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ネフェリア、学園編
勘違い
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皇子様方が帰ってきて2日、未だネフェリアから連絡が無い事に深い溜息が出る。
「サリファン様!」
放課後の図書室に本を返しに来たサリファンの背後から聞こえる声にサリファンは気づかない振りをしながら、本棚に本を片していく。
「サリファン様!」
先程より、近づいて来た声に小さく舌打ちをしながら振り向くと、キラキラとピンクの瞳を輝かせたフィフィルがいた。
食堂での一件からこの様に何度も接触してくるフィフィルに、サリファンはあからさまに顔を顰める。
冷たくしようと、無視しようと、1日3回以上現れるフィフィルは迷惑でしか無い。
どうやら勘違いをさせてしまったらしい。
確かに気を逸らす為、好感を持たせる様にはしたが、その後の様子から気付かないものだろうか?
嫌そうに眉を寄せても、ジリジリと近寄っくるフィフィルに仕方なく、なんだ?と返事をすると、パアアッと笑顔になり、腕に絡みついてくる。
「サリファン様!僕にお勉強教えてください!」
腕に絡みつき、擦り寄るフィフィルにゾッと鳥肌が立つ。
「フィフィル・カトローザ、貴方、最近成績が落ちてますよね?やる気が無い方に教える時間はありません。…それに、私は侯爵の位です。この様に触ってこられるのは困ります。」
腕に纏わりつくフィフィルを払い、冷たく一瞥するが、何故かフィフィルは顔を赤らめながら、キャーキャー騒いでいる。
「僕の成績ご存知なのですね!?そんなに僕に興味があるなんて!!早く言ってくれればいいのに!そんなに僕が心配ですか??」
何を言っているんだこいつは…。
サリファンはこれ以上話しても意味が無いと、図書室を出ようとするが、サリファンの制服の裾をギュッと握るフィフィルに、怒りを露わに睨みつける。
「離しなさい。いくら学校だからとて、不敬ですよ。」
「その顔も素敵ですね!!普段はあまり表情動かないのに、僕の前だとコロコロ変わるんですよ?サリファン様!それって僕に興味あるからでしょ?」
コテンと首を横に倒すフィフィルに、サリファンはより眉間の皺を深めた。
無理矢理制服を引っ張ると、あん!と小さく声を出すフィフィルを放って、図書室のドアに手を掛けるが、またも、後ろから抱きつき止めるフィフィル。
「いい加減にしてください!!」
サリファンはグイッと引き剥がそうとするが、小柄なフィフィルのどこにこんな力があるのか、しがみ付き、引き剥がせない。
逆にグイッと引かれ、バランスを崩したところを、本棚に背中を押しつけられた。
「ッツ!!」
背中が棚に食い込み、痛さに食いしばると、フィフィルはサリファンの身体を抱き込み、胸に擦り寄る。
誰もいない図書室の薄暗さの中、フィフィルの声が響く。
「フフッ。サリファン様は勉学が主だと思っていましたが、抱きつくと筋肉があるのがわかります!素敵ですね。」
うっとりと上目遣いに見上げてくるフィフィルに、気持ち悪い物が込み上げてくる。
吐き気に耐えるサリファンに抵抗されないことに誤解したのか、腕を伸ばして首に絡みつくフィフィル。
「ねぇ。サリファン様は童貞でしょ?あの人じゃヤラセてくれないでしょう。…ねぇ、僕が気持ちよくしてあげようか?」
コイツ…最低だな。
汚い物を見るかの様な視線さえ、勘違い野郎のフィフィルには通じず、つま先立ちで、顔を近づけてくる。
吐きそうになり、顔を背けるが、グイッと首に回された手で引き寄せられ、腕でフィフィルを押しやるが、ジリジリと顔は近づいてくる。
「おい!マジで止めろ!!」
サリファンは我慢の限界になり、言葉遣いが荒くなるが、首への力は強くなる。
ガラッ。
図書室の扉が開いた音に、サリファンは助けを求める様に視線を向けるが、そこに立つ人物に目を見開いた。
「さ、サリファン…あっ!…ごめん!!」
そこにいたのは、焦がれて、待ち侘びていた人物だった。
一瞬の驚きで固まってしまったが、ネフェリアが何か勘違いした事に気づき、サリファンは慌てる。
「ネフェリア!ちが、誤解だ!!」
慌てて、扉を閉めようとしたネフェリアはサリファンの声に、ピタッと止まり、振り向く。
しかし、ネフェリアに意識が向いたサリファンの隙に、フィフィルは唇を奪う。
グイッと引っ張り、合わせた唇にサリファンは動揺と嫌悪感からフィフィルを突き飛ばした。
しかし、動揺したのはサリファンだけでは無く、ネフェリアは目の前で行われた光景に、足が震え、その場から飛び出した。走り去るネフェリアに、ショックの余り固まるサリファンの顔から血の気が下がっていく。
ネフェリアの護衛に一緒に来ていたキリウスは、一部始終の様子に大きく息を吐き、ポンポンと、サリファンの背中を叩く。
「サリファン…今回はお前に護衛権利譲ってやるから、早く終え。お前の剣術だと譲れて1時間だ。俺が戻るまで、守れよ。」
ハッと青白い顔でキリウスに向き合うと、こくりと頷き、サリファンはネフェリアの元へと駆け出した。
「さ、サリファン様!!」
フィフィルの声などサリファンには届かない。
走り去るサリファンの背に、悔しそうに拳を握るフィフィル。
「おい、フィフィル・カトローザ。お前より地位の上の人物に無理矢理は罰にも値するぞ?」
サリファンに突き飛ばされ、尻餅をついたまま、起き上がらないフィフィルをキリウスは見下ろす。
「…まぁ、今回は見逃してやるよ。俺も鬼ではない。流石に振られた惨めな奴をしょっ引く程にはな?」
その言葉に、フィフィルはギッとキリウスを睨みつけるが、キリウスに敵うはずもなく、鼻で笑われる。
「ネフェリアが何を勘違いしたか、知らないが、サリファンがお前如きに惚れる筈がないだろ?裏で汚く動き、人を欺く様な奴なんかによ。それに、お前が俺らの大事な姫に勝てるかよ。一度でも、ネフェリアと関わった者が、お前を選ぶ筈がない。…無駄な事はやめておけ。お前を待っているのは…………」
キリウスはしゃがみ込み、フィフィルの
顎を指で挟むと、鋭利な刃の様な視線で睨みつけた。
「……地獄だけだ。」
ぞくりと全ての血が抜け出た様に寒さに襲われる様な声に、フィフィルはカタカタと震えた。
キリウスは立ち上がり、震えるフィフィルを一瞥し、図書室の扉を静かに閉めた。
夕日も沈み始め、暗く闇に覆われる図書室の中、自分の身体を抱きしめ、悔しさに歯を食いしばるフィフィルだけが、残された。
許さない……。
※ペースが遅くなり本当に申し訳ございません!!!
落ち着き次第ペースを上げて行きますので、よろしくお願いします!!
「サリファン様!」
放課後の図書室に本を返しに来たサリファンの背後から聞こえる声にサリファンは気づかない振りをしながら、本棚に本を片していく。
「サリファン様!」
先程より、近づいて来た声に小さく舌打ちをしながら振り向くと、キラキラとピンクの瞳を輝かせたフィフィルがいた。
食堂での一件からこの様に何度も接触してくるフィフィルに、サリファンはあからさまに顔を顰める。
冷たくしようと、無視しようと、1日3回以上現れるフィフィルは迷惑でしか無い。
どうやら勘違いをさせてしまったらしい。
確かに気を逸らす為、好感を持たせる様にはしたが、その後の様子から気付かないものだろうか?
嫌そうに眉を寄せても、ジリジリと近寄っくるフィフィルに仕方なく、なんだ?と返事をすると、パアアッと笑顔になり、腕に絡みついてくる。
「サリファン様!僕にお勉強教えてください!」
腕に絡みつき、擦り寄るフィフィルにゾッと鳥肌が立つ。
「フィフィル・カトローザ、貴方、最近成績が落ちてますよね?やる気が無い方に教える時間はありません。…それに、私は侯爵の位です。この様に触ってこられるのは困ります。」
腕に纏わりつくフィフィルを払い、冷たく一瞥するが、何故かフィフィルは顔を赤らめながら、キャーキャー騒いでいる。
「僕の成績ご存知なのですね!?そんなに僕に興味があるなんて!!早く言ってくれればいいのに!そんなに僕が心配ですか??」
何を言っているんだこいつは…。
サリファンはこれ以上話しても意味が無いと、図書室を出ようとするが、サリファンの制服の裾をギュッと握るフィフィルに、怒りを露わに睨みつける。
「離しなさい。いくら学校だからとて、不敬ですよ。」
「その顔も素敵ですね!!普段はあまり表情動かないのに、僕の前だとコロコロ変わるんですよ?サリファン様!それって僕に興味あるからでしょ?」
コテンと首を横に倒すフィフィルに、サリファンはより眉間の皺を深めた。
無理矢理制服を引っ張ると、あん!と小さく声を出すフィフィルを放って、図書室のドアに手を掛けるが、またも、後ろから抱きつき止めるフィフィル。
「いい加減にしてください!!」
サリファンはグイッと引き剥がそうとするが、小柄なフィフィルのどこにこんな力があるのか、しがみ付き、引き剥がせない。
逆にグイッと引かれ、バランスを崩したところを、本棚に背中を押しつけられた。
「ッツ!!」
背中が棚に食い込み、痛さに食いしばると、フィフィルはサリファンの身体を抱き込み、胸に擦り寄る。
誰もいない図書室の薄暗さの中、フィフィルの声が響く。
「フフッ。サリファン様は勉学が主だと思っていましたが、抱きつくと筋肉があるのがわかります!素敵ですね。」
うっとりと上目遣いに見上げてくるフィフィルに、気持ち悪い物が込み上げてくる。
吐き気に耐えるサリファンに抵抗されないことに誤解したのか、腕を伸ばして首に絡みつくフィフィル。
「ねぇ。サリファン様は童貞でしょ?あの人じゃヤラセてくれないでしょう。…ねぇ、僕が気持ちよくしてあげようか?」
コイツ…最低だな。
汚い物を見るかの様な視線さえ、勘違い野郎のフィフィルには通じず、つま先立ちで、顔を近づけてくる。
吐きそうになり、顔を背けるが、グイッと首に回された手で引き寄せられ、腕でフィフィルを押しやるが、ジリジリと顔は近づいてくる。
「おい!マジで止めろ!!」
サリファンは我慢の限界になり、言葉遣いが荒くなるが、首への力は強くなる。
ガラッ。
図書室の扉が開いた音に、サリファンは助けを求める様に視線を向けるが、そこに立つ人物に目を見開いた。
「さ、サリファン…あっ!…ごめん!!」
そこにいたのは、焦がれて、待ち侘びていた人物だった。
一瞬の驚きで固まってしまったが、ネフェリアが何か勘違いした事に気づき、サリファンは慌てる。
「ネフェリア!ちが、誤解だ!!」
慌てて、扉を閉めようとしたネフェリアはサリファンの声に、ピタッと止まり、振り向く。
しかし、ネフェリアに意識が向いたサリファンの隙に、フィフィルは唇を奪う。
グイッと引っ張り、合わせた唇にサリファンは動揺と嫌悪感からフィフィルを突き飛ばした。
しかし、動揺したのはサリファンだけでは無く、ネフェリアは目の前で行われた光景に、足が震え、その場から飛び出した。走り去るネフェリアに、ショックの余り固まるサリファンの顔から血の気が下がっていく。
ネフェリアの護衛に一緒に来ていたキリウスは、一部始終の様子に大きく息を吐き、ポンポンと、サリファンの背中を叩く。
「サリファン…今回はお前に護衛権利譲ってやるから、早く終え。お前の剣術だと譲れて1時間だ。俺が戻るまで、守れよ。」
ハッと青白い顔でキリウスに向き合うと、こくりと頷き、サリファンはネフェリアの元へと駆け出した。
「さ、サリファン様!!」
フィフィルの声などサリファンには届かない。
走り去るサリファンの背に、悔しそうに拳を握るフィフィル。
「おい、フィフィル・カトローザ。お前より地位の上の人物に無理矢理は罰にも値するぞ?」
サリファンに突き飛ばされ、尻餅をついたまま、起き上がらないフィフィルをキリウスは見下ろす。
「…まぁ、今回は見逃してやるよ。俺も鬼ではない。流石に振られた惨めな奴をしょっ引く程にはな?」
その言葉に、フィフィルはギッとキリウスを睨みつけるが、キリウスに敵うはずもなく、鼻で笑われる。
「ネフェリアが何を勘違いしたか、知らないが、サリファンがお前如きに惚れる筈がないだろ?裏で汚く動き、人を欺く様な奴なんかによ。それに、お前が俺らの大事な姫に勝てるかよ。一度でも、ネフェリアと関わった者が、お前を選ぶ筈がない。…無駄な事はやめておけ。お前を待っているのは…………」
キリウスはしゃがみ込み、フィフィルの
顎を指で挟むと、鋭利な刃の様な視線で睨みつけた。
「……地獄だけだ。」
ぞくりと全ての血が抜け出た様に寒さに襲われる様な声に、フィフィルはカタカタと震えた。
キリウスは立ち上がり、震えるフィフィルを一瞥し、図書室の扉を静かに閉めた。
夕日も沈み始め、暗く闇に覆われる図書室の中、自分の身体を抱きしめ、悔しさに歯を食いしばるフィフィルだけが、残された。
許さない……。
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