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#89 宿泊学習
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6月の半ばも過ぎた頃の木曜日。
今日は彩雲高校一年生の宿泊学習となっており、体育館には全ての一年生それぞれ班で集まっていた。
「楽しみだね! 学校でお泊まり!」
「そうだね……!」
「お泊まりの前にも色々とレクリエーションがあるみたいですね」
「あんまり内容は聞かされてないっすから楽しみっすね」
「なにするんだろ」
『はーい、一年生の皆さん。 おはようございます』
5人で話していると、真帆先生が壇上から拡声器を通して声をかけてきた。
『現在の時刻は9時という事で、今から最初のレクリエーションを始めます。 最初のレクリエーションは宝探しです』
「なんか面白そうっすね!」
『今、この学校の敷地内には沢山のお宝がありとあらゆる場所に隠されています。 校舎、校庭、部活棟など本当に敷地内の全てです。 一部の職員室などの立ち入り禁止エリアを除いてはどこを回っても構いませんので、より多くのお宝を見つけてください。 それと、班で分担して別の場所を探すのは禁止です。 ちゃんと班員みんなで同じ場所を探してくださいね』
「敷地内全てですか……」
この学校はそこらの大学よりも敷地が広く、全て見て回るのには相当の時間がかかるだろう。
『尚、制限時間は2時間半で、お宝はこういった宝箱に入っていますので、中身を取って後で配る入れ物に入れて持って帰ってきてください。 あ、宝箱は開いたまま隠されていた場所の近くに置いておいてくれると助かります』
真帆がそう言って見せてきたのは、手のひらサイズの四角い宝箱だった。
「結構小さいね? 見つけられるかな?」
『尚、上位三班にはささやかですがプレゼントも用意していますのでそれを目指して頑張ってください』
それから各班に宝を入れるポーチのようなものが配られた。
『では、早速宝探しスタートです!』
その言葉を聞いて、各班に敷地内の至る所に散らばっていった。
「どうするの?」
「校舎内に向かった班が多そうだから、僕たちは外から行こっか……」
「賛成っす!」
校舎の外には主に校庭、中庭、後は校舎の周りといった場所があり、まずは中庭から見て回ることにした。
「中庭だけでもかなり広いねー」
「どこにあるんすかねー?」
「あ、これそうかも」
音夢はそう言って近くの植え込みの中に手を突っ込んだかと思うと、そこから宝箱を引っこ抜いてきた。
「よく気づいたね……?」
「ん、たまたま目に入った」
「結構分かりにくいところにちゃんと隠されてるんですね」
「早速開けてみよ!」
宝箱を開けると、中には赤色の小さなメダルのようなものが入っていた。
「このメダルを集めればいいんすよね?」
「そうみたいですね」
「じゃあ、どんどん探していこ!」
その後も中庭を目を凝らしながら練り歩いた5人は、合計3つの宝箱を見つける事ができた。
ちなみに2つ目は噴水の水溜まりに浮かんでいて、3つ目は学校創始者の銅像の裏に落ちていた。
「中庭一周したけど、こんなものかなぁ?」
「多分、まだある気がする」
「でも、2周目はちょっとタイムロスになりますし、別の場所に行きましょうか」
「そうだね……」
「そういえば、メダルの色違ったっすけどこれなんなんすかね?」
ピーンポーンパーンポーン
『えー、一年生の皆さん。 宝探しは楽しめてますでしょうか?』
真人達が移動しようとしていたところに校内放送が聞こえてきた。
『もう複数お宝を見つけた班は気づいたかもしれませんが、実はメダルにも見つけやすさによってランクがあります。 上から赤、青、白で赤は3点、青は2点、白は1点と換算されますので、頑張って難しいお宝を探してみてください』
「私達は各色一つずつ持っていますね」
「という事は6点持ってるって事だね」
『なお、2時間半という長い時間ですので、各班必ず一度は休憩を取ってください。 暑くもなってきましたから水分補給はこまめにしましょう。 それでは頑張ってください』
「休憩する?」
「僕は大丈夫かな……」
「私も平気です」
「じゃあ、あと一箇所回ったら休憩っすね!」
この中で体力が無いのは由花と次点で真人になるが、2人とも家で筋トレや体力作りを定期的に続けてきたおかげか、これぐらい歩いただけではほとんど疲れなくなっていた。
なので、このまま校舎の周りを一周する事にした。
校庭にもお宝は隠されているそうだが、かなり広いので大変だろうという事で校庭には行かないと決めた。
その後、校舎の周りでも3つのお宝を見つけ、一度真人達は休憩を取ることした。
「校舎の周りで見つけたのは青一枚と白二枚だね!」
「結構見つけられた箱が落ちてたから、そのうち無くなるかも」
「後半は青とか赤とかの見つけにくいやつが残りそうっすねー」
皆んなで水分補給をし、ベンチで座って休んでいく。
「これだけ歩いてもそこまで疲れが無いのは日頃の運動のおかげですね」
「由花、結構頑張ってるもんね……」
「最初は筋肉痛が酷かったですけど、何とか続けてこれてます」
「いいっすねー、由花っち。 もう運動は嫌いじゃないっすか?」
「いや、出来ればあまりしたくはありませんが…… まぁ、前ほどでは無いですね」
「それなりに歩けるぐらいの体力あれば人生困んないしね?」
「それはそう」
そんな風に話していたら10分くらい経っていたので、真人達は宝探しを再開する事にした。
*
『一年生の皆さん、宝探し終了のお時間となりました。 速やかに体育館に戻ってきてください』
「ありゃ、もう終わりっすか」
「あっという間だったねー」
あれから真人達はかなりの量のお宝を見つけていた。
が、他の班はどうかわからないのでこれが多いのか少ないのかはよく分からなかった。
「にしても、音夢さんすごいですね? 赤色のメダルを4枚も見つけるなんて」
「かくれんぼは得意。 だから、隠すところもなんとなく分かる」
「音夢っちは勘が鋭いっすねー。 隠し事とかすぐバレそうっす」
「美晴の隠し事?」
「えっ、な、何か知ってるんすか?」
「……フッ」
「何すか今の笑いっ!? か、からかってるだけっすよね?」
「さぁ?」
「う、うぅ~…… 真人っち、音夢っちがいじめるっすよ~」
「あはは……」
そんな和やかなやり取りをしながら体育館に戻り、お宝が入ったポーチは回収された。
これからお昼ご飯を食べるので、その間に集計をされるそうだ。
『では、これからお昼ご飯なのですが、お昼ご飯は班で協力してカレーライスを作ってもらいます。 まずは校庭に移動してそこで説明をします』
そうして生徒達はゾロゾロと校庭に移動していった。
そこにはいつの間にか全班分のテーブルと、卓上コンロやまな板が置かれた作業スペースが設置されていた。
『まず、作るのはカレーライスとサラダになるのですが、班で役割分担を決めて、男子生徒の皆さんと女子生徒2名はこっちの机でサラダに使う葉物野菜をちぎったり盛り付けをお願いします。 あとの女子生徒はこちらのスペースで野菜やお肉の切り分けと実際にカレー作りをお願いします』
ちゃんと安全面も考慮されているようで、男子生徒は徹底的に包丁や火の近くには近づかないように考えられていた。
『各班のスペースに材料とレシピは置いてありますので、しっかりとそれに従って作ってください。 それでは初めてもらって大丈夫です』
「じゃあ最初は私と音夢ちゃんでカレー作ろっか」
「では、具材を切り終わったら交代しましょう。 それから鍋の方は私と美晴さんで見ます」
「はいっす!」
「ん、了解」
サクッと役割分担も済み、真人達はカレー作りに取り掛かっていった。
今日は彩雲高校一年生の宿泊学習となっており、体育館には全ての一年生それぞれ班で集まっていた。
「楽しみだね! 学校でお泊まり!」
「そうだね……!」
「お泊まりの前にも色々とレクリエーションがあるみたいですね」
「あんまり内容は聞かされてないっすから楽しみっすね」
「なにするんだろ」
『はーい、一年生の皆さん。 おはようございます』
5人で話していると、真帆先生が壇上から拡声器を通して声をかけてきた。
『現在の時刻は9時という事で、今から最初のレクリエーションを始めます。 最初のレクリエーションは宝探しです』
「なんか面白そうっすね!」
『今、この学校の敷地内には沢山のお宝がありとあらゆる場所に隠されています。 校舎、校庭、部活棟など本当に敷地内の全てです。 一部の職員室などの立ち入り禁止エリアを除いてはどこを回っても構いませんので、より多くのお宝を見つけてください。 それと、班で分担して別の場所を探すのは禁止です。 ちゃんと班員みんなで同じ場所を探してくださいね』
「敷地内全てですか……」
この学校はそこらの大学よりも敷地が広く、全て見て回るのには相当の時間がかかるだろう。
『尚、制限時間は2時間半で、お宝はこういった宝箱に入っていますので、中身を取って後で配る入れ物に入れて持って帰ってきてください。 あ、宝箱は開いたまま隠されていた場所の近くに置いておいてくれると助かります』
真帆がそう言って見せてきたのは、手のひらサイズの四角い宝箱だった。
「結構小さいね? 見つけられるかな?」
『尚、上位三班にはささやかですがプレゼントも用意していますのでそれを目指して頑張ってください』
それから各班に宝を入れるポーチのようなものが配られた。
『では、早速宝探しスタートです!』
その言葉を聞いて、各班に敷地内の至る所に散らばっていった。
「どうするの?」
「校舎内に向かった班が多そうだから、僕たちは外から行こっか……」
「賛成っす!」
校舎の外には主に校庭、中庭、後は校舎の周りといった場所があり、まずは中庭から見て回ることにした。
「中庭だけでもかなり広いねー」
「どこにあるんすかねー?」
「あ、これそうかも」
音夢はそう言って近くの植え込みの中に手を突っ込んだかと思うと、そこから宝箱を引っこ抜いてきた。
「よく気づいたね……?」
「ん、たまたま目に入った」
「結構分かりにくいところにちゃんと隠されてるんですね」
「早速開けてみよ!」
宝箱を開けると、中には赤色の小さなメダルのようなものが入っていた。
「このメダルを集めればいいんすよね?」
「そうみたいですね」
「じゃあ、どんどん探していこ!」
その後も中庭を目を凝らしながら練り歩いた5人は、合計3つの宝箱を見つける事ができた。
ちなみに2つ目は噴水の水溜まりに浮かんでいて、3つ目は学校創始者の銅像の裏に落ちていた。
「中庭一周したけど、こんなものかなぁ?」
「多分、まだある気がする」
「でも、2周目はちょっとタイムロスになりますし、別の場所に行きましょうか」
「そうだね……」
「そういえば、メダルの色違ったっすけどこれなんなんすかね?」
ピーンポーンパーンポーン
『えー、一年生の皆さん。 宝探しは楽しめてますでしょうか?』
真人達が移動しようとしていたところに校内放送が聞こえてきた。
『もう複数お宝を見つけた班は気づいたかもしれませんが、実はメダルにも見つけやすさによってランクがあります。 上から赤、青、白で赤は3点、青は2点、白は1点と換算されますので、頑張って難しいお宝を探してみてください』
「私達は各色一つずつ持っていますね」
「という事は6点持ってるって事だね」
『なお、2時間半という長い時間ですので、各班必ず一度は休憩を取ってください。 暑くもなってきましたから水分補給はこまめにしましょう。 それでは頑張ってください』
「休憩する?」
「僕は大丈夫かな……」
「私も平気です」
「じゃあ、あと一箇所回ったら休憩っすね!」
この中で体力が無いのは由花と次点で真人になるが、2人とも家で筋トレや体力作りを定期的に続けてきたおかげか、これぐらい歩いただけではほとんど疲れなくなっていた。
なので、このまま校舎の周りを一周する事にした。
校庭にもお宝は隠されているそうだが、かなり広いので大変だろうという事で校庭には行かないと決めた。
その後、校舎の周りでも3つのお宝を見つけ、一度真人達は休憩を取ることした。
「校舎の周りで見つけたのは青一枚と白二枚だね!」
「結構見つけられた箱が落ちてたから、そのうち無くなるかも」
「後半は青とか赤とかの見つけにくいやつが残りそうっすねー」
皆んなで水分補給をし、ベンチで座って休んでいく。
「これだけ歩いてもそこまで疲れが無いのは日頃の運動のおかげですね」
「由花、結構頑張ってるもんね……」
「最初は筋肉痛が酷かったですけど、何とか続けてこれてます」
「いいっすねー、由花っち。 もう運動は嫌いじゃないっすか?」
「いや、出来ればあまりしたくはありませんが…… まぁ、前ほどでは無いですね」
「それなりに歩けるぐらいの体力あれば人生困んないしね?」
「それはそう」
そんな風に話していたら10分くらい経っていたので、真人達は宝探しを再開する事にした。
*
『一年生の皆さん、宝探し終了のお時間となりました。 速やかに体育館に戻ってきてください』
「ありゃ、もう終わりっすか」
「あっという間だったねー」
あれから真人達はかなりの量のお宝を見つけていた。
が、他の班はどうかわからないのでこれが多いのか少ないのかはよく分からなかった。
「にしても、音夢さんすごいですね? 赤色のメダルを4枚も見つけるなんて」
「かくれんぼは得意。 だから、隠すところもなんとなく分かる」
「音夢っちは勘が鋭いっすねー。 隠し事とかすぐバレそうっす」
「美晴の隠し事?」
「えっ、な、何か知ってるんすか?」
「……フッ」
「何すか今の笑いっ!? か、からかってるだけっすよね?」
「さぁ?」
「う、うぅ~…… 真人っち、音夢っちがいじめるっすよ~」
「あはは……」
そんな和やかなやり取りをしながら体育館に戻り、お宝が入ったポーチは回収された。
これからお昼ご飯を食べるので、その間に集計をされるそうだ。
『では、これからお昼ご飯なのですが、お昼ご飯は班で協力してカレーライスを作ってもらいます。 まずは校庭に移動してそこで説明をします』
そうして生徒達はゾロゾロと校庭に移動していった。
そこにはいつの間にか全班分のテーブルと、卓上コンロやまな板が置かれた作業スペースが設置されていた。
『まず、作るのはカレーライスとサラダになるのですが、班で役割分担を決めて、男子生徒の皆さんと女子生徒2名はこっちの机でサラダに使う葉物野菜をちぎったり盛り付けをお願いします。 あとの女子生徒はこちらのスペースで野菜やお肉の切り分けと実際にカレー作りをお願いします』
ちゃんと安全面も考慮されているようで、男子生徒は徹底的に包丁や火の近くには近づかないように考えられていた。
『各班のスペースに材料とレシピは置いてありますので、しっかりとそれに従って作ってください。 それでは初めてもらって大丈夫です』
「じゃあ最初は私と音夢ちゃんでカレー作ろっか」
「では、具材を切り終わったら交代しましょう。 それから鍋の方は私と美晴さんで見ます」
「はいっす!」
「ん、了解」
サクッと役割分担も済み、真人達はカレー作りに取り掛かっていった。
応援ありがとうございます!
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