本当は貴方に興味なかったので断罪は謹んでお断り致します。

B介

文字の大きさ
上 下
93 / 107
ネフェリア、学園編

勘違い

しおりを挟む
皇子様方が帰ってきて2日、未だネフェリアから連絡が無い事に深い溜息が出る。


「サリファン様!」

放課後の図書室に本を返しに来たサリファンの背後から聞こえる声にサリファンは気づかない振りをしながら、本棚に本を片していく。


「サリファン様!」

先程より、近づいて来た声に小さく舌打ちをしながら振り向くと、キラキラとピンクの瞳を輝かせたフィフィルがいた。

食堂での一件からこの様に何度も接触してくるフィフィルに、サリファンはあからさまに顔を顰める。

冷たくしようと、無視しようと、1日3回以上現れるフィフィルは迷惑でしか無い。


どうやら勘違いをさせてしまったらしい。

確かに気を逸らす為、好感を持たせる様にはしたが、その後の様子から気付かないものだろうか?

嫌そうに眉を寄せても、ジリジリと近寄っくるフィフィルに仕方なく、なんだ?と返事をすると、パアアッと笑顔になり、腕に絡みついてくる。


「サリファン様!僕にお勉強教えてください!」

腕に絡みつき、擦り寄るフィフィルにゾッと鳥肌が立つ。


「フィフィル・カトローザ、貴方、最近成績が落ちてますよね?やる気が無い方に教える時間はありません。…それに、私は侯爵の位です。この様に触ってこられるのは困ります。」

腕に纏わりつくフィフィルを払い、冷たく一瞥するが、何故かフィフィルは顔を赤らめながら、キャーキャー騒いでいる。

「僕の成績ご存知なのですね!?そんなに僕に興味があるなんて!!早く言ってくれればいいのに!そんなに僕が心配ですか??」


何を言っているんだこいつは…。


サリファンはこれ以上話しても意味が無いと、図書室を出ようとするが、サリファンの制服の裾をギュッと握るフィフィルに、怒りを露わに睨みつける。


「離しなさい。いくら学校だからとて、不敬ですよ。」


「その顔も素敵ですね!!普段はあまり表情動かないのに、僕の前だとコロコロ変わるんですよ?サリファン様!それって僕に興味あるからでしょ?」

コテンと首を横に倒すフィフィルに、サリファンはより眉間の皺を深めた。

無理矢理制服を引っ張ると、あん!と小さく声を出すフィフィルを放って、図書室のドアに手を掛けるが、またも、後ろから抱きつき止めるフィフィル。


「いい加減にしてください!!」

サリファンはグイッと引き剥がそうとするが、小柄なフィフィルのどこにこんな力があるのか、しがみ付き、引き剥がせない。

逆にグイッと引かれ、バランスを崩したところを、本棚に背中を押しつけられた。


「ッツ!!」

背中が棚に食い込み、痛さに食いしばると、フィフィルはサリファンの身体を抱き込み、胸に擦り寄る。

誰もいない図書室の薄暗さの中、フィフィルの声が響く。

「フフッ。サリファン様は勉学が主だと思っていましたが、抱きつくと筋肉があるのがわかります!素敵ですね。」

うっとりと上目遣いに見上げてくるフィフィルに、気持ち悪い物が込み上げてくる。

吐き気に耐えるサリファンに抵抗されないことに誤解したのか、腕を伸ばして首に絡みつくフィフィル。


「ねぇ。サリファン様は童貞でしょ?あの人じゃヤラセてくれないでしょう。…ねぇ、僕が気持ちよくしてあげようか?」


コイツ…最低だな。

汚い物を見るかの様な視線さえ、勘違い野郎のフィフィルには通じず、つま先立ちで、顔を近づけてくる。

吐きそうになり、顔を背けるが、グイッと首に回された手で引き寄せられ、腕でフィフィルを押しやるが、ジリジリと顔は近づいてくる。


「おい!マジで止めろ!!」

サリファンは我慢の限界になり、言葉遣いが荒くなるが、首への力は強くなる。


ガラッ。


図書室の扉が開いた音に、サリファンは助けを求める様に視線を向けるが、そこに立つ人物に目を見開いた。


「さ、サリファン…あっ!…ごめん!!」


そこにいたのは、焦がれて、待ち侘びていた人物だった。

一瞬の驚きで固まってしまったが、ネフェリアが何か勘違いした事に気づき、サリファンは慌てる。


「ネフェリア!ちが、誤解だ!!」


慌てて、扉を閉めようとしたネフェリアはサリファンの声に、ピタッと止まり、振り向く。


しかし、ネフェリアに意識が向いたサリファンの隙に、フィフィルは唇を奪う。

グイッと引っ張り、合わせた唇にサリファンは動揺と嫌悪感からフィフィルを突き飛ばした。

しかし、動揺したのはサリファンだけでは無く、ネフェリアは目の前で行われた光景に、足が震え、その場から飛び出した。走り去るネフェリアに、ショックの余り固まるサリファンの顔から血の気が下がっていく。


ネフェリアの護衛に一緒に来ていたキリウスは、一部始終の様子に大きく息を吐き、ポンポンと、サリファンの背中を叩く。


「サリファン…今回はお前に護衛権利譲ってやるから、早く終え。お前の剣術だと譲れて1時間だ。俺が戻るまで、守れよ。」


ハッと青白い顔でキリウスに向き合うと、こくりと頷き、サリファンはネフェリアの元へと駆け出した。


「さ、サリファン様!!」


フィフィルの声などサリファンには届かない。


走り去るサリファンの背に、悔しそうに拳を握るフィフィル。


「おい、フィフィル・カトローザ。お前より地位の上の人物に無理矢理は罰にも値するぞ?」


サリファンに突き飛ばされ、尻餅をついたまま、起き上がらないフィフィルをキリウスは見下ろす。


「…まぁ、今回は見逃してやるよ。俺も鬼ではない。流石に振られた惨めな奴をしょっ引く程にはな?」

その言葉に、フィフィルはギッとキリウスを睨みつけるが、キリウスに敵うはずもなく、鼻で笑われる。


「ネフェリアが何を勘違いしたか、知らないが、サリファンがお前如きに惚れる筈がないだろ?裏で汚く動き、人を欺く様な奴なんかによ。それに、お前が俺らの大事な姫に勝てるかよ。一度でも、ネフェリアと関わった者が、お前を選ぶ筈がない。…無駄な事はやめておけ。お前を待っているのは…………」


キリウスはしゃがみ込み、フィフィルの
顎を指で挟むと、鋭利な刃の様な視線で睨みつけた。


「……地獄だけだ。」


ぞくりと全ての血が抜け出た様に寒さに襲われる様な声に、フィフィルはカタカタと震えた。


キリウスは立ち上がり、震えるフィフィルを一瞥し、図書室の扉を静かに閉めた。


夕日も沈み始め、暗く闇に覆われる図書室の中、自分の身体を抱きしめ、悔しさに歯を食いしばるフィフィルだけが、残された。


許さない……。










※ペースが遅くなり本当に申し訳ございません!!!


落ち着き次第ペースを上げて行きますので、よろしくお願いします!!
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...