91 / 107
ネフェリア、学園編
皇子様方の到着
しおりを挟む
「お帰りなさいませ、ヴィヴァリアン様、カウディリアン様、ナヴィルリアン様。そしてキリウス様。」
サリファンとアリウスが王族専用馬車を出迎える。
皇子様方とキリウスの姿を確認しながら、プロント家の馬車が無いのを気にする2人に、カウディリアンは苦笑しながら口を開いた。
「エスティリオ殿とネフェリアは実家に寄ってから来る。1日違いで着くだろう。」
目に見えて、肩を落とす2人にキリウスも笑う。
「おい。一応主君の前だぞ?そんな顔すんな。」
ハッとして2人は姿勢を正す。
「留守の間に問題はあったか?」
ヴィヴァリアンはコホンっと咳払いをしつつ、2人に話し掛けると、気まずそうにしながらもサリファンは真剣な顔に整えつつ、後ほどお話ししますと、生徒会室にと促した。
「ヴィヴァリアン皇子様!!」
そこへ媚びを含んだ様な高い声が制止をかける。
ヴィヴァリアンは声の主が誰だかわかり、小さく溜息を付くが周りには生徒もいる為、無視をする訳にも行かず、振り向いた。
「なんだヤード令嬢、公爵家にしては礼儀がなっていないな?公の場で王族に声を掛けるとは。」
本来なら位の下の者からは声を掛けてはならないもの。
学校内だから許されていたが、今は制服を纏わず、皇子として王宮専用馬車から降りた所だ。
その為、学校の敷地内で他生徒もいるが、皆弁えて声を掛けずにいた。
イザベラは扇子を広げ、口元を隠しているが、明らかに動揺し、悔しそうに眉を寄せていた。
「も、申し訳ございません。…私、ヴィヴァリアン皇子様の姿を拝見出来ず、寂しさに震えていた所、お戻りの馬車が見えたので、つい興奮してしまいました。」
イザベラは赤紫の瞳を潤ませ、媚びる様に上目遣いをして、ヴィヴァリアンの側に近寄る。
もう少しでヴィヴァリアンの袖へと指先が触れられるとこで、キリウスとアリウスが間へと入る。
「ヤード令嬢、勝手に皇子に触れる事は不敬に当たります。お下がり下さい。」
キリウスの冷たい瞳に睨まれ、ビクッと身体を震えさせたイザベラは数歩後退をする。
「用がないのなら失礼する。」
ヴィヴァリアンは一瞥し、生徒会室へと向かい歩き出した。
「あっ…!」
縋り付く様に手を伸ばすイザベラに、今度はアリウスが制止をかける。
「お下がり下さい。」
「姉上!!」
イザベラの皇子とのやり取りを窓から見ていたマリックは慌てて、その場へと駆けつけた。
「申し訳ございません!!不敬な真似を!!何卒お許し下さい!!」
「マリック!?」
アリウスとイザベラの前に立ち、頭を下げるマリックの様子にヴィヴァリアンはもう一度振り返る。
「…ヤード小公爵殿。確かマリックと言ったな?ネフェリアの友人らしいな。」
低く通る声にマリックは頭を下げたまま身体を強張らせ、返事をした。
「はい!ネフェリア様には大変良くして頂いております!…イザベラが大変失礼致しました。父にもしっかりとお伝えし、今後この様な事が無いように致します。」
マリックの必死な様子にヴィヴァリアンは暫く探る様に観察した。
ヤード家のマリックといったら、気の強い姉の影に隠れ、目立たず、のんびりとした何を考えているか分からない様な男だった。
入学してすぐにネフェリアと一緒の所を見て、ヤード家として警戒していたが、成績も優秀だと聞くし、謝罪の様子も裏がある様には感じない。
ネフェリアもマリックを気に入っている。
そこは面白くないが、姉とは違うとは思ってもいいかもな。
ヤード公爵は少し優しすぎるというか、内面が弱い傾向がある為、これ以上の発展は無いと思っていたが次期公爵は悪くないかもな。
こんな姉の為に頭を下げさせるのは勿体ない者だ。
「…今回は多めに見よう。マリック小公爵よ。お前の評価が姉により下がるのは惜しい。大いに期待している。自分を大事にしろ。」
ヴィヴァリアンの言葉に、驚愕し、顔を上げそうになるのをハッと我に返り、耐えた。
まさかの言葉に胸を熱くする。
まさか、皇子様が評価してくれるとは…。
姉の我儘や態度は一部貴族内では有名だ。男性の前で繕ったとしても噂にはなっている。
ヤード家の評判としては、最悪だが女性という存在だから大事にはなっていない。
入学当初、ネフェリアといる所をヴィヴァリアンに見られた時はヤードと言うだけで眉を寄せられた。
だが、今はきちんと自分を評価して下さった。
嬉しくないはずはない!!
少しニヤける口元を自然と手で隠すと、バシッと背中を扇子で叩かれる。
「マリック!!何故邪魔をするの!!しかも、何故貴方が私より評価されるのよ!!」
自分の愚かさに気づかない姉に溜息がつく。
我儘に育てた両親にも責任がある。放置して無視していた自分にも。
「姉上。ここは貴方の城であるヤード邸ではございません。なので貴方の我儘が叶う事もありません。…本日の皇子様の服装を確認しましたか?制服では無いという事は学校であれ、王族としての扱いとなります。そうなれば、公爵といえど近づいてはなりませんし、こちらから声を掛けるのも不敬になります。
貴方は、キリウス様に切られても仕方ない事をしたんです!!
そんな事も気づかない姉上を誰が評価しますか!!」
マリックのいつもと違う様子に驚きつつも、グッと唇を噛み締めるイザベラ。
周りからの視線に顔を紅潮させ、ワナワナと震えながら、その場を早足で去って行った。
イザベラは皇子が王宮にネフェリアと戻った事に焦っていたのだ。
もう婚約を結んでしまったのかと焦っていたが、情報でそうでは無いと知り、ホッとはしたが、まだ不安であった。
その為皇子様方だけ帰ってきた事に浮き足立ち、ネフェリアのいない間にと、声を掛けてしまったのだ。
ネフェリアなら、あのくらい近寄っても不敬には当たらないはず、ネフェリアなら触れても怒らないはず!という、感情に覆われ、なら自分だって!と、つい先走ってしまった。
しかし、ヴィヴァリアンの鋭い視線。キリウスの冷徹な表情。マリックの謝罪。
自分には許されない距離が屈辱でしかなかった。
同じ公爵の位なのに!!
ネフェリア!!絶対に許さない!!
サリファンとアリウスが王族専用馬車を出迎える。
皇子様方とキリウスの姿を確認しながら、プロント家の馬車が無いのを気にする2人に、カウディリアンは苦笑しながら口を開いた。
「エスティリオ殿とネフェリアは実家に寄ってから来る。1日違いで着くだろう。」
目に見えて、肩を落とす2人にキリウスも笑う。
「おい。一応主君の前だぞ?そんな顔すんな。」
ハッとして2人は姿勢を正す。
「留守の間に問題はあったか?」
ヴィヴァリアンはコホンっと咳払いをしつつ、2人に話し掛けると、気まずそうにしながらもサリファンは真剣な顔に整えつつ、後ほどお話ししますと、生徒会室にと促した。
「ヴィヴァリアン皇子様!!」
そこへ媚びを含んだ様な高い声が制止をかける。
ヴィヴァリアンは声の主が誰だかわかり、小さく溜息を付くが周りには生徒もいる為、無視をする訳にも行かず、振り向いた。
「なんだヤード令嬢、公爵家にしては礼儀がなっていないな?公の場で王族に声を掛けるとは。」
本来なら位の下の者からは声を掛けてはならないもの。
学校内だから許されていたが、今は制服を纏わず、皇子として王宮専用馬車から降りた所だ。
その為、学校の敷地内で他生徒もいるが、皆弁えて声を掛けずにいた。
イザベラは扇子を広げ、口元を隠しているが、明らかに動揺し、悔しそうに眉を寄せていた。
「も、申し訳ございません。…私、ヴィヴァリアン皇子様の姿を拝見出来ず、寂しさに震えていた所、お戻りの馬車が見えたので、つい興奮してしまいました。」
イザベラは赤紫の瞳を潤ませ、媚びる様に上目遣いをして、ヴィヴァリアンの側に近寄る。
もう少しでヴィヴァリアンの袖へと指先が触れられるとこで、キリウスとアリウスが間へと入る。
「ヤード令嬢、勝手に皇子に触れる事は不敬に当たります。お下がり下さい。」
キリウスの冷たい瞳に睨まれ、ビクッと身体を震えさせたイザベラは数歩後退をする。
「用がないのなら失礼する。」
ヴィヴァリアンは一瞥し、生徒会室へと向かい歩き出した。
「あっ…!」
縋り付く様に手を伸ばすイザベラに、今度はアリウスが制止をかける。
「お下がり下さい。」
「姉上!!」
イザベラの皇子とのやり取りを窓から見ていたマリックは慌てて、その場へと駆けつけた。
「申し訳ございません!!不敬な真似を!!何卒お許し下さい!!」
「マリック!?」
アリウスとイザベラの前に立ち、頭を下げるマリックの様子にヴィヴァリアンはもう一度振り返る。
「…ヤード小公爵殿。確かマリックと言ったな?ネフェリアの友人らしいな。」
低く通る声にマリックは頭を下げたまま身体を強張らせ、返事をした。
「はい!ネフェリア様には大変良くして頂いております!…イザベラが大変失礼致しました。父にもしっかりとお伝えし、今後この様な事が無いように致します。」
マリックの必死な様子にヴィヴァリアンは暫く探る様に観察した。
ヤード家のマリックといったら、気の強い姉の影に隠れ、目立たず、のんびりとした何を考えているか分からない様な男だった。
入学してすぐにネフェリアと一緒の所を見て、ヤード家として警戒していたが、成績も優秀だと聞くし、謝罪の様子も裏がある様には感じない。
ネフェリアもマリックを気に入っている。
そこは面白くないが、姉とは違うとは思ってもいいかもな。
ヤード公爵は少し優しすぎるというか、内面が弱い傾向がある為、これ以上の発展は無いと思っていたが次期公爵は悪くないかもな。
こんな姉の為に頭を下げさせるのは勿体ない者だ。
「…今回は多めに見よう。マリック小公爵よ。お前の評価が姉により下がるのは惜しい。大いに期待している。自分を大事にしろ。」
ヴィヴァリアンの言葉に、驚愕し、顔を上げそうになるのをハッと我に返り、耐えた。
まさかの言葉に胸を熱くする。
まさか、皇子様が評価してくれるとは…。
姉の我儘や態度は一部貴族内では有名だ。男性の前で繕ったとしても噂にはなっている。
ヤード家の評判としては、最悪だが女性という存在だから大事にはなっていない。
入学当初、ネフェリアといる所をヴィヴァリアンに見られた時はヤードと言うだけで眉を寄せられた。
だが、今はきちんと自分を評価して下さった。
嬉しくないはずはない!!
少しニヤける口元を自然と手で隠すと、バシッと背中を扇子で叩かれる。
「マリック!!何故邪魔をするの!!しかも、何故貴方が私より評価されるのよ!!」
自分の愚かさに気づかない姉に溜息がつく。
我儘に育てた両親にも責任がある。放置して無視していた自分にも。
「姉上。ここは貴方の城であるヤード邸ではございません。なので貴方の我儘が叶う事もありません。…本日の皇子様の服装を確認しましたか?制服では無いという事は学校であれ、王族としての扱いとなります。そうなれば、公爵といえど近づいてはなりませんし、こちらから声を掛けるのも不敬になります。
貴方は、キリウス様に切られても仕方ない事をしたんです!!
そんな事も気づかない姉上を誰が評価しますか!!」
マリックのいつもと違う様子に驚きつつも、グッと唇を噛み締めるイザベラ。
周りからの視線に顔を紅潮させ、ワナワナと震えながら、その場を早足で去って行った。
イザベラは皇子が王宮にネフェリアと戻った事に焦っていたのだ。
もう婚約を結んでしまったのかと焦っていたが、情報でそうでは無いと知り、ホッとはしたが、まだ不安であった。
その為皇子様方だけ帰ってきた事に浮き足立ち、ネフェリアのいない間にと、声を掛けてしまったのだ。
ネフェリアなら、あのくらい近寄っても不敬には当たらないはず、ネフェリアなら触れても怒らないはず!という、感情に覆われ、なら自分だって!と、つい先走ってしまった。
しかし、ヴィヴァリアンの鋭い視線。キリウスの冷徹な表情。マリックの謝罪。
自分には許されない距離が屈辱でしかなかった。
同じ公爵の位なのに!!
ネフェリア!!絶対に許さない!!
58
お気に入りに追加
3,074
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる