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第25話 アークトゥルス帝国の者
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宮廷錬金術師へ弟子入りか。
驚くべき提案だった。
とても魅力的だし、将来を考えればアリだ。
でも。
諦めるわけではないけれど……今は弟子入りしている場合ではない。俺にはやるべきことがある。
「どうしたの、カイリ。悩んでいるなら後日でも構わないけれど」
「……悪い。弟子に誘ってくれたのは嬉しい。けど……俺は商売が好きなんだ。今はお客さんとの取引を大切にしたい」
「そ、そう……残念ね。まさか、このわたしを振るとは」
――む?
フォーマルハウトのヤツ、ちょっと涙目……?
「そ、その……すまない」
「いえ。今日のところは帰りなさい……ていうか、帰れ!!」
急に怒られ、部屋を追い出された。
あちゃー…怒らせちゃったかな。
「カイリさん、そろそろ帰りますか……?」
スピカが恐る恐る手を挙げた。
「そ、そうだな。テレポートを頼むよ、スピカ」
「分かりました。では、みなさん! 私に掴まってください」
スピカのテレポートで城から脱出した。
* * *
――エレクトラ教会の前に到着。
「ありがとう、スピカ」
「いえいえ。では、私は教会へ戻りますね」
もう深夜だし、俺も眠い。
いったん家に帰って寝よう。
「父さん、家に帰ろう」
「そうだな。我が家に帰り、母さんの無事も確認しないと……慌てて家を出てしまったからな」
「それなら大丈夫だ。俺が見ておいた」
「さすがカイリ。なら安心だな」
家へ向かって歩いて行く。
教会から噴水公園、露店街を通り過ぎていけば――家だ。
あと少しのところで異変は起きた。
「カイリ、下がれ!」
「父さん、どうした……」
暗闇の無効から“気配”を感じた。
これは人間の気配なのか……いや、違う。
魔物だ。
禍々しい魔力を感じた。
父さんは闇を睨み、酷く警戒した。
「何者だ」
「……我が気配に気づくとは、お主も只者ではないな。まあいい、用があるのは……そこの“闇の錬金術師”だけだ」
「なんだと」
姿を現す赤いローブの……分からない。素顔が見えないし、でも人型か。
「カイリ、お前の改造ポーションの噂は聞いている。その技術は素晴らしい……ぜひ、我が国の為に力を尽くして欲しい」
「その前にあんた何者だ」
「我が名はベガ。アークトゥルス帝国の者――といえば分かるかな」
「アークトゥルス帝国! アシャの関係者か」
「ああ、彼女か。アシャは優秀ではあったけど、冷静さに欠けてね。今回の敗北もそのせいだろう」
「悪いけど、さっきアルデバラン王国の宮廷錬金術師の誘いですら断ったんだ。俺は自由にやる。邪魔しないでくれ」
「ほう? あのフォーマルハウトの誘いを受けなかったとは……それは素晴らしい。拒否なんて普通はありえない。けど、君はどうやら普通ではないらしいな」
「もういいだろ、帰ってくれ」
「そうはいかない。カイリ、君がどれほど貴重な人材か理解していないようだね」
スッと小瓶を取り出すベガとかいう人物。
「まさか催眠ポーションか!」
「そう、しかもこれは超強力なヤツさ。君を眠らせてでも連れていくよ」
突然瓶を投げつけてくるが、父さんが庇ってくれた。
「父さん!」
「大丈夫だ。父さんには状態異常は効かん」
大量の液体をかぶる父さんだが、ピンピンしていた。……良かった。
ホッとしているとヴァルハラが耳打ちしてきた
「カイリさん、ご命令くだされば反撃しますが」
「反撃? ヴァルハラにそんな力――あ、あるか」
「はい、わたしには一日に一回使える最強の技がありますからね!」
ここはヴァルハラの力を借りよう。
驚くべき提案だった。
とても魅力的だし、将来を考えればアリだ。
でも。
諦めるわけではないけれど……今は弟子入りしている場合ではない。俺にはやるべきことがある。
「どうしたの、カイリ。悩んでいるなら後日でも構わないけれど」
「……悪い。弟子に誘ってくれたのは嬉しい。けど……俺は商売が好きなんだ。今はお客さんとの取引を大切にしたい」
「そ、そう……残念ね。まさか、このわたしを振るとは」
――む?
フォーマルハウトのヤツ、ちょっと涙目……?
「そ、その……すまない」
「いえ。今日のところは帰りなさい……ていうか、帰れ!!」
急に怒られ、部屋を追い出された。
あちゃー…怒らせちゃったかな。
「カイリさん、そろそろ帰りますか……?」
スピカが恐る恐る手を挙げた。
「そ、そうだな。テレポートを頼むよ、スピカ」
「分かりました。では、みなさん! 私に掴まってください」
スピカのテレポートで城から脱出した。
* * *
――エレクトラ教会の前に到着。
「ありがとう、スピカ」
「いえいえ。では、私は教会へ戻りますね」
もう深夜だし、俺も眠い。
いったん家に帰って寝よう。
「父さん、家に帰ろう」
「そうだな。我が家に帰り、母さんの無事も確認しないと……慌てて家を出てしまったからな」
「それなら大丈夫だ。俺が見ておいた」
「さすがカイリ。なら安心だな」
家へ向かって歩いて行く。
教会から噴水公園、露店街を通り過ぎていけば――家だ。
あと少しのところで異変は起きた。
「カイリ、下がれ!」
「父さん、どうした……」
暗闇の無効から“気配”を感じた。
これは人間の気配なのか……いや、違う。
魔物だ。
禍々しい魔力を感じた。
父さんは闇を睨み、酷く警戒した。
「何者だ」
「……我が気配に気づくとは、お主も只者ではないな。まあいい、用があるのは……そこの“闇の錬金術師”だけだ」
「なんだと」
姿を現す赤いローブの……分からない。素顔が見えないし、でも人型か。
「カイリ、お前の改造ポーションの噂は聞いている。その技術は素晴らしい……ぜひ、我が国の為に力を尽くして欲しい」
「その前にあんた何者だ」
「我が名はベガ。アークトゥルス帝国の者――といえば分かるかな」
「アークトゥルス帝国! アシャの関係者か」
「ああ、彼女か。アシャは優秀ではあったけど、冷静さに欠けてね。今回の敗北もそのせいだろう」
「悪いけど、さっきアルデバラン王国の宮廷錬金術師の誘いですら断ったんだ。俺は自由にやる。邪魔しないでくれ」
「ほう? あのフォーマルハウトの誘いを受けなかったとは……それは素晴らしい。拒否なんて普通はありえない。けど、君はどうやら普通ではないらしいな」
「もういいだろ、帰ってくれ」
「そうはいかない。カイリ、君がどれほど貴重な人材か理解していないようだね」
スッと小瓶を取り出すベガとかいう人物。
「まさか催眠ポーションか!」
「そう、しかもこれは超強力なヤツさ。君を眠らせてでも連れていくよ」
突然瓶を投げつけてくるが、父さんが庇ってくれた。
「父さん!」
「大丈夫だ。父さんには状態異常は効かん」
大量の液体をかぶる父さんだが、ピンピンしていた。……良かった。
ホッとしているとヴァルハラが耳打ちしてきた
「カイリさん、ご命令くだされば反撃しますが」
「反撃? ヴァルハラにそんな力――あ、あるか」
「はい、わたしには一日に一回使える最強の技がありますからね!」
ここはヴァルハラの力を借りよう。
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