせよ、出来ることは限られているのだ。
まだ未成年という壁に包まれた己達なのだから。
ヴィヴァリアンは詰襟の王族衣装から制服に着替えながらサリファンに声を掛ける。
カウディリアンは胸元まで留め具を外し、ソファに腰掛け、ナヴィルリアンは既に半裸状態で制服のワイシャツを手に取っていた。
「はい、フィフィル・カトローザと裏で繋がっている者との連絡手段がわかりました。」
サリファンは皇子の不在中の出来事を細かく話、ドファスが現在文字のくせから、相手を探している事、女性である事を伝えた。
すると、ヴィヴァリアンは口元に手をやり、考える仕草を暫く行ってから口をゆっくり開いた。
「イザベラ・ヤードを探れ。」
「確かに1番怪しいのはイザベラではあるが、公爵令嬢がこんな事までするか?もし、やったとしたら、地位は確実に下がるぞ?」
キリウスは眉を寄せながらヴィヴァリアンを見るが、ヴィヴァリアンの視線から、イザベラだと彼は断定している事に気づく。
「アリウス。イザベラを見張れ。」
キリウスは息を吐きながら、アリウスに指示を出した。
「畏まりました。」
「…後、まだ他言無用にしてもらいたいが、シャーパと戦争になるかもしれん。」
ヴィヴァリアンの発言にサリファンとアリウスが息を飲む。
「まだ、分からないが、シャーパが武器を輸入している情報が入った。…狙うならウチだろう。」
ヴィヴァリアンに続き、カウディリアンが話し、2人は拳を握った。
「まぁ…様子を見ている状態だが、頭に入れておく様に。」
サリファンとアリウスは畏まりましたと、顔を強張らせたまま礼をとった。
何故皇子様方だけでなく、キリウス、プロント家も呼ばれたか、理解出来た。
もし、来年以降戦争が起これば、キリウスは騎士として戦争に参加するだろう、次期宰相のエスティリオも場合によっては戦力として動く事にもなる。そうなるとネフェリアは当主補佐、もしくはバロンの補佐として動く事にもなる。
サリファンはまだ自分の地位が不確かであり、年齢も相まって今回呼ばれなかった事に拳を震わせた。
それはアリウスもそうだ。
剣術ではそこらの兵士より戦力となるはずだが、18歳までまだ後3年ある。兄と共に戦場で戦えない事に悔しく歯を食いしばる。
そんな2人にナヴィルリアンはポンッと背中を叩いた。
「サリファン、アリウス。私が1番君らの気持ちが分かると思うが…今は悔やむ時じゃない。支えるべき時だよ。その時迄に力をつけよう。」
そうだ。
ナヴィルリアンはカウディリアンが王位継承権ほ放棄した為、第二の位置付けだが、年齢的に1番下であり、兄達と共に戦える術は無い。
戦争指揮は第一皇子のヴィヴァリアンになるだろう。
1番のスキルである剣術も使えず、戦争が始まれば祈るしかないのだ。
2人は深呼吸をして、口元を笑わせた。
そう、支える事を考えよう。
すると、キリウスは護衛の為の武装を解きつつ、ヴィヴァリアンに声をかけた。
「…なぁ、ヴィヴァリアン様。…もしかして、戦争が始まるかもしれない事、知っていたのか?」
キリウスの言葉に皆の視線がヴィヴァリアンに集まる。
ヴィヴァリアンはキリウスの青い瞳が鋭く光を放つのを見つめ、ゆっくりと椅子に腰掛けた。
「…何故、そう思う?」
「…この学園に入学する時、俺に言ったよな?騎士にしろ、近衛にしろ、護衛にしろ、万が一の事を考え、鎧の重さに耐えれるよう、動きにくさに耐えれるよう訓練しとけって。」
「……言ったな。」
「この国は殆どの国と和平を結び、傘下に入れている。通常であれば、卒業し、配属希望のテストを受け、配属された団の鎧で訓練を積む筈だ。確かに急な戦争になれば、慣れない鎧で戦う事になるかもしれない、万が一の為の訓練も理解できる。…だが、ヴィヴァリアン様は俺にだけ言った。カウディリアン様やアリウスに指示は出さなかった。…それは、近い内に戦争が起きるとよきしていたからでは?」
ヴィヴァリアンは表情を変えず、キリウスの話を聞いていた。
カウディリアンはキリウスとその様なやりとりを兄がしていたとは知らなかった。それはアリウスも同じだろう。
だが、確かに戦争という話にも、兄は驚きもせずに父上の話を聞いていた。
兄は元々表情があまり動かない。その為だろうと思っていたが…
「…兄上?」
カウディリアンの戸惑いの声に、仕方ないとばかりにヴィヴァリアンは口を開いた。
「…予期はしていた。…ただ、こんなに早くでは無い。」
「何故?何故お分かりになられたんですか?」
ナヴィルリアンもゴクリと唾を飲み込みつつ、質問した。
国王、宰相すら予期していない事を何故ヴィヴァリアンは分かったのか。
「…今は言えぬ。時が来れば話そう。だが、近い内、対応しなければ戦争にはなるだろう。…皆も特訓には励め。いつかなど分からないからな。」
ヴィヴァリアンはチラッとキリウスに金の瞳を向ける。
暫し、時が止まったかの様に互いに視線で会話した後、折れたのはキリウスだった。
大きなため息を吐き、頭を掻くキリウスは、小さく了解と呟いた。
これ以上は詮索しないと決めたのだろう。
キリウスの言葉に周りも口を閉じる事とした。
どちらにせよ、出来ることは限られているのだ。
まだ未成年という壁に包まれた己達なのだから。
59
お気に入りに追加
3,073
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。


言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる