本当は貴方に興味なかったので断罪は謹んでお断り致します。

B介

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ネフェリア、学園編

皇子様方の到着

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「お帰りなさいませ、ヴィヴァリアン様、カウディリアン様、ナヴィルリアン様。そしてキリウス様。」


サリファンとアリウスが王族専用馬車を出迎える。

皇子様方とキリウスの姿を確認しながら、プロント家の馬車が無いのを気にする2人に、カウディリアンは苦笑しながら口を開いた。

「エスティリオ殿とネフェリアは実家に寄ってから来る。1日違いで着くだろう。」

目に見えて、肩を落とす2人にキリウスも笑う。


「おい。一応主君の前だぞ?そんな顔すんな。」


ハッとして2人は姿勢を正す。


「留守の間に問題はあったか?」

ヴィヴァリアンはコホンっと咳払いをしつつ、2人に話し掛けると、気まずそうにしながらもサリファンは真剣な顔に整えつつ、後ほどお話ししますと、生徒会室にと促した。


「ヴィヴァリアン皇子様!!」


そこへ媚びを含んだ様な高い声が制止をかける。

ヴィヴァリアンは声の主が誰だかわかり、小さく溜息を付くが周りには生徒もいる為、無視をする訳にも行かず、振り向いた。

「なんだヤード令嬢、公爵家にしては礼儀がなっていないな?公の場で王族に声を掛けるとは。」

本来なら位の下の者からは声を掛けてはならないもの。

学校内だから許されていたが、今は制服を纏わず、皇子として王宮専用馬車から降りた所だ。

その為、学校の敷地内で他生徒もいるが、皆弁えて声を掛けずにいた。


イザベラは扇子を広げ、口元を隠しているが、明らかに動揺し、悔しそうに眉を寄せていた。

「も、申し訳ございません。…私、ヴィヴァリアン皇子様の姿を拝見出来ず、寂しさに震えていた所、お戻りの馬車が見えたので、つい興奮してしまいました。」


イザベラは赤紫の瞳を潤ませ、媚びる様に上目遣いをして、ヴィヴァリアンの側に近寄る。

もう少しでヴィヴァリアンの袖へと指先が触れられるとこで、キリウスとアリウスが間へと入る。


「ヤード令嬢、勝手に皇子に触れる事は不敬に当たります。お下がり下さい。」


キリウスの冷たい瞳に睨まれ、ビクッと身体を震えさせたイザベラは数歩後退をする。

「用がないのなら失礼する。」

ヴィヴァリアンは一瞥し、生徒会室へと向かい歩き出した。


「あっ…!」

縋り付く様に手を伸ばすイザベラに、今度はアリウスが制止をかける。

「お下がり下さい。」


「姉上!!」

イザベラの皇子とのやり取りを窓から見ていたマリックは慌てて、その場へと駆けつけた。

「申し訳ございません!!不敬な真似を!!何卒お許し下さい!!」

「マリック!?」

アリウスとイザベラの前に立ち、頭を下げるマリックの様子にヴィヴァリアンはもう一度振り返る。


「…ヤード小公爵殿。確かマリックと言ったな?ネフェリアの友人らしいな。」

低く通る声にマリックは頭を下げたまま身体を強張らせ、返事をした。

「はい!ネフェリア様には大変良くして頂いております!…イザベラが大変失礼致しました。父にもしっかりとお伝えし、今後この様な事が無いように致します。」


マリックの必死な様子にヴィヴァリアンは暫く探る様に観察した。


ヤード家のマリックといったら、気の強い姉の影に隠れ、目立たず、のんびりとした何を考えているか分からない様な男だった。

入学してすぐにネフェリアと一緒の所を見て、ヤード家として警戒していたが、成績も優秀だと聞くし、謝罪の様子も裏がある様には感じない。

ネフェリアもマリックを気に入っている。

そこは面白くないが、姉とは違うとは思ってもいいかもな。

ヤード公爵は少し優しすぎるというか、内面が弱い傾向がある為、これ以上の発展は無いと思っていたが次期公爵は悪くないかもな。

こんな姉の為に頭を下げさせるのは勿体ない者だ。


「…今回は多めに見よう。マリック小公爵よ。お前の評価が姉により下がるのは惜しい。大いに期待している。自分を大事にしろ。」


ヴィヴァリアンの言葉に、驚愕し、顔を上げそうになるのをハッと我に返り、耐えた。


まさかの言葉に胸を熱くする。

まさか、皇子様が評価してくれるとは…。

姉の我儘や態度は一部貴族内では有名だ。男性の前で繕ったとしても噂にはなっている。

ヤード家の評判としては、最悪だが女性という存在だから大事にはなっていない。

入学当初、ネフェリアといる所をヴィヴァリアンに見られた時はヤードと言うだけで眉を寄せられた。

だが、今はきちんと自分を評価して下さった。

嬉しくないはずはない!!


少しニヤける口元を自然と手で隠すと、バシッと背中を扇子で叩かれる。


「マリック!!何故邪魔をするの!!しかも、何故貴方が私より評価されるのよ!!」


自分の愚かさに気づかない姉に溜息がつく。

我儘に育てた両親にも責任がある。放置して無視していた自分にも。


「姉上。ここは貴方の城であるヤード邸ではございません。なので貴方の我儘が叶う事もありません。…本日の皇子様の服装を確認しましたか?制服では無いという事は学校であれ、王族としての扱いとなります。そうなれば、公爵といえど近づいてはなりませんし、こちらから声を掛けるのも不敬になります。
貴方は、キリウス様に切られても仕方ない事をしたんです!!
そんな事も気づかない姉上を誰が評価しますか!!」

マリックのいつもと違う様子に驚きつつも、グッと唇を噛み締めるイザベラ。

周りからの視線に顔を紅潮させ、ワナワナと震えながら、その場を早足で去って行った。


イザベラは皇子が王宮にネフェリアと戻った事に焦っていたのだ。

もう婚約を結んでしまったのかと焦っていたが、情報でそうでは無いと知り、ホッとはしたが、まだ不安であった。

その為皇子様方だけ帰ってきた事に浮き足立ち、ネフェリアのいない間にと、声を掛けてしまったのだ。

ネフェリアなら、あのくらい近寄っても不敬には当たらないはず、ネフェリアなら触れても怒らないはず!という、感情に覆われ、なら自分だって!と、つい先走ってしまった。


しかし、ヴィヴァリアンの鋭い視線。キリウスの冷徹な表情。マリックの謝罪。

自分には許されない距離が屈辱でしかなかった。

同じ公爵の位なのに!!


ネフェリア!!絶対に許さない!!

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